左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

少し水素エネルギーについて考えてみた

 いま、2000年暮れから2001年初めにかけての燃料電池の記事を読んでいた(スクラップファイル)。当時は数年後には燃料電池車が実用化してどんどん走っているという予想だった。ところが現在そんな雰囲気はない。


 左巻健男編著『知っておきたい最新科学の基本用語』(技術評論社2009.5)の「燃料電池/水素エネルギー」の項には、「…大量の水素をどうやって作るのかという点が水素エネルギーの大きな問題点で、現状では化石燃料から水素作っている。このようなことから、発電所からの電力をそのまま電気自動車として利用した方が効率的、高エネルギー効率のハイブリッド車が現実的という意見もある。(九里徳泰)」
 自動車の場合、燃料電池車を飛ばしてハイブリッド車と電気自動車の方向に行っているようだ。


 昨年9月訪れたアイスランドは地熱と水力発電で水素製造しようとしている希有な国だ。「水素ステーション」という大きな看板も見た。


 民生用なら家庭に来ている天然ガス改質で水素を得て、廃熱も利用すればなんとかなる。実際実用化している。しかし、車では厳しい。低温作動には多量の白金触媒が必要だ。それに使えば今の世界の車の25%分しか白金がないという。


 水素積載で水素吸蔵合金や液化装置搭載でもガソリン車と同じ距離走れるにはバカ重くなる。水素ステーション網も簡単にはできない。すると改質ガソリンを改質して水素を得ることになる。これではハイブリッド車の次にはなれないだろう。


 水素を得るのに原子力の高温ガス炉で水を熱分解というのもありえる。しかし原子力は水素と引き替えに放射性廃棄物を子孫に残してしまう。光触媒による水の分解はまだ効率が悪すぎる。
 左巻・平山・九里編著『地球環境の教科書10講』(東京書籍2005 現在6刷)にあるように水素は魔法の杖ではない。コストがかかってもよい「軽薄短小」への適応&家庭や事業所での分散型電源としての利用法になるのかもしれない。