左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ナノ銀による放射能低減効果&板橋ホタル館累代飼育:阿部宣男vs松﨑いたる裁判(松﨑さんの勝利)判決にある「真実性,真実相当性等について」

   判決に、ナノ銀による放射能低減効果&板橋ホタル館累代飼育についての真実性が述べられている。その部分を紹介しておこう。

 松﨑さん勝利!:山の阿部宣男(元板橋区立ホタル館) vs 松﨑いたる(板橋区議)の裁判の判決が出た!
http://samakita.hatenablog.com/entry/2018/04/02/095212

※読みにくいと思うので、ぼくが強調しておく部分を赤字太字にしておく。またところどころ行間を空けておく。

 【真実性,真実相当性等について ナノ銀記事について】

 ナノ銀に放射能低減効果があるとの主張は既存の科学の知識に反するものであること(上記1(2)ケ),原告らの研究においてもメカニズムが不明であるとされ(甲19二11頁),原研による検証試験ではかかる低減効果は認められなかったこと(上記1(2)ウ,キ)等の証拠により認められる事実並びに真実性の証明の対象に関する原告の主張を含めた弁論の全趣旨によれば,ナノ銀に放射能低減効果がないことについては,名誉穀損訴訟における違法性阻却事由たる真実性が認められるというべきである。


 原告は,被告が主張立証すべき真実性の対象は上由とは異なり,原告がナノ銀を使用して実施した実験によっては放射能の低減が確認されなかったことであるから,原告が行った実験結果そのものを虚偽だと被告が証明できない限り,真実性の証明とはならないなどと主張するが,「ナノ銀記事が原告自身の実験結果によってもナノ銀の放射能低減効果が確認できていないとの印象を与える」との主張が採用できないことは上記2(2)アで説示したとおりであるから,真実性の証明の対象に関する上記主張もまた,これを採用することはできない。付言すると,ナノ銀には放射能低減効果がないことが真実であるのに,誤った手法による実験を誤りに気付かずに行い,その結果から上記効果があると思い込んでその旨を社会に向けて発信しているという場合を想定すると,社会にとって重要なのはそのような発信の客観的な誤りを知ることであって,上記実験自体は価値がないものというほかはないから,かかる観点からも,原告の言説の虚偽性ではなく原告が行った実験結果そのものの虚偽性の証明を求める原告の主張は,到底採用することができないというべきである。


 また,ナノ銀の放射能低減効果についてインチキ等と評することについては,辛辣というはかない酷評であり,区議会議員という公職にある被告が選択する表現としては褒められるものでないとしても,被告が論評の対象としている原告の言説が扱っているのは,放射能という高度の危険性を有するものであって,誤った内容を断定して流布すれば,公衆に及ぼす危険は甚大なものとなるところ,原告はナノ銀に放射能低減効東があることを断定するかのような発信を繰り返し(上記1(2)ィ,オ),原告が提供した「ナノ銀による放射能除染技術」を用いたナノ銀ろ過セットが政治家らに配られるとともにルシオラで販売され,参議院本会議でもナノ銀に放射能低減効果があるとの報告の存在を前提とする質問がされるなど,一定の層から支持・期待されていた(上記1(2)カ,キ)等,その社会的影響力も無視できないものであらたことを考慮すれば,これに対する批判や反対意見が相当程度強い表現になること,はやむを得なかったというべきである。


 そして,ナノ銀記事の趣旨はナノ銀の放射能低減効果なる主張の虚偽性・非科学性を批判することにあると認められ,これを超えて原告に対する人身攻撃に及ぶものとは認められないから,正当な論評として許容され,違法性は阻却されるといえる。

 

【累代飼育に係る原告の説明が虚偽であることの真実性について】

 さらに,「ホタル館で飼育しているホタルは,平成元年に原告が採取した卵をふ化させ,以後,外部のホタルと交雑することがない状態で繁殖を続けたものである」との原告の説明が虚偽であったことや,かかる累代飼育による毎年のホタルの羽化数についての原告の報告が過大なものであったことは,本件DNA検査において,検体のゲンジボタル11個体中から5種類のDNA型が見付かったが,福島県を生息地とするホタルのものは見付からなかったこと(上記1(1)テ),平成5年度ないし平成9年度の羽化数の報告は過大であったと原告が自認していること(甲202),平成26年1月の本件生息調査で確認できたホタルの幼虫はゲンジボタル2匹のみであったこと(上記1(1)ケ),平成26年度に羽化したホタルは211匹程度であったこと(上記1(1)ウ,チ,ト)等に照らせば,名誉毀損訴訟における違法性阻却事由としての真実性が認められるというべきである。


