左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

小学校生物教育で栽培植物しか扱わないのは駄目ではないか

 ぼくの思考の推移がわかるように並べてみました。すべて新理科教育MLへの投稿です。


 ●種子の発芽と保存状態


 種子は保存状態がよければ長生きですね。
 野菜の種子の寿命については下記が参考になると思います。
 http://noguchiseed.com/hanashi/jumyou.html

 保存状態については、そこで「ただ、外気温の変化をそのまま受ける所や、湿気の多い所に保存した場合、日本の真夏の高温多湿を経験するごとに、確実にタネの寿命は尽きてきます」ということですね。

 インゲンは、
 B.やや短命種子(2〜3年)
 キャベツ、レタス、唐辛子、豌豆、インゲン、そら豆、牛蒡、法蓮草
 に入っています。

 種子の発芽で本当に重要なのは発芽しないときの「休眠」というしくみだと思います。その休眠を破るのに水分が必要、また温度条件(複雑)が必要なんですね。そして発芽するということは、貯めてある栄養分を「芽」に作りかえる活動が活発になり、酸素(空気)が呼吸に必要になるということですね。


●「休眠」とは何だ?


 「休眠を破るのに水分が必要」は現象論的にはかなり正確だと思います。文献を研究室に置いてきてしまったので、火曜日に行ったら確認してみますが。生物には例外的なことがたくさんありますからそれらをもとに不正確と言われたとしたら、ぼくは大ざっぱに(第1近似的に)述べているということだと思います。
 Cさんの「種子の休眠は、好適な条件に置かれても発芽しない状態というのが本来の意味です。」は本当でしょうか?種子の発芽は休眠状態からの成長再開ではないですか?発芽に好適な条件(水・空気・温度は条件をシンプルにしていますね。光や変温が条件のものも)に置かれたら休眠状態ではなくなるのでは?
 でもきっとCさんのことだから専門書を見てコメントしているだろうね。ぼくが元にした専門書は古いし、読み取りが間違っているかもしれません。(『植物の休眠と発芽』(東京大学出版会 UPバイオロジー 4)藤伊正(著) 1975年)

 ウィキペディアに「種子休眠」…植物の種子は、発芽に適した条件下においても発芽しないことがあり、このような現象が種子休眠である。…というのがありました。
 ぼくが言っている休眠とは違いますね。
 同じウィキペディアの「種子」の項の「種子の休眠と発芽]…種子は、好適な条件下で、種子の中にある幼い植物体が成長をはじめ、種皮を破って伸び、葉を地上に現す。これを発芽と言う。発芽以前には、多くの植物で、種子の中の植物体は休眠状態にあり、長く活動を停止して生き延びられる。…がぼくの考えですね。
 
 種子の発芽と環境とのかかわり(その種の「生活」)が見えてくるような教材が欲しいと思います。
 水と空気、温度条件なんて低学年でやるといいかもしれません。
 ぼくは日本の小学校理科教育で重視されている発芽の条件はもっと軽くしていいと思っています。 


●手許の本を見てみると…
 −栽培植物だけしか扱わない小学校生物教育は駄目なんでは…


 日本植物整理学会編の『これでナットク!植物の謎』(ブルーバックス)が手許にあったので見てみました。
 221Pに「種子が発芽に適当な条件(十分な水分、適当な温度、酸素の供給)におかれても発芽しない状態を「休眠」といい、乾燥状態で一定期間経過したり、低温にさらされたりすると休眠が破られて発芽し始めます。」とありました。
 Cさんのいうほうの「休眠」ですね。
 現在は種子の休眠の定義はそうなっているんですね。失礼しました。
 今はなき佐藤七郎さんの文章も読んでいたのに。(^_^;)
 では、発芽に適当な条件になっていないときの種子の状態は現在はなんていうんですかね?

 小学校は栽培植物しか扱わないので人間が手をかけてきたので、野生植物がもつ性質を失っているんですね。それで休眠が弱く、容易に発芽してしまう、一斉に発芽する、なんていうことになっているんですね。そんないびつな植物を元にしてるなら科学的に豊かに自然を捉えるなんてできないですね。結局は自然の断片を学ぶので水、空気、温度と覚えて終わりですね。

 春に開花する野生植物では、春遅くから夏にかけて種子ができ、落ちると半年から1年かけて少しずつ発芽します。時間差をつけて不揃いに発芽するんですね。それこそ植物の種族維持の戦略ですね。ぼくはこういうことを学ばせたいです。