左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

RikaTan (理科の探検) 2022年1月号(12/7発売) 表紙と目次

RikaTan (理科の探検) 2022年1月号 12/7発売

全国主要書店・ネット書店・SAMA企画

※SAMA企画 samakikaku@rika.org に1冊でも注文可能。1冊税込送料込みで1500円。

アマゾン→ https://www.amazon.co.jp/dp/B09M54VFM2/ref=cm_sw_r_tw_dp_BB9PWWJ8731SFV0TS5P3
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楽天ブックスhttps://books.rakuten.co.jp/rb/16951651/

 

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NMRパイプテクターの会社(日本システム経営株式会社)熊野社長からSAMA企画へ文書

2つ来ています。

1つは、12/7発売の理科の探検(RikaTan)誌40号についてです。

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 これは謎水さんが書かれたNMRパイプテクターについての論説6pについてです。

 編集委員会でよい論説と判断し、掲載。広く読まれて、その上でいろいろ議論したいです。

 

 もう一つは、『RikaTan(理科の探検)』誌37号に小波秀雄さんが書かれた論説6pへのものです。

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 これは次に公開されています。ここにも下に画像を貼り付けておきます。

「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々  小波 秀雄
『RikaTan(理科の探検)』誌37号掲載
http://konamih.sakura.ne.jp/Documents/PipeTec_Rikatan2019.pdf

この論説公開の経緯は次にあります。
「理科の探検」誌の記事を公開します
http://konamih.sakura.ne.jp/blog/2019/05/04/nmr%e3%83%91%e3%82%a4%e3%83%97%e3%83%86%e3%82%af%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%81%ae%e9%9d%9e%e7%a7%91%e5%ad%a6%e7%9a%84%e3%81%aa%e6%ad%a3%e4%bd%93/

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12/7発売!『RikaTan(理科の探検)』誌2022年1月号(通巻40号)ニセ科学を斬る! Forever

『RikaTan(理科の探検)』誌 http://rikatan.com/ 2022年1月号(12/7発売)ニセ科学を斬る! Foeever

 は、書店・ネット書店で12/7発売!

◎問い合わせ・申込は、(株)SAMA企画 samakikaku@rika.org へ。電話&FAXは 03-6317-5056へ。

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『RikaTan(理科の探検)』誌2022年1月号(12/7発売)ニセ科学を斬る! Foeever

『RikaTan(理科の探検)』誌 http://rikatan.com/ 2022年1月号(12/7発売)ニセ科学を斬る! Foeever

 は、書店・ネット書店で12/7発売!

◎問い合わせ・申込は、(株)SAMA企画 samakikaku@rika.org へ。電話&FAXは 03-6317-5056へ。

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2つのノーベル賞を受賞したポーリング博士のメガビタミン療法

○サプリ・健康食品問題の旗手の1人小内亨さんの回顧

 私は、『RikaTan(理科の探検)』誌という大人の科学好きに向けた雑誌の編集長をしています。

 2010年のことですが、サプリ・健康食品問題で活躍する1人小内亨医師に、新しく「健康情報を科学的に読み解く」という連載を引き受けて貰いました。

 その連載第1回目は、次の文章から始まりました。
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 今でこそ私はサプリメントに対して批判的な立場にいますが、30年前にはサプリメントにはまっていたことがありました。30年前といえばサプリメントのサの字もないときでしたから、私はさしずめサプリメント利用者のはしりであったともいえるでしょう。

 医学生の頃、ライナス・ポーリング博士の著書『ビタミンCとかぜ、インフルエンザ』(共立出版 1977)に触発され、私はせっせと毎日ビタミンCをとっていたのでした。博士は、その本の中でメガビタミン療法を提唱し、人はより多くのビタミンを摂取すべきだと主張していました。

