左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

アンチエイジングの分野で人気のあるサプリーコエンザイムQ10を考えてみる

 エンザイムとは酵素コエンザイム酵素のはたらきを助ける補酵素のことです。
 コエンザイムQ10は私たちの体の全ての細胞に存在し、ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わる物質であるとともに、ビタミンCやビタミンEと同様、抗酸化物質としてはたらきます。

 コエンザイムQ10は、1973年、日本でうっ血性心不全治療の医療用医薬品として、世界で初めて認可されました。別名ユビデカレノンという医薬品として、軽症から中等症のうっ血性心不全に投与されてきました。それが1990年代には、米国を始め世界各国でサプリとして流通し始めました

 そして2001年、日本において食薬区分の変更により食品成分としての利用が認可されたのですが、医薬品のときとは期待される効能が異なっています。
 サプリとしての効能は、加齢によって体内に合成されるコエンザイムQ10が減っていくので、これを補給することでエネルギー代謝を活発にして、疲労回復や美肌効果、肥満解消が期待できる、とうたわれています

 もう一つが、抗酸化作用です。コエンザイムQ10の補給は、細胞内のエネルギー代謝を改善するとともに、抗酸化作用を通じて活性酸素を除去し、細胞の老化を防ぐのではないかと考えられているのです。だから、「元気のもとコエンザイムQ10」というわけです。

 その効能のイメージが人気を呼び、急速なコエンザイムQ10ブームが起こりました。しかし、これらの効能について、ヒトを対象とした信頼度の高い臨床試験は行われていません。抗がん効果もあるとされていますが、その研究は乏しいです。

 そもそも、体内のコエンザイムQ10が減ってしまってから、外から補給したところで、本当にエネルギー産生が活発化するのかはよくわかっていないのです。

 コエンザイムQ10は、それが不足していると考えられる臓器、つまり心臓などにきちんと取り込まれ、機能しなければ意味がありません。

 ところがコエンザイムQ10をラットに経口摂取させたところ、血液中と肝臓中には取り込まれたものの、他の臓器には取り込まれなかったとの研究もあります。ヒトでの研究は見つけられませんでしたが、経口摂取したものが望み通りに必要な臓器に取り込まれ、私たちが期待している効果を示すかどうか、十分な検証作業が必要なのです。

 それに、もしかしたら加齢とともに各臓器でのコエンザイムQ10に必要量が減少しているから、各臓器で生産量を調節している結果として、減っているのかもしれません。そうすると外から補充することは余計なお世話をしていることになります。

 さらに心配なのは、医薬品としてのコエンザイムQ10の1日の摂取上限量は30ミリグラムですが、サプリではそのような上限量がないことです。海外のメーカーのサプリは、この上限量をはるかに超えたものもあり、わが国でも流通し始めています。

 もともと食事と一緒にとらないと吸収されにくい脂溶性ビタミン様物質であり、製品によっても吸収率が違います。高用量でも副作用が出にくく、安全性は高いと考えられていますが、しかし長期にわたる摂取でどのような影響があるかはわかっていません。