左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

白神山地の歩きを愉しむ(左巻健男)

 

 

 

 

■十二湖めぐり

 五能線の十二湖駅で下車。リゾートしらかみ発着時刻に合わせて、十二湖めぐりのスタート地点「アオーネ白神十二湖」まで無料送迎バスがあります。
十二湖めぐりは、交通の便が良く、危険な場所もなく、道標・トイレ・遊歩道が整備されていて、スニーカーで歩けます。
 今は、ブナの森と池沼群を気軽に満喫できる明るい観光地になっていますが、かつては岡田喜秋『日本の秘境』(スキージャーナル 1976)に取り上げられていました。岡田がこの地を旅したとき、「予想通り、出会う旅行者は一人もいなかった」ということです。かつては十二湖は秘境の地だったのです。
 十二湖には、 実は大小33個の池沼があります。十二湖の成因は、今村明恒「西津軽十二湖の成因」(地質学雑誌 1935 41号)によれば、1704年の能代地震による崩山の八合目あたりの崩壊で沢がせき止められ、地盤が陥没して形成されたと考えられています。これらの池沼の背後にある崩山(くずれやま 940メートル)の頂上から見下ろすと、樹形に隠れて12個の湖だけがはっきり見えることから、この名がついたようです。
 十二湖ビジターセンターには、十二湖に生息する動植物が展示紹介されています。また、幻の魚“イトウ”の養殖施設が併設されています。開くのは4月下旬~11月上旬でその間は無休です。ここで十二湖の自然を学習しましょう。
 33個の池沼すべてを回るなら1日がかりになります。
一般には、王池、越口の池、鶏頭場(けとば)の池、青池、人によっては青池の先の沸壺の池あたりまでを歩いて回って3時間程度かかるでしょう。
 岡田が「最後に一段と低く沈んで見事な青い湖面がのぞいたとき、それが十二湖の白眉といわれる“青池”だということはすぐわかった。」と述べる青池は、本当に十二湖の白眉だと思います。
 ぼくはまだ体験していませんが、冬にはかんじきでアオーネ白神十二湖~十二湖ビジターセンター~青池やブナ林をまわるトレッキングが行われています(事前申込)。見通しのよくなったブナ林にはウサギやカモシカの足跡が点々と続き、青池は濃紺に変わって神秘さを増しているとのことです。

白神岳に登る
 少し体力が必要なのが白神岳登山(1232メートル)。
 JR五能線白神岳登山口駅(海抜0メートル)から日帰りでも十分登れます。駅から登山口まで徒歩50分(車があれば登山口に駐車場があります。あるいは駅にタクシーを予約しておきます[タクシー待ちはありません])。
 登山口の駐車場横には真新しい休憩所があり、トイレや水があります。
 登りのコースタイムは、登山口(40分)→二股分岐(1時間20分)→マテ山山頂(1時間20分)→十二湖コース分岐(20分)→白神岳山頂。下りは山頂から登山口まで2時間30分。
 二股分岐でマテ山コースに行きます。もう一方の二股コースは、急傾斜が続き、丸太橋がかかった川を渡るところもある上級者向けのコースです。下りに二股コースを使ったことがありますが、ロープをつかまないと下りにくい急傾斜の道には疲れました。
 二股分岐までは、青森ヒバなどの木が茂っていて、その後の主稜線はブナが立ち並び「ブナ街道」といわれています。
 十分日帰りもできるコースですが、頂上に立派な避難小屋がありますので寝袋・食料・水持参で宿泊するのがよいと思います。立派なトイレもあります。
ぼくは、いつも小屋泊まりにしています。雪がない季節なら、小屋に泊まって下りを十二湖に降りるコースがお薦めです。なお、クマ対策のために音の出る鈴などをもって登山しましょう。
 ブナ林の中を歩き到達した白神岳山頂からは、広大な日本海が足下に広がり、黄金崎の半島がそっくり形を見せてくれます。
 登山の季節ですが、佐藤勉・坂本知忠『新版 白神山地』(現代旅行研究所 1987)によると次のようです。

───────────────────────────

 4月末から5月初めにかけては標高5~6百メートル以上は残雪があります。頂上には約2メートルの残雪があります。この時期、オホーツク海気団の圏内に入って晴天が続くときは白神岳登山に絶好の季節です。
 途中から雪の上ですが踏み跡もあり、歩きやすいです。ただし、この時期は低気圧の往来が激しく天気が悪くなると濃霧と雨になります。そのときの登山は危険です。
 6月中旬ごろからは残雪も消え、晴天が比較的多く登りやすくなります。山頂から十二湖に降りることもできます。
 7,8月は本州中部で梅雨をもたらした前線がこのころ北上し、この地に停滞して連日のように雨が降ることが多くなります。晴れても蒸し暑く、昼はカ、朝夕はブヨ、昼夜はカと虫攻めにあいます。白神岳の登山なら虫対策、雨対策をして臨めば大丈夫と思います。
 9月は台風のシーズンですが台風がこの地を通過することは比較的少ないです。しかし、ひとたび来れば影響が大きくなります。
 10月末ごろから積雪が始まり、翌年の3月まで冬の季節になります。季節風が卓越し、連日の風雪になります。

───────────────────────────

■暗門の滝-ブナの森に響く滝-を歩く
 ブナの森の中を歩いて暗門の滝を見に行くハイキングもお薦めです。
 5月~10月には、弘前からアクアグリーンビレッジANMON(センターハウス、コテージ、大浴場などを持つ総合キャンプ場)までの直通バスが1日に2便あります。落石・土砂崩れで全面散策禁止になったり、第1の滝までに制限などがあったりします。事前に、ネットで「白神公社」の「白神ブログ-白神の最新情報」をご覧下さい。あるいは目屋観光協会(電話0172-85-2800)、アクアグリーンビレッジANMON(電話0172-85-3021)にお問い合わせ下さい。
 暗門川に沿って登山道を35分程度歩くと第3の滝に出ます。さらに10分程度で第2の滝、そこから15分で第1の滝にたどりつきます。
 帰り道はブナ林散策道のほうを歩いて戻ります。
休憩を入れても散策は3時間弱。暗門の湯(人工温泉)で散策の汗を洗い流すことができます。

天狗岳頂上から奥深いブナの森を見る
 天狗岳は、頂上からの見晴らしが素晴らしく、白神山地の山々を眺望することができます。白神山地の山々を登っている根深誠さんは、この天狗岳白神山地で最も眺望のよい山としています。
 白神ラインの天狗峠(駐車場所あり)近くの登山口から歩いて往復5時間半程度です。行きの途中、左側が崩れている場所があるので、張ってあるロープの助けを借りながら注意深く移動します。
 登山口手前の津軽峠では、ブナの巨木“マザーツリー”に出会えます。