左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ゲルマニウム温浴のゲルマニウムの効果は根拠なし

 2月2日(日)から『毒になるサプリ』(仮題)という新書を書き始めた。
 その新書は口から摂る健康食品・サプリを対象にするので、それ以外のニセ科学についての1つをブログに入れておこう。これはRikaTan誌で温泉を特集にしたときに書いた一次原稿の一部だ。


 ゲルマニウムというと、なんか健康に良さそうに思う人がいるようだ。ゲルマニウムが含まれているブレスレットなどのアクセサリーをつけると「貧血によい」「疲れが取れる」「発汗する」「新陳代謝が良くなる」などの効果をうたった商品があった。


 国民生活センターは、健康に良いとして販売されているゲルマニウムブレスレット12銘柄を対象に調査を実施した。ベルト部分にゲルマニウムがあったものは無く、7銘柄は黒色あるいは金属の粒部分に微量あっただけだった。まったく含まれていないものもあった。


 一番の問題は、うたわれている健康効果が科学的に確認されなかったということだ。さらに無機ゲルマニウムでも有機ゲルマニウムでも食べるのは厳禁である。1970年代にゲルマニウムのブームがあり、無機ゲルマニウムを含んだ健康食品を食べて死者が出ている。有機ゲルマニウムにおいても、食べて健康障害が起こったり、死亡した例がある。


 ゲルマニウム温浴は、ゲルマニウムを含む化合物を溶かした40〜43℃の湯に、15〜30分程度手足をつけて温浴を行う入浴方法である。
WEBサイトには、「有機ゲルマニウムは体内で多量の酸素を作り出します。皮膚呼吸によって体内に取り込まれたゲルマニウムは血液中に溶け込んで、血中の酸素量を増加させます。血液の循環によって酸素が全身に届けられるので、代謝がどんどん高まります。」「有機ゲルマニウムは約32℃以上で、マイナスイオンと遠赤外線を放出します。これらも体内に入り込んで、体を温め、代謝を高めます。」などという説明があった。


 もし皮膚を通して血液中に入り込めば食べた場合と同じようなことになると考えられる。作り出すという多量の酸素はどこから生じるのだろうか。本当に普通の状態より多量の酸素が細胞に行けば、酸素の酸化力で悪いことが起こるだろう。実際はそんなことがないので、健康障害が起こっていないのだろう。


 マイナスイオンという用語を使うだけでアウトだが、世間には未だ「マイナスイオン=健康に良い」と思っている人がいるから説明に使うのだろう。マイナスイオンではなく電子放出という説明も多く、ブレスレットの効果の説明にも使われているが、国民生活センターの調査結果にあるように科学的な根拠はない。


 結局のところ、ゲルマニウム温浴は、湯に手足をつけて温めるということによる効果はあっても、ゲルマニウムの効能には科学的な根拠はない。
 遠赤外線というのも特別な電磁波で、体に吸収されて体を温めるイメージを与えている。しかし、どんな物体も遠赤外線を出しているし、32℃の物体から出る遠赤外線では体が温まらないし、体内に1ミリメートルも入り込ない。


 なお、ゲルマニウム温浴による健康障害は特に報告がないので、食べたり飲んだりした場合と異なり、体内にはほとんど吸収されていないのではないだろうか。