左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

EM菌の三大危険性 by『学校に入り込むニセ科学』左巻健男(著)/平凡社新書

*「EMの三大危険性」は、本書の一部である。(EMはいわゆるEM菌)
Amazon→ 学校に入り込むニセ科学 (平凡社新書) 左巻 健男  2019年11月初版https://www.amazon.co.jp/dp/4582859259/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_mxMGFbF7J6GKA @amazonJPより

EMの三大危険性

 私は、EMをニセ科学の中でもっとも危険と感じている。その理由を3つ述べよう。

①学校や環境活動に入り込み、善意の人たちEMの普及を担ってしまっていること
 一部の学校では、先生方が子どもたちにEMボカシやEM団子を作らせて、プールや川や海に投げ込んでいる。環境活動を行っているボランティア団体でも同様なことをしている。
 また、特定の会社の商品であるEMを使った活動に、自治体が助成金を出して支援してしまっている場合が多いのも問題だ。

②EM界隈が政界に影響力を及ぼしていること
 かつて安倍内閣の文科大臣だった下村博文衆院議員は、比嘉氏の講演を聴いて「EM技術による放射能被曝対策もできるそうだ。(中略)同様の提案が私のところにも他からも来ている。私も勉強してみたい。」とブログで述べていた。
 政界では、2013年12月3日に国会議員の超党派による「有用微生物利活用議員連盟」が発足している。この議員連盟は「EM菌議運」と言われ,会長は野田毅衆院議員(自民)、幹事長は平井卓也衆院議員(自民)、事務局長は高橋比奈子衆院議員(自民)である。
 比嘉氏によると、この議運は、「スタートは50人内外でしたが、その後も新規に加入いただいていますので、近々100人を超える規模になりそうです。」と述べている(EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる [79])。
 安倍内閣は、市議・県議時代からEMの広告塔的立場だった高橋比奈子衆院議員を環境政務官につけたこともあった。これについては、「週刊文春」2014年10月30日秋の特大号に「元女子アナ環境政務官は“トンデモ科学”の広告塔 まだある女性抜擢失敗!」という記事が掲載された。この記事のトンデモ科学とはEM菌のことである。この記事によると、高橋議員の父親(共産党県議6期を努めて引退)は06年にEM関連の会社を設立、高橋議員本人はEM菌効果について「わからなーい!そういうことは!私に聞かないで!現場に行ってないから…」と話しているという。
 また、2018年10月3日付けの「毎日新聞」は、「安倍内閣初入閣・平井科技担当相は『EM菌議連幹事長』と報じた。平井議員は「『EM菌を使っている方がたくさんいるので幹事長を引き受けた。中身はよく知らない』と釈明した。」という。
 さらに、同年10月10日の毎日新聞は、「平井卓也・科学技術担当相は10日、科学的根拠がないと指摘されている有用微生物群(EM菌)を推進する議員連盟の幹事長を務めていることについて、議連の解散を含めて検討する考えを示した。閣議後の記者会見で『議連は活動停止状態と聞いている。まだ解散していないので、今後どうするかを考える』と述べた」と続報した。
 実は、平井議員の後援会会長の会社「(株)アムロン」はEMセラミック「Eセラ」(EMX清涼飲料水を粘土に混入させ焼いたセラミックスの商品)の製造会社だ。また、平井議員の母・温子氏が社主の『四国新聞』ではよくEM菌の活動が掲載されている。平井議員が「中身はよく知らない」というのはあまりにも無恥というしかない。
 比嘉氏は、さまざまなEM商品を全部使うEM生活をすることを国民の義務にすることを狙っている。国民全体がEM・X GOLDという清涼飲料水を飲み、さまざまなEM菌商品を使う「EM生活」をするようになれば、生活習慣病などはなくなるので、もし病気になったら自己責任なので社会保険制度は不要という主張までしている。

③EM批判者の批判封じの働きかけをしていること
 EM研究機構の顧問と社員が、ときにはEM研究機構の顧問であることを隠し、EM菌の非科学性について批判している人らの自宅や所属機関に押しかけたりして、「名誉毀損」「営業妨害」だとして批判封じの働きかけをしている。
 本来なら、EM批判をしている研究者とは公明正大に議論をすればよい。本当に商品の性能に自信があるなら第三者に自由に検証してもらい、もし問題が見つかれば商品の改良を重ねていき、批判をもとにより良い商品開発を目指していくのが企業としてのあり方ではないか。

 

ZAITEN2020年1月号

『学校に入り込むニセ科学左巻健男(著)/平凡社新書/¥840+税 の担当編集者による紹介

 水が人間の言葉を理解するという『水からの伝言』、微生物が水や環境などを浄化するという「EM菌」、ゲームが脳に悪影響を与えるという「ゲーム脳」、ほかにも、人には右脳型と左脳型がいる、発達障害は親の教育の失敗、白砂糖は有害だ、肉食は危険だ、食品添加物はよくない、などなど……一度はどこかで目にしたことがある言葉ではないでしょうか。でも、学校教育にも入り込んでいるというこれらの言説、一見科学的な装いをしながらみんな科学的根拠がない「ニセ科学」なのです。
 教員や生徒の「善意」や「感動」を利用して、いま学校教育の中でニセ科学が勢力拡大を目論んでいます。そのオカルトまがいの言説は、学校教育の土台を揺るがすところまで来ているのをご存知でしょうか。ニセ科学の危険性に警鐘を鳴らし続けてきた理科教育の第一人者が、教育現場に侵入する怪しげなニセ科学の数々を一刀両断。どういうタイプの人がニセ科学にだまされやすいのか、そしてニセ科学にだまされないようにするためにはどうすればよいのかも指南します。(編集部 岸本洋和)

左巻健男『怖くて眠れなくなる化学』PHP 9月26日(土)から書店に。是非ご覧ください

【怖くて眠れなくなる化学 9月26日(土)から書店に。是非ご覧ください】
【“怖い!”ときたら化学と地学だよね!】

 