 ポーリング博士はノーベル化学賞と平和賞の2つのノーベル賞を取った研究者としてきわめて有名な学者です。当時1介の医学生だった私が、彼の仮説を信奉したとしても不思議ではなかったでしょう。博士の主張をきっかけに米国でのサプリメントブームが始まったともいわれています。その後、米国のサプリメントブームは日本に飛び火し、今や日本でもサプリメントは1般的なものとなりました。

 しかし、現在私はサプリメントどころかビタミンCさえも摂取していません。サプリメントのことを知れば知る程、摂取する気が失せてしまったのです。
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 ポーリング(1901~94)は、アメリカの物理化学者です。1931年カリフォルニア工業大学教授、以後カリフォルニア大学を経て、スタンフォード大学教授となりました。
 ポーリングの業績の最大のものは、量子力学を大胆に化学に導入し化学結合論の体系的構成です。炭素原子価の正4面体方向性に関する混成軌道の概念、ベンゼンなどの芳香族化合物の特性を共鳴概念で説明するのに成功、これらの成果が名著『化学結合論』(1939)にまとめられました。
 1954年に構造化学への貢献でノーベル化学賞を受賞。さらに戦後、原爆禁止、核実験反対署名運動などで平和運動に積極的に取り組み、1962年ノーベル平和賞を受賞しました。


 私も彼の『一般化学』や『化学結合論』を学びました。

 小内さんは、その彼が提唱するメガビタミン療法に医学生のころにはまっていたというのです。

○ポーリング博士はメガビタミン療法にはまった!

 以下はポールオフィット著 ナカイサヤカ訳『代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?』(地人書館 2015)をもとにしています。


 彼が65歳の1966年3月、ニューヨーク州での講演のとき、「私は『科学者たちが自然の本質について探究し成し遂げた様々な分野の発見について読むのはいかほどかの喜びか』と言い、そして『あと25年は生きてこの喜びを持ち続けたいと願っている』と述べました。

 カリフォルニアに戻ると、その講演を聞いていた生化学者ストーンからの手紙を受け取りました。手紙にあったのは、「もし毎日3000ミリグラムのビタミンCを摂ることをすれば25年どころもっと長く生きられる」という内容でした。彼はその助言に従うことにしたのです。

 「私は、より元気で健康に感じるようになってきた。中でもそれまでずっと毎年何回か悩まされてきたひどい風邪をひかなくなった」と彼はいいました。

 摂取量を増量してついには毎日18000ミリグラム摂取することにしました。その日以来、人びとはポーリングとえいばビタミンCとなったのです。

 1970年には『さらば風邪薬! ビタミンCで風邪を追放』(講談社 1971)を出版。人びとに毎日3000ミリグラムのビタミンCを摂ることを強く勧めました。この本は瞬時にベストセラーになりました。ビタミンCの売上げはどんどん上がりました。1970年代の中頃までには5000万人のアメリカ人が彼のアドバイスに従いました。

○科学界医学界の反応を拒絶し、メガビタミン療法啓蒙にひた走った

 ところがポーリング博士のメガビタミン療法への科学界医学界の反応はクールでした。

 風邪の予防のためのビタミンの研究からは、風邪の予防や治療に有効という結果は得られませんでした。研究に次ぐ研究が彼が間違っている事を明らかにしたのです。

 にも関わらず彼は研究結果を拒絶し、講演や1般向けの記事や本でビタミンCを推薦し続けました。

 明らかに風邪の症状があるままメディアの前に現れることがあったが、「アレルギーがひどくて」と言っていました。

 さらに彼は「ビタミンCは風邪を予防するだけではなく、がんを治す」と言い出しました。

 1971年、彼はビタミンCでがん死を10 %減らせると宣言。

 1977年には、「私の現在の推測ではビタミンCだけで75 %の減少を達成できる」としました。「そして他の栄養サプリを合わせて使えばさらに減らせる」とし「寿命は100から110年になる。やがては最高150年になるかもしれない」と予言しました。

