左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

「学校に、環境活動に、福島復興に、政治に、入り込んでいるEM(EM菌)」消費者法ニュース2019年4月号掲載の全文公開

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学校に、環境活動に、福島復興に、政治に、入り込んでいるEM(EM菌)

        法政大学教職課程センター教授 左巻健男

1 EM(EM菌)とは何か?
 EMは有用微生物群Effective Microorganismsの英語名の頭文字であり、製造・販売している(株)EM研究機構、(株)EM生活などの商標登録の商品群である。通称EM菌とも呼ばれる。
 乳酸菌・酵母光合成細菌などの集合体だという。しかし、専門家が調べると肝心の光合成細菌は検出されないという報告がある。
 開発者は当時琉球大学農学部の比嘉照夫教授。比嘉氏が書いたEM本、『地球を救う大変革』(サンマーク出版 1993)はベストセラーになった。表紙には「食糧・環境・医療の問題がこれで解決する」と謳っている。たとえば、EMを使った自然農法を行えば、農薬や化学肥料をまったく使わなくても質のよい作物が通常栽培の何倍もとれる、トイレの排水から洗剤まで混入した汚水が24時間で飲み水に変わる。化学物質、放射線物質、農薬による環境汚染、水質汚染、大気汚染なども解決できる、末期の肝臓がんといわれた人たちがEMを飲んで治った、つまり難病まで治せる、というのだ。
 国立大学の教授が大々的に効果を謳ったことで、世にEM信者がたくさん生まれた。
 それだけではない、高名な経営コンサルタント船井幸雄氏が応援したことでも話題になった。
 さらに、世界救世教という新興宗教の一派と組んでEMを使う自然農法を広めた。世界救世教は、国内に百万を超える信者を持ち、浄霊という手かざしの儀式的行為を各信者が行うこと、自然農法を推進することなどを特徴としている。世界救世教では、EMは“神からのプレゼント”と形容されている。

 

2 EMの商品群

 土を改良する農業資材、生ごみ処理、水質改善、車の燃費節減、コンクリートの強化、あらゆる病気の治癒などに効果があるという、さまざまな商品がある。

1.EMを用いた微生物資材(農業資材)
2 .EMを使用して作られた各種製品(健康飲料、農産物、化粧品、食品類)
3 .その他、EMを利用した資材(EMぼかし、EMストチュー、EMセラミック等)
4 .EMを活用したEM技術(土木建築、食品加工、環境浄化、塩類集積対策、化学物質汚染対策等)

 EMを代表するのはEM-1(EM1号)という濃い茶色の液体である。500ミリリットルで定価1100円である。エサになる有機物(米のとぎ汁や糖蜜)を加えた溶液で培養してEM発酵液として使う。米のとぎ汁を使わないで糖蜜を多くして培養したEM活性液が使われることもあるが、低コストなEM発酵液の方が一般的である。なお、EM発酵液もEM活性液と呼ばれる場合がある。
 EM系企業が販売に力を入れているのが、500ミリリットルで定価4650円のEM・X GOLDという清涼飲料水である。この他にEMセラミック、EMせっけんなど様々なEM製品が販売されている。

 

3 比嘉氏が謳う効能とEMの活動
 比嘉氏は、「EMは神様」だから「なんでも、いいことはEMのおかげにし、悪いことが起こった場合は、EMの極め方が足りなかったという視点を持つようにして、各自のEM力を常に強化すること」を勧めている。
EMはあらゆる病気を治し、放射能を除去するなど、神様のように万能だというのだ。
 EM製品をどんどん使ってEMを常に強化する生活をすると、次のような効果があるという(EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる [74])。

1 .EM製品を身に着けていたので交通事故に遭っても大事に至らなかった。
2 .EM生活をしていると大きな地震が来てもコップ一つも倒れなかった。
3 .EM生活をしていると電磁波障害が減り、電気料金も安くなり、電機製品の機能が高まり寿命も長くなった。
4 .EMを使い続けている農場やゴルフ場の落雷が極端に少なくなった。
5 .EM栽培に徹していると自然災害が極端に少なくなった。
6 .EM生活を続けていると、いつの間にか健康になり人間関係もよくなった。
7 .EMを使い続けている場所は事故が少なく安全である。
8 .学校のイジメがなくなり、みんな仲良くなった。
9 .動物がすべて仲良くなった。
10 .すべてのものに生命の息吹が感じられるようになった。
11 .EMで建築した家に住むようになり、EM生活を実行したら病人がいなくなった。
12 .年々体の調子がよくなり、頭もよくなった。
13 .EMの本や情報を繰り返しチェックし確認する。
14 .いろいろな事が起こっても、最終的には望んだ方向や最善の結果となる。

 もちろん効果は疑問だが、「効くまで使いなさい」という指導がなされている。
 EMに囲まれた場所は「結界」(宗教用語=聖なるものを守るためのバリア)になり、たとえば沖縄本島福島県はEM結界になっているので、台風がそれたり、被害は少なくなるなどと述べている。その言説を信じたEM信者らは、畑にEM製品を入れたペットボトルを埋めたり、ぶら下げたり、リチウム電池を支柱に貼り付けたりして結界づくりに励んでいる。
 巨大な教育団体TOSSのリーダーである向山洋一氏が、EMでいじめ問題など学校のあらゆる問題が解決すると主張し、その影響下にある教師たちが環境教育やプール清掃などにEMが使っている。
 環境科学や生態学の研究者からは「EM団子の水環境への投げ込みは環境を悪化させる」との批判があり、川・湖・海などの水質浄化への効果は否定する報告が多い。しかし、効果があるとして子どもたちや市民にEM活性液、EM団子などが投入させる活動が行われている。そのような活動に自治体が助成金を出したりして、支援してしまっている場合もある。

 

4 北朝鮮はEMを国家レベルで導入
 1990年代の終わりごろ、食料難に苦しむ朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)は全国くまなく農業用資材としてEMを導入することにした。比嘉氏もしばしば訪れて指導をし、「北朝鮮はEMモデル国家。21世紀には食料輸出国になる」と宣言していた。しかし、今は比嘉氏は北朝鮮のことについて述べないし、WEBサイトからその関係の話は削除されている。数年で、この国家的事業は失敗したからだ。

 

5 政治の世界にもEM側は入り込んでいる
 安倍内閣の文科大臣だった下村博文衆院議員は、比嘉氏の講演を聴いて「EM技術による放射能被曝対策もできるそうだ。…同様の提案が私のところにも他からも来ている。私も勉強してみたい。」とブログで述べていた。
 安倍内閣は、市議・県議時代からEMの広告塔的立場だった高橋比奈子衆院議員を環境政務官につけたこともあった。これについては、週刊文春10/30秋の特大号に「元女子アナ環境政務官は“トンデモ科学”の広告塔 まだある女性抜擢失敗!」という記事が掲載された。
 政界では、まず2006年にEM推進は掲げていないが有機農業推進議員連盟を熱心なEM信者のツルネン・マルテイ参議院議員(民主党)らが設立している。2013年12月3日に国会議員の超党派による「有用微生物利活用議員連盟」が発足している。いわゆるEM菌議運といわれる。会長は野田毅衆院議員(自民)、幹事長は平井たくや衆院議員(自民)、事務局長は高橋比奈子衆院議員(自民)である。比嘉氏によると、「スタートは50人内外でしたが、その後も新規に加入いただいていますので、近々100人を超える規模になりそうです。」(2014年1月18日 EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる [79])。比嘉氏は、EM菌議運と有機農業推進議員連盟について「この2つの議員連盟は、国会を軸にEMを社会化する両輪のようなものであり、これからも密接に連携し、EMが大きな国民資産になるように、より活発な活動を展開することになっています」(連載 新・夢に生きる [82])と述べている。
 2018年10月3日の毎日新聞は、「安倍内閣初入閣・平井科技担当相は「EM菌議連」幹事長」を報じた。平井議員は「「EM菌を使っている方がたくさんいるので幹事長を引き受けた。中身はよく知らない」と釈明した。」という。
 比嘉氏は、さまざまなEM商品を全部使うEM生活をすることを国民の義務にすることを狙っている。国民全体がEM・X GOLDという清涼飲料水を飲み、さまざまなEM商品を使う「EM生活」をするようになれば、生活習慣病などはなくなるので、もし病気になったら自己責任なので社会保険制度は不要という主張である。そのためには政治家らもEM信者にしようとしているのだ。

 

6 EM批判者への強い攻撃性
 EM研究機構の顧問と社員が、EMの非科学性について批判している人らの自宅や所属機関に押しかけたりして、「名誉毀損」「営業妨害」だとして批判封じの働きかけをしている。こうした役目を行っているEM研究機構の顧問は、ときにはEM研究機構の顧問であることを隠して、大学客員教授やジャーナリストの肩書きを使っていた。
 本来なら、EM批判をしている研究者とは公明正大に議論をすればよい。本当に商品の性能に自信があるなら第三者に自由に検証してもらい、もし問題が見つかれば商品の改良を重ねていき、批判を元により良い商品開発を目指していくのが企業としてのあり方ではないかと思う。
 EM批判側に訴訟を起こしたりもしている。
 2015年2月、EM研究機構の顧問だった出口俊一氏が名誉毀損で私に対して訴訟を起こした。同年6月には、比嘉照夫氏が、EM菌の効果を疑問視する記事を出した朝日新聞社名誉毀損で訴訟を起こした。このとき出口俊一氏は比嘉氏側の陳述人だった。
 私への訴訟、朝日新聞への訴訟とも東京地裁、東京高裁の控訴審でEM側が完全敗訴、最高裁で棄却で、EM側の完全敗訴の判決が確定した。なお、私と出口氏との裁判記録は、http://ankokudan.org/d/d.htm?samaki-j.html にて公開している。

 

おわりに
 「EMは手強い!」これが実感だ。科学的には荒唐無稽で、オカルト的な主張でも、「環境をよくしたい」という善意の人たちを信者にしている。日本国民にEM生活をさせるという大野望のために政界にも支持基盤をもっている。そして、批判側には訴訟を含めて様々な攻撃性を見せる。
 国内だけではなく諸外国にも影響力があるEM。しかし、メディアもEMのニセ科学性を報じるようになってきた。国会論議ではEMによる除染、EMによる水質改善などの効果について国側は否定的な立場の答弁をしている。少しずつでもEMのニセ科学性が知られてきているのではないだろうか。

 

【参考文献】
左巻健男『暮らしのなかのニセ科学平凡社新書
 EMについて1章をあてている。
 なお、左巻健男『学校に入り込むニセ科学』(仮題平凡社新書が近刊予定

 以下は私が編集長の『RikaTan(理科の探検)』誌(発行所:SAMA企画 販売元:文理)でEMについて扱ったものである。
 2014年春号(特集:ニセ科学を斬る!)所載の

