左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ゲルマニウムの健康効果、ゲルマニウム温浴の効果に根拠無し

 いま、元素図鑑本(PHP)の元素解説を書いていて、「ゲルマニウム」のところにきたので、以前、『RikaTan(理科の探検)』誌の温泉特集に書いた一部を紹介しておきます。


ゲルマニウム温浴ゲルマニウムの効果は根拠なし
 ゲルマニウムというと、なんか健康に良さそうに思う人がいるようです。ゲルマニウムが含まれているブレスレットなどのアクセサリーをつけると「貧血によい」「疲れが取れる」「発汗する」「新陳代謝が良くなる」などの効果をうたった商品がありました。
 国民生活センターは、健康に良いとして販売されているゲルマニウムブレスレット12銘柄を対象に調査を実施しました。ベルト部分にゲルマニウムがあったものは無く、7銘柄は黒色あるいは金属の粒部分に微量あっただけでした。
まったく含まれていないものもありました。
 一番の問題は、うたわれている健康効果が科学的に確認されなかったということです。 さらに無機ゲルマニウムでも有機ゲルマニウムでも食べるのは厳禁です。1970年代にゲルマニウムのブームがあり、無機ゲルマニウムを含んだ健康食品を食べて死者が出ています。有機ゲルマニウムにおいても、食べて健康障害が起こったり、死亡した例があります。
 ゲルマニウム温浴は、ゲルマニウムを含む化合物を溶かした40〜43℃の湯に、15〜30分程度手足をつけて温浴を行う入浴方法です。
WEBサイトには、「有機ゲルマニウムは体内で多量の酸素を作り出します。皮膚呼吸によって体内に取り込まれたゲルマニウムは血液中に溶け込んで、血中の酸素量を増加させます。血液の循環によって酸素が全身に届けられるので、代謝がどんどん高まります。」「有機ゲルマニウムは約32℃以上で、マイナスイオンと遠赤外線を放出します。これらも体内に入り込んで、体を温め、代謝を高めます。」などという説明がありました。
 もし皮膚を通して血液中に入り込めば食べた場合と同じようなことになると考えられます。作り出すという多量の酸素はどこから生じるのでしょうか。本当に普通の状態より多量の酸素が細胞に行けば、酸素の酸化力で悪いことが起こるでしょう。実際はそんなことがないので、健康障害が起こっていないのでしょう。
 マイナスイオンという用語を使うだけでアウトですが、世間には未だ「マイナスイオン=健康に良い」と思っている人がいるから説明に使うのでしょう。マイナスイオンではなく電子放出という説明も多く、ブレスレットの効果の説明にも使われていますが、国民生活センターの調査結果にあるように科学的な根拠はないのです。
 結局のところ、ゲルマニウム温浴は、湯に手足をつけて温めるということによる効果はあっても、ゲルマニウムの効能には科学的な根拠はありません。
 遠赤外線というのも特別な電磁波で、体に吸収されて体を温めるイメージを与えています。しかし、どんな物体も遠赤外線を出しているし、32℃の物体から出る遠赤外線では体が温まらないし、体内に1ミリメートルも入り込みません。
 なお、ゲルマニウム温浴による健康障害は特に報告がないので、食べたり飲んだりした場合と異なり、体内にはほとんど吸収されていないのではないでしょうか。
岩盤浴は雑菌の温床の可能性も
 岩盤浴も、ゲルマニウム温浴と説明が似たり寄ったりです。説明に「遠赤外線」と「マイナスイオン」が出てきたら、その説明はニセ科学と判断してもよいと思います。
 「遠赤外線は体の芯まで浸透して温めて、細胞を活性化します。」なんてのは、皮膚表面からわずかのところ(約200マイクロメートル)までしか浸透しないで熱に変わってしまうし、「活性化」や「免疫力のアップ」などは科学的・医学的な根拠を示してから言って欲しいものです。
 さらに「毒素(水銀・鉛・カドミウムなど)を出すデトックス効果があります。」という説明もあります。汗をかくわけだから全く不要物を出さないとはいいませんが、特別に多量に不要物が出るわけではないでしょう。
 岩盤浴は、浴槽がいらないのでマンションの一室で金をかけずに簡単に開業できます。中にはシャワー室さえない施設もあります。
 一番の問題は、衛生管理。2006年にいくつかの週刊誌が「都内の岩盤浴施設の床から一般家庭の床の240倍の細菌が検出された。」などの内容を記事にしました。換気や清掃、消毒を十分に行っている施設は細菌の繁殖が抑制される可能性が高いのですが、衛生管理が弱ければ、細菌・カビがウヨウヨ状態になる可能性があります。