左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

EM(EM菌)で放射性物質除染ができるのか?

 比嘉氏は、EMは神様で万能ですからあらゆることに効果があるとしています。もちろん福島第一原子力発電所の事故による放射性物質汚染に対してもです。福島でEM関連団体がEM活性液をじゃんじゃんまく除染活動を始めました。


 フジテレビスーパーニュースが2012年10月17日に「福島でまかれる"EM菌" 検証!除染効果はあるのか」を放映。その文字起こしがされています。


 私の文責でその内容の一部を紹介しましょう。
 比嘉氏が「波動」という言葉を使って「EMをまいていない隣の畑に影響を与える」と言っていることに注目しましょう。この「波動」は科学の「波動」とは別物です。


 また、放射性セシウムにはセシウム137とセシウム134があり、福島事故で大気中に放出されたセシウムは137と134が1:1。それらによる線量は27:73。半減期はそれぞれ30年と2年。放射性セシウム放射線は30年ではなく3年ほどで半減するはずです。日が経てば線量は減っていくことにも注意しましょう。


 以下では省略しましたがEM菌をまいていたエムポリアム幼稚園では自然の減少と同じでした。また、EM側が宣伝している「作物(コマツナ)をEMで作った堆肥で育てると、作物の放射性セシウムを減る」という福島県農林水産部の試験結果も、番組内で福島県農林水産部・武田信敏副課長は「植物が取りこめる形のカリウムの量に要因があると言う風に考えております。」と述べています。つまりEM堆肥にふくまれているカリウム(主に堆肥原料由来)が作物に放射性セシウムが吸収されるのを防ぐ効果によるのです。


●がついた見出しは私がつけたものです。
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●比嘉氏「EMをじゃんじゃんまけ!」
安藤キャスター:放射能汚染問題を抱える福島県で、放射性物質を減らすことが出来るという、ある微生物が撒かれています。
石本アナウンサー:EM菌と呼ばれるその微生物の効果に疑問の声が上がる中、私たちは開発者を直撃しました。
… (下妻市講演会の映像)EM菌開発者 比嘉照夫氏:EMをじゃんじゃんまけ!


●EMで放射性セシウム半減期が短くなる?
ナレーター:比嘉氏はEM菌を土壌にまき続ければセシウムの量をを減らすことが出来ると断言。では、その根拠は?
比嘉氏:この(EM菌の中の)光合成細菌がそういった(放射能の)エネルギーを使ってしまったんではないかと。その放射線がどんどん使われてしまうと、当然(放射性)物質は変換をして。ですから30年かかって変換・・・
 これ(放射線)がどんどん使われてしまうので(セシウムの)半減期が短くなったのではないかと。
ナレーター:菌の作用で放射性セシウム半減期が短くなった??? 比嘉氏はそのメカニズムについて、EM菌にふくまれる光合成細菌という微生物がセシウムから放射線を積極的に取り出し、セシウムその物を崩壊させているのではないかと説明しました。ところが専門家からは疑問の声が・・・
フジテレビ記者:光合成細菌が放射性物質そのものを減らす、なくすことはありえますか?
広島国際学院大学 佐々木健教授:それはありえませんね。放射能を減らすという能力は光合成細菌にはありません。… 
ナレーター:こう語るのは光合成細菌を40年間研究してきた広島国際学院大学の佐々木教授。
佐々木教授によると、光合成細菌にはセシウムを吸収し集める能力はありますが、セシウムその物を減らすことは出来ないと言います。さらに市販されているEM菌を佐々木教授に顕微鏡で観察してもらうと・・・
佐々木健教授:ほとんど乳酸菌ですね、これは。これ見る限りでは光合成細菌がほとんど見えない状態ですね。
ナレーター:見てもらったEM菌の中にはセシウムを吸収する光合成細菌が見当たらないと言うのです。


