左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

理科の探検(RikaTan)誌ニセ科学特集号を読んだある患者さんの変容

 医師の方(糖尿病専門医)から次のようなメールをいただきました。


 理科の探検(RikaTan)誌のニセ科学特集号を1人の患者さんが読んだ話をお知らせいたします。
 その方は糖尿病治療中の60台の女性で、仮にAさんとします。
 Aさんは、今までも次から次へと健康食品に手を出していました。待合室で読んでいた新聞に、痩せるサプリの広告が載っているのを見ると、そのままその新聞を持って診察室に入ってきて「すごくいいものを見つけたんですよ!」と言うくらいの方です。


 そんなAさんは11年前に乳がんの手術を受けていて、昨年は10年経過して再発、転移がなかったとお互いに喜び合ったのですが、11年目の今年、骨への転移がみつかったと涙ながらに報告に来られました。
 すでに抗がん剤治療は始まっていました。
 やり切れない思い、でも頑張らなければいけないという思いを語っておられました。


 次の診察に来られたときは「最近は毎日、電気の流れる椅子に座りに行ってるんです。それに座ると糖尿も腰痛もあらゆるものがよくなるんですって。ノーベル賞をもらった島津製作所が作ってるから、ちゃんとしたものなんですよ。」


 よくある最初は無料でも、そのうち言葉巧みに売りつけられるというものだと思いました。
 その点を指摘すると、「カルシウム剤をすすめられたんです。病院のお薬とは違って、それは水にとてもよく溶けるので吸収も抜群なんですって。目の前でコップの水に入れて溶けるところを見せてくれましたよ。」


 どうやら骨転移があることを聞き出した販売員が、カルシウム剤をすすめてきたようで。この話をされたときには、すでに購入済みでした。


 「あのね、肉でも魚でも水に入れて溶けないけど、食べたらちゃんと吸収されるでしょ。お薬が水に溶けやすいからって、それがよく効くこととは全く違うんですよ」と説明して、これを読んでみて、と理科の探検を渡しました。


 そして次の診察日。
 今度は、彼女が癌だと聞きつけた友人が「とにかく一度会って話を聞くだけでも」と癌に効く薬を売っている人を紹介されたと話してくれました。
 友人との関係も壊したくないので、会ってみたら、その人は特殊な岩塩を販売していて、それにはミネラルが豊富で、これを取れば医者から見放された癌も治ると言われたそうです。
 すごく貴重で高価なもので、もうほとんど手に入らない岩塩だけど、自分はあるルートを持っていて、もうけとは別に人助けだと思って販売している、とその人は言っていたそうです。


 しかし、理科の探検を読んで、ニセ科学について色々知ったAさんは「ミネラルがそんなに効果のあるものなら、他の食べ物でミネラルを取ったらいいわけじゃない?」と思って断って帰ってきたというではありませんか。


 Aさんから「買わなかった」「断った」という言葉を聞いたのは、たぶん初めてのことです。
 そして、これからも癌とは焦らずにじっくり抗がん剤を使って治していくつもりだ、糖尿病も薬を続けながら普段の生活を見直してみる、とおっしゃられていました。


 あのAさんを変えることができた理科の探検、本当にすごいです。
 長々と綴ってしまいましたが、本当にニセ科学号に感謝申し上げます。