左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

NPO法人放射線教育フォ−ラムによると建屋での水素爆発を誰も想定していなかったと…。

 左巻健男です。ぼくが代表の「新理科教育ML」で、放射線教育フォ−ラムのことが話題になりました。

 本ブログに、ぼくは次を書いてあります。

●教育界への原子力教育の“洗脳”組織の1つ−  NPO法人放射線教育フォ−ラム −
http://d.hatena.ne.jp/samakita/20110610/1307667729

 知り合いたちが名前を連ねているのですが、少しでも関わった現場の教員は離さないで名前を使い続けたのかもしれません。


 さて、新理科教育MLで話題になったので、そのフォーラムで作成した教材の解説を読んでみました。


【「水素爆発が建屋内で起こることを原子力の専門家が誰一人想定していなかった」って、結局専門家がいなかったってことだよね!】


 http://www.ref.or.jp/powerpoint/4.11kaihukushima9-1.doc
福島第1原発原子炉建屋での水素爆発は自然現象ではありません。水素爆発
>が原子炉建屋内で起こることは原子力の専門家でも想定した人が誰1人としてい
>なかったのです。
>(圧力容器、格納容器内で起こるかもしれない水素爆発は警戒していた。詳細は
>「第2部福島原発事故はなぜ防げなかったのか」で扱う)。


 地震によって老朽原発の圧力容器も格納容器もひびが入ったと思います。その程度の想像力は原子力業界人なら持つべきだと思います。内閣に出鱈目なアドバイスをしていた似非原発学者ならいざ知らず、このような原発推進の人たちがふつうの科学常識を持っていないことに恐怖を覚えます。
 そうすると冷却ができなくなれば、核燃料の被覆材のジルコニウムと水蒸気が反応して多量の水素が発生しますが、その水素は建屋に漏れ出て行くでしょう。まずすぐに圧力容器も格納容器も水素爆発はしないのです。なぜなら酸素が少ないからです。圧力容器内の高レベル放射線のエネルギーで水の分解より酸素が生じますが、そこでは水素が超高割合で、酸素は少ないので簡単には爆発の割合になりません。もちろん、時間の経過と共に危険性は増していきます。
 原発推進派でも被覆管にジルコニウムを使うのは反対の人が多かったと故高木仁三郎さんは述べています。ジルコニウムを使うのは今の原子炉の致命的な欠陥だという人もいたのです。高温の水蒸気と反応して水素を発生するからです。しかし、中性子を吸収しにくい金属がほとんどないために使われているのが現状です。
 沸騰水型だと1つの原子炉でジルコニウムを10トンくらい使っています。これで発生する水素は莫大な量です。
 その一部が圧力容器から格納容器へ、格納容器から建屋へと漏れていけば、建屋には空気が存在しています。空気中に水素が4%を超えれば、引火すれば爆発が起こります。


【次は「がんになる」のではなく「がんで死亡」だよ!】


>23 ICRPが緊急時の最大値を100ミリシーベルト/年にしたのは放射線の被ばく量が100ミリ
シーベルトを超えるとがんになる可能性が確率的に0.5%増加すると計算されてる

放射線を100ミリシーベルト被ばくすると、がんになる確率が0.5%多くなると言われて
>います


【こんな程度で安全神話を教育界に振りまいていた反省はあるのか!】


http://www.ref.or.jp/powerpoint/4.11kaihukushima9-2.doc
>15.◆ 水素爆発で原子炉建屋が吹き飛ぶ事態は、まったく想定していなかった。
>     圧力容器や格納容器の圧力が高くなってこわれることを防ぐ努力はし
>ていましたが、水素爆発が原子炉建屋内で起き、屋根が吹き飛ぶ事態は、専門家
>でもまったく想定しておらず対策もとっていませんでした。
>電力会社は今まで「わが国ではチェルノブイリ事故のような臨界状態で圧力容器
>や格納容器が爆発することはなく、仮に放射性物質が漏れる事故があっても原子
>炉建屋があるので環境に飛散することはない」と説明していた。その建屋の上層
>部が真っ先に吹き飛び大量の放射性物質を飛散させる結果になった。
>水素爆発の恐ろしさを知らない物理・科学者はいない。圧力容器や格納容器内で
>水素爆発が起こったら最悪の事態になることがわかっていたので、ベントの他
>様々な方法で水素爆発を防ぐ対策を試みていたが、水素が建屋内に漏れて建屋の
>上部に貯まり、空気素と混ざって爆発する恐れがあることは誰も想定していな
>かった。設計の段階でも建屋は漏れた水素を逃がす構造にはなっていなかった。


 先ほども述べたが、まず建屋での爆発が容易に起こることが想定できない似非原発学者たちが原発安全神話を振りまいていたことに恐怖を覚えます。
 そして今は各原子炉の建屋にドリルを用意したから対策されたと聞いています。いざ事故が起こって建屋での水素爆発が想定されたら、建屋の天井にドリルで穴を開けて水素を逃がすのだとか。笑い話かと思いました。


【追記】
福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」ディスカヴァー・トゥエンティワン
pp.264-265によると、
・建屋での水素爆発は海外で数件の論文が確認されいるものの、今までほとんど考慮されてこなかった。
 とある。
 基礎的な科学知識が考慮されてこなかったようだ。