左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ファラデーのように科学のおもしろさを伝えたい

 本号で「火と燃焼」を特集しようと思い、ファラデーの『ロウソクの科学』(角川文庫)を読み進めた。
 ファラデーは、物理学でも化学でも歴史に残る研究成果をあげたすぐれた科学者だった。いま、電灯や蛍光灯などの灯りがあって暗くなっても生活できるのは電気のおかげだが、発電所の原理−電磁誘導を発見したのはファラデーである。彼は、貧しい鍛冶屋の息子で、小学校を卒業した後、12歳のとき、本屋と製本屋を兼ねた店に製本工として入った。そこで、製本の腕を磨きながら製本工程に入ってくる本を読みあさった。とくに、彼の興味をひいたのは、自然科学の本だった。本を参考にいろいろな実験をやった。


 そんな彼が王立研究所の研究者になり、毎年クリスマスには、実験をふくめた科学の講演会を開いた。なかでも有名なのは、1861年に行った6回の連続講演。それが『ロウソクの科学』という本にまとめられている。


 読み進めて驚いた。百数十年も前に、ロウソクの火と燃焼について、今でも色あせないほどの科学的な探検をしているだ。


 彼はその講演の冒頭、「この講演で、どんな話がでてくるかをたのしみにお集まりくださったことの光栄にこたえるために、私は一本のロウソクをとりあげて、皆さんに、その物質としての身の上話をいたしたいと思います」と、語りはじめた。次にこう言った、「この宇宙をまんべんなく支配するもろもろの法則のうちで、ロウソクが見せてくれる現象にかかわりをもたないものは、一つもないといってよいくらいです」。


 ぼくは初めてロンドンを訪れたとき、その会場も見学した。当時、そこでは、彼の静かな語りと、話とかみ合った実験の演示、スムースな論理の展開、それらに集中して納得と驚きの声をあげる聴衆の姿があったことだろう。


 ろうそくの炎がなぜ輝くかをススが熱せられてとして、その同様の例としてライムライトをあげていた。ライムライトは水素−酸素炎の中に生石灰をおいて照明にしたものだ。そこからステージで脚光を浴びるという意味にも転じた。
チャップリンの「ライムライト」という映画の題名は、転じたほうの意味である。ロウソクの燃焼生成物では水にもしっかり着目している。凍れば体積が大きくなることや、水を入れた缶を熱して密閉してから冷やしてつぶすというのも見せている。


 テレビなどの実験ショーは本当に科学を伝えているのだろうか。ぼくなどが書いている科学の啓蒙書類はどうだろうか。
 RikaTan(理科の探検)誌は、今後、ファラデーの好奇心に満ちた科学の探検を少しでも意識しながら企画・編集をすすめていきたいと思った。
 ◎『RikaTan(理科の探検)』誌2008年3月号 編集前記


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 の初心だし、理科授業者の初心ですよね。