怖くて眠れなくなる化学 左巻 健男 https://www.amazon.co.jp/dp/4569847501/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_oYPBFbCCWTTWK

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左巻健男編著『世界を変えた微生物と感染症』祥伝社のメディアでの紹介

【世界を変えた微生物と感染症
発売から約1カ月経った拙共著について,さまざまなメディアで紹介していただいています。
 
とくに,#東洋経済オンライン では,3回に渡って特集してくださいました。
 
第1弾:コロナを優に超える死者を出した感染症の歴史 ペストは14世紀に2億人もが犠牲になっている
 
第2弾:PCRをよくわかってない人に知ってほしい基本 新型コロナの検査になぜ使われているのか
 
第3弾:ウイルスをわかってない人に知ってほしい基本 生物か非生物か、どうやって感染し増えるのか

「虫食い野菜・果物は健康にいいか? - 農薬と有機農法」by左巻健男 

●虫食い野菜・果物は健康にいいか? - 農薬と有機農法


○完全無農薬栽培の「奇跡のリンゴ」という物語
 有機農法有機農業、有機栽培)とかオーガニックと聞くと、「安全・安心」「健康によい」「環境にやさしい」「おいしい」というイメージを持つ人が多いようです。
 私は、学力的に劣等生の子どもでしたが、小学国語の教科書に、虫食いのリンゴの話があったのを覚えています。虫が食べるほどだから低農薬で安心だし、おいしいという内容でした。


 この教科書に載っていた話は、「奇跡のリンゴ」の話と重なりました。
 「奇跡のリンゴ」とは、青森県のリンゴ農家・木村秋則が絶対不可能といわれていた完全無農薬リンゴ栽培に成功したという話です。

 

 石川拓治『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』(幻冬舎 二〇〇八)がベストセラーになり、さらに二〇一三年には、映画にもなりました。
 木村秋則は、妻美栄子が年に十数回もリンゴの樹に散布する農薬に蝕まれたことを機会に、無農薬によるリンゴ栽培を決意しました。
 一〇年の歳月がたってもリンゴが実ることはなく、窮地に追い込まれた秋則はついに自殺を決意、一人で岩木山に向かいます。すると、彼はそこで自生した一本のクルミの樹を発見。害虫にやられていない樹木を見て、この土壌と同じようにすればリンゴでも同じことが考えられるのではないかと思いました。
 その年の秋、小さな実が成り、リンゴが収穫されました。美栄子たちはそのリンゴを食べ、おいしいと喜びました。一一年目になると、秋則は無農薬リンゴを発売できるようになりました。

 

 「ワサビの抗菌成分を利用した樹木用の塗布剤」なるものを利用しています。これは農薬登録されていませんが、このようなものを使って無農薬といっていいのか疑問です。


 木村秋則は、その後に出した著書『百姓が地球を救う』(東邦出版 二〇一二)で、「自然栽培で育った自然治癒力を持ったリンゴや野菜、おコメが、人間の治癒力に好影響を与える」「食べ物が大きな原因のひとつといわれる糖尿病やアレルギー、ガンなどの病気になる恐れが少なくなるでしょう」「日本ではガンによる死者が年々増えています。これだけ医学が進歩しているにもかかわらず、です。一方、アフリカなど発展途上国にガン患者が少ないという話はよく聞きます。つくづく考えてしまいます。農薬・肥料を使わない、自然界に自生しているものを食べている国の人たちのほうが、本当は豊かな食を得ているのではないか」などと述べています。

 

 その木村秋則は二〇一五年末頃から体調が悪化し、二〇一六年一〇月胃がんを診断され、胃を切除する手術と化学療法を受けています。この胃がん手術後の木村秋則の体重はなんと二九キログラムだったとのことでした。標準治療が功を奏したか現在は講演活動もしているようです。
 彼は、「無農薬にこだわり自然米だけを三〇年以上食べてきたのでがんがこの程度で済んだ」と述べています。 

 

 私の家は、農家でしたから、農作物の病気や害虫による食害、雑草などの対策が大変なのを知っています。その後長じて大学・大学院で化学を専攻し、中高で理科・化学を教えるようになりました。そんな私は、漠然と「虫食い野菜・果物は、虫が食べるほどだから安心」と思っていました。
 ある事実を知るまでは。

 

○エイムズ・テストの考案者エイムズ博士の論文の衝撃
 「ある事実」とは、虫の食害に対抗するために、野菜自身が多種類の防虫成分(天然農薬)をつくり出すということです。
 天然農薬は、毒性学の第一人者であるカリフォルニア大学バークレー校のブルース・エイムズ教授が一九九〇年に米国科学アカデミー紀要に発表した論文で有名になりました。エイムズ教授は、サルモネラ菌を使って、わずか三日程度で化学物質の変異原性を調べられる「エイムズ・テスト」の考案者で、発がん性物質の研究者として世界でもっともよく知られているうちの一人です。

 

 エイムズ教授らは、一九八七年、『サイエンス』誌に、「考えられる発がん危険性のランキング」と題した論文を出しました。
 この論文で「三九二種類の化学物質について動物実験を行った結果、合成化学物質の六〇 %、天然化学物質の四五 %に、少なくとも一種類以上のげっ歯動物に発がん性が確認された」として、それらについての「発がん危険性」ランキングを示したのです。
 それによると水道水のリスクを一として、DDE(DDT代謝物)やEDB(二臭化エチレン。米国で農業用殺虫剤として使用されていたが、発がん性があるとされ、使用が規制された)は〇・三と〇・四、ピーナッツバターが三〇で、生のマッシュルーム(キノコの仲間)が一〇〇となっています。つまり、使用禁止にされた合成化学物質よりも、一日一個のマッシュルームを食べる方が、はるかに発がんの危険が大きいとされたのです。

 

