左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

薬や食品の有効性の根拠で信頼できるのはコホート研究以上

 薬や食品の有効性を調べる研究で、根拠の低いものから高いものを並べると次のようになります。ヒトについての試験としては、少なくてもコホート研究以上でなければ根拠があるとはいえません。
試験管レベル、動物実験レベルの根拠性は低いのですが、それよりもずっと低いのが体験談です。人を対象にした試験で有効性がない健康食品・サプリには近づかないことです。


・体験談

・培養細胞などを使った試験管での研究

・マウスなど動物を使った研究

・症例報告(患者に健康食品を摂取してもらい、どのように変化したかという報告)

・ケースシリーズ(症例報告と同じことを複数の患者に行ったもの)

コホート研究(健康食品を摂取している患者の集団を長期的に観察する研究)

・オープンスタディ(患者を、健康食品を摂取してもらうグループとそうでないグループに分け、効果を比較する研究)

・一重盲検

・二重盲検

・メタアナリシス

・システマティックレビュー(体系的評価)


二重盲検は、ランダム化比較試験ともいわれます。ランダム化試験は、対象をランダム(任意に。でたらめに)に選び、介入(薬・検査・看護など)を行うグループ(実験群)と介入を行わない群(対照群)にわけ、評価を行う方法です。


 メタアナリシスは単独のランダム化比較試験をたくさん集めて、それらを統計学的に評価する手法です。
 システマティックレビューは、ランダム化比較試験のような質の高い研究のデータを、バイアスを限りなく除き、分析を行うことです。メタアナリシスはその一手段ですが、ふつうはシステマティックレビューと同義としてよいでしょう。


コホート研究は、ある集団(コホート)を追跡し、コホート内の人々の間でイベント発生(喫煙、運動、食生活など)がどのように異なるのかを調べて、その違いでその後の経過がどうなっていくかを見ていく方法です。
 これらの研究方法で有効性が認められたサプリのうち、ビタミン・ミネラルについては次のようです。なかにはランダム化比較試験により効果があったとするものとなかったとするものとがあります。そのため、メタアナリシスやシステマティックレビューの結論では判定が保留になっているものもあります。したがって、ここの表で示された結果は暫定的なものと理解しておきましょう。


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成分 対象疾患と効果 研究方法
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ビタミン
ビタミンB1 生理痛の予防 システマティックレビュー
ビタミンB6 つわり システマティックレビュー
ビタミンB12 つわり システマティックレビュー
葉酸及びビタミンB6 虚血性心疾患の予防 コホート研究
葉酸 乳がんの予防 コホート研究
葉酸 神経管閉鎖障害の予防 ランダム化比較試験
ビタミンC 急性上気道炎の治療 システマティックレビュー
ビタミンE 前立腺がん予防 ランダム化比較試験
    生理痛の予防 システマティックレビュー
ビタミンD及びカルシウム 骨塩量の低下抑制、骨折率の低下 ランダム化比較試験
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ミネラル
  カリウム 高血圧の治療 メタアナリシス
マグネシウム 生理痛の予防 システマティックレビュー
マグネシウム 妊娠中の下肢痙攣 システマティックレビュー
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