●EMの除染効果に疑問の結果
ナレーター:畑の土には半減期が2年と、比較的短いセシウム134もふくまれるため、セシウムの減少する率が高くなったのではないかと指摘しました。
 実際に確かめてみるため、私たちはEM菌関係者の指示に従って、EM菌をまいた畑とまいていない隣の畑の土を採取。
 環境省から土壌などにふくまれる放射性物質の分析を依頼されている同位体研究所で、二つの土のセシウムの量を測定することにしました。その結果は・・・
同位体研究所所員:こちらの結果ですが、A区(EMをまいた畑)とB区(EMをまいていない畑)で。 A区(EMをまいた畑)の方が放射能測定値が若干高い結果になりました。
(映像 EMをまいた畑:8,002 EMをまいていない畑:5,240)
ナレーター:なんとEM菌をまいた畑の方がセシウムの量が多いと言う結果に。
 EM菌の除染効果に対して、いくつも浮かび上がった疑問点。


●EMをまいていない隣の畑に「波動」で影響
ナレーター:では飯館村のブルーベリー畑で何もしていない畑より、EM菌をまいた畑のセシウム量が多かったという検証結果に関しては?
比嘉照夫氏:いやそれはやっぱり(EM菌の効果が)30 mもかぶったりもしますからね、その影響だと・・・ 間が25 mから30 m位だと、まかなかったところも一緒に10何%(放射線量が)下がるんです。ですからそれは波動とか、そういう影響なんで・・・
ナレーター:突如現れた波動という言葉。まいていた畑のEM菌が発する波動なるものが、30 m離れた畑のセシウムまで減少させていると言うのです。


●効果に疑問があってもまかれ続けられるEM
 EM菌には放射性物質を減少させる力がある。 最後までその主張を変えなかった比嘉氏。あの日の原発事故以来、放射性物質による汚染に悩まされ続ける福島の住民たち。その効果に疑問の声が上がるなか、EM菌は今日もまき続けられているのです。
スタジオ・安藤キャスター:開発者の比嘉氏らは2日前に私どもにメールを送ってきて、このEM菌には光合成細菌がふくまれていること、そしてそれがセシウムを減らす効果があるとの主張を改めて繰り返しました。
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 仮に光合成細菌がいたとしても、光合成細菌が光合成に使える電磁波の波長は可視光線レベルであり、ガンマ線などの電離放射線は使えません。
 発酵や腐敗など、微生物が行えるのは原子の組み替えが起こる化学反応のレベルです。原子核に作用して半減期を短くすることなど不可能です。もし、そんな能力を持った微生物が発見されたら世紀の大発見です。


 なお、もともとのEMの種菌をつくっているサン興業は、EMを神様に祭り上げてなんにでも効能があるという比嘉氏と違って、微生物がやれる限界を誠実に考えていると思えます。
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EMと放射能(除染)

 比嘉教授はEMにより放射能の除染が可能だと主張しております。比嘉EMでは可能かもしれませんが、弊社が確認出来るサイオンEMを含む他EMでは不可能、又は可能性があっても誤差の範囲内の効果なのかと考えています。
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 今回の放射能除染の問題は原子転換のレベルでの話なのか、または微生物が何らかの方法で放射能を吸収し外部へ出さないのか等、色々な可能性を秘めていることは否定しません。しかし比嘉教授の発言のレベルを期待できるかは非常に疑問です。少なくともサイオンEMを製造している弊社としては、過大な期待を多くの皆様に持たすことはできません。
 先に述べましたようにEM又は微生物は、有機物又は一部重金属無機物を分解し無害化する事は可能であると考えます。しかしそれを拡大解釈し放射能除染が可能との発言は、学者としての品位を疑います。可能性の段階であればまず効果を確認、データで示し、再現性を実現し、効率、費用、その他を勘案して提案すべきです。可能性があるから検証・実証・実現は他科学者に任せるでは、あまりにも無責任です。しかしこれが今迄の比嘉教授の実像ではなかったでしょうか。
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