左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

ドリンク剤、にんにく注射で元気になる? by左巻健男『病気になるサプリ 危険な健康食品 』(幻冬舎新書)

【ドリンク剤、にんにく注射で元気になる?】
by左巻健男『病気になるサプリ 危険な健康食品 』(幻冬舎新書)
※こういうもので一時的に元気になった錯覚になり、益々疲労を蓄積という悪循環が怖い。
 ドリンク剤には3種類あります。「医薬品」「医薬部外品」「清涼飲料水」です。
 医薬品とは、文字通り、病院で医師が処方してくれる薬や、薬局・薬店で市販されている風邪薬や頭痛薬などのことです。配合されている有効成分の効果が認められており、病気の治療や予防に使われる薬を指します。
 医薬部外品は、1999年の4月より、従来医薬品であったもののうち、成分や効能・効果が適合するものが部外品へと移行しました。これにより、コンビニやスーパー等での販売が自由になりました。効能・効果や用法・用量は医薬品と同じです。動物性の生薬は使用できないなど、配合できる成分・量に医薬品より制限があります。
 清涼飲料水は、食品の一種です。効能・効果や用法・用量は表現できません。ただし、栄養機能食品として認可されれば、ビタミン、ミネラル類についての効果を表現することは可能です。
 医薬品、医薬部外品であるドリンク剤は、薬事法の規制を受けます。清涼飲料であるドリンク剤は、通常の食品と同じで食品衛生法の規制を受けます。
 しかし、実際のところ、ドリンク剤は効くのでしょうか。元気がでるかもしれないと、効能をにおわせる含有成分は、医薬品や医薬部外品ではビタミン類や生薬エキスなどであり、清涼飲料であるドリンク剤ではビタミン類や必須アミノ酸類などです。
 医薬品と清涼飲料の両方のドリンク剤に共通するビタミン類についていえば、厚生労働省が毎年おこなっている国民栄養調査では、日本人の栄養素摂取は、平均的にはカルシウムをのぞいて不足の状態にはありません。補給を必要とするのは食生活が乱れた人ということになりますが、食生活を乱れたままにして、ドリンク剤に頼るというのは、根本的におかしいでしょう。
 生薬エキスとして含まれるジオウ(地黄)、クコシ(杓紀子)、ケイヒ(桂皮)、トウキ(当帰)などは、ネズミを用いた動物試験の結果などがいくらかあっても、ヒトでの効能は明確ではありません。このような生薬エキスを必要とするほどの疲労困億の状態なら、病院へ行くべきでしょう。また、飲みすぎれば過剰症があらわれる成分も含有されています。
 ドリンク剤を飲むと疲れが一時的に消えたような錯覚に陥るのは含まれている成分の糖質、エタノール、カフェインによるものです。エタノールを二%程度含のでいるものが多く、用量を守らず飲んでいると酔っばらうこともあります。
 いわゆるにんにく注射というのがあります。疲労回復に効くといいます。にんにく注射を行っている医院によって成分は違うようですが、だいたいビタミンB1を中心にビタミンB6、B12、カフェイン、ブドウ糖などのようです。他にビタミンCを入れたりします。ビタミンB1は、打った後、しばらく本人ににんにくを食べたときのような臭いがするのでにんにく注射といいますが、にんにくの有効成分が入っているわけではありません。
 水溶性のビタミンなので過剰症の心配は少なそうですが、カフェインやブドウ糖で効いているように感じるのでしょう。カフェインが交感神経を刺激し、糖質が血糖値を上げることで元気になった錯覚を起こします。そんな錯覚を続けていると、疲労はかえってひどくなるでしょう。
 中心のビタミンB1ですが、ふつうの人は欠乏の状態にありません。しかし、精製された食品や糖質の多い食品、アルコールなどの摂取が多い人では、不足しがちなビタミンといわれていますから、生活が乱れて欠乏状態の人がいるかもしれません。
 経口摂取では安全性が高そうですが、注射では、熱感、ちくちくした感じ、かゆみ、痛み、じんましん、衰弱、吐き気、落ち着きのなさ、喉の詰まり感、血管性水腫、呼吸困難、チアノーゼ、肺水腫、胃腸の出血、一時的な血管拡張と低血圧、血管破裂、死亡などを引きおこす可能性があります。筋肉内注射をした部位で、圧痛や硬化が起こる可能性があります 。また、非経口投与は、低リスクのアナフィラキシーをおこす可能性があります。