 この報告は論争をよびましたが、エイムズ教授は、論争の中で、「人間が摂取する植物中の発がん性物質のうち、天然化学物質の割合が極めて高い」と指摘しています。それらを、昆虫や菌類などの病害虫・病害菌から身を守るための「天然農薬」と表現しています。マッシュルームには、発がん性物質として、天然の殺虫成分ヒドラジンを含んでいます。論争は、エイムズ教授らのデータ処理で合成化学物質のリスクを過小評価しているなどで、天然農薬の存在は否定されていません。

 

 エイムズ教授は、私たちのまわりにある危険な物質として、合成化学物質に目が行きがちですが、それ以上に危険なものが、自然界にちゃんと調べられないままに放置され、安全だと信じられていることに警鐘を鳴らしたのでした。たとえば、キャベツでは、天然農薬あるいはその代謝産物として、インドール化合物群、シアナイド群、テルペン類など六群四九種類も発見され、その一部には、発がん性が認められました。
 虫の食害を受けると、天然農薬の分泌量は爆発的に増えるといいます。エイムズ教授らが天然農薬のうち五二種類を調べたところ、二七種類は発がん性物質でした。その中にはパセリなどのメトキサレン、キャベツなどのアリルイソチオシアネート、ゴマのセサモールなどがあります。

 

 どんな野菜も、農薬を使って育てた野菜の残留農薬よりも、はるかに多量の天然農薬を含んでいるといいます。無農薬で育てた野菜のほうが虫の食害などで天然農薬が多くなっているとも考えられます。とくに現代の農薬は適正に使用すれば残留はないですから、農薬のリスクは、多量の天然農薬のリスクからすると心配するほどのものではないでしょう。

 

 そのほか、虫の食害を受けた野菜の傷口にカビがはえて、そうとは知らずに口にしてしまうと、カビ毒の影響を受ける可能性もあります。「虫食いこそが無農薬の証拠」というセールストークをいう有機農法関係者がいますが、虫食い野菜・果物は健康上のリスクが高まります。虫食いがあるのは畑の管理が悪く虫が多い環境をつくっている、窒素肥料が多すぎて作物の体内の硝酸濃度が高くなり、虫が好むにおいを発して虫が集まってきてしまっている可能性もあります。

 

有機農産物は栄養はすぐれているか? 健康によいか、?
 二〇〇九年七月、英国食品基準庁(FSA)が、有機食品と一般の食品とで栄養成分や健康の影響に大きな差がないという研究結果を発表しました。有機食品と一般の食品と栄養成分にわずかな差はあるけれども公衆衛生上は意味があるレベルではないというのです。
 これはFSAがロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院に委託した研究で、過去五〇年間の関連する論文を極めて包括的で綿密にシステマチック・レビューした結果です。
 この発表は欧米のメディアが大きく取り上げ、すぐに大騒ぎになりました。欧米の有機食品市場は巨大ビジネスになっていますから、非常にインパクトが大きかったのです。メディア上や各地で大激論が起き、有機農業関連団体はFSAと研究者を批判し、論文執筆者のメールアドレスには異論・反論・読むに堪えない嫌がらせのメールが殺到したということです。
 どう作っても同じ種子から育てたとき、有機農法でも普通の農法でもちゃんと作れば味も栄養も変わらないのは当然です。

 

○そもそも有機農法とは?
 日本で有機農法による米(有機米)が公認される制度ができたのは一九八七年。米以外は、表示の規制がありませんでしたから、「有機」などと何にでもうたった農産物が数多く流通したことがありました。齋藤訓之『有機野菜はウソをつく』(SB新書 二〇一五)の表現を借りれば、いわば一九九〇年代は、有機バブルの世界でした。極端に言えばだれかが「これは有機です」と言えば、「その人が認めた有機農産物」で通ってしまったのです。

 

 そこで国内の有機農産物の無法地帯化を是正し、何かルールを作るという流れになりました。一九九九年に、日本農林規格などに関する法律(JAS法)ができた後、有機JAS認証により有機農産物や有機加工食品に適合していると有機JASマークを付して表示できる制度になりました。有機JASの制定によって、有機農産物の流通量は増えました。

 

 有機JASでは、化学合成農薬は使えませんが、天然物由来の殺菌剤や殺虫剤などは使用が許可されています。このため、有機農産物に無農薬の表示をすることは禁止されています。
 もちろん、科学的に考えれば、天然物由来の農薬だから安全、逆に化学合成農薬は化学合成だから危険とは一概にいえません。

 

 実は、有機農法については単純明快な定義がありません。日本では「有機農業の推進に関する法律」(二〇〇六年法律第一一二号)の第二条において、次のように定義されてはいます。
───────────────────────────
 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業。
───────────────────────────
 しかし、この定義があいまいなことは、「基本として」や「できる限り低減」という表現が使われていることからも明らかです。

 

 齋藤訓之『有機野菜はウソをつく』では、“今一人でも多くの消費者が「有機農産物であること」にこだわることをやめたなら、まずその人が、おいしく、健康によく、安全で、環境によい農作物をもっと自由に選べるようになりますし、多くの生産者、食品メーカー、流通業、小売業、外食業が気付いている今日の農業が抱いているもっと大きな可能性を屈託なく花開かせることにエネルギーを与えることができるはずです。
 そのような新しい食と農業の世界が一日でも早く訪れることを祈ります」としています。
 私たちは、有機農法、慣行農法にこだわらずに健康な野菜を見分けることができる判断力を持ちたいものです。

