左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

自分で考えないツアー登山の怖さ(地図や磁石を持ちコースを頭にしっかり入れておけよ)

 この夏は尾瀬常念岳、今回の表大雪と趣味の軽登山的なことがやれた。
 もしかして9月には屋久島にも行く。


 表大雪の登山から帰って来て、体全体が疲労に包まれているのにテンションが上がり、次は「オプタテシケ山だ!」と、その行程を調べたりしている。
 そんなとき、今回同行した青野さんが「結局、天候に恵まれいつもついているので判断を誤らないようにしないといけないというのが教訓です。」と述べていた。以前のトムラウシ山でも、今回の黒岳−旭岳−黒岳でも、天候に恵まれていたから快適な登山ができた。


 昨年の夏、大雪山系ではツアー登山で10人もの大量遭難死があった。
 実は似たような事故は2002年にもあった。
 2002年7月 トムラウシ山遭難事故
 http://www.ne.jp/asahi/slowly-hike/daisetsuzan/02taisetudata/04sonanjiko/20020711-13tomuraushi.html


 そんな記事をネットで読んでいたら、山好きのために仕事を山岳ガイドにしている人のサイトを見つけた。非常にクリアな意見の持ち主であると思う。
 ツアー登山には問題点が多い。簡単に目的の山に連れて行ってくれるが、本人が思考停止していて、あなた任せの集団登山になってしまっている場合が多いようだ。それで百名山を登頂したといっても自力で登っている人の何十分の1程度の経験だろう。昔は若い人が高レベルな登山に挑戦して死んだ場合が多かったが、今はツアー登山で悪天候に見舞われて登山の山の数は多くても山の知識や技、そして体力のない中高年が死んでいるようだ。


 ●思考停止する人々 地図も磁石もなく‥‥
 「山頂に立ったら、「これからどっちへ行くんですか?」と聞く人が多い。地図を見ればわかるはずなのだが、ツアー参加者のほとんどが地図も磁石ももっていない。仮にもっていても使い方がわからないのだから仕方ないけど‥‥。もっと酷い例では、表示板が目の前にあるのに、「ここはどこですか?」と聞く人。そんなときは、黙って表示を指差すことにしている。」
 「地図も磁石も持たず、自分の頭で考えることを放棄して、あなたまかせの集団登山に頼るのは、日本人の国民性に深く根ざしているような気がする。」
 http://homepage.mac.com/hirosis/watching/watch030731.html

 ●"新しい遭難"の背後にあるもの
 「去年と今年の山岳遭難事故の例を見てみても、典型的な中高年型の遭難が多い。地図も磁石も持たずに(というよりも使い方を知らない)山へ入り、視界不良で道に迷ったあげく、体力を使い果たして動けなくなる「道迷い」、悪天候を無視して山へ入り、雨に打たれて体力を消耗し低体温症に陥って死亡する「疲労凍死」、筋力が低下して体を支えきれずに転倒するために起きる「捻挫」や「骨折」というのが「中高年型遭難」といっていい。 」
 「新たなタイプの中高年型遭難事故」が表れてきている。「歩いている最中にとつぜん心臓が止まり、そのまま亡くなってしまう「突然死型」がそれだ。」「これらの突然死には、死に至る以前に共通したパターンが見られる。忙しくてなかなか休みが取れないので、少ない休みをできるだけ効率よく利用するために、詰め込み型のきついスケジュールのツアーに参加している。しかも北海道へ来る前日まで目一杯働く。疲れのたまった状態で飛行機に乗り、その日のうちにロープウェーで姿見駅まで登る、と行った具合だ。高度の高い場所を飛ぶ飛行機が心臓に負担をかけるのは当たり前だが、山麓で一泊してすこし疲れをとればいいものを、強行スケジュールのためにそれもできず、500mの高度差をロープウェーで一気に登れば、心臓は悲鳴を上げたくなる。秋の事故発生時刻が三時から四時にかけての夕方の時間帯だったのは、ツアーの行程を考えると納得させられる。 」
 http://homepage.mac.com/hirosis/watching/watch041213.html

 ●トムラウシ遭難の背景にあるもの 「いのち」と「おカネ」
 「問題の本質は、台風が来ているから山へ入らないという常識的な判断をせずに、台風が来ているにもかかわらずなぜ山へはいったのか、また、入らざるをえなかったのか、というところにある。 」「登山ガイドという仕事をしていれば、薄氷を踏む思いで下山口にたどり着くことが一度や二度はあるはずだ。「良いガイド」であろうとすれば危険は高まるが、収入は増えるだろう。「雲助ガイド」という評判がたってしまったら仕事は減るかもしれない。しかし、安全は基本中の基本だ。遭難死亡事故を起こしてしまったら、「良いガイド」は一気に「犯罪者」に転落する。当然ながら仕事はなくなる。登山ガイドという仕事は、「いのち」と「おカネ」のあいだを綱渡りするアクロバティックな職業なのかもしれない。」
 http://homepage.mac.com/hirosis/watching/watch031022.html