左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

融雪剤の話

凍結防止剤・融雪剤
 冬季北国で道路の凍結防止や融雪に使われる薬品を融雪剤という。水や地熱利用のような熱による融雪ではなく、薬品を雪に撒くことで凝固点降下により凝固点(融点)を下げる目的で使われる。周囲の温度が凝固点以上にあれば、水は凍らず雪は融ける。マイナス数十度まで融点が下がるので、その温度までは溶液でいるため凍らないので凍結防止剤としても使われるが、極端に寒いところでは使えない。
 融雪剤として使われるのは塩(硫酸アンモニウムや食塩、塩化カルシウムなど)であるが、除湿剤にも利用されている塩化カルシウムが利用されることが多い。食塩(塩化ナトリウム)でなく、塩化カルシウムが使われることが多いのは、食塩よりも吸湿性が高い、溶解度も大きい、−50℃まで凍らないので効果が大きいことなどの理由があるが、安価であるためである。北ヨーロッパでは塩化ナトリウムの方が安価に手に入るので、融雪剤にも塩化ナトリウムが使われることが多い。冬の間に何回も融雪剤を散布するため、金属が腐食しやすい、植林や農作物への塩害被害や、動植物の生活環境への影響などの問題点もある。そのため一部の空港や自治体では使用する塩を酢酸カルシウム・マグネシウム(CMA)など影響の少ないものへ切り替えている。(小沼順子)


左巻健男編著『知っておきたい最新科学の基本用語』(技術評論社)から。