「二つのノーベル賞を受賞したポーリング博士のメガビタミン療法」by左巻健男

●二つのノーベル賞を受賞したポーリング博士のメガビタミン療法


○サプリ・健康食品問題の旗手の一人小内亨さんの回顧
 私は、『RikaTan(理科の探検)』誌という大人の科学好きに向けた雑誌の編集長をしています。
 二〇一〇年のことですが、サプリ・健康食品問題で活躍する一人小内亨医師に、新しく「健康情報を科学的に読み解く」という連載を引き受けて貰いました。
 その連載第一回目は、次の文章から始まりました。
───────────────────────────
 今でこそ私はサプリメントに対して批判的な立場にいますが、三〇年前にはサプリメントにはまっていたことがありました。三〇年前といえばサプリメントのサの字もないときでしたから、私はさしずめサプリメント利用者のはしりであったともいえるでしょう。
 医学生の頃、ライナス・ポーリング博士の著書『ビタミンCとかぜ、インフルエンザ』(共立出版 一九七七)に触発され、私はせっせと毎日ビタミンCをとっていたのでした。博士は、その本の中でメガビタミン療法を提唱し、人はより多くのビタミンを摂取すべきだと主張していました。
 ポーリング博士はノーベル化学賞と平和賞の二つのノーベル賞を取った研究者としてきわめて有名な学者です。当時一介の医学生だった私が、彼の仮説を信奉したとしても不思議ではなかったでしょう。博士の主張をきっかけに米国でのサプリメントブームが始まったともいわれています。その後、米国のサプリメントブームは日本に飛び火し、今や日本でもサプリメントは一般的なものとなりました。
 しかし、現在私はサプリメントどころかビタミンCさえも摂取していません。サプリメントのことを知れば知る程、摂取する気が失せてしまったのです。
───────────────────────────

 

 ポーリング(一九〇一~九四)は、アメリカの物理化学者です。一九三一年カリフォルニア工業大学教授、以後カリフォルニア大学を経て、スタンフォード大学教授となりました。
 ポーリングの業績の最大のものは、量子力学を大胆に化学に導入し化学結合論の体系的構成です。炭素原子価の正四面体方向性に関する混成軌道の概念、ベンゼンなどの芳香族化合物の特性を共鳴概念で説明するのに成功、これらの成果が名著『化学結合論』(一九三九)にまとめられました。
 一九五四年に構造化学への貢献でノーベル化学賞を受賞。さらに戦後、原爆禁止、核実験反対署名運動などで平和運動に積極的に取り組み、一九六二年ノーベル平和賞を受賞しました。
 私も彼の『一般化学』や『化学結合論』を学びました。

 

 小内さんは、その彼が提唱するメガビタミン療法に医学生のころにはまっていたというのです。

 

○ポーリング博士はメガビタミン療法にはまった!
 以下はポールオフィット著 ナカイサヤカ訳『代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?』(地人書館 二〇一五)をもとにしています。

 

 彼が六五歳の一九六六年三月、ニューヨーク州での講演のとき、「私は『科学者たちが自然の本質について探究し成し遂げた様々な分野の発見について読むのはいかほどかの喜びか』と言い、そして『あと二五年は生きてこの喜びを持ち続けたいと願っている』と述べました。
 カリフォルニアに戻ると、その講演を聞いていた生化学者ストーンからの手紙を受け取りました。手紙にあったのは、「もし毎日三〇〇〇ミリグラムのビタミンCを摂ることをすれば二五年どころもっと長く生きられる」という内容でした。彼はその助言に従うことにしたのです。

 

 「私は、より元気で健康に感じるようになってきた。中でもそれまでずっと毎年何回か悩まされてきたひどい風邪をひかなくなった」と彼はいいました。
 摂取量を増量してついには毎日一八〇〇〇ミリグラム摂取することにしました。その日以来、人びとはポーリングとえいばビタミンCとなったのです。
 一九七〇年には『さらば風邪薬! ビタミンCで風邪を追放』(講談社 一九七一)を出版。人びとに毎日三〇〇〇ミリグラムのビタミンCを摂ることを強く勧めました。この本は瞬時にベストセラーになりました。ビタミンCの売上げはどんどん上がりました。一九七〇年代の中頃までには五〇〇〇万人のアメリカ人が彼のアドバイスに従いました。

 

○科学界医学界の反応を拒絶し、メガビタミン療法啓蒙にひた走った
 ところがポーリング博士のメガビタミン療法への科学界医学界の反応はクールでした。
 風邪の予防のためのビタミンの研究からは、風邪の予防や治療に有効という結果は得られませんでした。研究に次ぐ研究が彼が間違っている事を明らかにしたのです。
 にも関わらず彼は研究結果を拒絶し、講演や一般向けの記事や本でビタミンCを推薦し続けました。


 明らかに風邪の症状があるままメディアの前に現れることがあったが、「アレルギーがひどくて」と言っていました。
 さらに彼は「ビタミンCは風邪を予防するだけではなく、がんを治す」と言い出しました。
 一九七一年、彼はビタミンCでがん死を一〇 %減らせると宣言。

 

 一九七七年には、「私の現在の推測ではビタミンCだけで七五 %の減少を達成できる」としました。「そして他の栄養サプリを合わせて使えばさらに減らせる」とし「寿命は一〇〇から一一〇年になる。やがては最高一五〇年になるかもしれない」と予言しました。

 

 彼のメガビタミン療法は強い影響をもたらしました。
 がん患者は主治医にビタミンC大量投与を要望しました。
 当時の医師は言う。「あれには苦労した。意見を言うと、先生はノーベル賞を持っているのか?というんですよ」
 もちろんがん研究者たちは検証実験することにしました。研究はビタミンCはがんを治癒しないという結果でした。

 

 彼は諦めませんでした。
 次に「ビタミンCは大量のビタミンAとビタミンE、さらにセレンとベータカロテンと一緒に摂れば、風邪を予防し、がんだけではなく事実上ほとんどすべての病気を治せる」と主張したのです。
 一九九二年四月六日の『タイム』誌は、メガビタミンの驚異についての記事が出ました。内容は、根拠の無い・反証済みの彼の主張を肯定的に記事にしたものでした。この記事はビタミン製造業者の政治圧力団体である全米栄養食品協会(NNFA)にとって幸運なものでした。

 

○ポーリング博士にメガビタミン療法を信じさせた「抗酸化仮説」
 彼は自分の主張に研究の裏付けがなくてもビタミンとサプリメントが万能薬となる一つの特性があると信じていました。それは「抗酸化」です。
 研究では果物や野菜をより多く食べる人はがんや心臓病になりにくく、寿命が長いことが判明していました。その理屈がそれらが体内で生じる活性酸素をつぶす抗酸化物質をふくんでいるというものでした。それなら抗酸化物質サプリを摂る人も同じように健康になるはずだというのが彼の考えでした。

