左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ニセ科学と教員-ニセ科学にだまされる教員たち-

ニセ科学と教員】by左巻健男『学校に入り込むニセ科学平凡社新書

 

ニセ科学にひっかかりやすいタイプの人 

 ニセ科学を信じ込み、ニセ科学を学校で教えてしまう教員がいるのはなぜなのか? と問われることがある。そんなときぼくは、「教員も一般の大人に過ぎない。一般の大人にも、ある割合でニセ科学を信じ込んでしまう人たちがいるのと一緒だ」と答えている。そのときによく例として取り上げるのが、経営コンサルタント・故船井幸雄氏のマーケティング論における人のタイプ分けだ。 

 船井氏は、ニセ科学を「すごい! 驚きの技術だ、考え方だ」と褒めそやし、ニセ科学の普及に一役も二役も買ってきた人物である。氏は人を4つのタイプに分け、その第一のタイプ「先覚者」(2%くらい)に注目している。その男女比は男:女=2:8で、女性がメインである。少し例は古いが、インドにサイババという超能力者がいると知れば、インドに会いに行ってしまうようなタイプだ。 

 第二のタイプは「素直な人」(20%)。「先覚者」の言うことに、素直に耳を傾けるタイプ。 

 第三のタイプは「普通の人」(70%弱)。 

 第四のタイプは「抵抗者」(10%弱)。50歳以上の男性に多いという(この本の筆者もここに分類されるだろう)。職業的には学者、マスコミ人がメイン。船井氏は「抵抗者」は無視するという。 

 船井氏が注目する第一のタイプ「先覚者」の3、4割が動き出すと、「素直な人」の半分くらいが同調する。さらにそれに「普通の人」が追随してブームが起こるという。 

 ぼくのようなニセ科学批判の側からこの分類を見ると、とくに「先覚者」や「素直な人」がニセ科学に引っかかりやすい人たちに当たる。いまや、その中に教員もかなりいるのが大問題なのだ。 

 

ニセ科学にだまされる教員たち 

 教員は被教育者のころはほどほどの優等生で、教科書の内容を覚え、試験でそれを吐き出して今日があるという人が大半である。善意や感動というものをあまり疑わずに素直に育ってきた人が多い。ニセ科学側は、それを利用する。後述する「水からの伝言」というニセ科学では、「教室の子どもたちの言葉遣いをよくしたい」「子どもたちに環境によい活動をさせたい」という善意の動機のもと、写真や説明を見て科学的なものだと思ってしまったり、教育団体の指導者が推薦していることだからと、ニセ科学に絡め取られてしまう。 

 ニセ科学でだます側は、教育こそが自分たちの主張の拡大の手段になることを知っている。教員を通して多くの子どもたちへの浸透を図るのである。そこでニセ科学は、“善意”と“感動”とに弱い教員を主なターゲットにする。 

 人間生活において“善意と感動”は大切なことである。しかし、学校において善意や感動の衣をまとったニセ科学は、子どもたちから批判的・合理的・科学的精神を奪い、教育の土台を崩していく。 

 学校で子どもたちが批判的・合理的・科学的精神を養うには、まず教員がそれを持っていることが前提だろう。