義務教育である中学校理科で学んだでしょうか。
それは、読者の年齢によって違います。
私の手元に『新訂 新しい科学3』(1971年2月 東京書籍)という中学校理科教科書があります。
これには、1958年告示の中学校学習指導要領中学校理科の次の内容がのっています。
「(5) 電波が受信できること、および原子の構造の大要について指導する。
ウ 原子の構造
(イ) 原子の構造
a 原子は、原子核と電子とからできているこ
とを知る。
b 原子核は、陽子と中性子とからできている
ことを知る。
c 放射性元素は、放射線を出すことを知る。
d 人工的に元素を変換できることを知る。」
つまり、1958年告示の学習指導要領に準拠した検定中学校理科教科書の最後の段階のものです。
その次の教育課程(1971年学習指導要領告示 1974年4月から実施)には、前の教育課程より薄まったとはいえ、次の内容がありました。
「(8) 物質と電気
ウ 物質の構造
(イ) 放射性元素の原子は、放射線を出して、ほ
かの元素の原子に変わること。
(ウ) 原子は、原子核と電子とからできており、
原子核は、陽子と中性子とからできているこ
と。」
その次の教育課程の中学校理科から放射性元素や放射線の内容は消えて行きます。消えたのが1977年7月告示、1981年4月実施開始からです。今から約30年前から始まった「ゆとり」教育路線への方向転換によるものでした。
つまり、今、40代半ばあたりに、中学校理科で放射能や放射線を学んだかどうかの境目があるのです。内容的にピークの時期に学んだ人は1962年から教育課程実施の中学校理科教育を受けていますから、今、50代半ば以上です。
(左巻健男 未発表)