左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

少し文章が下手でも…本・雑誌などの原稿を書くときのポイント・基本的姿勢(左巻健男)

 まずツイッターでよくRTされているもの。
左巻健男:原稿が遅れる人は元々書く能力が弱い人か、自分の能力を高く見過ぎて一寸で書けると思い、ぎりぎりでやる人かな。普通、3日でやれると思うことは1週間、10日とかかるもんなんだよ。自分がやれると思う日程の2倍、3倍余裕を持って取りかかってやっとなんだよ。」


 RikaTan誌 http://rikatan.com/ の企画委員MLに、「原稿執筆の基本的姿勢」として入れたもの。
───────────────────────────
●原稿の最低条件は“読む気をさそうもの”
 読む気にさせるということは、読者の共感だけでなく反感をもふくめて“おもしろそうだ”と思わせることである。おもしろければ、そこに役立つことが書いてなくても、読者は、何かを感じることができる。
●RikaTan誌の読者対象は、理科好きな大人。
 ただし、専門家ではないし、理科のどの分野にも詳しいわけではない。
●原稿の最低条件は“読む気をさそうもの”
 読む気にさせるということは、読者の共感だけでなく反感をもふくめて“おもしろそうだ”と思わせることである。おもしろければ、そこに役立つことが書いてなくても、読者は、何かを感じることができる。
 おもしろくない、読む気にならないものは概して”形式的”だ。
 肉声が感じられない死んだ文章である。
 教育界には、中味のない形式的な文章がいっぱい氾濫している。
 私たちは、生き甲斐のため、おもしろがるために書くのである。したがって、形式的な文章とは無縁のはずである。
 おもしろい文章には、ためになることがふくまれていたり、共感できるもの、目を開かされるもの、自分のおもいを相手に伝えようとする熱意などがふくまれている。
●見出しも工夫を。
・ちょっとドキッとするようなテーマ(見出し)・センスが光るテーマ
 を考えてつけてください。
●最初の数行が読んで貰えるかどうかの分岐点。
 読者への「つかみ」を意識した数行になっているか。
● 高いレベルの内容をやさしい表現で書く。
・できるだけやさしく、いきいきと素直に!読者を思いおこしながら書く。
 程度は中学生くらいにする方が、どんな大人にも読める文になる。
・一つ一つの文は、短く、すっきりと。一つの文章は、せいぜい30数字に抑える。
・一つの文章の主語は一つにして、変えないこと。
・修飾する語は、修飾される語にできるだけ近づける。
・一つの文章からつぎの文章へ移るとき、スムーズに移ること。読みやすくつなげる。
・一つの段落のなかでは内容を一つにしぼる。二つ以上の内容を述べない。
・適度に小見出しをつける。小見出しは内容をパッと表すものにする。一つの小見出しで、 400字原稿用紙2、3枚ぶんまで。
・第一に、第二になどと内容を分けて示すときは三つくらいにしぼって示すこと。
・言い切り型の文章を。
・一度、まず書いてみて、それから推敲を。まず書いてしまうことだ。そのとき、言いたいことをまず結論的にのべて、それから細かい部分をのべていくようにした方が読みやすい文になる(概観から細部へ)。
・自分の知人のなかで、もっとも意地悪い人をおもい浮かべて、相手の身になって読み返してみる。大担に削りとっていった方がよい文章になることが多い。
 「これで相手に通じるか」「論理の飛躍はないか(一人よがりではないか、舌たらずではないか)」「だらだらしていないか(しつこすぎないか)」「違った意味にとられないか」
・「である」調か「ですます」調かのどちらかに統ーする。
・「が」をいくつも使って、文をだらだらとしたものにしない。
・一般の人が知らない学術用語を説明なしに使っていないか。
(左巻 健男)
───────────────────────────

 昨日(2015年1月17日)、ツイッターで本のことでやりとりがあった。


 菊池誠さんがニセ科学本を書くことになっているにまだなので、それについて、
左巻健男菊池誠さん、ぼくはニセ科学本が決まったので、今月内容構成を考え、2月に材料集め、3月に一気に書くという感じですよ!」
菊池誠さん「左巻さん、書くのが速いからなあ。あ、僕が遅いのか。半年以上かかりそう。」
田崎清明さん「スピードでは絶対に左巻さんには勝てないから、ぼくらは左巻さんが書かないようなものをじっくり書くべきなんだと思う。文化史をふまえたマニアックなニセ科学本は菊池さんにしか書けない。
 もちろん。めちゃくちゃ早いのに勘所を押さえているので驚くのです。
決して真似はできないと思っています。」
左巻健男「照れます。理科教育者として現場で生徒らと楽しんで理科授業をやってきたからだと思えばいいのかな。そこでの雑談wなども反応を見ながらなので原稿を書くときに活かせます。」


 もう一つ、藤木さんとのやりとり。
 発端は次だ。
左巻健男「理科・科学本は1万部超えたら非常によく売れたと言える。今までに出した本で1万部超は1割以上あると思う。つい最近12刷り決定の本も3万部近い。ある出版社の人が「センセイの本のファンがいるんですよ」と。地味な理科教育者が200冊以上の本が出せたのは嬉しい。」


 藤木さんはいろいろアイデアがあるから本にしたいという。しかし仕事が忙しすぎてとり組めないでいるという。


左巻健男「本を書きたい、という人に言うこと:1日百や二百は読まれるブログを書いていく(読者が何を求めているかを掴む)、いろいろ活動的なときに本を出す(定年後暇になったから…というのは駄目。できればピークの時に。忙しいときに書く)、関係の面白本をどんどん読む。」
左巻健男「ぼくはよく電車の中でも、この瞬間のように駅のホームでもメールのやり取りやときには原稿執筆もしていますが、普通には難しいでしょう。正規の教授職にあって余裕が有り、執筆が研究業績になるというのはとても恵まれた状態だと自覚しています。すみません。」
左巻健男「85%主義で仕事をしています。例えば高校教諭の時各種書類はぱぱっと書いて見直しもしないで出していました。出した先の指摘で直します。実は本の原稿もそんな感じです。ゲラで直します。百%主義だと本などなかなか書けないと思います。
 ブログに◎本の1節を書いている気持ちで◎徒然草を書いていくといいのでは?」


 ブログにというのは、左巻健男「昨日読んだ水月さんは前著「高学歴ワーキングプア」(8万部!)の企画を出版社に持込。普通持込企画は可能性が弱い。博士をとったあと職がなくてパチプロをやっていたがその時々の話をブログに書いてもいた。その文章が面白いというので「筆力があると編集者が判断してくれて」企画実現。」


 これまでにぼくは表紙に名前がある本を2百冊以上出してきた。昨年は16冊だった。そのうち単著(1冊全部をぼくが書いた本)は3冊だった。
 ぼくは、「*文学少女から高校生物教諭をやっていたツレに「あなたは文章が下手ねえ。菊池誠さんを見習いなさい」といわれているでござる」。
 文章がうまいわけではない。
 理科関係の原稿は、文章に磨きをかけていうより、少し(笑)下手でも、相手に面白さが伝わるかどうかが大切だと思っているのだ。


 最後に。
 よく「今は仕事に忙しいから仕事をやめたら本を書く」という人がいるが、自費出版ならいいが商業出版(本屋に並んだ本を買って貰う)はその本の内容関係でアクティブに動いているときでないと出してもくれないと思う。
※仕事は忙しい人にしか頼めない。本も編集者はそうだと考えていると思う。