 これに対し,原告は,①ホタルの幼虫は,本件生息調査時には7万匹以上いたのに,同調査によって殺され流され,あるいは調査がずさんで発見できなかったのであるなどと従前より主張している(上記1(1)ケ)ほか,②本件DNA検査に関しては,平成26年2月以降ホタル館を管理するようになった本件センターが混入させたホタルが検体とされた面(8)27頁以下等)。

 

 しかしながら,上記①については,本件生息調査を担当した本件センターは,従前より,東京都足立区生物園に串けるホタル飼育を含め,多数の地方公共団体等から公園・施設の管理運営業務や生物飼育業務等を受託してきた実績を有していること(乙47),ホタル館におけるせせらぎは,ホタルの幼虫が流れ去ることがないような水流及び構造となっており,ピット手前には格子状のステンレスの網が設置され,ホタルの幼虫等が流れることを防ぐ構造となっていたところ,本件生息調査時には上記網を確認したものの,ホタルの幼虫が網にかかっている状況はなかったこと(乙2,47),仮に調査手法に多少の問題があったとしても,本件生息調査で実際に捕獲されホタルの幼虫の体長は25ないし30mm程度であり(乙2),他方,原告の主張・供述は変遷しているものの,幼虫を最も小さく述べる供述でも体長が6ないし8mm程度で,胴体の太さが1mm程度(甲201,202)というのであるから,かかる幼虫数万匹が流されるなどして全く発見できなかったなどとはおよそ考え難いこと等から,原告の主張は採用することができない。上記②についても,本件生息調査後のホタル飼育を担当した本件センターは,上記のとおりホタル飼育を含む多くの生物飼育等の実績を有している上,板橋区は本件センターに対し,ホタル館ではホタルが累代飼育されていることがアピールポイントであることを説明し,現存するホタルを根絶させずに飼育するように求めてこれが承知されていたこと(乙47)に照らせば,本件センターがあえて外部からホタルを持ち込んだなどとは考え難いから,原告の主張は採用できない。その他,原告は,本件生息調査及び本件DNA検査の信頼性についてるる論難するが,これらを逐一検討しても,いずれも原告独自の立論といわざるを得ず,採用できない。


 また,本件発言は区民環境委員会における被告の発言であるところ,その主題は板橋区の事業として行われていたホタル館の運営・業務に関する疑惑の追及であって,区の事業に係る問題の追及・解明は区議会議員にとっては当然の職責というべきものであり,殊更に事実と臭なることを述べたり,原告に対する個人攻撃を意図したりしたものとは解されず,批判としての域を超えた誹誘中傷とまでいうことはできないから,正当な政治行為として違法性が阻却されるというべきである。


 さらに,ホタルの外部からの持ち込みについては,これを直接に裏付ける証拠はないが,ホタル館においては現実に毎年ホタルの夜間公開が行われていた(前記第2の2(2))のであるから,累代飼育されたものでないホタルは外部から持ち込まれたものかその子孫ということになり,真実性は同様に認められるといえる。もっとも,だからといってホタルの持ち込みを原告が行ったと直ちに断定できるわけではないが,本件生息調査までホタル館におけるホタルを飼育し管理していたのは専ら原告である上,平成26年2月19日の区民環境委員会で当時の環境課長がホタル館にホタルの成虫を持ち込んでいたというような元関係者の証言があると答弁していること(上記1(1)ス),被告自身も,同年3月5日にホタル館でむし企画前代表の小船からホタル館宛てのカワニナの発送伝票を発見し,同月8日に小船がホタルの飼育をしていたと聞くなどして,むし企画を通じてであればホタルを秘密裏に持ち込めると考えるに至ったこと(上記1(6)オ,キ,ク),平成27年1月に発表された乖離報告書で,むし企画からホタルが宅配により持ち込まれたとする関係者の供述が記載され,ホタル館のホタルは外部から人為的移動により持ち込まれたものと考えられると結論付けられていること(上記1(1)ト)等に照らせば,少なくとも,被告において原告がホタル館にホタルを持ち込んだと信じたとしてもやむを得なかったというべきである。