 

 抗酸化物質サプリとは、ビタミンA、C、E、ベータカロテンなどです。これらの成分は野菜や果物に含まれています。
 野菜や果物をよく摂る人と摂らない人では摂る人が健康状態がよかったのですが、「抗酸化サプリで健康」という仮説は大規模な試験研究で否定されました。対照群として抗酸化物質サプリを摂ったグループ、摂らないグループを比較すると、摂ったグループのほうがよりがん死したりして死亡率が高かったのです。複数の研究でそうなりました。
 マルチビタミンを摂ったグループ、摂らないグループの比較でも摂ったグループの方が二倍、末期の前立腺がんで死亡していました。ビタミンサプリはがんと心臓病のリスクを高めたという研究結果も出ました。

 

 実は活性酸素にはいろいろな種類があって、DNAを傷つけてがんや老化の原因になると共に免疫の武器として新しくできたがん細胞を消滅させる働きもしています。これも仮説ですが、大量の抗酸化物質を摂ると、いろいろな活性酸素のバランスを崩し、免疫システムが働くパワーを弱めてしまうと考えられます。
 このような研究の結果が出てもビタミンの売上げは落ちないどころか上がったのです。
 一九八〇年一二月、彼の妻は七七歳で胃がんで亡くなりました。
 一九九四年、彼は前立腺がんで亡くなりました。九三歳でした。
 六五歳のとき、「あと二五年は生きて…」という願いは達成されました。「寿命は一〇〇~一一〇年になる」には及びませんでした。

 

 こうして、ポーリング博士は、素晴らしく正しかったために二つのノーベル賞を受賞しましたが、素晴らしく間違っていたために世界一のインチキ療法士と言ってもよいかもしれない人になったのです。

 

 科学的な証拠では、メガビタミンは安全ではありません。それなのにアメリカ食品医薬品局FDA)はなぜ警鐘を発しないのでしょうか。
 『代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?』のオフィットは言います。
 「答えは、そう金と政治である」

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【RikaTan誌38号の内容】

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7月16日(木)発行!定価 1500円(税込):『RikaTan(理科の探検)』誌2020年8月号(通巻38号)特集 ニセ科学を斬る!2020 - 左巻健男&理科の探検’s blog

https://samakita.hatenablog.com/entry/2020/06/28/151630

今年の左巻健男著作4冊目は7/20発行の『図解 身近にあふれる「物理」が3時間でわかる本』明日香出版社

今年の左巻健男著作
4冊目は7月20日(月)発行の
『図解 身近にあふれる「物理」が3時間でわかる本』明日香出版社

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【読者の皆さんへ】

 本書は、次のような人たちに向けて書きました。

・身のまわりにあふれる物理について知りたい!
・私たちの日常の中にある物理の役立つ知識、面白知識をやさしく知りたい!
・さまざまな場面を物理の目で捉えることで、物理的な考え方やものの見方、いわゆる「物理のセンス」を身につけたい!

 

 物理(学)は自然科学の王様的な学問で、世界のあらゆることを記述しており、実は身近な現象にもその考えや法則は関係しています。
 私たちは起きてから寝るまでの1日の中でも、いつもいつも物理と一緒です。重力のある世界、摩擦のある世界、さまざまな電気製品の仕組み、歩いたり、物を動かしたりする人体、スポーツ……。いつでもどこでも物理がついて回っています。

 ところが、学校で学ぶ理科(物理・化学・生物・地学)のうち、もっとも嫌われている科目が物理です。その抽象性や次々と出てくる公式や計算問題などで「わかった!」という実感が持ちにくい、生活や人生にほとんど無関係のように見え、学校を卒業すればおさらばしたい科目になっているからでしょうか。

 本書は、物理に苦手意識を持っているが、身近な現象を物理的な考え方で捉え、ものの見方を広げたいという知的好奇心を持った人を読者に想定しています。
 できるだけ公式や計算を前面に押し出すことはやめ、必要最小限にしました。
 もう試験のための学習ではなく、身のまわりに起こる現象や日常的に利用している文明の利器の仕組みなどを、知的好奇心のままに理解するという面白さを感じて欲しいのです。
 私たち執筆者は、みな小学校・中学校・高校・大学で物理、物理分野を教えた経験を持っています。そこで、「ここにもこんな物理がある!」ことをやさしく解説することに挑戦しました。

 本書で、みなさんに「物理は結構面白い!」と思ってもらえて、みなさんと物理の出会いのきっかけになったら嬉しいです。

 最後になりますが、本シリーズの拙著同様、理科苦手な最初の読者として、本書の編集作業に力を入れてくれた明日香出版社編集の田中裕也さんに御礼を申し上げます。

 執筆者代表 左巻健男

7月16日(木)発行!定価 1500円(税込):『RikaTan(理科の探検)』誌2020年8月号(通巻38号)特集 ニセ科学を斬る!2020

7月16日(木)発行! 定価 1500円(税込)
発行所:(株)SAMA企画  販売元:(株)文理
『RikaTan(理科の探検)』誌2020年8月号(通巻38号)
*特集 ニセ科学を斬る!2020
 今そこにあるカルト・オカルト・ニセ科学