・呼吸発電「EMのニセ科学問題」
・松永勝彦「EM団子の水環境への投げ込みは環境を悪化させる」
 2015年春号(特集:ニセ科学を斬る!リターンズ)所載の

・片瀬久美子「EM商品のニセ科学性について」
 2016年4月号(特集:ニセ科学を斬る!2016)所載の

天羽優子「「EMを学校で使わないでください」署名をするわけ」
 2017年4月号(特集:ニセ科学を斬る!2017)所載の

・飯島明子「EMは水質を浄化できるか」
 2018年4月号(特集:ニセ科学を斬る!2018)所載の

・呼吸発電「EMの2つの顔 小中学校で教えられるEMについて」
 2019年4月号(特集:ニセ科学を斬る!ファイナル)所載の

・呼吸発電「政治問題としてのEM菌」
・大石雅寿「EM菌やナノ銀では元素転換できないわけ」
左巻健男「EM菌擁護者・DND出口俊一氏との裁判の報告」

消費者法ニュース№119』2019.4 pp20~23消費者法ニュース発行会議 2019/4/30発行

ヒノキヤグループに「問い合わせ」をした!(EM菌推進のDND出口俊一氏代理人からの通知書について)

EM菌推進のDND出口俊一氏代理人(弁護士 第三文明誌に登場していた)からの通知書(3月に来ていた)について拙ブログに入れた。ヒノキヤグループの件で謝罪しろ、100万円払えってあった。今後法的措置とも。
その通知書をふくめて拙ブログなどに入れた。

今でもEM菌擁護者・推進者のDND出口俊一氏が神田外語大にヒノキヤグループ取締役の名刺を出したのは謎だ - 左巻健男&理科の探検’s blog http://samakita.hatenablog.com/entry/2019/05/23/164625

DND(+EM研究機構顧問だった)出口俊一氏との裁判 の控訴審判決(左巻健男完全勝利確定) - 左巻健男&理科の探検’s blog http://samakita.hatenablog.com/entry/2019/05/23/145104

質問 
*貴社の取締役である出口俊一氏代理人からの「通知書」は貴社が関与していますか?
(通知書の内容は貴社に関することで、ぼくのここでの問い合わせがふくまれています)
*通知書には匿名者の問い合わせがふくまれています。ぼくとは全く無関係ですが通知書では関係があると断じていますが貴社はその根拠をおもちですか?
*ぼくとの控訴審判決で裁判所に判断されたように出口氏はEM菌比嘉照夫氏を信じて記事を書いている人です。重ねて貴社はEM菌の活用やEM菌夢の住宅を推進する考えは今後ともありませんか?
*通知書にあるようにここでの問い合わせがぼくの名前と共に出口氏に渡っています。名前は伏せてもよいと思うのですが、ここでの問い合わせは関係者に実名と一緒に伝えられるのでしょうか?

 

【追記】2019/05/24 18:32

 次の返事が来た。

…貴殿と弊社社外取締役 出口 俊一氏との事案に関し、弊社は一切関与しておりませんことをご連絡いたします。

つきましては、ご質問いただきました内容についても、回答いたしかねますので何卒ご了承ください。

 一切関与しなくてぼくのヒノキヤグループへの問い合わせ内容を引用して100万払え等の通知書が来る…。なかなかの会社なのかな。

 少なくてもEM菌の活用やEM菌夢の住宅についての質問には答えたほうがいいと思うが、答えられない理由があるのかな。

 

【さらに追記】2019/05/24 19:15

 ただヒノキヤグループはまったく関係ないと放置してきたわけではない。

 出口氏側の控訴理由書のなかに次の記述がある。

 なお,被控訴人は,控訴人がEM研究機構の顧問であって,ジャーナリストではないかのようにも主張する。しかし,顧問の立場を有することと,ジャーナリストの立場は両立するものであり,かかる批判は失当である。
 また,控訴人は,上場企業である株式会社桧家ホ一ルディングスの社外取締役も務めているが,控訴人があたかも反社会的勢力であるかのような被控訴人の表現行為により,同社のコンプライアンス上極めて不都合な事態となりかねないことから,控訴人は,同社経営陣に対して事情説明と弁明を余儀なくされた。
 さらに搾訴人は,金沢工業大学客員教授を務めていたが同職を辞せざるを得なくなった(原審原告本人調書27頁)。控訴人は,月10万円の報酬を得ていたのであるが,それを失ってしまったのである。

 経営陣に事情説明と弁明をしたということだ。これは控訴理由書で述べているので未だ地裁の裁判中である。きっと3月あたりかな。

 地裁判決は2016年8月に出たので、きっと出口氏側の説明をしたのだろうが、その説明は判決でダメにされたものだ。

 その後控訴審判決でも出口氏側の説明はさらに退けられた。

 つまりヒノキヤ経営陣が出口氏の説明を納得したとしたら、裁判所の判断とは大きな違いのある説明に納得してしまったと言うことだ。

 ヒノキヤは控訴審判決だけも一読してほしい。

 

【さらにさらに追記】2019/05/26 8:05

 ヒノキヤの プライバシーポリシー 個人情報保護方針 を見た。

 https://www.hinokiya-group.jp/ir/privacy_policy.html

・個人情報を取扱う部門ごとに情報管理責任者を置き、個人情報の適切な管理に努めるとともに、情報セキュリティに関する規程を設けて社員への周知徹底 を実施しています。

個人情報の利用目的と利用範囲

当社が取得した個人情報につきましては、利用目的を定め、原則として、予め特定された目的以外には利用いたしません。

・当社は、下記2の事業に関し、以下の各目的のために必要な範囲で個人情報を利用いたします。

…お客様からのご要望・ご意見、ご相談、苦情の受付、対応及びこれらの管理

 

 左巻健男の感想・疑問

 今回のような取締役への「お問い合わせ窓口」サイトへの投稿を伝えることは、「お客様からのご要望・ご意見、ご相談、苦情の受付、対応及びこれらの管理」の一環なのか?

 さらに取締役やその代理人(弁護士)がその投稿を活用することもその一環なのか?

 さらにさらに「匿名者」からのものなら、取締役の代理人(弁護士)が活用したり、ぼくのような第三者に知らせることもその一環なのか?

 一体、ヒノキヤの個人情報管理はどうなっているのか?

※判決で、出口氏に対して「やっていることはヤクザそのもの」という表現について、次のように述べられている。

 地裁判決は、“「やっていることはヤクザそのもの」、「もはやジャーナリストですらない」という表現は、一般読者の普通の注意と読み方を基準にすれば、原告が松永教授らに対して直接面会し、又は面会しようとしたことに対する否定的な評価をしたもの”として、名誉毀損にあたらないとした。
 控訴審判決ではさらに踏み込んでいる。
 “控訴人のこれらの供述から、控訴人が松永教授らに面会を求めたのは、ジャーナリストとして、取材対象である松永教授らと直接面会して、松永教授らの見解がどのようなものかを真摯に聴き取って記事にするためではなく、松永教授らの見解が誤っているとの前提の下、これを糺すためであったと言わざるを得ない。”“「ヤクザそのもの」という言葉は、辛辣なものではあるが、前後の文脈から、控訴人が暴力団関係者であると指摘しているのではなく、控訴人が松永教授らに面会を求めるなどしたことが、ジャーナリストとして強引な取材方法であることを表現したにとどまることは明らかであり、もっぱら原告の取材方法に対する批判にとどまるのであって、原告に対する人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものであることまでは認めることができない。”

 そういう取材方法をとるときにクレームを付けた相手側にヒノキヤ取締役の名刺を出すことはどんな言い訳をしようとも可笑しいと思う。

 ヒノキヤはそういうことを許容する会社なのか?

 さらに今回のように取締役が個人情報を自分の相手側への攻撃に使うことを許容する会社なのか? 広報からの返事は、個人が勝手にやったことだから会社に無関係と読めるが、会社が得た個人情報をとくに取締役という経営陣の一員がこういうことに活用するのを個人だから勝手にやっていいと許容するのは可笑しくないか?

今でもEM菌擁護者・推進者のDND出口俊一氏が神田外語大にヒノキヤグループ取締役の名刺を出したのは謎だ

2019/05/21
DND(+EM研究機構顧問だった)出口俊一氏との裁判 の控訴審判決(左巻健男完全勝利確定)
http://samakita.hatenablog.com/entry/2019/05/23/145104 の続編である。

 裁判所の判断で「松永教授らへ」とあるのは、神田外語大学へのEM菌の営業妨害だというクレーム活動もふくんでいる。

 裁判の際に飯島明子准教授が左巻健男側で出した陳述書がある。

 飯島さんは、海洋生態学を専門とする研究者で、神田外語大学の准教授を務めており、生物学・環境科学を担当している。彼女はその専門家の立場から、EM菌団子のような高濃度の有機物が含まれる微生物資材を、河川や湖沼に投入すれば汚濁源となり、生態系を破壊してしまうので、科学的な知見から、EM菌について批判的な意見を発信してきた。

 次は陳述書からの引用である。

3 このような私の活動が気に障ったようで、出口氏からは、嫌がらせとも思える行為がされるようになりました。
 まず、平成26年3月31日、私の勤務する神田外語大学広報部に、出口氏から電話がありました。その際出口氏は、「EM研究機構の人間である」と名乗ったそうです。そして、私の発言や、各種学会でのパネルの内容などが名誉毀損なのではないか、EM研究機構は被害をこうむっている、大学としてどう対応するのか返事が欲しい、と言ってきたといいます。これを受けて、大学側では一応学事部も含めて話し合いをしましたが、特に返事はしませんでした。すると、出口氏は、4月2日再び大学広報部に同じような電話をかけてきました。もちろん、これについても大学は特に返事をしていません。
 そもそも、大学は、所属する研究者の研究内容全てを把握し、その当否を判断する立場ではないですし、研究は各研究者の自主性に委ねられています。そのため、研究等に批判がある場合、まずは当該研究者へ直接批判を行うべきです。それにもかかわらず、わざわざ大学に対ししつこく抗議してきたということは、単に研究内容等について意見する意図のものではなく、大学を通じて私へEM批判の研究を止めるよう圧力をかけようとしたのだと確信しています。

4 大学が出口氏の問い合わせに対し返事をしないでいると、今度は、EM研究機構から、神田外語大学学長に宛てて、内容証明郵便が届きました。その内容は、再び私の行為について指摘すると共に、「過日、弊社の関係者が飯島准教授のご発言に関して貴大学にご相談のお電話を差し上げましたが、未だご返信を頂けないため、改めて書面にてお送りいたします。」と記載されていました。
 このことからも分かるとおり、出口氏は、ジャーナリストとして取材を行おうとしていたのではなく、EM研究機構の人間として、大学に連絡したりしていたのです。それなのに、いざ異議を述べられると「正当な取材行為である」など、虫が良すぎます。
 もちろん、大学としては、「本学では所属教員の個々の研究の自由を認めており、貴機構と飯島准教授の間で生じた案件に関しては大学として一切関与致しません」と真っ当な意見を返しています。
 出口氏は、その後も、業務多忙を理由に断られているにもかかわらず大学広報部を来訪したりしています。  以下略。 

 出口氏は来訪したときに、ジャーナリストやEM研究機構の顧問などの名刺と共に現ヒノキヤグループの社外取締役の名刺も出した。

 そのことに関して、ぼくは、強い疑問をもった。

 なぜならEM菌はあらゆることに万能性をもっていて、もちろん住宅についても「EM夢の住宅」を述べているからである。ヒノキヤグループはEM菌夢の住宅を推進している会社なのかと思った。問い合わせたらEM菌と関係がないという。

 ウィキペディア「ヒノキヤグループ」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%8E%E3%82%AD%E3%83%A4%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97 には、次の記述もある。

平成21年3月よりEM菌を擁護する出口俊一を取締役として迎え[2]、また女流棋士中村桃子がパート社員として勤務している。 

  裁判所に、出口氏は、「ジャーナリストとして,朝日新聞記者行動基準に則らず,比嘉教授の見解を信じる者として,比嘉教授の見解に沿った見解を一方的に伝えているものといえる。」「松永教授らの見解が誤っているとの前提の下,これを糺すためであったと言わざるを得ない。」「EMの効果を証明するために記事を書いているといわざるを得ない。」と判断されるような人で、そのEM菌は「EM菌による夢の住宅」づくりもうたっている人が、住宅会社ヒノキヤグループの取締役というのが謎なのである。

 ぼくとの裁判で、控訴理由書に、出口氏は次のように述べている。

 出口(控訴人)は,広報担当者及び事務局長との会話の途中で,自分が金沢工業大学客員教授や株式会社桧家ホールディングスの社外取締役の地位にあることから,このまま飯島氏のデマが放置されると自身の社会的な立場が危うくなる可能性があるとの趣旨で,最初に渡していたジャーナリストとしての名刺の裏の金沢工業大学客員教授の肩書の記載を指摘したうえ,さらに桧家ホールディングスの社外取締役の名刺も差し出したのである。 

 専門家が心配していることを、裁判所に比嘉教授の見解を信じる者に過ぎないと判断されてしまう人が「デマ」というのも可笑しな話だ。専門家からEM菌の問題性が追求されると自身の社会的立場が危うくなるのは出口氏がそんなものを信じているところで既に起こっていることではないのか。

 EM研究機構の顧問として大学にクレーム活動をするときになぜヒノキヤグループの取締役の名刺を出すのか?

