左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

左巻健男が26年前に書いた原子力発電についての文章

 「現代社会をささえる大量のエネルギー供給源は、おもに石炭、石油、天然ガスである。このうち、現在最も多量に利用されているのは石油である。これらは、もともと過去の植物が光合成によってとり入れた非常に長期間の太陽放射(太陽光)のエネルギーがつまっているもので、化石燃料とよばれる。人間はこれらの化石燃料を地下からほり出して、急速に消費している。これらの資源は有限であり、いつか枯渇することは確実である。


 その他のエネルギー源として、原子力、太陽放射、地熱、潮の満ちひき、風力などが利用されている。


 このなかで原子力はおもに発電に用いられている。火力発電が石炭や石油の燃焼で発生するエネルギーを利用しているのに対し、原子力発電ではウラン核分裂させて、そのときでる莫大なエネルギーを利用する。


 この原子力発電には、現在のところさまざまな問題点がある。


①原子炉の安全性が完全に確立されているとはいえない(時々、放射能もれなどの事故が発生)。


②発電にともなってでる非常に多量の放射性物質の処理の方法ができていない。そのため、原子力発電所をトイレのないマンションという人もいる(わが国では、放射性廃棄物は、ドラム缶につめられ、その数は何十万本にもなっている。これはたまっていく一方である)。


③温廃水による自然界のつりあいへの影響が考えられる。


④せいぜい30年といわれる寿命のきた原子炉を処分する方法ができていない。


 など、放射性廃棄物の最終処理法がみつかっていない今日、将来にわたって重大なマイナスの影響があるという警告がなされている。」


 これは1985年2月発行の『中学理科ポイント解説』(水曜社)という中学生向け学習参考書の最終講に「自然と人間」と題して書いたものの一部です。(OCRでテキスト化。)