左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

須田桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』から事件をふり返る

小谷野敦氏との電話のやり取り。
STAP細胞事件は指導の山梨大の若山教授が悪い!」「その根拠は?」「「あの日」に書いてある」「ぼくはその本を読んでいない」「それじゃあ話にならない」「読む気にならない。博士論文から不正をし続けた人ですよ」…
結局、堂々巡りで「インチキな人とは話にならない」と電話を切られた。


小保方晴子『あの日』は読む気が起こらない。自己弁護だらけというのを生命科学系の尊敬する友人らから聞いていたからだ。
でも、この前ブックオフにあったので読んでみるかな。読む価値はあるのかな?


小保方晴子『あの日』に感情移入して応援してしまった、科学史に残る科学不正事件に無知な人らがいる。瀬戸内寂聴も好きだったのに、その1人のようだ。対談して応援を表明以来その程度のレベルかと残念に思った。生物系のツレ(高等学校で生物を教えていた)も瀬戸内ファンだったがそれ以来色褪せて見えているようだ。


理科の探検(RikaTan)誌では、2014年秋号に佐野和美「STAP細胞騒動をどう見るか」が掲載されています。2018年2月号の「ニセ科学を斬る!」特集に 小保方「あの日」を検討する という記事を佐野さんに書いて貰うことを考えたいと思います。


【理科の探検RikaTan&左巻健男‏ @samakikaku 2月26日】

いま須田桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』文藝春秋を読んでいる。まず最終の12章を読んだ。02年に米国で発覚の超伝導をめぐる捏造事件と比較。指導的な立場のシニア研究者がチェック機能を果たさなかった。不正を見抜けない一流科学誌の査読システム。


超伝導のシェーン氏も小保方氏も学生時代から不正行為。シェーン事件との大きな違いは疑惑発覚後の所属機関や母校の対応。理研早大の対応に失望と憤りを感じた。


半分くらい読み進んだ。「これは科学史に残るスキャンダルになるかも」というやりとりのあたり。科学史に残るスキャンダルと言ったら「ユタ大学の常温核融合スキャンダル」が有名。


須田桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』の8章まできた。理研が論文撤回ですまそうと。再調査をしないで隠蔽しようとする態度に怒り。


「このまま幕引きを許せば、真相は永遠に闇の中…日本の科学界、及び科学ジャーナリズムの敗北とも言えるのではないか。」
山梨大に若山氏を訪ねる。再調査開始へのコメント期待。しかし到底実現不可能だと悟った。


「2月以降、若山氏が情報発信するたびに理研などからさまざまな圧力を受け…」
若山氏は何回試してもSTAP細胞ができない。小保方氏に培地を貰ってもできない。
若山氏「(実験)ノートを提出させてちらっとでも疑いの目で見ていたら見抜けたかも」
解析結果から重大な不正行為があった可能性。


 9章「ついに論文撤回」。小保方氏の異例づくめの採用過程。研究体制の閉鎖性。それと小保方氏のずさんな研究データの記録・管理。大元には研究組織の構造的な欠陥。トップ層のなれ合い関係。


10章「軽視された過去の指摘」。STAP論文は2014年1月末にネイチャーに掲載される前、3回同様な内容で投稿され不採択になっていた。その査読資料を独自入手。小保方氏は査読者になってほしくないと山中伸弥教授などを指名。


iPS細胞研究を相当に意識していた。
査読者からは厳しい指摘が多々あった。とくにES細胞混入の可能性が指摘されている。
笹井氏は査読コメントを読んでいなかったという。


採択された論文では多機能性を示すグラフの不都合と思える部分やSTAP幹細胞でTCR再構成がないことは記載されていなかった。研究倫理に反する。
著者「本来、一流誌に掲載され、理研が大々的に発表するような内容ではなかった、という確信が深まりつつあった」


11章「笹井氏の死とCDB「解体」」。
「研究者の間ではそもそも早稲田大学が小保方氏に実験ノートの仕方などの基本的な教育を徹底することもなく、博士論文の精査もせずに博士号を与えていなければ、STAP問題は発生しなかった、という声も大きい」


笹井氏の自殺の知らせ。52歳。「私の取材は1月の記者会見に「絶対に来るべきです」という笹井氏からの誘いのメールで始まった」。
小保方氏への遺言にはSTAP細胞を絶対再現してくださいと。ある研究者はこれを「足かせを一生かけたとしか思えません」。


理化学研究所は理事長以下幹部を交代せず。危機管理対応の失態の責任をとる人がいないので期待もできない。
嬉しいニュースはSTAP細胞ES細胞だった可能性を示した遠藤理研上級研究員が論文をまとめたこと。誠実な対応。自浄作用。


既に読んであった最終の12章。問題の研究者は学生時代から不正をするものだし、その後も当たり前のように不正行為を続けるものだ。