 逆にヒノキヤグループはそういうクレーム活動に血道を上げるレベルだとみられるのではないだろうか? ヒノキヤグループもEM菌の仲間の会社だと思われるのではないだろうか? 裁判所からジャーナリストの行動基準からはずれたことをしていると判断されたようなことをしながら名刺を出す気持ちがぼくにはわからない。

 

 と書いてきたのは出口氏の代理人(弁護士事務所)から次の通知書を貰ったからである。3月は定年退職の諸々で忙しくよく見ていなかった。今やっと余裕ができた。

 おやおや、お金も要求か…。

平成31年3月4日

 当職らは,出口俊一氏(以下「通知人」といいます)の代理人として,以下のとおり通知いたします。

1 貴殿は,平成28年3月に,株式会社桧家ホールディングス(現・株式会社ヒノキヤグループ。以下「ヒノキヤグループ」といいます)本社(千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラスト タワー本館7階)に対して,「貴社の社外取締役に出口俊一氏がいるのですが,いくつかの機関に(中略)貴社の名刺などを出して(中略)クレーム活動をしています」(同 3月6日付),また「貴社の名刺がクレームのさいに使われています」(同6日付),さらに翌7日には,通知人のヒノキヤグループ取締役の名刺の画像を添付のうえ,「これはK大学に(中略)出口氏が大学に提出した名刺です。(中略)貴社の名刺などを出してクレームをつけました(中略)貴社の名刺も活用してさまざまなクレーム活動を行っています」(同7日付)と,あたかも通知人が取締役の名刺を使ってクレームに及んでいるかのような事実無根のメールを繰り返し送りつけました。
 それ以降も,貴殿は,現在に至るまで「(通知人が)EM菌批判側へ圧力をかけるのに,そこの取締役の名刺を出す気持ちがわからない」と,通知人がEM批判者に圧力をかけるために取締役の名刺を利用したかのような虚偽のツイート,ブログ掲載を繰り返しています。
 しかしながら,通知人がヒノキヤグループ取締役の名刺を差し出してクレーム活動をしたことは一度もなく,貴殿がヒノキヤグループ本社に宛てたメール内容は全くの虚偽であり,通知人の社会的信用を著しく害するものです。

2 通知人の取締役の名刺に関する実際の経過は以下のとおりです。
  通知人は,神田外語大学の事務局長に対し,飯島明子准教授(以下「飯島准教授」と いいます)のツイート(通知人から「恫喝」の電話が職場にあったという内容)について,大学の広報に電話で飯島准教授の在籍の確認等の問い合わせをしたことが,なぜこのような「職場に恫喝の電話」というツイートが投稿されたのか,その事実関係を確認するため,平成26年12月16日,同大学の広報に事前に電話し,アポを取り訪問しました。そうしたところ,広報担当者と事務局長は,通知人から電話があったことは伝えたが,その電話は「恫喝」という飯島准教授がツイートしている内容ではなく,そのような内容を飯島准教授に伝えた事実もない,と「職場に恫喝の電話」があったことを明確に否定しました。25分あまりの面談の最後に,通知人は,上場会社(東証一部)の社外取締役であるということを初めて明かし,名刺をお見せしました。すると,事務局長自ら(通知人の)名刺をもらってもよろしいですかとの求めがあり,通知人は,これに応じて「ご参考までに」と念を押したうえで名刺を渡したのです。
 しかし,その後,本来個人情報であるはずの名刺が,通知人の了承なく飯島准教授にわたり,さらには貴殿に流れ,貴殿のヒノキヤグループ本社に対する業務妨害にこの名刺が悪用されたのです(このことは個人情報保護法の観点からも重要な問題であると指摘せざるをえません)。
 そのうえ,貴殿のメ一ル送信と相次いで,他の匿名者からも,「出口氏の行為は,単なる苦情ではなく,脅迫にも似た圧力を掛ける行為であり,御社の名刺を出して当該行為を行っていることは御社の名誉を大きく損なう行為であると考えられます(中略)そのような人物を3月末の株主総会において再任する予定とのことですが,これお(ママ)再考し,他のクリーンな人物を社外取締役とするお考えはございませんでしょうか」とのメールが送られ,貴殿が他の者と共謀して通知人への業務妨害行為に及んだことも明らかです。
 したがって,通知人は,貴殿に対して,損害賠償として金100万円及びこれに対する遅延損害金を支払うよう求めるとともに,本書到達後1週間以内にヒノキヤグループ本社に宛てたメールの内容及びブログ等が誤りであったことを謝罪するよう求めます。
 上記期間内に,何らの誠意ある対応がない場合は,法的措置も検討せざるを得ませんので,その旨ご承知おきください。
 なお,本件につきましては,当職らが一切の委任を受けておりますので,今後の連絡は当職ら宛にされますようお願いいたします。
                             以上

 遅くなったが、ぼくなりの誠意ある回答をしておこう。

*まずヒノキヤグループの名刺を出したのが、控訴理由書では「話の途中」、この通知書では「話の終わり」になっている。まあこれはどうでもいいか。

*大学はEM研究機構の人が何度もクレームにという認識のようだ。その人が5枚の名刺を出した。そういう事実が結局はぼくにも回ってきて裁判でも問題にされた。判決で松永教授らとあるのにはこれもふくまれている。

*この通知書を見てもなぜ5枚もの名刺を出したのかぼくには謎のままだ。大学でも客員教授だし大きな会社の取締役だということを自慢したかったのかな? わからん。

*ぼくは出口氏のようなEM菌夢の住宅推進をふくむEM菌推進者、しかも非常に攻撃性をもってEM菌のために活動する人を住宅会社が取締役にする意味がわからないのでぼくの意見をヒノキヤグループに述べた。

*ぼくとは違う人の意見は、ぼくとはまったく無関係だ。その匿名者も大きな問題を感じたのだろう。「ぼくが他の者と共謀」は事実無根である。どこがどう明らかなのか? 勝手に妄想したのは代理人の人らか?

*大学へのクレーム活動のなかで出されたというのは事実だという認識。(なぜ出したかはぼくには謎だが。)

 以上。

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…追記…2019年5月24日 9時に次の内容でヒノキヤWEBサイトで「お問い合わせ」をした。

EM菌推進のDND出口俊一氏代理人(弁護士 第三文明誌に登場していた)からの通知書(3月に来ていた)について拙ブログに入れた。ヒノキヤグループの件で謝罪しろ、100万円払えってあった。今後法的措置とも。
その通知書をふくめて拙ブログなどに入れた。

今でもEM菌擁護者・推進者のDND出口俊一氏が神田外語大にヒノキヤグループ取締役の名刺を出したのは謎だ - 左巻健男&理科の探検’s blog http://samakita.hatenablog.com/entry/2019/05/23/164625

DND(+EM研究機構顧問だった)出口俊一氏との裁判 の控訴審判決(左巻健男完全勝利確定) - 左巻健男&理科の探検’s blog http://samakita.hatenablog.com/entry/2019/05/23/145104

質問 
*貴社の取締役である出口俊一氏代理人からの「通知書」は貴社が関与していますか?
(通知書の内容は貴社に関することで、ぼくのここでの問い合わせがふくまれています)
*通知書には匿名者の問い合わせがふくまれています。ぼくとは全く無関係ですが通知書では関係があると断じていますが貴社はその根拠をおもちですか?
*ぼくとの控訴審判決で裁判所に判断されたように出口氏はEM菌比嘉照夫氏を信じて記事を書いている人です。重ねて貴社はEM菌の活用やEM菌夢の住宅を推進する考えは今後ともありませんか?
*通知書にあるようにここでの問い合わせがぼくの名前と共に出口氏に渡っています。名前は伏せてもよいと思うのですが、ここでの問い合わせは関係者に実名と一緒に伝えられるのでしょうか?

DND(+EM研究機構顧問だった)出口俊一氏との裁判 の控訴審判決(左巻健男完全勝利確定)

 DND出口俊一氏との裁判は、東京高裁での控訴審判決で左巻健男が完全勝利し、その後出口氏は最高裁に上告したが棄却された。よって、左巻健男の完全勝利が確定した。

 

 その判決で、出口俊一氏はジャーナリストの行動基準を守らないで、

 EM菌比嘉教授の見解を信じる者として,比嘉教授の見解に沿った見解を一方的に伝えているものといえる

 とされた。

 また、

 出口俊一氏は,EMの効果を証明するために記事を書いているといわざるを得ない。

 とされた。

 さらに、

 松永教授らの見解がどのようなものかを真摯に聴き取って記事にするためではなく,松永教授らの見解が誤っているとの前提の下,これを糺すためであったと言わざるを得ない。 

 とされた。

 つまり、出口俊一氏は、ジャーナリストの立場から記事を書いているのではなく、EM菌擁護とEM菌推進のために記事を書いているということだ。

 

控訴審判決から裁判所の判断を一部紹介】

読みやすくするために控訴人→出口俊一氏にした。

また行替え、強調点の太字化や赤字化などもした。

 

*前記のとおり,EMの成分の詳細が不明であり,放射能の除去に資する効用については,放射能の専門家には認められておらず,比嘉教授がうたうその余のEMの効果についても,科学的な根拠及び機序の存在について第三者による検証を十分に経ているとはいえない状況の下,出口俊一氏は,控訴人サイト上に編集長としてEMを擁護する記事をたびたび掲載している。すなわち,朝日新聞記者行動基準(甲44(1枚目))が,「独立と公正」の項目で記者の基本姿勢として,「特定の個人や勢力のために取材・報道をしてはならず,独立性や中立性に疑問を持たれるような行動をとらない。」と定めているところ,出口俊一氏は,ジャーナリストとして,上記行動基準に則らず,比嘉教授の見解を信じる者として,比嘉教授の見解に沿った見解を一方的に伝えているものといえる。

