左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

理科の探検(RikaTan)誌4月号の特集記事の1つを部分的に紹介→高橋昌一郎『反オカルト論の反響 現代社会における「非論理・反科学・無責任」』

理科の探検(RikaTan)誌4月号 http://rikatan.com/ の特集記事の1つを部分的に紹介。

高橋昌一郎『反オカルト論の反響 現代社会における「非論理・反科学・無責任」』

著者は、國學院大學教授。専門は論理学・哲学。超常現象やエセ科学を究明する Japan Skeptics 副会長。

☆は小見出し

☆『週刊新潮』連載と宗教法人幸福の科学

☆フォックス事件と大門正幸氏

☆STAP事件と小谷野敦

  2016年1月には小保方晴子氏の『あの日』が講談社から発行された。なぜこのように一方的なイメージを与える本(「トンデモ本」と呼ぶ人もいる)を講談社が刊行したのかについては、講談社から単著・共著・翻訳を含めて6冊の書籍を出版している私としても残念で、連載でもあえて批判的見解を述べている。


  小保方氏の『あの日』は、「私がES細胞を混入させたというストーリーに収束するように仕組まれているように感じた。実際に、これら一連の発表は、私の上司にあたる人たちによって、周到に準備され、張り巡らされた伏線によって仕掛けられた罠だったとも受け取れた」という彼女独自の「陰謀説」を展開している。


  小保方氏によれば、その「陰謀」の黒幕は若山照彦氏である。「私に何の確認もないまま、保存されていたサンプルを中途半端に解析され、一方的に結果を決めつけられ、間違った情報をマスコミに流される。ただただ恐怖だった」とか、「私は混入犯に仕立て上げられ、社会の大旋風の渦に巻き込まれていった」などと、何度も同じような「被害者感情」を繰り返し強調することによって、『あの日』の文章は「罠に嵌められて、恐怖に怯える弱い女性」の印象を読者の脳裏に焼き付ける。


  この本を読んで大いに感動したらしい文芸評論家の小谷野敦氏は、「小保方さんに詫びる」というレビューをAMAZONに投稿している。
《まことに戦慄すべき内容である。私は当時、女性誌の求めに応じて小保方さんに悪意あるコメントを寄せたことがあり、ここで詫びる。》


  小保方氏と対談した瀬戸内寂聴氏をはじめ、科学研究からほど遠い世界に生きている文芸家が『あの日』を読むと、小保方氏に感情移入して、彼女こそが科学界とマスコミから苛められている「犠牲者」だと思い込み、彼女の熱烈な味方になるのかもしれない。その代表格の小谷野氏は、拙著のAMAZONレビューには「高橋昌一郎の理性の限界」と投稿して「罵詈雑言」を浴びせかけている。


  一般に科学論文の「研究不正」は、①盗用(他人の文章や画像を無断でコピー・ペーストする)、②改竄(データを意図的に都合よく切り貼りする)、③捏造(存在しないデータを故意に創作する)の順に「悪質」とみなされるが、小保方氏の論文には、そのすべてが「悪い例」として「教科書的」に登場する。いかに小谷野氏が庇おうと、この事実に変わりはない。


☆結論

 連載を終えて改めて実感したのは、「人は信じたいことを信じる」ということ。それに、どう対処すればよいのか。拙著『反オカルト論』が少しでも読者のヒントになれば幸いである。