左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

天羽優子「ニセ科学とスラップ訴訟 EMを例にして」6pを読む〜理科の探検(RikaTan)誌2017年6月号〜

 6/25のの報告のために理科の探検(RikaTan)誌2017年6月号の天羽優子ニセ科学とスラップ訴訟 EMを例にして」6pを再読しておこう。


 スラップ訴訟とはstrategic lawsuit against public participationの略で、威圧訴訟あるいは恫喝訴訟と訳される。 
 根拠が無いままに、比嘉氏の主張するEMの「効果」はどんどん増え続け、飲めば健康に良い、といった健康グッズの商売のネタとしてはありがちなものから、EMが容器の蓋越しに影響を及ぼしそれは重力波によるものだ、といった荒唐無稽なものにまで。


 このような宣伝がなされているEMを無批判に学校教育の現場に持ち込むべきではない。そんなわけでRikaTan誌でも、過去に何度もEMに対する批判記事が掲載された。
 比嘉氏の主張を精力的に擁護しているのが出口俊一氏。


 その出口氏ににRikaTan編集長左巻健男名誉毀損で提訴された。
●EMの入った密閉した容器外のウイルスが失活をDNDサイトに載せたことは真正のおばかと。
暗黒通信団の学界のトンデモ 出口俊一【と学会誌初出】」を拡散し、その文中の「「要するにやってることはヤクザそのものである。記事に対して記事による反論ではなく、著者と面会して個別撃破しようとするスタンスは、そもそもジャーナリストですらない」を引用し、ブログにも書いたこと。」


 地裁の第一審判決は、原告の請求棄却(=表現は名誉毀損とはいえない)。出口氏は控訴したが、控訴審も棄却。要するに左巻健男の完全勝利。いま最高裁


 本件訴訟では、訴状に書かれた請求金額は1000万円以上。結論からいえば、これは随分高額。
 天羽さんは、他の名誉毀損事件の毀損の程度や認められた金額を考慮すると、敗訴しても認められる請求金額はせいぜい10万円前後だろうという予想。
 訴訟開始時に90万円近く(消費税込)を払うから、原告にとっては提訴の時点で大赤字確定。


 原告の訴えは、敢えて相場よりはるかに高い請求金額で訴訟することで被告にプレッシャーをかけ、EMへの批判を萎縮させることを狙ったものである、つまりスラップ訴訟であると見做さざるを得ない。
(なお、その請求賠償金額を見てぼくは出口氏も弁護士も名誉毀損訴訟に素人だなと思った次第。)


 名誉毀損訴訟が起こされやすい理由は、原告にとって負担が少なく、直ちにニセ科学言説が問題とならないから。


 名誉毀損事件では、免責される要件を満たしていることを証明するのが被告の仕事だが、それは天羽さんの論説に詳しい。やくざについては名誉毀損が成り立つとしたが、出口氏がやった事実、原告の訪問を受けた人達からの情報提供などで免責。


 天羽さんは原告もまたリスクを負うと述べる。
 過去に、出口俊一氏は株式会社EM研究機構の顧問をしており、利害関係があったことがはっきりした。
 原告の、EMに批判的な研究者の職場や自宅に電話したり訪問したりしてクレームをつけるという常套手段が、裁判によっていっそうはっきりわかった。


 天羽さんは、最後は「訴訟を怖がる必要はない」という。
 「よほど悪質な誹謗中傷でない限り、敗訴しても賠償金の金額はそれほど高くはなりませんので、そう不安がる必要もありません。」