左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

北澤宏一さんを悼む(北澤さんがいたら…と思うことがしばしばある)

※理科の探検(RikaTan)誌2014冬号に書いた追悼文。


北澤宏一さんを悼む


 『理科の探検』編集長 左巻 健男 SAMAKI Takeo


 北澤宏一さん(東京都市大学学長・独立行政法人科学技術振興機構顧問・福島原発事故独立検証委員会委員長)のご訃報に接し、非常に驚くとともに、いまだに信じられない気持ちでいます。2014 年9 月26 日、急性肝不全、71 歳でした。


 北澤さんは月刊誌時代の本誌でのエッセイの連載をはじめ、私との「再生可能エネルギーが日本を変えるのか」という題での対談や、別荘でリカタン有志と一緒に宿泊学習会を開かせて頂いたほか、自宅でお蕎麦をご馳走になったりと、公私にわたり、本当にいろいろと深いお付き合いをしてくださいました。北澤さんの、アクティブで謙虚な姿勢と示唆に富むお話に、刺激を受けたリカタンの仲間がたくさんいます。


 私が知り合ったのは、北澤さんが東京大学大学院教授から独立行政法人科学技術振興機構JST)の理事に就任された頃でした。京都で科学ボランティア研究大会が開かれたとき視察に見えました。JST は科学理解増進の活動も行っており、その一環だったと思います。私は科学ボランティア研究大会の実行委員の一人でした。夜は一緒に杯をを傾けました。私などが行っている科学教育の改革に大きな期待をかけて頂いていることがわかりました。以来私は北澤さんとメールのやりとりをしたり、話をするようになりました。


 その後、北澤さんはJST の理事長に就任されました。北澤さんはニセ科学エセ科学)が科学技術立国としてのわが国に大きな害毒をもたらしていることを心配されていました。『水はなんにも知らないよ』 ( ディスカヴァー携書2007) を出してニセ科学批判の活動をしていた私を、北澤さんは後押しして下さいました。


 たとえば、2008 年12 月の私へのメールには、
 “ 左巻先生
 えせ科学の氾濫とそれにひっかかる国民の数と損害金額の大きさとはかなりのものがあると思います。しかも、人々の不安にうまくつけ込んでいるという意味で、振り込め詐欺とも一脈通じるところがあるのではないかという気さえします。
 えせ科学のQ&A教室のようなものを全国各地でもちまわってやれるような人的リソースはあるものでしょうか?
 できれば、各地での会合とホームページが作成されると素晴らしいと思うのですが・・・。
 新年の夢の一つです・・。
                              北澤宏一 ”
 とあります。


 本誌でニセ科学を特集したりするときに、北澤さんの後押しを思い出すのです。
 私たちリカタンの仲間は、北澤さんのことを忘れません。科学理解増進やニセ科学批判の活動を今後も進めていきます。                                            合掌。