●実験・観察無しの理科教育
ネパールでは、大きく分けて1〜5年が小学校、6〜8年は中学校、9〜10年は高校の10学年制です。
今回の実験講座の対象は、高校理科教員でした。
中学校のテキストにはアクティビティとして実験・観察が載っているのに、高校の段階のテキストには載っていません。高校では、実験・観察をせずに板書と説明で終わっているようです。
それには、
・設備がないし、実験材料費がない
・10年生を終了後、SLC(School Leaving Certificate、学校卒業証書)と呼ばれる全国統一試験を受験するのですが、それが知識記憶主義の試験であるため
・教員が生徒・学生時代に実験・観察を受けていない
ということがあると思いました。
小学校や中学校の教科書には実験・観察が載っていますが、ほとんどされていないのが現状のようです。
●教員の地位は低い
SLCの合格者は、得点によって、優(80%,以上)、1st(60%以上)、 2nd(45%以上)、3 rd (32%以上)の4つにレベル分けされ、進路が決まります。人気のある医師や技術者になる進路には、1stレベル以上が必要です。
教員は、2ndレベルのようです。
SLC取得後、さらに進学する者は、大学(University)付属の2〜3年制キャンパス、または一部の高校に導入されている制度(10 plus 2)の2年制学校で学びます。その上で、大学(University)に進学します。
教員は技術者などと比べて給与が低く、社会的地位が低いようです。講座参加者と話したときも自嘲的にそう語っていました。高校で月16000Rs(円はその1.2倍だから2万程度)。
http://www.wako.ac.jp/souken/team1/nepal99/99NP_ishihara.html
高校を出てSLCをパスすれば、イコール小学校の教員になれる。さらに大学前期2年を卒えれば、その中身が何であろうと、中学校の教員資格が得られる。教育学部3年を卒えれば、高校教員になれる。それ以外の学部を出て教員資格を望む者は、1年間の教職課程履修で得られる。大学教員になるには、修士課程修了が求められる。と、つまり高卒以上の学校制度4段階が、そのまま小中高大の4教員資格とピタリ連動しているのである。