*出口俊一氏人は,原審での本人尋問において,松永論文について,EM潰しの悪しき攻撃が始まったとの印象を持ったと供述し(調書7頁),飯島准教授が,学会でEMを悪徳商法などと批判して,学会でEMの効果はないと発表し,EMを批判するグループは徹底的にいろんな場所でEMの効果はない,問題が大きいと繰り返し言っていると供述し(調書11頁),片瀬が,研究会でEMの効果がないという嘘を発表したと供述しており(調書13頁),しかも,前記1の認定事実(5)ないし(7)のとおり,出口俊一氏は,EMの効用について否定的な見解を持つ松永教授らに対し,面会を求めたり,勤務先に電話をかけるなどしているのであるから,出口俊一氏は,EMの効果を証明するために記事を書いているといわざるを得ない。

*出口俊一氏は,出口俊一氏のDNDサイト上に編集長としてEMを擁護する記事をたびたび掲載しており,そのような立場にある者は,表現の自由との関係で,ある程度の批判や否定的な意見を受けることは,当然に覚悟すべき立場にあるといえる。

出口俊一氏のこれらの供述から,出口俊一氏が松永教授らに対して面会を求めたのは,ジャーナリストとして,取材対象者である松永教授らと直接面会して,松永教授らの見解がどのようなものかを真摯に聴き取って記事にするためではなく,松永教授らの見解が誤っているとの前提の下,これを糺すためであったと言わざるを得ない。したがって,出口俊一氏の上記主張も当を得たものとはいえない。

 

【判決全文】

平成29年2月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 ○○○○
平成28年(ネ)第4573号 損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所 平成27年(ワ)第8495号)
(口頭弁論終結日 平成28年12月20日

      控   訴   人   出 口 俊 一
      被   控   訴  人  左 巻 健 男

        主  文
     1 本件控訴を棄却する。
     2 控訴費用は控訴人の負担とする。

          事 実 及 び 理 由

 

第1 控訴の趣旨

 

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,1100万円及びこれに対する平成26年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人は,控訴人に対し,原判決別紙1の2,同1の3,同2の2及び同2の3記載の被控訴人が管理するツイッタ一に掲載している各記事を削除せよ。
4 被控訴人は,控訴人に対し,原判決別紙3謝罪広告目録記載の内容の謝罪広告を,原判決別紙4の掲載要領により,披控訴人が管理するウェブサイト(ホームページのアドレスが「http://d.hatena.ne.jp/samakita/」であるもの。)上に掲載せよ。
5 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。

 

第2 事案の概要等

 

1 事案の概要
 本件は,控訴人が,被控訴人がウェブサイト又はツイッター上に掲載した記事が控訴人の名誉感情を侵害し,又は名誉を毀損するものであるとして,被控訴人に対し,①不法行為に基づく損害賠償として1100万円(慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円の合計額)及びこれに対する最後に記事が掲載された日(不法行為の最終日)である平成26年12月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,②人格権に基づき,原判決別紙1の2,同1の3,同2の2及び同2の3記載のツイッタ一に掲載されている各記事の削除を,③民法723条に基づく名誉を回復するのに適当な処分として謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。
 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。これに対し,控訴人が本件控訴をした。

2 前提事実は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決3頁2行目の「原告プログ」を「控訴人サイト」と改め,以下,原判決中「原告プログ」を「控訴人サイト」と読み替える。
(2)原判決3貢2行目の「運営している。」の次に,以下のとおり加える。
 「控訴人サイトでは,学者及び識者ら30余名が連載記事を掲載している。(甲26(2頁),弁論の全趣旨)」
(3)原判決3貢13行目の「被告ブログ」を「被控訴人ブログ」と改め,以下,原判決中「被告ブログ」を「被控訴人プログ」と読み替える。
(4)原判決3頁21行目の「被告ツイッター」を「被控訴ツイッター」と改め,以下,原判決中「被告ツイッター」を「被控訴ツイッター」と読み替える。

3 争点は,原判決の「事実及び理由」第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。
4 争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の3に記載のと通りであるから,これを引用する。
(1)原判決5頁1行目末尾の次に,以下のとおり加える。
 「控訴人は,ジャーナリストとして事実についての情報を発信し続けている者であり,EMはその取材対象の一つである。控訴人は,EMの研究者ではなく,EMについて独自の科学的見解を持っているわけではない。
 控訴人は,ジャーナリストとして,EMが役立てられている災害現場等に足を運んで取材を行い,国内外でEMの効用が実証されている事実並びに多数の学術機関及び研究機関において,EMの研究が進められ,数多くの国でEMが現実に使用されているという事実に接してきた。控訴人は,このような取材によって得られた事実を自身のブログにメールマガジン(以下「メルマガ」という。)として掲載し続けてきたが,EMの効果を科学的に証明するためではない。ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智教授(以下「大村教授」という。)は,著書において,EMについて,「一農学者によって,化学肥料を使う以前の農業の中にあった人類の智恵が歴史から抜け出し,再び役立とうとしているのである。」と述べており,マサチューセッツ工科大学の正木一郎教授(以下「正木教授」という。)は,国際会議の開会式で,EMの力を示す様々な実例について述べた上で,世界が抱える地球規模の環境問題は,比嘉博士の理論によれば,微生物の効果的な応用によって解決することができると述べている。被控訴人による「真正のおばか」,「嘲笑するしかない超低レベル」等の表現は,批判的意見の範疇を超え,加害の意思をもって,EMに関する肯定的な事実を報道する控訴人の人格そのものを否定するものである。上記表現の記載された平成25年12月記事は,被控訴人ナログに掲載されることにより,世界中の誰もがいつでも閲覧することができる状態となり,被控訴人ツイッタ一に掲載されることにより,多数のフォロワーが閲覧し,リツイートされることにより,際限なく拡散されたものであり,極めて悪質である。」
(2)原判決6頁6行目から7行目にかけての「原告主張摘示事実」を「控訴人主張摘示事実」と改め,以下,原判決中「原告主張摘示事実」を「控訴人主張摘示事実」と読み替える。
(3)原判決6頁7行目から8行目にかけての「被告は,このような事実を摘示したことにより,」を,以下のとおり改める。
 「平成26年10月記事の掲載された被控訴人プログには,「彼がEM批判者の自宅に押しかけたり,所属大学に圧力をかけたりしたのを知り,そこまでやるのは何かあるよね,と,比嘉照夫氏の本やウェブの記事を一生懸命読んでみた。」,「何せ『ヤクザそのもの』という行為をやるわけだから」及び「出口俊一氏は,大学客員教授金沢工業大学客員教授の肩書きを使って,EM批判者らに圧力をかけたりしたことを大学は知っているのだろうか」と記載されており,披控訴人は,控訴人主張摘示事実により,」
(4)原判決8頁2行目の「原告は,」から3行目ないし4行目の「内容ではなかった。また」までを,以下のとおり改める。
 「具体的には,控訴人は,松永教授に確認取材をしたいと考え,函館に到着した後,松永教授に対し,電話で,一緒に食事でもしながらお話できないか。」と外に誘ったが,松永教授は,体調が思わしくなく外出が無理とのことであった。そこで,控訴人は,松永教授の自宅を訪問することにしたが,松永教授は,自宅を訪ねた控訴人を快く迎えてくれた。控訴人は10分程度で引き上げるつもりであったが,松永教授から引き留められて面談時間が25分余りとなった。また,控訴人が,DNDのメルマガで,朝日新聞青森版のEM批判記事を問題にしたところ,片瀬は,控訴人に対し,「事実が違うのは出口氏の方だ」との記事をプログに記載した。
 控訴人は,上記ブログには事実と遣う箇所が散見されたため,片瀬に対し,メールで面会を求めたに過ぎない。さらに,飯島准教授は,学会で行った展示において,EMを悪質商法とし,EMをオウム真理教になぞらえる等の誹謗中傷行為を行っていた。このため,控訴人は,平成26年3月31日,飯島准教授の在籍確認と上記展示についての事実確認のため,神田外語大学の広報課に電話をしたが,わずか2,3分の通話であり,激しく抗議するような内容ではなかった。ところが,その直後から飯島准教授は,ツイッター上で,控訴人から恫喝を受けたとの書込みを繰り返すようになった。そこで,控訴人は,同年12月16日,事実確認のため,神田外語大学の広報課を訪ねたところ,広報担当者は,控訴人が電話で恫喝したなどと飯島准教授に伝えた事実はないと明確に述べた。このようた,松永教授らに対する取材は,通常の取材方法及び態様の範疇に収まるものであり,ヤクザと称されるような不適切なものではなかった。被控訴人は控訴人の取材方法を批判するに際して,「ヤクザそのもの」などという言葉を用いる必要性がないにもかかわらず,あえて「ヤクザそのもの」という言葉を用いて,控訴人のジャーナリストとしての信用を貶めたものである。なお,取材対象者と直接面会することはジャーナリストとして,基本中の基本である。例えば,朝日新聞記者行動基準(甲44)は,「取材方法」の項目において,「出来事の現場を踏み,当事者に直接会って取材することを基本とする。特に,記事で批判の討象とする可能性がある当事者に対しては,極力,直接会って取材する。」と定めている。なお,」
(5)原判決8貢9行目の「さらに,」を,以下のとおり改める。
 「そして,被控訴人は,平成25年11月30日から同年12月1日にかけて日本科学者会議東京支部主催で開催された第17回東京科学シンポジウムにおいて,「ニセ科学問題」という分科会を設置,企画した責任者であった。上記分科会のあり方に疑問を抱いた控訴人が,日本科学者会議事務局に対し,そのような運営方法が学会の運営として望ましいものかどうかを確認して欲しい旨のメールを送ったことを契機として,被控訴人は,控訴人に対し「攻撃的な姿勢を見せるようになった。また,被控訴人が編集長を務める雑誌「理科の探検」に掲載されていた松永教授の論文が,国立研究開発法人科学技術振興機構が運営するサイトにも掲載されていたが,上記機構は,松永教授の論文を削除した。被控訴人は,控訴人の言動により松永教授の論文が削除されたものと考えていた。このように,」
(6)原判決8頁17行目から18行目にかけての「大きな精神的苦痛を受けた。これを慰藉するに足りる金額は1000万円を下らない。」を,以下のとおり改める。
 「著しい精神的打撃を受け,1年半以上.パソコンに向かって原稿を書くことが困難となった。上場企業である株式会社桧家ホールディングスの社外取締役でもある控訴人は,同社の経営陣に対する事情説明及び弁明を余儀なくされ,金沢工業大学准教授であった控訴人は,その職を辞任せざるを得なくなった。被控訴人による控訴人へのあまりにも酷い誹語中傷を目の当たりにした控訴人の妻は体調を崩すに至った。控訴人が受けたこのような精神的苦痛を慰藉するに足りる金額は1000万円を下らない。」

 

3 当裁判所の判断

 

