左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

『PHP文庫 面白くて眠れなくなる化学』PHPのための「後書き」案

  左巻健男『面白くて眠れなくなる化学』PHPが文庫版(PHP文庫)になる。
 左巻健男PHP文庫 面白くて眠れなくなる化学』で、4月17日第一版第1刷だ。

 いま、その文庫版のための後書き案を書いた。


【後書き案】

 物質が身近になる、物質の世界が見えてくるといいね!

  PHP文庫版になるにあたり、全体を読み直してみました。読了して、本書執筆のきっかけや執筆に集中していた時期を思い起こしました。


 本書を書く前に、ぼくは『面白くて眠れなくなる物理』を出したばかりでした。その本を引き受けたときに、「書き終えたら、化学でも書かせてほしい」と頼んだこと、「化学でも企画が通りましたよ」と言われて、一心不乱に本書を書き上げたことを思い出したのです。


 ぼくは、長く中学校・高等学校の理科教員を勤めました。そのとき、化学の授業は、いつも平明なもの、生徒の興味をひくもの、本質的なもの、を目指すべきだと思って取り組んできました。マイナス200℃近い低温の液体窒素でいろいろなものを冷やしたり、カルメ焼きに熱中するような、「物質にいつも触れる、物質が身近になる、物質の世界が見えてくる」ような化学の授業をしたかったのです。そのような、物質に触れあう実験だけではなく、新しい世界を広げてくれる知識も大切と思い、いつも原子論というミクロなレベルの理論とともに、物質の性質や物質の変化のマクロなレベルの世界を統一することも意識しました。さらに、その理論と実験が生活や社会と広くつながっていることを大事にしなければならないと思っていました。


 本書の内容には、ぼくが長年にわたって理科教員として心がけてきた、そのような化学の授業がバックにあります。


 ビジネスマンなどへの調査で、化学は学習して役立たない科目の上位にあげられてしまいます。高校で化学選択者はたくさんいるのに、化学物質とのつきあい方について正しい判断力を必要とされる時代だというのに、化学のおもしろさや生活と化学との関係についてあまり伝えられていないという状況があるようです。


 本書は、化学の啓発書として、ちょっと違ったアプローチになっていると自負しています。基礎的・基本的な知識についてはいくつかの別の著作で展開していますが、本書では、ぼくが長年、化学を教えてきた中でその神髄をやさしく伝えたいという心を込めたつもりです。本書がPHP文庫本になり、さらに多くの読者に化学の面白さの一端を伝えられるとしたら大変嬉しいことです。


 2017年3月3日 左巻 健男