【目次】
2 新型コロナウイルスとともに広がるニセ科学 左巻 健男
8 「免疫力」を強くすると病気にならない? 児玉 一八
14 「心を介する医療」はインチキか? 科学的医療と経験的医療の対立 唐木 英明
20 意思決定の隙間とニセ科学 桝本 輝樹
26 特定保健用食品の存在意義を考える 高橋 久仁子
32 有機農法は理想的な農業技術か? わかりにくい有機農法の問題点を探る 浅賀 宏昭
38 グリホサートは危険な農薬か? 世界で最も使われている除草剤の発がん性は? 浅賀 宏昭
44 科学技術を捻じ曲げて作られる製品のこと あれこれ買い込んだ経験を振り返って 高山 由香
48 飲むだけで痩せるサプリメントはあるか? 長田 和也
52 「マーガリンはプラスチック」の嘘 髙野 裕惠
56 インチキ免疫療法と信頼できる免疫療法 科学的な免疫療法はがん治療の新しい柱  山崎 誠二
60 福島第一原発事故放射線でがんが 「多発」した? 児玉 一八
66 NMR パイプテクター問題 天羽 優子
72 青ヶ島が 81cm も上下動した!? ー 地震予知研究のニセ科学性 上川 瀬名
76 ” ホタル復活 ” の裏で広がるウソと環境破壊 子どもたちも騙すニセ自然保護運動 松崎 いたる
82 PET ボトルのキャップ集めは「エコ」な活動か? 誰のため、何のための活動なのか? 山崎 誠二
86 EM 菌のオカルト・ニセ科学性入門 左巻 健男
92 今でもうごめくカルト集団 事件を起こしても社会問題化してもなくならないカルト 藤倉 善郎・鈴木エイト
98 大学新入生をねらうカルト集団 手口が多様化し把握が困難になるカルト勧誘 藤倉 善郎
102 大学キャンパスのカルト対策  ー キャンパス内のカルト勧誘実態をご存知ですか? 野本 ひさ
107 カルトの偽装勧誘は許されない ー オウムの悲劇を繰り返さないために 青木 歳男
110 安倍政権と統一教会 政権に入り込むカルト・ニセ科学  鈴木 エイト
116 理性と信心と妄信と 以信代慧の人間論 福賴 宏隆
122 編集長エッセイ 左巻 健男

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NHK「いまほん」で左巻健男編著『科学はこう「たとえる」とおもしろい!』青春出版社紹介!

NHK「いまほん」で左巻健男編著『科学はこう「たとえる」とおもしろい!』青春出版社が紹介される!】

 

2020年6月8日(月)~12日(金)
11:05~11:54、もしくは18:10~19:00 のどこか
いつ、どの地域で放映されるのかはお楽しみに!
───────────────────────────
▼企画意図;
 今どんな本が人気を集めているのか、売れている本をダイジェストで紹介するとともに、話題になりそうな本を1冊取り上げ、著者や編集者のインタビューなどを交えて、今の流行を多角的に伝えます。 
   
▼概要;
   ○番組名 :「いまほん」 
   ○内容時間 :3分35秒
   ○放送枠 :NHK総合テレビ 地域各局のニュース番組 
(11:05~11:54、もしくは18:10~19:00 のどこか)
※この企画は、NHKの地域各局が地域向けの放送の中で放送することを目的としています。
※放送日時は、各局によって異なります。また、すべての局で放送されるわけではありません。

※首都圏の放送枠である「ひるまえほっと」で当番組が放送された場合、ネットでも同時に放送(配信)されます。また、見逃し配信で1週間視聴可能になります。

 

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左巻健男が共産党に不信感をもつ理由

 

次は2019年6月23日にFacebook左巻健男に書いたものだ。

https://www.facebook.com/samakitakeo/posts/2534378569926350

ぼくがとくに共産党に不信感をもつ理由を書いておこう。

ぼくは共産党に期待をもっていた。しんぶん赤旗日刊紙や日曜版に取材されたりもした。それで日刊紙に「水曜エッセイ」の連載を依頼されたとき喜んで引き受けた。その連載が「ニセ科学の正体」だ。その3回目のEM菌について読者から反響が強かったからとさらにフォロー記事を書いた。

その連載を見てか、新日本出版社という共産党の出版社からニセ科学本の依頼を受けた。
ぼくは一生懸命に書いた。それが『ニセ科学を見抜くセンス』だ。

その本はすぐに増刷になった。そして6刷りになるまで日刊紙に「好評販売中」と大きな広告が続いた。いわゆる「民主書店」と言われる書店での売れた部数一位が続いた。

ところがそれが終わりになった。

友人の、当時共産党板橋区議の松崎さんが共産党から酷い扱いを受けていた事態にぼくが動いたからだった。

松崎さんは板橋ホタル館問題を追及していた。その追及はもともと共産党板橋区議団の課題であった。
しかし、共産党板橋区委や都委、中央委は松崎さんを「査問」にかけようとするようになった。
その大きな理由は野党共闘に邪魔になるとしたようだ。松崎さんはホタル館のナノ銀除染というニセ科学をも問題にしていた。ところが野党共闘のキーマンの小沢一郎側近の平野貞夫氏が強いナノ銀除染信者で、「松崎をなんとかしろ」と上部に依頼したという事態になった。

ぼくは共産党に要望書を出した。

ぼくは都委や中央委と話をした。共産党は松崎さんがニセ科学をインチキと言ったのが市民道徳に反する、松崎さんは裁判に負けると。それはぼくには同意出来ないことだった。

それで要望書を出したぼくは反党人間にされたようだ。
もう赤旗紙には『ニセ科学を見抜くセンス』の広告は載らなくなった。編集者に連絡したら「絶版にはしないがもう増刷はしない」と言われた。つまり在庫がなくなったら絶版ということだ。その前まで編集者に「どんどん増刷したい」と言われていた。

赤旗紙に平野貞夫氏の本の広告は載った。

裁判の結果は松崎さんが完全勝利した。
ぼくは思った。
AHOなのは党の方だろうよ!あの反省がない限り支持できない。相対的に他の野党はもっと駄目だから投票する事はあると思うが。松崎さんも反共産党になってしまったし、他の地域にも同じように共産党の議員で共産党に嫌がらせされたりして共産党を辞めたり除籍されている人らがいると知った。その辺りの事情を見ると、共産党のほうが駄目だった。
可笑しな党員や党支持者らが松崎さんに悪罵を加えているのも見た。
まともな党員・支持者であってもこの松崎さん問題で党から正しい情報を与えられていないからよくわからないままだろう。