1 当裁判所は,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決9頁9行目の「客員教授を努めたことがあった」を「客員教授を勤めたことがあった」と改める。
(2)原判決15頁9行目から10行目にかけての「ある」とはいえない。」の次に,以下のとおり加える。
 「大村教授の著書(甲38(6枚目))には,EMについて触れた部分があるものの,微生物を利用するEM技術の発想が,農業において有意義であることを述べたにとどまるものである。確かに,証拠(甲39の2・3)によれば,正木教授は,EMの効果について,比嘉教授の見解に賛同を示していることが認められるものの,EMの効果として挙げている実例について,自ら科学的に検証しているわけではない。」
(3)原判決15頁22行目末尾の次に,以下のとおり加える。
 「これに対し,控訴人は,EMの研究者ではなく,EMについて独自の科学的見解を持っているわけではなく,ジャーナリストとして事実についての情報を発信し続けている者で即,EMはその取材対象の一つである旨主張する。しかし,前記のとおり,EMの成分の詳細が不明であり,放射能の除去に資する効用については,放射能の専門家には認められておらず,比嘉教授がうたうその余のEMの効果についても,科学的な根拠及び機序の存在について第三者による検証を十分に経ているとはいえない状況の下,控訴人は,控訴人サイト上に編集長としてEMを擁護する記事をたびたび掲載している。すなわち,朝日新聞記者行動基準(甲44(1枚目))が,「独立と公正」の項目で記者の基本姿勢として,「特定の個人や勢力のために取材・報道をしてはならず,独立性や中立性に疑問を持たれるような行動をとらない。」と定めているところ,控訴人は,ジャーナリストとして,上記行動基準に則らず,比嘉教授の見解を信じる者として,比嘉教授の見解に沿った見解を一方的に伝えているものといえる。
 また,控訴人は,ジャーナリストとして,EMが役立てられている災害現場等に足を運んで取材を行い,国内外でEM甲効用が実証されている事実並びに多数の学術機関及び研究機関において,EMの研究が進められ,数多くの国でEMが現実に使用されているという事実に接してきており,このような取材によって得られた事実を控訴人のブログにメルマガとして掲載し続けてきたが,EMの効果を科学的に証明するためではないとも主張する。しかし,控訴人は,原審での本人尋問において,松永論文について,EM潰しの悪しき攻撃が始まったとの印象を持ったと供述し(調書7頁),飯島准教授が,学会でEMを悪徳商法などと批判して,学会でEMの効果はないと発表し,EMを批判するグループは徹底的にいろんな場所でEMの効果はない,問題が大きいと繰り返し言っていると供述し(調書11頁),片瀬が,研究会でEMの効果がないという嘘を発表したと供述しており(調書13頁),しかも,前記1の認定事実(5)ないし(7)のとおり,控訴人は,EMの効用について否定的な見解を持つ松永教授らに対し,面会を求めたり,勤務先に電話をかけるなどしているのであるから,控訴人は,EMの効果を証明するために記事を書いているといわざるを得ない。」
(4)原判決16頁13行目末尾の次に,以下のとおり加える。
 「さらに,控訴人は,控訴人サイト上に編集長としてEMを擁護する記事をたびたび掲載しており,そのような立場にある者は,表現の自由との関係で,ある程度の批判や否定的な意見を受けることは,当然に覚悟すべき立場にあるといえる。」
(5)原判決19頁10行目の「認められる。」の次に,以下のとおり加える。
 「控訴人は,松永教授の自宅を訪問した際,快く取材に応じてもらったと主張し,上記主張に沿う証拠として,そのときの音声データ(甲40の1)を提出し,飯島准教授の勤務する神田外語大学に電話をしたとき,恫喝した事実はないと主張して,上記主張に沿う証拠として,そのときの音声データ(甲43の1)を提出する。しかし,科学的事象について,自己の見解と異なる見解を持つ者に対し,直接面会するという取材方法が問題となる中であって,控訴人の取材のときの態度や物腰が問題となるのではないのであるから,控訴人の上記主張は当を得たものとはいえない。また,控訴人は,取材対象者と直接面会することはジャーナリストとして,基本中の基本である旨主張し,朝日新聞記者行動基準(甲44(1枚目))を証拠として提出する。確かに,社会的事実については,情報を持っている者と面会し,真偽を確認することは意義のあることといえる。しかし,科学的見解については,その見解を有する者と直接面会しても,その見解を科学的に検証したことにはならないのであって,証拠(甲40の1・2)によれば,控訴人は,松永教授と面会したとき,科学者としての知見に基づきEMの効用について否定的な見解を述べる松永教授に対し,明確な科学的根拠を示さずに反駁していることが認められる。さらに,控訴人は,原審での本人尋問において,松永教授について,間違っていると思っても,確認作業は欠かせない,相手がはっきり事実と違うことを言っていても,これはどうなんでしょうかと訪問して聞くのがジャーナリストの取材姿勢である旨供述し(調書8頁),飯島准教授について,EMを批判するグループは,徹底的にいろんな場所でEMの効果がないと繰り返して言っているので,きちっと事実関係を確認する必要があると思って広報に連絡した旨供述し(調書11頁),片瀬について,控訴人の批判記事を書いたので,一方的に人を批判するときは本人に確認を取る必要があることを話そうと思って面談を申し込んだ旨供述する〔調書13頁)。控訴人のこれらの供述から,控訴人が松永教授らに対して面会を求めたのは,ジャーナリストとして,取材対象者である松永教授らと直接面会して,松永教授らの見解がどのようなものかを真摯に聴き取って記事にするためではなく,松永教授らの見解が誤っているとの前提の下,これを糺すためであったと言わざるを得ない。したがって,控訴人の上記主張も当を得たものとはいえない。」
(6)原判決20頁18行目から19行目にかけての「その表現ぶりが辛辣なものではあるが,」を,以下のとおり改める。
 「「ヤクザそのもの」という言葉は,辛辣なものではあるが,前後の文脈から,控訴人が暴力団関係者であると指摘しているのではなく,控訴人が松永教授らに面会を求めるなどしたことが,ジャーナリストとして強引な取材方法であることを表現したにとどまることは明らかであり,」

 

2 結論

 

 以上によれば,控訴人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれらを棄却すべきであるところ,上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとする。
 よって,主文のとおり判決する。

   東京高等裁判所第10民事部

裁判長裁判官   大   段   亨
裁判官   小   林   元   二
裁判官   松   本   真

OCRで文字認識したので一部誤認識が混ざっている可能性がある。 

5/26(日)日大理工駿河台校舎7号館4階741E室「ニセ科学と科学教育を考える会」第5回講演会のお知らせ

ニセ科学と科学教育を考える会」第5回講演会のお知らせ

 

ニセ科学と科学教育を考える会」は,いわゆる超常現象・ニセ科学・非合理な事象をテーマとして、それらを科学的・合理的・批判的に考える立場から,科学教育という切り口で情報交換や活動を行う会です。高校および大学の教員を中心に,テーマの問題に関心を持っている学生や一般市民が参加し,メーリングリストによる情報交換と講演会を行っています。
 このたび,第5回講演会を,下記のように開きます。どなたでもご参加できます。多くの方のお越しをお待ちします。

■主催:ニセ科学と科学教育を考える会
(MoPSE: Meeting of Pseudoscience & Science Education)
https://www.facebook.com/mopse2014/

■日時:2019年5月26日(日) 14:00~
■場所:日本大学理工学部駿河台校舎7号館4階741E室
アクセス:http://www.cst.nihon-u.ac.jp/information/surugadai.html
JR「御茶ノ水」駅および東京メトロ「新御茶ノ水」駅より徒歩3分
■参加費:500円

■講演プログラム
①14:00-15:00
「『血の奇跡』再現実験~科学と非科学に夾まれた『経典的理論』たち」
夏目雄平(千葉大学国際教育センター)
②15:15-17:00
「TOSSと食育~学校に入り込むニセ科学
左巻健男東京大学講師・元法政大学教授)


★各講演時間には,質疑応答・意見交換の時間を含みます。
★講演終了後は,有志による懇親会も近場で行う予定です。

【左巻健男担当のニセ科学EM菌入門記事】消費者法ニュース 119号(2019年4月発行)←現在は非公開

※現在は見られません。一時、公開されていたのですが。

 

・学校に、環境活動に、福島復興に、政治に、入り込んでいるEM(EM菌)
http://www.clnn.net/image/cln119-05.pdf

 

消費者法ニュース
■ 119号(2019年4月発行)
特集「ニセ科学―科学を装った消費者被害―」の試し読みができます。
http://www.clnn.net/

 

ニセ科学(概論)…青木歳男
http://www.clnn.net/image/cln119-01.pdf

ニセ科学とはなんだろうか…長島雅裕
http://www.clnn.net/image/cln119-02.pdf

・ニセ医学…勝俣範之
http://www.clnn.net/image/cln119-03.pdf

・フランスのカルト的代替医療の規制について…島岡まな
http://www.clnn.net/image/cln119-04.pdf

・学校に、環境活動に、福島復興に、政治に、入り込んでいるEM(EM菌)…左巻健男
http://www.clnn.net/image/cln119-05.pdf

・マンションの管理と磁気活水器天羽優子
http://www.clnn.net/image/cln119-06.pdf

フードファディズムと、トクホ等の問題点…高橋久仁子
http://www.clnn.net/image/cln119-07.pdf

・泰道とアースハート…西岡里恵
http://www.clnn.net/image/cln119-08.pdf

・なぜ、疑似科学は広がるのか―メディアの責任と、食い止める市民の力―…松永和紀
http://www.clnn.net/image/cln119-09.pdf

ニセ科学問題の公共政策デザイン…福賴尚志
http://www.clnn.net/image/cln119-10.pdf

・適格消費者団体等の取組の必要―解決のための「化学反応」―…平林有里子
(118号関連記事)
http://www.clnn.net/image/cln119-11.pdf

・健康関連食情報とフードファディズム、そして消費者被害…高橋久仁子
http://www.clnn.net/image/cln118-1.pdf

ニセ科学との向きあいかた―社会問題としてのニセ科学―…長島雅裕
http://www.clnn.net/image/cln118-2.pdf

政界を蝕むニセ科学(2019/4/20土@大阪) 市民社会フォーラムの配付資料

次で配布した資料を紹介しておく。

 

政界を蝕むニセ科学

『RikaTan(理科の探検)』編集長・左巻健男さん講演「政界を蝕むニセ科学~EM菌、デトックス、親学発達障害、ナノ銀…~」(2019/4/20土@大阪) 市民社会フォーラム

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政界を蝕むニセ科学(+カルト・オカルト)
~EM菌、デトックス、親学発達障害、ナノ銀…~

サマキタケオ
左巻 健男 東大講師・元法政大学教授・年金・印税生活者
Samakita★@★nifty.com(★を削除し詰める) FB:左巻 健男 ツイッター:@samakikaku

 

ニセ科学「科学っぽい装いをしている」あるいは「科学のように見える」にもかかわらず、とても科学とは呼べないもの。

・オカルト…「秘密、隠されたもの」という意味のラテン語のoccultに由来する語で、「神秘的なこと。超自然的なさま」(広辞苑)を意味する。なお、ニュートンの「万有引力」もライバルのライプニッツらから「オカルト的なもの」と強い批判を浴びた。主流派から見て異端をそう呼んだ。

・カルト…「狂信的な崇拝」(広辞苑)を意味し、過激で異端的な新興宗教集団を指すことが多かったが、現代では広く個人や社会に対して破壊的な行為をする集団を指す用語になっている。

