左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

スティーブ・ジョブズの場合の場合はあまりにも悲しい~すい臓がん発見から逝去まで~

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スティーブ・ジョブズの場合】

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左巻健男『暮らしのなかのニセ科学平凡社新書から:

第1章 ニセ科学をなぜ信じてしまうのか

1 スティーブ・ジョブズの場合
○すい臓がんの発見
 スティーブ・ジョブズ(1955年~2011年)は、米国の実業家、説明するまでもなく、アップル社の創業者の1一人です。

 2003年、彼にすい臓がんが見つかりました。

 2003年10月、彼は、腎臓結石のときに治療を受けた医師とたまたま顔を合わせ、腎臓と尿管のCTスキャンをする受けるように勧められました。5年ぶりのCTスキャンでした。腎臓に問題はありませんでしたが、すい臓に影がありました。
 すい臓の検査をした結果、すい臓がんが発見されました。ただ、ほとんどのすい臓がんは、治療できない「腺がん」と呼ばれるタイプなのに、彼の場合は、「すい臓神経内分泌腫瘍」と呼ばれる珍しいタイプでした。進行が遅く、たまたま早期に発見されたので、あちこちに転移する前に手術すれば非常に生存確率がも上がるタイプのがんだったのです。

○手術を拒否したジョブズがはまったカルト療法
 がんの治療は、いわゆる三大療法、つまり手術、薬物療法放射線治療という3つの治療がメインです。
 がんの治療は、技術の進歩や医学研究の成果とともに変化します。現時点で得られている科学的な根拠に基づいた治療のことを「標準治療」と言います。
 標準治療は、手術、薬物治療、放射線治療をそれぞれ単独で、あるいはいくつかを組み合わせた方法で行われます。
 このジョブズのがんの場合は、標準治療では手術で除去するという治療しかありませんでした。しかし、彼は手術を拒否しました。そこには若いころからの没頭していた東洋思想などの影響で、体を切り刻まれたくない、西洋医学への拒否感があったかもしれません。「権威を信じない」「自分一人を信じる」という彼の信念がそうさせたのかしれません。
 彼は、新鮮なニンジンと果物のジュースを大量にとるという絶対菜食主義を実践しました。ハーブ薬なども併用して実践し、他にもインターネットで見つけた療法や、心霊治療の専門家などに勧められた療法も試しました。それらの療法のなかには、のちほど危険性を述べるコーヒー浣腸もありました。
 これらの療法の実践は、すい臓がんの診断から9か月間続きました。

○手術後の経緯
 2004年7月の金曜日、新しいCTスキャンには大きくなったがんが写っていました。広がった可能性もありました。ついに彼は、現実と向き合うしかなくなりました。手術の結果、肝臓に3か所の転移が見つかりました。
 9か月早く手術していたら、もしかするとがんが広がる前だったかもしれません。もちろん、誰にも確実なことは言えませんが、多くの人は、この遅れが致命的な結果につながったと見ています。

 2008年になるころには、がんが広がりつつあることがあきらかになりました。肝臓移植手術もしましたが、内臓を囲んでいる腹膜に斑点が認められました。がんの進行は思ったよりも早かったのでしたです。
 2010年10月には体調が下り坂に入りました。痛みがひどくて食事ができなくなりました。
 20112年7月にの段階では、骨をはじめ体のあちこちにがんが転移してしまい、もはや治療に適切な薬はなくなってしまいました。そして2011年10月55日に、ジョブズは56歳で逝去しました。
 アップル社の創設者の一人にして絶対的なカリスマ性をもち、数々のすぐれた製品を世に送り出してきたスティーブ・ジョブズ。彼のような高い知性の持ち主でも、ニセ科学、ニセ医学にはまり込んだのです。

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暮らしのなかのニセ科学 (平凡社新書)   左巻 健男
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 多くの人が持っている「健康になりたい」「病気を治したい」「きれいになりたい」といった当たり前の願望。そんな思いを利用してつけ入ってくるのがニセ科学
 一世を風靡したマイナスイオンから、今話題の水素水、デトックス血液サラサラ、各種サプリメント、がん放置療法、さらに実はあれにも科学的根拠がなかったのか! と驚くものまで、ニセ科学批判の第一人者が一刀両断。
 人はなぜニセ科学にだまされてしまうのか? 怪しい健康・医療情報にはご用心。

《目次》 読者のみなさんへ

第1章 ニセ科学をなぜ信じてしまうのか
第2章 がんをめぐるニセ科学
第3章 サプリメント・健康食品の効果は?
第4章 あのダイエット法、本当に効果的?
第5章 あの健康法に効果はある?
第6章 食品添加物は本当に危ないのか
第7章 ニセ科学はびこる水ビジネス
第8章 大手企業も次々に──マイナスイオン、抗菌商品
第9章 もっとも危険なニセ科学、EM
第10章 ニセ科学にだまされないために
あとがき