左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ある理科教育雑誌のミス(同じミスをしないように注意←自分)

 左巻健男です。

 数年ぶりに、ある理科教育雑誌を読んでみたら興味深そうな記事が
あった。
 読んでみると実験方法もぼくがやっている方法のほうがずっと簡便
で、しかも理科室内でもできるので失望した(拙著『たのしくわかる
化学実験事典』東京書籍 今はもっと改善している)。
 もっと失望したのは、その内容のおかしさである。
・塩素酸カリウム「KClO3 で塩素(ハロゲン)、酸素、カリウム(アル
カリ金属)の化合物であり、この恐ろしげな化学式から反応の激しさが
類推」…→ならNaClも塩素(ハロゲン)、ナトリウム(アルカリ金属
の化合物で恐ろしげで反応が激しいのか。
・「アルミニウム1トンの生産に…電力は約3万kW/時の大量の電力が必
要…」→電力量ではないのか。単位はkW時ではないのか。3万というの
も大きすぎると思う。
・「ファラデーはロンドン王立研究所の地下実験室に日夜立てこもり…
法則(左巻健男注:電気分解の法則)を発見…デーヴィーは、その頃、
この電気分解という手段を駆使して、K、Na、Ca、Mgの新元素発見に
邁進しており、とても、電気分解の法則性などに目を向ける余裕などが
なかった。」→ファラデーが電気分解の法則を発見したのは1833
年だ。そのときSir Humphry Davy (1778―1829)は既に亡くなってい
る。それと科学史上では超有名な2人の確執も知らないようだ。

 あまりに酷いので雑誌名や著者名は伏せた。

 電力と電力量の単位はよく理科が弱い人は混同するからしょうがない
のか。
 科学史などの史実を捏造してしまうような記述はおもしろくする
ためなら許されるのか。
 その雑誌は編集委員会のチェックもあると思うのに、どうしたこ
だろう。

 ぼくもRikaTan(理科の探検)誌(文一総合出版)の編集長をしている
から、同じような致命的なミスを掲載しないように注意しようと思う。
─────────────────────────────

 
 実はこの著者、前に話題にしたことがある。「インチキ学位」でだ。
 ぼくは博士号無しでよいので(教育学修士)、そういうインチキ学位を
買うこともしないし(買えば大変恥ずかしい)、まともな博士号もとろう
とは思わない。

 以前書いたこと:12/01/2005 19:32:17
 さっき、何冊か本を買ってきたのですが、そのなかの一冊はぼくの知人で
●田●雄さんという科学教育研究協議会の実践家の本。奥付の肩書きが苦笑
い。イオンド大学名誉博士
 うーん。
 こういうインチキ学位に引っかかっていては科学的な考え方や科学知識を
身につけさせる理科教育者としてはまずいよなあ。
 他にもインチキ学位はいろいろあって、ぼくの身近でも大学のWEBに出して
いる人がいるんだよなあ。そういえば京都工芸繊維大学の前学長もイオンド
大学博士だった。