統一教会1954年に韓国・ソウルで結成され58年に日本へ進出した統一教会世界基督教統一神霊協会、2015年に世界平和統一家庭連合に改称)。関連会社を隠れ蓑にして信者に霊感商法を行わせてきた教団は、教祖・文鮮明の送金命令によって75年からの10年間で約二千億円を霊感商法の稼ぎから韓国へ送金。

自民党安倍政権と統一教会直接の関係が最初に浮かび上がったのは2006年のことだ。
 同年5月、統一教会政治団体・天宙平和連合(UPF)が福岡で開催した合同結婚式併催イベント『祖国郷土還元日本大会』に、当時官房長官だった安倍晋三と元法務大臣衆議院憲法審査会会長の保岡興治(2017年引退)が祝電を贈ったことが発覚した。
「わたしは安倍晋三氏と統一教会問題で会話を交わしたことがある。安倍氏は言った。『北朝鮮統一教会の関係はどうなっていますか』わたしは北朝鮮金正日体制と統一教会とが深い関係にあることを伝えた。安倍氏は『そうですよね』とうなずいた。『実は』と彼は統一教会がさかんに接触し、面会を求めてくると語った。『わたしは会わないですよ』と安倍氏は言った。北朝鮮に強硬な立場を取り、しかも有力な総裁候補である安倍氏が、自らの判断であえてこの時期に統一教会系の集会に祝電を打つことはないだろう」(出典:有田芳生の「情報の裏を読む」)
 2012年12月、政権を奪取した安倍晋三は悲願である憲法改正を実現するために長期安定政権を目論んでいた。そのためには、組織票にとどまらず無尽蔵の人員を派遣してくれる統一教会を利用しない手はなかったのだろう。目先の国政選挙や改憲運動を巡る策動のために、安倍は最も関係を持ってはいけない相手からのアプローチを受け入れる。教団サイドと距離を置いていた筈の安倍晋三は、自身の政治的野心と引き換えに悪魔の取引を結んでしまったのだ。(鈴木エイト氏による)

・EM菌…有用微生物群 Effective Microorganisms の英語名の頭文字であり、製造・販売している(株)EM研究機構、(株)EM生活などの商標登録の商品群。知られるようになったのは、比嘉照夫『地球を救う大革命』サンマーク出版1993がベストセラーになったのがきっかけである。国立琉球大学農学部教授が書き、高名な経営コンサルタント船井幸雄氏が応援したことで話題になった。もともと世界救世教という新興宗教が関係した微生物資材(農業用)だが、「神からの贈りもの」から「神様」になり、万能性を持つとされる。

・EM菌議運…2013年12月に「有用微生物利活用推進議連」(EM議連)設立。会長は野田毅自民党税制調査会会長・熊本)、幹事長は平井卓也(香川)、事務局責任担当はNPO法人地球環境共生ネットワーク(U-net)の理事でもある高橋比奈子(岩手、安倍内閣環境大臣政務官)である。設立時の会員数は50名余り。「EMによる国づくりを国政レベルで推進できる議員連盟になること」を目指している。

デトックス「解毒」を意味する。健康系業界では、体内にたまった有毒な物質を排出すること。デトックスと称して、健康食品・サプリメントや健康機器が販売されている。なお、デトックス言説における「毒素」とは何なのか。あるいはそれが、肝臓、腎臓、皮膚など人体において老廃物を排出する器官の働きとは“何が異なっているのか”というきちんとした理論はない状態。
ニセ科学デトックス検査を実施する「食の安全を考える議員連盟」の設立に動く野党系→共産党・紙智子参議院議員Twitterではデトックス検査として毛髪を6グラム調べるツイート。川田龍平(立憲)、大河原雅子(立憲)、阿部知子(立憲)、福島みずほ(社民)、小宮山泰子(国民民主)、紙智子(共産)各議員、この他にデトックス・プロジェクト・ジャパン準備会の山田正彦(元農水大臣)ら。

・親学…安倍晋三氏や下村博文氏(第一次安倍内閣官房副長官、第二次・第三次安倍内閣文部科学大臣)のブレーンである明星大学教授の高橋史朗氏の提唱。2007年4月25日、日本政府(第一次安倍晋三内閣)主催の教育再生会議は「『親学』に関する緊急提言」なるものを提示。

・親学推進議員連盟2012年、81人の国会議員により親学推進議員連盟(家庭教育支援議員連盟)が結成され、その会長に安倍氏、事務局長に下村氏、顧問として民主党(当時)から鳩山由紀夫氏が就任した。その設立総会には高橋氏やTOSS(教育技術の法則化運動:会員数一万人以上を誇る教員組織)代表の向山洋一氏も参加。2012年5月、大阪維新の会市議団が、市議会に「家庭教育支援条例」案を提出した。この条例案には、「伝統的子育てで発達障害を予防できる」とあり、批判を浴びて白紙撤回。

・ナノ銀…古くから銀には除菌・抗菌効果があることが知られる。ナノ銀とは、10ナノメートル(1 ナノメートルは10億分の1メートル)程度からそれ以下の粒子径にした銀のこと。
板橋区ホタル生態環境館の阿部宣男氏→〈自然界の元素がきれいなまん丸の球体だとしたら、ヨウ素131やセシウム134、137はとんがった金平糖のようなもの。このトゲトゲが生物の細胞やDNAを壊すのではないかと、私は思っています。(中略)ナノ銀は金平糖をきれいな球体に変える働きをする〉。

平野貞夫氏…野党共闘のキーマンの1人(小沢一郎側近)。日本再生のためにはナノ銀だと信じ込んでいる人。「放射能浄化Abe-Effect協議会 」なる団体まで設立。共産党の大幹部に「ナノ銀除染の批判者をなんとかしろ」と依頼したという情報(篠原氏)がある。

手元の古い本を譲渡します(主に理科教育関係)

研究室から本を移動させるので、もし次の本で希望がありましたら、メールをください。メール→ rika88 @ rika.org @左右を詰める

 

・『理科教育史資料集 5 理科教材史Ⅱ(物理・化学)』とうほう (6巻で10万5千円のうちの1巻 6で割ると1万7500円)→5000円
・『理科の授業実践講座1 ものをつくる』新生出版→2000円
・『理科の授業実践講座2 自然観察』新生出版→2000円
・『理科の授業実践講座4 ひと』新生出版→2000円
・『理科の授業実践講座6 植物のくらし』新生出版→2000円
・『理科の授業実践講座17 天体』新生出版→2000円
・『理科の授業実践講座18 気象・気候』新生出版→2000円
・『理科の授業実践講座20 人間と自然』新生出版→2000円
×・『安全、かんたんにできる 新理科実験・工作 理科工作・ものづくりA,B 化学の実験A,B 物理の実験A,B 3分冊』大倉書院→3000円
・松井吉之助『理論・実践 中学校化学の授業』同時代社2600円+税→1000円
・三井澄雄『イオンと化学反応の指導』むぎ書房1600円→500円
・三井澄雄『みんなの科学 イオンと化学反応』四方社700円→400円
×・真船和夫・玉田泰太郎・長谷川純三『教科教育法 小学校理科』日本標準1400円→500円
左巻健男・笠井守編著『新小学理科の授業 3年』民衆社2500円→800円
左巻健男・園部勝章編著『新小学理科の授業 4年』民衆社2500円→800円
×・左巻健男・藤本拓郎編著『新小学理科の授業 5年』民衆社2500円→800円
×・左巻健男・本間明信編著『新小学理科の授業 6年』民衆社2500円→800円
左巻健男・笠井守編著『2002年 新小学理科の授業 3年』民衆社2500円→800円
左巻健男編著『2002年新小学理科の授業 4年』民衆社2500円→800円
左巻健男・宮内主斗編著『2002年 新小学理科の授業 5年』民衆社2500円→800円
左巻健男・小石川秀一編著『2002年 新小学理科の授業 6年』民衆社2500円→800円
左巻健男編著『新中学理科の授業 1年』民衆社2600円→800円
左巻健男編著『2002 新中学理科の授業 3年』民衆社2800円→1000円
・浅岡清範編著『たのしくわかる中学理科の授業 第一分野上』あゆみ出版2000円→800円
・松井吉之助編著『たのしくわかる中学理科の授業 第一分野下』あゆみ出版2000円→800
・熊沢文男『理科どう教えるか 自然の観察』新生出版1200円→400円
・前田幹雄『理科どう教えるか 植物のくらし』新生出版1200円→400円
・中村啓次郎『理科どう教えるか 溶解と水溶液』新生出版1200円→400円
・熊沢文男『理科どう教えるか 気体と物の燃え方』新生出版1200円→400円
×・松井吉之助・大竹三郎『物質の学習 理科授業の新しい試み』明治図書1800円→800円
×・中村啓次郎編著『理科これだけはおさえたい 中学年Ⅱ』国土社2000円→800円
・玉田泰太郎編著『理科これだけはおさえたい 高学年Ⅱ』国土社2000円→800円
・江川多喜雄『たのしくわかる理科3年の授業』あゆみ出版1500円→600円
・中村啓次郎『たのしくわかる理科4年の授業』あゆみ出版1500円→600円
・玉田泰太郎『たのしくわかる理科5年の授業』あゆみ出版1500円→600円
左巻健男藤岡信勝編著『ストップモーション方式による1時間の授業技術 中学理科1年』日本書籍1600円→800円
左巻健男藤岡信勝編著『ストップモーション方式による1時間の授業技術 小学理科6年』日本書籍1600円→800円
・東京足立理科サークル『子どもと共に学んだ理科の授業4年』あずみの書房1500円→600円
・東京足立理科サークル『子どもと共に学んだ理科の授業5年』あずみの書房1500円→600円
・東京足立理科サークル『子どもと共に学んだ理科の授業6年』あずみの書房1500円→600円
×・高橋金三郎編『理科わかる教え方 5年』国土社1000円→400円
×・久保田芳夫編著『物理学の教育』明治図書1100円→500円
×・大竹三郎・若林覚編著『化学の教育』明治図書1100円→500円

・真船和夫・鷹取健編『生物指導法事典』むぎ書房3800円→1200円

 

×は売れてしまった本。

左巻健男2019年1月~4月に出た本出る本

以下が今年になってから左巻健男の出た本出る本。
他にほぼ原稿を書いてあって編集者へ送ってある本、今友人らと書きつつある本がある。
その後書く予定の本もある。

『おもしろ理科授業の極意 - 未知への探究で好奇心をかき立てる感動の理科授業』
左巻健男/サマキタケオ
価格 ¥3,024(本体¥2,800)
東京書籍(2019/04/17発売)

『世界一トホホな科学事典』
左巻 健男【監修】
価格 ¥972(本体¥900)
西東社(2019/04発売)

『授業に活かす理科教育法 中学・高等学校編 (新訂)』
左巻健男/吉田安規良編著
価格 ¥2,484(本体¥2,300)
東京書籍(2019/03/31発売)

『「なぜ?」に答える科学のお話366 - 生きものから地球・宇宙まで (新訂版)』
左巻 健男【監修】
価格 ¥2,484(本体¥2,300)
PHP研究所(2019/03発売)

『なぜなぜ?かいけつルーペくん - おうちのふしぎをさがせ!』
うえたに夫婦【著】/左巻 健男【監修】
価格 ¥1,728(本体¥1,600)
パイインターナショナル(2019/03発売)

