左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ハチミツに関する誤解を2つあげておこう。「ハチミツはボツリヌス菌が増えやすい」「ハチミツに含まれる果糖はノンカロリー」

 ハチミツに関する誤解を2つあげておこう。
 「ハチミツはボツリヌス菌が増えやすい」「ハチミツに含まれる果糖はノンカロリー」である。これを信じているのが、北京の清華大学教授で医師だという(もちろん、ニセ医師であり、ニセ清華大学教授である)@howtodominateである。 

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ツイッターのおもしろくてかなしいアカウントhowtodominate(1,2型糖尿病の人は要注意!) -
http://samakita.hatenablog.com/entry/2018/03/22/000000

 

 ボツリヌス菌は、本来土壌細菌で、芽胞(がほう)の状態で広く分布している。
 ハチミツには、ハチが蜜をとってくるとき、ボツリヌス菌の芽胞をも取り込んでしまうことがある。

 

 芽胞は、細菌のまわりの環境が悪化したときに、きわめて耐久性の高い(とても丈夫な)細胞構造になって休眠状態になったものだ。ハチミツは果糖とブドウ糖の糖度が高い(水分は20%程度でその他はほとんどが糖)ので、細菌は増殖できない。しかし、芽胞ならば休眠状態でいることができる。

 

 ボツリヌス菌の芽胞を含んだハチミツを摂取すると、口の中、食道の中、胃の中などで芽胞の休眠状態が解け、増殖しようとする。しかし、胃の中には胃酸(薄い塩酸)があるから、そこで殺菌されてしまう。何とか小腸ー大腸に行けたものがあったとしても、とくに大腸内の腸内細菌フローラによってやられてしまう。だから乳児以外ではハチミツでボツリヌス菌による食中毒は心配しなくてよい。

 

 ところが、乳児の場合は、胃酸による殺菌も弱く、腸内細菌フローラの発達も弱い。そこで、ボツリヌス菌は大腸で増殖して毒素を産み出す。最初は便秘が見られるが、後には一般のボツリヌス菌と同様の食中毒の激しい症状が出る。
 これを乳児ボツリヌス症という。1987年、厚生省(当時)は、“1歳未満の乳児にハチミツを与えないように”各都道府県に通知し、注意を促した。

 

 @howtodominateの間違いは、“1歳未満の乳児にハチミツを与えてはいけない”ということを表面的に知っていても、高糖度の中では浸透圧のため細菌が増殖できないという科学の初歩的知識がなかったことによる。

 

 @howtodominateの「ハチミツに含まれる果糖はノンカロリー」という間違いは、単に人は果糖をエネルギー源にするための酵素を持っていないという思い込みによるものだ。ラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖など難消化性のオリゴ糖と混同しているのかもしれない(消化性のオリゴ糖もある)。