左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

再生可能エネルギーへの注目&揺らいだ発電方法別の発電単価

 いま、「2時間でおさらいできる物理」大和文庫を執筆中。
 ついに最終章の5章にきた。「エネルギーの利用」の節で、以前、RikaTan(理科の探検)誌に書いたものを土台に文庫用に書き直した。そこで元原稿の中で使わなかったものをここにあげておこう。


☆現在、再生可能エネルギーに注目が集まるのは、まず東電福島第一原発の事故により、原発が深刻な事故の危険性を抱え、潜在的な不安定性を持っていることが浮き彫りにされました。また、原発は「トイレ無きマンション」といわれるように、放射性廃棄物を未来に残すことが明瞭になってきたからです。
 水力以外には、天然ガス、石炭、石油などの化石燃料は日本にはほとんどなく、輸入に頼っています。化石燃料は、二酸化炭素排出量が多いエネルギーです。
 そこでエネルギー消費量全体の中で、再生可能エネルギーを積極的に導入していこうという機運が出てきています。再生可能エネルギーは、二酸化炭素排出量が少なく、輸入に頼らない国産エネルギーとして、さらに導入が求められています。
 しかし、再生可能エネルギーには今のところ、高コストである、自然条件に左右されやすい不安定性を持つ、適用場所は広いがエネルギー密度が薄く小規模であることなどのデメリットもあります。
 日本は、この分野では技術的に高い能力を持っています。さらに積極的な技術開発をして、導入を広げる取り組みが必要でしょう。


☆揺らいだ発電方法別の発電単価
 資源エネルギーは2005年に1 kW時(キロワット時)あたりの発電単価を「原子力5.9円、LNG火力6.4円、石炭火力6.5円、石油火力10.2円、水力13.6円」とモデル試算しています。
 この値は、設備費や燃料代などから試算したものということですが、原子力が低く、水力が高いのに疑問が生じます。なぜなら原発は多くの国がその経済性から新規に建てられないなどの現実があるからです。
 立命館大学国際関係学部の大島堅一教授は、電力各社の有価証券報告書を元に、検証し、発電コストを試算しました。その結果、原子力と揚水を足したコストは2007年度で1 kW時約9円と、国の試算の約2倍であり、火力の約11円とほぼ同じであることが判明したのです。揚水発電とは、原発はつねに一定の出力で発電するため、夜間電力で下のダムから水をくみ上げて上部調整池にためておき、需要の多い昼間に落水して発電するものです。これは原発のために存在する発電で、いわば夜間電力の「蓄電所」です。
 この揚水発電を水力から除くと、水力の発電単価は約4円でもっとも安くなります。
 元々の国の試算では、原発では、発電に伴って出る使用済み燃料を再加工したり、廃棄物を処理する費用(バックエンド費用)を過少に見積もり、原発を誘致した地元自治体に対する補助金交付金(立地費用)は含めていません。国の試算はいいかげんだったのです。
 長いスパンで見れば再生可能エネルギーは、積極的な技術開発や、その広い普及の中で、もっとも発電単価が安いエネルギーになる可能性があります。