『中学3年分の生物・地学が面白いほど解ける65のルール』
左巻健男編著
価格 ¥1,512(本体¥1,400)
明日香出版社(2019/03発売)

『図解 身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本 - 思わずだれかに話したくなる』
左巻 健男【編著】
価格 ¥1,512(本体¥1,400)
明日香出版社(2019/01発売)

『中学生にもわかる化学史』 ちくま新書
左巻 健男【著】
価格 ¥842(本体¥780)
筑摩書房(2019/02発売)

左巻健男が本や編集長の雑誌でEM(EM菌)を扱ったもの一覧 『暮らしのなかのニセ科学』平凡社新書+『RikaTan(理科の探検)』誌

 依頼原稿「学校に環境活動に福島復興に政治に入り込んでいるEM(EM菌)」を書いたが、私は以下のように本と雑誌でEMを扱っている。

 

左巻健男『暮らしのなかのニセ科学平凡社新書
 EMについて1章をあてている。
 なお、左巻健男『学校に入り込むニセ科学』(仮題)平凡社新書が近刊予定

 

 以下は私が編集長の『RikaTan(理科の探検)』誌(発行所:SAMA企画 販売元:文理)でEMについて扱ったものである。

 RikaTanサイト → http://rikatan.com/


*2014年春号(特集:ニセ科学を斬る!)所載の
 ・呼吸発電「EMのニセ科学問題」
 ・松永勝彦「EM団子の水環境への投げ込みは環境を悪化させる」

*2015年春号(特集:ニセ科学を斬る!リターンズ)所載の
 ・片瀬久美子「EM商品のニセ科学性について」

*2016年4月号(特集:ニセ科学を斬る!2016)所載の
 ・天羽優子「「EMを学校で使わないでください」署名をするわけ」

*2017年4月号(特集:ニセ科学を斬る!2017)所載の
 ・飯島明子「EMは水質を浄化できるか」

*2018年4月号(特集:ニセ科学を斬る!2018)所載の
 ・呼吸発電「EMの2つの顔 小中学校で教えられるEMについて」

*2019年4月号(特集:ニセ科学を斬る!ファイナル)所載の
 ・呼吸発電「政治問題としてのEM菌」
 ・大石雅寿「EM菌やナノ銀では元素転換できないわけ」
 ・左巻健男「EM菌擁護者・DND出口俊一氏との裁判の報告」

『RikaTan(理科の探検)』誌2019年4月号特集「ニセ科学を斬る!ファイナル」の各テーマの小見出し一覧

保健機能食品の広告、ウソではないが… ~トクホと機能性表示食品の場合~        高橋 久仁子
はじめに 保健機能食品といわゆる「健康食品」  トクホは食品、「効果」は小さくて当然 3-1コーヒー飲料H 3-2ヨーグルトG 3-3ウーロン茶飲料K 3-4難消化性デキストリン入り青汁H 機能性表示食品は「言った者勝ち」の世界か おわりに

 

根拠が不明確な疾患と代替医療  PATM(他人にアレルギー症状を起こすとされる疾患) を中心に   名取 宏
はじめに 他人にアレルギーを引き起こす「病気」 PATMと自己臭症との類似 PATMは存在するか? 慢性ライム病 実在しない病気から利益を得る者たち 病名をつけることは最終目標ではない おわりに

 

『近藤誠理論』を科学的に吟味する 思考バイアスの罠   大場 大
「がんもどき理論」とは? 「本物のがん」はどこから? 「抗がん剤は効かない」 「生存曲線の形が奇妙だ」 生存曲線のルールとは? まもたや論文趣旨を恣意で曲解 奇妙な形をした生存曲線の流布 「近藤理論」の本質とその背景を探る

 

科学的な「免疫療法」とあやしい「免疫療法」のちがい  山崎 誠二
 がん治療の3本柱 免疫とは 免疫とがんの関係 免疫を利用したがん治療のはじまり 免疫チェックポイント阻害剤の問題点 信頼できる治療法の選び方

 

いまだに残るホメオパシー     桝本 輝樹 
失われた命 なぜ補完代替医療を用いるのか 「古いものはよい」のか 減少しつつあるホメオパシー ホメオパシーの次に来るもの

 

何の証拠もない「胎内記憶」 ありえない話が「事実」ともてはやされ、子供を傷つける   山本 弘
「胎内記憶」とは? 理屈で考えてあり得ない 子供はよくわけの分からないことを語る 胎内記憶が栄華になった 虐待を受ける子供をさらに鞭打つ

 

糖質制限食「信仰」をやめよう   炭水化物を抜いてんじゃねーよ!   安居 光國
はじめに マスコミによる警鐘 糖質制限の流行 医学的検証 日本人ではどうか 標準的な食事とは 炭水化物摂取ダイエット

 

ニセ科学に新たな政界進出の動き 日本母親連盟の設立   藤倉 善郎 
突然の政治団体結成表明 ニセ科学のデパート 発表2カ月で会員3000人 ニセ科学と政治 ニセ科学批判の政治家を党が粛清する もともと与党こそニセ科学の宝庫

 

政治問題としてのEM菌    呼吸発電 
科学技術担当相とEM菌議運 政治活動の始まり EMを国政へ百万人署名運動と国会請願 有機農業推進議員連盟とEM菌 民主党・沖縄ビジョン(2008)とEM菌 口蹄疫とEM菌  福島第一原子力発電所事故とEM菌 高橋ひなこ議員とEM菌 環境相の国会答弁 平井卓也・科学技術担当相とEM菌 社会運動としてのEM菌

 

「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々    小波 秀雄
大規模団地で起きた赤水をめぐる対立 赤水が出るようになったが、給水管の更新を拒否する理事会 マンション管理組合理事長が強引に推進する謎の水装置 NMRパイプテクターを解剖する 特許書類から装置の効果を検討する 物理的には何の意味もないガラクタでしかない 行政の無力、住民自治の形骸化 科学者の責任を問う 健全な科学の常識が通る社会へ

 

EM 菌やナノ銀では元素転換できないわけ 大石 雅寿
錬金術は失敗だったが化学を生み出した 微生物や銀粒子が元素転換を起こすという主張 基本知識のおさらい EM菌が元素転換できないわけ ナノ銀で放射線量を軽減できないわけ Take home messsage

 

生体内元素転換  ー生き物のからだの中で「核反応」が起こっている?ー   児玉 一八

化学反応では元素は変換できない 生体内で元素が「転換」した? ケルブラン曰く「生物現象は超化学である」 福島第一原発事故と「生体内元素転換」 ニセ科学にだまされないために

 

「花粉が水に変わるマスク」騒動    左巻 健男 
花粉を水に変えるマスク」とは? ハイドロ銀チタンを開発したという岡崎茂美氏 岡崎論文を批判した医師が医学部教授から訴訟をちらつかされる 桑満さんに、新藤教授から、さらに集団訴訟が進行中と 桑満さんに新藤教授が反省 ハイドロ銀チタンコラボの企業には有名企業も

 

EM菌擁護者・DND 出口俊一氏との裁判の報告   左巻 健男 
DND出口俊一氏との裁判と結果 DND出口氏の謎が解けた! EM菌側がEM菌批判側を攻撃するのは比嘉照夫氏の願いがある 「真正のおばか」についての裁判所の判断 「ヤクザそのもの」の裁判所の判断

 

インチキとどう向き合うか?  -「愚行権」と放蕩息子の帰還-    桝本 輝樹
突然の余命宣告 「そんなの意味ないよ」 つながらない支えの場 殺到する情報 標準治療(医療)と推測統計 「個人」と「集団」 愚行権パターナリズム 医療父権主義 誰が批判されるべきか 放蕩息子の帰還

『RikaTan(理科の探検)』誌2019年4月号特集「ニセ科学を斬る!ファイナル」2/26発売!

 通巻37号2019年4月号が明日2月26日に発売されます。定価1440円(税込)です。隔月刊RikaTanは今号が最終号、今後は不定期刊行となり、年2回程度の発行を目指します。 f:id:samakita:20190225155414j:plain

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 今月の特集は「ニセ科学を斬る! ファイナル」です。
 恒例4月のニセ科学特集号です。今月のタイトルの一つ
「花粉が水に変わるマスク」騒動
 これは去年の話ですが、今年もまだ発売されていますね。EM菌のようにニセ科学商品は本当にしつこく生き延びています。こちらもしつこく取り組まなくては。

 書店で見つけられない方は直接SAMA企画へ。バックナンバーもどうぞ。まとめて買えばお得です。4冊で4,800円、9冊で7,500円、13冊で10,000円です。お申込み方法は下記サイトを参照ください:
http://d.hatena.ne.jp/samakita/
 RikaTanサポートサイトで過去の目次が閲覧できます:http://rikatan.com/index

※理科の探検 2019年 04 月号 [雑誌] 2/26発売!
特集:ニセ科学を斬る!ファイナル 
アマゾン→ https://www.amazon.co.jp/dp/B07M6RTWNR/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_vl9BCbAWCJMMW … @amazonJPさんから

 

記事内容:

特集 ニセ科学を斬る! ファイナル
特集について                      左巻 健男
保健機能食品の広告、ウソではないが…         高橋 久仁子
  ~トクホと機能性表示食品の場合~
根拠が不明確な疾患と代替医療             名取 宏
  PATM( 他人にアレルギー症状を起こすとされる疾患) を中心に
『近藤誠理論』を科学的に吟味する 思考バイアスの罠   大場 大
科学的な「免疫療法」とあやしい「免疫療法」のちがい   山崎 誠二
いまだに残るホメオパシー                桝本 輝樹
何の根拠もない「胎内記憶」              山本 弘
  ありえない話が「事実」ともてはやされ、子供を傷つける
糖質制限食「信仰」をやめよう             安居 光國
  炭水化物を抜いてんじゃねーよ!
ニセ科学に新たな政界進出の動き 日本母親連盟の設立   藤倉 善郎
政治問題としてのEM菌                  呼吸発電
「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々    小波 秀雄
EM 菌やナノ銀では元素転換できないわけ         大石 雅寿
生体内元素転換                    児玉 一八
  ー生き物のからだの中で「核反応」が起こっている?ー
「花粉が水に変わるマスク」騒動             左巻 健男
EM菌擁護者・DND 出口俊一氏との裁判の報告        左巻 健男
インチキとどう向き合うか?              桝本 輝樹
  -「愚行権」と放蕩息子の帰還-

論説
この正答例は本当に正しいのか?            左巻 健男
  ~ある高等学校入試問題の正答例の検討~

連載  
【自然に親しむ】  
 はれ ときどきカメ in 但東             林本 ひろみ
   林本さんの実家のまわりのなかまたち【第13回】
 ニッポン野生生物リサーチ戦隊            里中 遊歩
   【第三十四話】町暮らしの野生哺乳動物
 空をとことん楽しもう! 第18回 お蔵入り?の名前④  岩槻 秀明
 Rikatanプラネタリウム~最終回 夜空の星の語り方~  小野 夏子☆
 Sense of the Universe第27回 宇宙を感じるル     大西 浩次
 日本棚田紀行                    夏目 雄平
   最終回 星峠<新潟県十日町>と芝生田<長野県小諸>
 タンポポを訪ね歩く シナノタンポポ         保谷 彰彦
 温泉へGO! 第9回「全国特色のあるお宿のお風呂」篇  藤牧 朗

