左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

左巻健男の備忘録2(槌田氏・近藤氏のCO2結果論に関して)

左巻健男の備忘録1:どうもおかしげな主張をする人だなと思っていた人たちが関わる裁判がどうなったのかなと検索していて、後でゆっくり読もうと思ったサイトを備忘録的に記しておくことに。
http://d.hatena.ne.jp/samakita/20100328/1269791010
の続き。
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●「海の研究者」さんのブログ
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2009-06-07
この論文はリジェクトだ [ 地球温暖化を学ぼう]

槌田氏らの主張は、気温変化とCO2濃度変化の年変化率(℃/年、ppm/年)の比較が基礎となっている。

この図では、気温変化はCO2変化に1年程度先んじていることが明らかだ。槌田氏は"気温についてもCO2濃度についても年変化率をそのまま比較しているから、上図にはCO2濃度変化の長期的傾向を取り除くという恣意的操作は入っていない"と述べている。
つまり長期的にも気温が原因であり、CO2が結果であるというわけだ。本当だろうか?
この槌田論文の柱が、実は明らかな間違いである。上図では”長周期成分は除かれたり減じられたりしている”のである。これでは上図は、本連載で述べた「Keelingのグラフ」と同じでありCO2変動は気温変動の結果とはなりえない。
ひとつ、思考実験をしてみて、槌田氏の誤りを確認しよう。

槌田氏は残念ながらこのような簡単な数学の知識も持ち合わせていなかったようで、驚きである。たしか彼は名城大学経済学部教授だったが、経済学では微分は使わないのだろうか? 今回訴訟を起こしてしまった槌田氏は、今後は公判という公衆の面前で恥をかくことになるだろう。温暖化問題懐疑派の多くのシンパもガッカリである。

●「温暖化の気持ち」さんのブログ
とほほ、提訴って (1) 槌田氏の書いた論文
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-61.html


槌田論文はだいたい以上の様な感じなのだ。CO2 の濃度増が自然現象である、ということがこれで証明されたのである。

しっかし、これじゃやっぱり査読通らないよな、と思うのである。読者の皆さんはどう思われるかわからないが…。

まあ、私が思うところを次の記事で説明するのだ。

とほほ、提訴って (2) 槌田氏論文と誤謬(ごびゅう)
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-62.html

CO2 濃度変化率と温度の変化率

先の記事では槌田氏の論文をざっと見てきたが、このブログでは槌田氏の論文がどういう問題を抱えているのか見ていくのである。

読んでいくと槌田氏論文は「誤謬」だらけであり、ちょっと論文としてはうかつすぎるのである。槌田氏のお仲間、ちゃんとチェックしてあげようね。

とほほ、提訴って (3) 誤謬(ごびゅう)の総合商社
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-63.html


槌田さん論文の構造

槌田氏の論文は短いが、その中に議論に関係ないことが、たとえば河宮氏の天気でのコメントはなってないとか物理学会の話題の欄に掲載されたとか、まあとにかく無駄なことがたくさん書かれているので、それを取り払って見ていかなければならなず、意外に理解に手間取る。無駄な部分を取り去ることでようやくシンプルな、というよりシンプルすぎる議論が見えてくるのである。

”CO2 濃度変化率と気温の間には y=2.39x+1.47 なる関係式があるので気温が CO2 濃度変化の原因であり、 そう考えると気温が解析した期間においては、CO2 濃度が変化しない気温より 0.6 度、高かったことになり、よって大気中の CO2 濃度の増加は自然起源である”

これが、私の思うところ、この論文で読者が読み取るべきことの全てなのである。いや、槌田氏としてはこれまでの気象学会の非道を記した部分も読んでほしいのであろうが、サイエンス的なことで読むべきことはこれでつきているのである。

この議論の流れ、よくよく読むと「おいおい」と槌田氏の背中をどつきたくなるような変な具合になっており、ここからその点を説明してしまうのだ。

まあ、槌田氏の言うとおりの因果関係はありそうだな、と私でも思うのだが、論文中で、相関"だけ"で話を終わらせるのは、あまりにもうっかりしているのであって、なにかメカニズムを見つけて、因果関係が成り立っていることを丁寧に説明することが大切なのだが、その大切なことを怠っている、といわざるをえないのである。

つぎに論証 II 「CO2 濃度変化率(=増加率)の変動は自然起源である。よって CO2 の増加は自然起源である。」 についてであるが、このなかには、「早まった一般化」と「論点先取」が見られるのである。

つまり、CO2 濃度の増加のうちの定数項 1.47 は自然現象で説明できるから、自然現象なのである、という、「自然現象で説明できる」という結論を先に使って平均気温が 0.6 ℃高かったことを導いており、そこであらためて結論を導く、という、「結論を前提の一部として使った」議論となっており、論点先取の誤謬をやらかしてしまっているのであって、単純化して書き直してみるとなんのことやら訳がわからず、読んでいる側としては、「おいおい、落ち着けよ」てな具合なのである。

とほほ、提訴って (4) 槌田氏の陳述書
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-64.html

陳述書

先の記事まで槌田氏論文の問題(のほんの一部)を見てきたのであるが、この記事では槌田氏が裁判所に提出した陳述書を見てみたいのである。

びっくりです

ということで提出された再改訂稿、大事な部分がすこーんと抜けてしまった論文がどんな困ったちゃんになってしまったかは、前々回、前回と見てきたとおりで、誤謬の総合商社状態なのである。

これを受理しろというのは、まったく、どちらのジャイアンさまでいらっしゃいますか、という話なのであり、この場合、 もし受理されたなら槌田さんが気象学会よりも腕力が強かったからであって、たとえば理事なり「天気」編集担当なりのスキャンダルを握っているとか、金を積んだとか、そういった類の腕力が必要になるわけだから、そう考えると訴訟は受理させるための手段としては確かに合理的なのである。

とほほ、提訴って (5) 論文受理のための作戦 (上)
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-65.html

本当の問題点

先の記事までで、槌田氏の論文の問題点を考えてきたのである。

まあ、指摘すべきする点は山ほどあって、長々と書いているにもかかわらずまだまだ言いたいことはたくさんあるのだが、記事においては論理の流れを中心に調べて、その結果、結論に至るまでに隙が至るところに見つかることを示したので、つまり論文としての体をなしていないとほほな状態であることはわかってもらえたと思う。

ところで、槌田氏論文、というより、今回の件に関する槌田氏の最大の問題は何かというと(最大の問題はいっぱいあるのだがその中で選ぶとすると)、彼が自分の欲求を満たすために論文を書いていて、目線を読者の方に向けていないことなのである。

気象学会の会員が読む天気という雑誌に CO2 のことを科学の論文として書くのだから、それなりに気象学、ここでは気候学だが、その観点でおもしろいことが要求されるのであって、その意味ではたしかに CO2 人為起源説を否定できればおもしろいのではあるが、すくなくとも論理が一貫している必要があって、これまでに見てきたような破綻した論理で貫かれた(貫かれた、っていうのか?)論文は、読んでて頭が痛くなり、払っている学会費の対価として読まされる読者としては、金返せ、といったところなのである。