どうも共産党は官僚的で可笑しいのではないかと思った。
ぼくは学生時代に講演を聴いて共感した川上徹さんや哲学者の古在由重さんなども除籍されていたことを知った。『査問』などその関係の本を読んで共産党の裏の顔を知った。

なお、ニセ科学で言えば、自民や公明などのほうが酷い程度だろう。だから共産のほうが未だマシだし、権力を握っている自民や公明を主に批判すべきだというのはわかる。

だからといってぼくも強く関わった松崎さん問題で共産党が酷い対応をしたまま頬被りをしている事は許せない。
ぼくにとってこの個別的事実は重い。
共産党は1人の優秀な党員の人生を奪い、そのまわりにいた支持者を失ったのだ。
ぼくからすればこんなことをしているから、この前の統一地方選でも支持が伸びないで支持が減っていると言いたい。

ぼくは時々共産党赤旗を批判する。
それが嫌ならフォローをはずしてくれ。

(FBからは以上)

 

*追記(2020/05/22)

赤旗は、水曜エッセイに、北海道EM普及協会情報誌に連載している、ぼくから見れば薄い根拠で不安を煽る人に「5G」非難をさせていた。

毎月載っている食べ物系の雑誌の広告。ニセ医学の医師に書かせたり科学としては可笑しげな内容がある。

国会議員が可笑しげなデトックス・プロジェクトに関わったり、日本をEM(EM菌)モデル国家をねらっている比嘉照夫氏押しの自然農法議連の幹事でもある。

共産党は科学から遠ざかっていると思う。

EMX GOLD(EMX ゴールド、EM・X GOLD、EM・X ゴールド)という清涼飲料水への疑問

 EM菌比嘉照夫氏の野望である日本をEMモデル国家にして国民がEM製品をばんばん使うEM生活をするというとき、その中心にあるのがEMX GOLDです。

 

 EMX GOLDは単なる清涼飲料水です。清涼飲料水とは、飲んでも安全な水を主体とした飲料。もう少し言うと、乳製品類とアルコール飲料以外の、炭酸飲料、果実飲料、野菜飲料、コーヒー飲料茶系飲料、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、乳性飲料(乳固形分3パーセント未満のもの)などのことです。
 EMX GOLDは、薬機法や景表法などで、効能を述べることはできません。特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品にもなっていませんから、曖昧にいわゆる「健康飲料」と言うことはできても限定的にでも効果・効能は謳えないのです。

 

 それで定価は「500mL 4,650円」という超高額です。

 

 EM菌の発酵生成物を抽出と言います。そして製造過程で加熱殺菌を行っているからEM菌は含まれていないとしています。

 公表成分は100mLあたり食塩相当量0.05g。つまり薄い食塩水であることしかわかりません。

 原料は糖蜜酵母エキスなど。
 「EM医学」などで健康によいとされた「EMX(今は万寿のしずく)」とは原料などが違います。
 糖蜜は菌のエサです。酵母エキスは塩酸などで酵母を分解抽出して得た成分です。
 原料から考えると500mLの原価は、私には数十円レベルと思えます(ボトル代などもあるので数百円かもしれませんが)。
 なお、私は、EM医学について拙ブログに次を書いています。
 ↓
 比嘉照夫総監修『EM医学革命』2000を読んでみた!
 http://samakita.hatenablog.com/entry/20160329/p1

 

 EM菌は少なくても1200℃に加熱しても死なないといいます(本当ならノーベル賞級だが)。
 製造工程で加熱殺菌していますが、1200℃を超えてはいないでしょう。
 ですからEMX GOLDにもEM菌が生きているのではないしょうか? これは製造会社のEM研究機構への疑問です。
 製造工程で加熱殺菌していた別のEM製品に黒いカビ状のものが発生して製造中止・販売中止をしたことがあります。私はそのことを拙ブログで述べています。
 ↓
 EM菌は自然発生的なカビ・細菌に負けるの?製造工程は見直したのか?~「EM無香消臭剤ビセーブの自主回収と販売中止の件」から3年弱…(EM菌への疑問)
 https://samakita.hatenablog.com/entry/2018/03/28/125623

 

 比嘉照夫氏は、前のEMXと比べて効果が5倍をO-リング(オーリング)テストや波動測定の結果から述べています。効果をこの二つで述べるのは自らこの商品はニセ科学だと述べていることと同様でしょう。
 O-リングは、人差し指と親指を丸めて作る輪っかのことで、患者が作ったこの輪っかの中に医師が両手を入れて引っぱるときの抵抗で病状判定ができるという荒唐無稽なもの。
 波動測定の「波動」(科学にも波動という用語〔ウェイブ〕はあるが、こちらは精神世界的・オカルト的用語〔バイブレーション〕)は、この用語が出てきたらニセ科学とわかるような便利な用語です。オカルト系の論文誌でさえも、波動測定器は「未知の情報やエネルギーを測定している根拠は見当たらなかった」という結論を出したものです(サトルエネルギー学会誌19972巻2号)。

 

 根拠が有名なニセ科学で、超高額な清涼飲料水EMX GOLD。
 私はそんな物にお金を使うより美味しい物をバランスよく食べたり飲んだりすることをお薦めします。

【JST (科学技術振興機構)は日本の科学を大切にしているのか疑問をもったとき】

EM菌 2 - Skeptic's Wiki - Spファイル友の会
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=EM%B6%DD%A1%A1%A3%B2
はEM菌についてよくまとまっている。

 

そこでの、「サイエンスポータルのEM菌批判記事が消える」を見て、JST (科学技術振興機構)とのやり取りを思い出した。

 

JSTサイエンスポータルに『RikaTan(理科の探検)』誌の毎号からいくつか記事を掲載していた。そのときはJSTが日本の科学リテラシー向上のためにも努力していると思っていたので。

 

・しかし、松永勝彦さんの「EM団子の水環境への投げ込みは環境を悪化させる」が何の連絡もなく消えた。

 

・それで担当者とやり取りしたが対応が非常に悪かった。

 もちろん謝罪もなかった。

 