【実験・工作】
 ちょい悪オヤジのこだわり実験              青野 裕幸
   第12回 卵の慣性はいつ変わる?
 工作教室の舞台裏第 21回 ホバークラフト       福武 剛
 シリーズ連載 観察・実験・ものづくり
 大学生も目からうろこの腕のモデル           門倉 松雄
   ~割り箸とポリ袋でつくる腕の模型~
 超はっ水アルミテープで作る水中の空気玉        夏目 雄平
   ~容器の底面への貼り付きとその限界~
 月や太陽の動きを観察する装置を作ろう         井上 貫之
 模型を自分で作り、火山・地形を考えてみる       原口 栄一
 「乗り出す板」の楽しみ方               成見 知恵
 フライドチキンでニワトリの骨格            横内 正

【うんちく】
 話題の動物たち                                       今泉 忠明
     第34回 富士山における哺乳類の分布記録
 海と私たちの生活                   市川 洋
   第7回 エルニーニョ/ ラニーニャ現象-日本に影響を及ぼす
      熱帯の海の現象-    
 日常でつかうアルゴリズム                           シ
      最終回 《不可逆圧縮と社会の決まり》
 生きものたちの最新ニュース              保谷 彰彦
   第6回オランウータン・ゴリラ・チンパンジーボノボ
  たのしい理科と自然の小話 「 笑いのチカラ」    左巻 惠美子

【科学360度】  
 カガクをプロデュースしよう            さかさパンダ
 教えて!黒ラブ教授!               黒ラブ教授
   笑いと科学コミュニババババケーションヽ(´ ▽ `)/
 数多あるもう一つの未来-SFが予言した世界-    大西 光代
   第34回「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集
 妄想似非科学 #33【でっち上げチラシ(?)】     佐藤 実

【マンガ・アニメ・映画と科学】-科学とフィクションと私たちと-
 クライマックスの4次元超立方体とは?        山崎 詩郎
 最新版スマブラの「最後の切り札」のエネルギーを計算してみた!
                      大西 光代・大西 晴夏
【中学入試をたのしもう】  
 物理・化学  中学入試に出る音の性質       蔵之上 義史
 生物・地学  エネルギーの現在          玉野 真路

【エッセイ・まんが】  
 はいまん彩                     川端 一生
 編集長エッセイ                   左巻 健男 

 RikaTan読書室                      稲山 ますみ
 RikaTan広場                   井上 秀喜/森垣 良平

図解 思わずだれかに話したくなる 身近にあふれる「生き物」が3時間でわかる本 (左巻健男編著 明日香出版社)

 左巻健男編著『身近にあふれる「生き物」が3時間でわかる本』明日香出版社 2018.3 を紹介しておきます。

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 本書は、次のような人たちに向けて書きました。
・めずらしい生き物もいいけど、もっと身のまわりにたくさんいる「 身近な生き物」について知りたい!
・教科書や図鑑のような解説ではなく、「 私たちの生活とその生き物がどう関係しているのか」がわかるようなおもしろ知識を知りたい!

 

第1章 『家の中・庭』にあふれる生き物
ウイルス 「汗をかいたらカゼが治る」はまちがい?
細菌 抗生物質は使われすぎると危険?
カビ〔黴〕 毒にも美味しい食材にもなる?
常在菌 うんちやおならが臭いのはなぜ?
人の寄生虫 日本はもともと「寄生虫王国」だった?
ダニ なぜ布団の中で繁殖するの?
アリ〔蟻〕 アリはハチの仲間、ではシロアリは?
カ〔蚊〕 人の血を吸うのはオスとメスどっち?
ハエ〔蠅〕 なぜハエをたたくのは難しいの?
クモ〔蜘蛛〕 家で見かけるクモは巣をつくれない?
ゴキブリ 3 億年前から変わらない「生きた化石」?
キンギョ〔金魚〕 人間が品種改良で生んだ生き物?
カメ〔亀〕 長生きの秘けつはどこにある?
ハムスター 1日に走る距離は数十キロメートル?
ネズミ〔鼠〕 何でもかじるのは歯が伸び続けるから?
ネコ〔猫〕 野生ネコは簡単に見分けられる?
イヌ〔犬・狗〕 なぜ1 万年も前から家畜化できたの?
コラム 変化する生物の分類

第2 章 『公園・学校・市街地』にあふれる生き物
ダンドムシ〔団子虫〕 迷路の中を迷わずゴールできる?
ハチ〔蜂〕 怖いのは毒ではなくアレルギー反応?
ナメクジ カタツムリ なぜ塩をかけると溶けちゃうの?
ミミズ 夏の炎天下で干からびているのはなぜ?
チョウ〔蝶〕 ガ〔蛾〕 イモムシとケムシ、チョウとガのちがいは何?
トンボ〔蜻蛉〕 地球史上最大の昆虫はトンボだった?
トカゲ カナヘビ どうやって自分の尾を切るの?
スズメ〔雀〕 なぜ毎朝チュンチュン鳴いてるの?
ツバメ〔燕〕 飛行速度は最速で時速200km?
コウモリ 吸血コウモリは日本にもいるの?
ウサギ〔兎〕 なぜ自分のうんちを食べるの?
ムクドリ〔椋鳥〕 なぜ駅前に群れで集まるの?
ハト〔鳩〕 伝書鳩はなぜ手紙を届けられるの?
カラス〔烏・鴉〕 ゴミを荒らす迷惑モノ? または吉兆の鳥?
タヌキ〔狸〕 とても臆病ですぐ仮死状態になる?
コラム 生物は大き5つのグループに分かれている

第3 章 『野山・田畑・牧場』にあふれる生き物
バッタ キリギリス コオロギ  スズムシ[鈴虫] 鳴く虫の“耳”はどこにある?
カマキリ なぜメスは交尾中にオスを食べてしまう?
カブトムシ〔甲虫〕 クワガタムシ〔鍬形虫〕 角がたったの2時間で生えるのはなぜ?
ウグイス〔鶯〕 なぜウグイス色は黄緑色と思われている?
ヘビ〔蛇〕 なぜ大きな獲物も丸呑みできるの?
ニワトリ〔鶏〕 インフルエンザワクチンは鶏卵でつくる?
アライグマ〔洗熊〕 可愛らしいけど触ってはいけない?
キツネ〔狐〕 なぜ「神様の使者」として信仰されてるの?
ヒツジ〔羊〕 なぜウールは冬暖かくて夏涼しいの?
ヤギ〔山羊〕 なぜ紙を食べても平気なの?
シカ〔鹿〕 立派な角は骨じゃなくて皮ふ?
ウマ〔馬〕 多量の汗をかくのはウマと人間だけ?
ブタ〔豚〕 イノシシから品種改良した経済動物
ウシ〔牛〕 高級和牛はほぼ1種からつくられている?
クマ〔熊〕 遭遇したときの「死んだマネ」は効果なし?
コラム 動物とはどんな生物?

第4 章 『水辺・川・海』にあふれる生き物
アメンボ 水に洗剤を入れると沈んでしまう?
カエル〔蛙〕 胃袋をはき出して自分で洗うって本当?
ザリガニ なぜ侵略的外来種に指定されているの?
コイ〔鯉〕 ニシキゴイは数百万円もする「泳ぐ宝石」?
カモ〔鴨〕 カルガモはなぜ春になると引っ越しするの?
二枚貝 開かない貝は食べてはいけない?
クラゲ なぜお盆の頃から大量発生するの?
イワシ〔鰯〕 なぜ“弱い”のに魔除けになるの?
サンマ〔秋刀魚〕 食べると本当に頭がよくなるの?
サケ〔鮭〕 サケは赤身魚? それとも白身魚
ウナギ〔鰻〕 マリアナ海域から日本にやって来る?
カニ〔蟹〕 「カニ味噌」は脳みそではなく内臓?
フグ〔河豚〕 フグ毒は青酸カリの1000 倍以上?
イカ〔烏賊〕  タコ〔蛸〕 タコスミはなぜ料理に出てこないの?
ブリ〔鰤〕 大きさによって名前が変わる出世魚
マグロ〔鮪〕 資源枯渇で将来食べられなくなる?
コラム 食物連鎖と生物同士のつながり

第5 章 私たち『ホモ・サピエンス
どんどん増えるホモ・サピエンス
ヒトの進化と直立二足歩行
ヒトの手と巨大化する脳

左巻健男『中学生にもわかる化学史』(ちくま新書)発売中!

 

左巻健男編著『図解 身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本』明日香出版社 発売中!

左巻健男編著『図解 身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本』明日香出版社
¥1512 (左巻健男 青野裕幸 児玉一八 桝本輝樹 横内正 齊藤宏之)

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【内容例】
・体臭はどうやって発生するの?
・お肌を洗いすぎるのは美肌に悪い?
・がまんしたおならはどこへいく?
・納豆の旨味と粘りはどこから生まれるの?
・おにぎりは素手で握ると危険?
・風邪とインフルエンザの違いは何?
・ピロリ菌には世界人口の半分が感染している?

【目次】
第1章 「微生物」ってどんな生物なの?
第2章 人間と一緒にくらす「常在菌」
第3章 「おいしい食品」をつくる微生物
第4章 「分解者」としての微生物
第5章 「食中毒」を起こす微生物
第6章 「病気」を起こす微生物

 

【前書き】

本書は、次のような人たちに向けて書きました。

・身のまわりにあふれる微生物について知りたい!
・図鑑的な解説ではなく、私たちとその微生物の関係の中で役立つ知識、おもしろ知識を知りたい!


細菌や菌類(カビやキノコ)、ウイルスなどのとても小さなミクロの生命たち。
肉眼で見えるものもありますが、多くは顕微鏡やさらに高倍率な電子顕微鏡でしか姿を見ることはできません。
微生物と聞くと「ばい菌、カビ、ウイルス」を思い浮かべ、食中毒や感染症を引き起こすことから「怖い! 」「不気味! 」と思う人がいるかもしれません。
たしかに食中毒や感染症は人間と微生物の不幸な関係ですが、人間と微生物の関係はそれがすべてではありません。
自然界では有機物を分解して地球環境を美しく保ってくれています。
微生物なくして自然の生態系は成り立ちません。
微生物が活躍しておいしい食べ物や飲み物がつくられたり、病気を引き起こす細菌をやっつける抗生物質がつくられたりしています。

人類は未だ微生物の世界の全貌をとらえてはいません。
よく微生物を調べるために綿棒をこすりつけて採取したものをシャーレの中ので培養して、出現したコロニーから「ここにこんな微生物がいる! 」という映像を見ることがあります。
しかし、その方法で見られるのは採取したほんの一部です。
土の中の微生物でさえ採取した100個のうち1つが生えるかどうかといいます。
現在、微生物のDNAを抽出してそれを大幅に増やして次世代シーケンサーという機器で解析する方法があらわれて、たとえば、私たちの体にすみついている微生物の種類や数が桁違いに多かったことがわかってきました。
私たちの体をつくる細胞約37兆個よりも、私たちの体にいる微生物の数のほうがはるかに多いと考えられています。

本書は微生物について「あれもこれも」ではなく「これだけは」という内容に絞って展開しました。
本書がみなさんと微生物の出会いのきっかけになったら嬉しいです。