左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

「青春18きっぷ」を使っての鈍行ぶらぶら旅行(左巻健男)

左巻健男が20年近く前に書いた文章(当時は東京大学教育学部附属中・高等学校教諭)◎


 ぼくは、正直言ってオフタイムに何をやっているかなんて書きたくはない。だってロクなことやっていないんだもの。大体は、仕事の疲労をいやすためにゴロゴロしている。びっしり授業があって、さらに会議や他の仕事が重なったときなど、帰宅して夕食を食べるとグタッとして早々とふとんにもぐってしまう。
 最近、保護者向けに自分の趣味を書く機会があった。ぼくは、「バ−ドウオッチング、軽登山、ウォ−キング、旅行」と書いた。
 その1つ、「旅行」では、春、夏、冬休みにJRグル−プが発売する「青春18きっぷ」を使っての鈍行ぶらぶら旅行をしたりする。
 「青春18きっぷ」は、年齢制限がありそうだが、まったくない。知る人ぞ知るというきっぷである。普通列車の(快速ふくむ)の普通車自由席乗り放題で、普通車指定席、〔ホ−ムライナ−〕などの乗車整理券対象列車は、別に指定席券、乗車整理券を買えば使える。5枚つづりで1万1300円。1枚ごとにまる1日使えるから、1日あたり2260円。片道1130円以上の所を往復したり、2260円以遠の所に行くと元がとれてしまう。使う前に乗車日の日付をいれてもらうと、東京、大阪の乗車特定区間終電車まで、その他の翌日にまたがって運転する列車は、0時を越えた最初の停車駅まで有効である。旅をこれだけですますこともできるが、途中特急などを利用してもいい(ただし、特急券の他に乗車券も必要)。
 遠くまで出かけたいときは、普通列車の夜行が使える。ぼくの愛用は、新宿発村上行きの〔ム−ンライト村上〕である。300円の指定席券が必要だが、リクライニングシ−トでゆったりとしている。最初の停車駅の高崎までの運賃を支払えば、後は1枚のきっぷでどこまでも行ける。ぼくは青森の五能線が好きで時々行くのだが、1日でそこまで行けるのである。
 「青春18きっぷ」を使って、北海道まで遊びに行ったことも、広島−鳥取−金沢−東京とぶらぶらしたこともある。
 最近、時刻表を持たずに出かけてみた。もちろん〔ム−ンライト村上〕を使った。すべてでたとこ勝負。停車駅の表示板を見て、テキト−に行き先を決める。次の電車までの間、その町をやはりテキト−に歩く。海が近そうなら海を見に行く。川が流れていれば川縁を歩く。お寺や神社に行くこともある。名所旧跡にはこだわらない。宿泊は、もちろん予約無し。その場その場で決める。「ここらで泊まろうか」と思った駅で探すのである。要所にある駅ならビジネスホテルや旅館があるものだ。サウナに泊まったこともある。そうしたらまったく予想していなかった所に行き着いては泊まることになった。
 列車に乗っている間、ゆったりとした気分で車窓に目を向けたり、乗り降りする人たちの話に耳を傾けたりする。土地の言葉が行き交うのを聞いていると旅の実感が増すものだ。また数百円で想像力をかきたてる文庫本の読書にはげんだりもする。
 時刻表を活用して机上プランをたてておき、それを実行してみるのもおもしろいが、時にはあてのない旅もいいものだ。これは小さな冒険と言えないだろうか。
 ぼくは、長期の休みが終わると「次の長期の休みにはどこに行こうかな」と考えはじめる。これまで北の利尻富士から南の屋久島・宮之浦岳などの登山、インドの旅、アメリカ国立公園の旅などを行ってきた。
 今は、「次の夏休みにはトンガ王国へ行って、冬休みにはネパ−ルへ行きたい」と旅への期待で胸をふくらませている。それに「青春18きっぷ」などでの国内各地の旅にも期待がある。いつも「何かおもしろいことはないかなぁ」とあたりをキョロキョロしている感じだ。でも一番おもしろがってやっている(やりたい)ことは日頃の理科の授業かもしれない。メシのタネになっていることにやりがいがあるんだから、ぼくは幸せ者である。