・ぼくはJSTサイエンスポータルへのRikaTan提供を止めた。

 

・個人的に親交があった故北澤宏一JST理事長からぼくはニセ科学批判を支援されていた。しかし理事長とその組織の人らとは違ったようだ。

 

JSTサイエンスポータル問題で、ぼくはニセ科学が国家的問題と認識。

JSTが信用できなくなった。

 そして現在にいたる。

水道水に塩素が含まれる意味と浄水器

 水道法施行規則で「給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1 mg/L(結合残留塩素の場合は、0.4 mg/L)以上保持するように塩素消毒をすること。」と定められています。
 塩素の役目の第一は、病原菌を殺す、つまり消毒です。かつては水系の伝染病でばたばたと人が死んでいきました。塩素がふくまれることで水道水は安全性が確保されています。さらに、塩素がふくまれることで水道水の中に生物がすみにくくなります。塩素がふくまれていないとヒル、ミミズなどが出てきたりします。

 水道水の残留塩素の正体は、次亜塩素酸、もしくは次亜塩素酸イオンであり、反応する相手がいると、塩化物イオンと水に変わります。塩化物イオンは食塩(塩化ナトリウム)の成分ですから、塩と水になります。

 水道水の残留塩素には意味があるのに、残留塩素を吸着して除いてしまう浄水器を使うのはどうしてでしょうか。
 浄水器の主役は活性炭。水道水にいわゆるカルキ臭とよばれる臭いがあり、飲んでもまずい場合があります。その場合には浄水器の設置を考えてもよいということです。活性炭で残留塩素だけではなく、カルキ臭の原因物質を除けるからです。
 ただし、訪問販売の浄水器は性能の割に高額の場合が多いです。また、ネットワークビジネスマルチ商法などと言われる人脈を活用して行うビジネスでも浄水器を扱っており、この場合も高額の場合が多いです。
 私は、訪問販売やネットワークビジネスの商品ではなく、浄水器協議会加入のメーカーのものを自分でカタログなどを比較検討した上で購入することを薦めます。

ただいま鋭意編集中!「今そこにあるオカルト・ニセ科学、カルト批判」(仮題)『RikaTan(理科の探検)』誌2020年ムック企画・7月発行

 左巻健男@RikaTan編集長です。

 『RikaTan(理科の探検)』誌 http://rikatan.com/ は現在不定期刊ですが、今年の7月発行に向けて次のような内容で鋭意編集中です。

 発行所:株式会社SAMA企画 発売:株式会社文理 

 

 発行日や定価などが決まりましたらまたお知らせします。

 丸ごとオカルト・ニセ科学、カルト特集です。 

 

【内容】

『RikaTan(理科の探検)』誌2020年ムック企画 7月発行

今そこにあるオカルト・ニセ科学、カルト批判(仮題)

*以下のタイトルも仮題です。
★目次 1P
左巻健男新型コロナウイルスとともに広がるニセ科学 
★児玉一八・「免疫力」を高めると病気にならない? 
★唐木英明 ・「検査しないと不安」という誤解 
★桝本輝樹・医療の意思決定の隙間とニセ科学(疫学と個人の問題) 
★高椅久仁子・機能性表示食品とトクホの存在意義を問う 
★浅賀宏昭・「有機農法」は本当にいいのか?   
★浅賀宏昭・「グリホサート」は危険な農薬か?  
★高山由香・実際の研究をねじ曲げて使っている健康グッズ
★長田和也・ダイエットサプリメントで痩せるのか? 
★高野裕恵・「マーガリンはプラスチック」の嘘 
★山崎 誠二・インチキ免疫療法と本当の免疫療法 
★児玉一八・福島第一原発事故放射線で「がん」多発は本当か? 
天羽優子・NMRパイプテクター問題  
★上川瀬名・青ヶ島が81cmも上下動した!? 地震予知研究のニセ科学性 
★松﨑いたる・“ホタル復活”の裏で広がるウソと環境破壊 
★山崎 誠二・PETボトルのキャップ集めは「エコ」な活動か? 
左巻健男・EM菌のオカルト・ニセ科学性入門 

★藤倉・鈴木エイト分担・今でも蠢くカルト集団 
★藤倉・鈴木エイト分担・大学新入生をねらうカルト集団 
★野本ひさ・大学のカルト対策の必要性 
★青木・カルトの偽装勧誘(正体隠しの勧誘)は許されない 
★藤倉・鈴木エイト分担・政権に入り込むカルト、オカルト・ニセ科学 
★福頼宏隆・理性と信心と妄信と 

今年以降の左巻健男の本の予定2020/03/23版

【今年以降の左巻健男の本の予定】2020/03/23版

2020年1月1日からは、

1・編著 科学はこう「たとえる」とおもしろい! 青春出版社
が既刊で、

出版社に原稿が行っていて編集中なのは、
2・単著 理科教科書 今昔(仮) SBクリエイティブ・サイエンス・アイ新書
3・編著 科学の裏表大事典 東洋館出版社
4・編著 怖くて眠れなくなる地学(仮) 4/29 PHP
5・編著 物理の図鑑(仮) Y社
6・監修 元素(仮) うえたに夫婦さんの本 D1社
の5冊かな。

来月初めに最終原稿になるのが、
7・編著 身近にあふれる「物理」が3時間でわかる本 明日香出版社

来月中旬には最終原稿になるのが、
8・単著 世界史化学(仮) D2社

上の原稿が終わると、
9・単著 身近にあふれる「元素」が3時間でわかる本 明日香出版社
10・単著 化学(仮)
11・単著 現代版ロウソクの科学(仮)
12・単著 おはようからお休みまでの「物理」「化学」(仮)
13・編著 微生物(仮)
までが決まっている(出版社で企画会議を通っている)。
ぼくの状況によっては単著ではなく編著にするものもあるだろう。

そして、企画中(出版社の企画会議を通っていない)は、
14・編著 感染症

そして、2020/03/23に依頼が来たのが、
15・単著 科学(仮)