左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

3つの原発事故調・元委員長らにインタビュー(JASTJ)を読んだ!

日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ
3つの原発事故調・元委員長らにインタビュー
https://jastj.jp/valid/valid_06/top/
を読んだ。

 

以下は左巻健男による抜き書き。

 

政府事故調元委員長 畑村洋太郎 氏】
例えば、外から水を入れても中まできちんと届いていなかったのではないか、ということがしきりに言われる。事実そうであったと思う。メルトダウン原発に関係している人なら当然起こっていると思っているのに、言葉さえ使わせない。国民の頭の中を言葉でコントロールしようとして見事に果たした。

Q 日本の社会とか文化は原発のような巨大技術を動かせるほどの成熟度をもっているのでしょうか?
畑村 持っていないですよ。答えは簡単。具合の良い所だけつまみ食いして明治維新以降 150 年ほどやってきてうまく行っちゃった。その一番すごいのが高度成長期です。~実態は自分たちの方に経験がないし考えもない。でも、お金を払えばそれだけの知識や技術を流してくれる。相手も日本がそれほど強くなるとは思わないから、まあいいだろうと出してくれた。後は日本が力をつけて相手をやっつけちゃう。それでうまくやってきた。

Q また原発事故はあると考えていますか。
畑村 あると思っています。ヒューマンファクター、つまり勘違いで事故が起きたというのがスリーマイル事故、チェルノブイリ事故は方式を試したくなった人が自分流で試そうとして起きた。次に起きたのが今回の津波です。その前に警告的に地震で起きたのが柏崎刈羽原発の事故でした。ちゃんと順番に起きている。それもそんなに間を置かずに、10 年おきに起きている。では、それから学んだかというと、本気で学んではいない。

【国会事故調元委員長 黒川清 氏】
世界でも多くの関係者が国会事故調の報告書には関心を持っていて、多くの講演にも呼ばれた。2013 年には 3 回世界を回って話をしてきました。国際原子力機関IAEA)の担当者もそのことに興味を持っていて、経済産業省に「なぜきちんと避難訓練をしないのか」と質問したことがあるといっていた。そしたら「シビアアクシデントは起きませんから」と答えが返ってきたので、「日本は不思議な国だなあと思っていました」と言っていました。ところが日本では誰もそのことを問題にしてこなかった。国内外の専門家はみんな知っていたし、日本の関係者もメディアも知っていた。でも言わなかった。それが問題なのです。

Q 国会事故調は事故原因として津波だけでなく地震の可能性にも言及し、委員だったサイエンスライター田中三彦さんらは解散後も調査を続けています。
黒川 ~日本は地震大国だ。世界で起きるマグニチュード 4 以上の地震の 40%は日本で起きている。そこに 50 何基もの原発を抱えているのだから、日本として検証する責任がある。私が言っているのは、地震の可能性を否定できないと考える謙虚さが必要だ、ということだ。

原子炉だって車の運転と同じで、実体験が大事なのに十分にやっていない。大学の研究もたこつぼ化が進んで、研究のアウトプットも低下している。いまのままでは日本はだめになっていくだろう。もっと自分たちの問題として考えないと‥。会社や役所といった組織にべったりとくっついている限りは、本当の改革はできないだろう。

Q 日経新聞に連載された先生の「人間発見」を読ませていただきました。そこで先生が「出る杭は打たれる」ではなく「出る杭は育てる」と言われていた点が今日の話とも通じていて大変興味深かったです。

民間事故調元プログラム・ディレクター 船橋洋一 氏】
Q 官邸と東電の間で問題になった完全撤退については、民間事故調だけがその可能性があったことを指摘しました。
船橋 ~実は我々はそれほどの決定打を出せてはいない。他の事故調は、東電の言い分として「撤退ではなかった」と書いているが、証拠は示していない。そこで我々は、証拠がないならそれをそのまま信じることは難しいと主張した。状況証拠的に、なぜあのとき清水社長が夜の 7 時くらいから朝の 3 時頃まであれほど何度も枝野幸男官房長官を追いかけたのか。清水さんは記憶にないと言っているが、枝野さんはインタビューで「完全撤退の意図があった」と明確に証言している。しかし東電からは何の説明もない。

これまでの安全対策は、パフォーマンスばかりだった。SPEEDI にしても 120 億円以上つぎ込み、「これだけやりました、世界一です」と宣伝する仕掛けにされただけだ。実際には使わなかったという厳然たる事実が、そのことを物語っている。
米国が事故対策にロボットを貸すと伝えてきたときも、「自分たちでやります。技術大国ですから」という態度だった。電力会社も反対する。本格的なロボットを作るというのは、本格的な事故が起きる可能性を認めることになるからだ。「安全だから必要ない」として、最後は安全神話というブラックホールに落ち込んでしまう。どうやってそこから抜け出すのかを考えなくてはいけない。
あとはやはり技術革新、イノベーションが重要だ。しかしイノベーションがあると、現状が不十分だということが証明されてしまう。だから反イノベーションになる。絶対安全神話というのはそれだ。この問題を本当に克服したのか。技術大国とか経済大国とか戦後ずっと言ってきたが、本当に決定的なところでどれだけ本当にイノベーションをやって来ただろうか。

日本の再生可能エネルギーは間違いなく遅れている。政府は 2030 年に原発 20%という計画を作っているが、相当甘い。再生可能エネルギーについては、今まで十分に旗印も目標も掲げられなかった。気がついてみれば、あっという間に中国の方が圧倒的に進んで逆転してしまった。もはや手遅れと感じるほどだ。

船橋 今回の事故対応でまったくリーダーシップがなかったかというと、あったと思う。東電から情報が上がってこない、2号機がメルトダウンに向かうというパニックになっていく。そうした中で、東電に乗り込んで対策本部を作ろうというのは、菅さんから出てきた。あの状況で最悪のシナリオを考えたとき、もし東電が勝手に撤退してしまったら、その結果は悲惨な事故になる。乗り込んでいって「命かけてやってくれ」といったのは、いろいろ批判されたが、一番の危険に対応していこうというリーダーシップだ。