左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

インチキ、トンデモ技術 水が油になる!水と二酸化炭素が油になる!

【インチキ、トンデモ技術 水が油になる!水と二酸化炭素が油になる!】
 画期的な技術なら一流科学誌に論文が載る。画期的ならサイエンス誌かネーチャー誌に。あるいはその分野の一流科学誌に載る。
 そして画期的なほど追試が行われる。
 発見者がそう信じて載せたはいいが、その後追試などでインチキだったことが判明したこともある(常温核融合が超有名)。

 しかし、インチキ技術は、そのことを飛ばして公開実験なるものをする。
 古くは、19世紀末に、ジョン・ウォレル・キリーが発明した「キリー・モーター」。原子と原子の間にあるエーテルの力から巨大な力を取り出しているとして、公開で電源をつないでいないモーターを回して見せた。

 出資者から多額のお金をまきあげて死ぬまでペテンを通した。彼の死後、床下から圧縮空気を使った仕掛けが発見された。

 その後も幾たびも同様の事がくり返されてきた。
 中でもわが国では「水を油(燃料)に変える技術」、「廃棄物(プラスチック)を油に変える技術」が。

 ぼくが追っていた「水を燃料に 倉田式油化還元装置 関西アーバン銀行 20億円を融資、投資」。 これは2004年のことだが、90年代の終わり頃、当時のパソコン通信ニフティサーブで日本化学会運営の「化学の広場」(ぼくはスタッフの1人)で倉田大嗣氏の公開実験が大きな話題になった。

 倉田氏の公開実験や書籍が「水を油(燃料)に変える技術」、「廃棄物(プラスチック)を油に変える技術」だった。

 常温核融合との違いは初めから論文にしないで公開実験と書籍で発表したことだ。
 しかるべき機関も調査したがブラックボックス部分があり解明できないで終わった。
 倉田氏は自分の技術のもとは「波動」と「酵素」と。
 この波動はもちろんまともな物理学的なものではなくスピ系のバイブレーション。
 オカルト・ニセ科学はこの種の「波動」が大好き!
酵素」「触媒」「磁石」も科学無知な素人を騙すのによく使われる。

 自治体の中には倉田氏の装置で廃棄物処理をしたところもあった。その自治体の廃棄物が山中に捨てられていたという情報もあった。
 倉田氏の装置の公開実験を見て信じて著書に紹介した有名化学教育者も出た。
 パソ通ニフティサーブFCHEMの化学者・化学技術者・化学教育者は活発に議論。もちろん否定的に。

 だからこそ倉田氏の「水を燃やす技術に関西アーバン銀行が20億円を融資、投資」というニュースは驚きだった。自治体だけではなく銀行も軽く騙されるのかと。
 その後どうなったかはわからない。関西アーバン銀行もなくなった(吸収合併)。ただし、投資の20億は回収できなかっただろう。

 倉田氏はその後行方不明になったからだ。
 もちろん、インチキ技術を肯定する側はこれを「奇跡の発明をした者は全員行方不明」とし、既存利権から消されたかのような主張をする。
 その後も同様な公開実験は続いた。水は燃える(船瀬俊介氏支持)→ぼくから見ると水を電解して水素を燃焼。
 水が自動車のエンジン燃料→ぼくから見ると、水を分解する物質使用(Mgあたりか)。

 そして今回の大阪市の公開実験。
 理屈上、水とCO2からエネルギーと触媒をうまく使えば油ができる。
 そのような人工光合成の研究はいくつか既に科学的な裏付けをもって進められている(NEDO)。

 大阪市は先ずちゃんとした第三者の複数機関に追試をさせるべきだった。今のやり方は当のマジシャンにマジックをさせているようなもの。
 倉田氏の事例などから、まず本当に水とCO2から油ができているかどうか、装置にブラックボックス的で闇の部分はないかを追究して欲しい。

*2/1に書いた。その後、大阪市の公開実験の「水と二酸化炭素から油」は、油の暈(かさ)が増えて見えただけのしろもののようだ。新規に油はできていないようだ。