左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

がん闘病記…大橋巨泉『巨泉の遺言撤回』&山下郁子『絶体絶命を生き抜く スキルス胃がん余命3カ月から3年半』

 『巨泉の遺言撤回』読了。ツレに「放射線治療の副作用などがわかるわよ。読んでみたら」と渡された。

   巨泉は何気なく耳の下を触ったらしこりが。既にリンパ節に転移したものを発見したのだ。元の病巣は咽頭がん(ステージ4A)。
 リンパは手術で切除、咽頭放射線
 放射線治療の副作用で味覚を失う。2ヶ月間固形物をとれなかった。筋力の衰えは無残。想像を絶する苦しさ。しかし、がんはとれた。
 2度目のがんで人生の優先順位を再び考えた。1に健康、2にパートナー、3が趣味で、4が財政は変わらない。巨泉がそのとき考えているのは「5年ごとの人生」。5年ごとに「今回の人生では○○をする、しない」など。やらないことは「競争」。
 巨泉は、今回の人生では少なくてもあと5年は生きてふたりの結婚50周年を祝いたい。


 ぼくとツレは「80まで生きたらもうおまけの人生だと思う」で一致。巨泉は82歳で死去。
 本書の前に再読したスキルス胃がんの闘病記では抗がん剤の副作用の辛さを知った。本書では放射線治療の副作用を知った。

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 書棚に以前読んだ山下郁子『絶体絶命を生き抜く スキルス胃がん余命3カ月から3年半』が目に入った。気になったので再読しよう。プロローグは「スキルス胃がん ステージⅣ……余命三カ月」から始まる。このがんは胃がん全体の1割ほど。20〜40代の女性に割と多いらしい。
 スキルス胃がん。食べる度に胃がぱんぱんに。通常の胃がんと違って塊にならず胃壁をはうように広がって胃を覆う。そしてがん細胞をお腹の中にばらまいて腹膜播種状態を起こし転移しやすいたちの悪いがん。
 彼女もお腹を開けてみると腹膜播種で手術不能。抗がん剤治療に切り替え。1か月を1クールとして6クール。ある日医師に「私は崖っぷちなんですよね?」と尋ねたら「もう崖の下に落ちている状態。だから這い上がるしかない」
 抗がん剤治療1クール目。恐るべしシスプラチン副作用。まず息ができないほどの嘔吐の連続。食欲無し。母の「もう少し頑張って食べたら!?」に傷ついた。「これ以上頑張れないよ!…」と大声あげて泣きじゃくった。
 抗がん剤2クール目の前日、豚骨ラーメンとカレーライスを食べた。2クール目は本当に酷い目にあった。少しは馴れるかと思ったが完全に裏切られた。4クール目が終わった後CTの検査で雑巾を絞ったような胃から少しふくらんでいた。5クール目。最高に辛かった。
 先生に一度ステージⅣの次を尋ねたことがあった。Ⅳまでしかないことをその時初めて知った。シスプラチン6クールの後はTS-1による治療が再スタート。故郷の福岡に戻って長年の夢に一歩踏み出し、某大学の通信教育部の教育学部教育学科に入学。
 胃、浸潤先の大腸と肝臓。2年ほど経ってから新たに膀胱と卵巣のがんが顔を出した。がんが沈黙を破りまた活動し始めた。検索して見ると彼女は2006年11月にスキルス胃がん発症で2011年7月に永眠されていた。