 彼のメガビタミン療法は強い影響をもたらしました。

 がん患者は主治医にビタミンC大量投与を要望しました。

 当時の医師は言う。「あれには苦労した。意見を言うと、先生はノーベル賞を持っているのか?というんですよ」

 もちろんがん研究者たちは検証実験することにしました。研究はビタミンCはがんを治癒しないという結果でした。

 彼は諦めませんでした。

 次に「ビタミンCは大量のビタミンAとビタミンE、さらにセレンとベータカロテンと1緒に摂れば、風邪を予防し、がんだけではなく事実上ほとんどすべての病気を治せる」と主張したのです。

 1992年4月6日の『タイム』誌は、メガビタミンの驚異についての記事が出ました。内容は、根拠の無い・反証済みの彼の主張を肯定的に記事にしたものでした。この記事はビタミン製造業者の政治圧力団体である全米栄養食品協会(NNFA)にとって幸運なものでした。

○ポーリング博士にメガビタミン療法を信じさせた「抗酸化仮説」

 彼は自分の主張に研究の裏付けがなくてもビタミンとサプリメントが万能薬となる1つの特性があると信じていました。それは「抗酸化」です。

 研究では果物や野菜をより多く食べる人はがんや心臓病になりにくく、寿命が長いことが判明していました。その理屈がそれらが体内で生じる活性酸素をつぶす抗酸化物質をふくんでいるというものでした。それなら抗酸化物質サプリを摂る人も同じように健康になるはずだというのが彼の考えでした。

 抗酸化物質サプリとは、ビタミンA、C、E、ベータカロテンなどです。これらの成分は野菜や果物に含まれています。

 野菜や果物をよく摂る人と摂らない人では摂る人が健康状態がよかったのですが、「抗酸化サプリで健康」という仮説は大規模な試験研究で否定されました。対照群として抗酸化物質サプリを摂ったグループ、摂らないグループを比較すると、摂ったグループのほうがよりがん死したりして死亡率が高かったのです。複数の研究でそうなりました。

 マルチビタミンを摂ったグループ、摂らないグループの比較でも摂ったグループの方が2倍、末期の前立腺がんで死亡していました。ビタミンサプリはがんと心臓病のリスクを高めたという研究結果も出ました。

 実は活性酸素にはいろいろな種類があって、DNAを傷つけてがんや老化の原因になると共に免疫の武器として新しくできたがん細胞を消滅させる働きもしています。これも仮説ですが、大量の抗酸化物質を摂ると、いろいろな活性酸素のバランスを崩し、免疫システムが働くパワーを弱めてしまうと考えられます。

 このような研究の結果が出てもビタミンの売上げは落ちないどころか上がったのです。

 1980年12月、彼の妻は77歳で胃がんで亡くなりました。

 1994年、彼は前立腺がんで亡くなりました。93歳でした。

 65歳のとき、「あと25年は生きて…」という願いは達成されました。「寿命は100~110年になる」には及びませんでした。

 

 こうして、ポーリング博士は、素晴らしく正しかったために2つのノーベル賞を受賞しましたが、素晴らしく間違っていたために世界一のインチキ療法士と言ってもよいかもしれない人になったのです。

 

 科学的な証拠では、メガビタミンは安全ではありません。それなのにアメリカ食品医薬品局FDA)はなぜ警鐘を発しないのでしょうか。

 『代替医療の光と闇 魔法を信じるかい?』のオフィットは言います。
 「答えは、そう金と政治である」

Daigoの広告で話題になった「のむシリカ」などシリカ水をちょっと検討してみよう→「老化予防によい」「美容によい(肌のハリなど)」といわれているが、販売側が述べているだけ

 先ず結論を書いておきます。
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シリカ水には健康によいというはっきりした根拠はない
・「老化予防によい」「美容によい(肌のハリなど)」といわれているが、販売側が述べているだけ
・通常の食品(野菜など)から摂取は問題はないだろう
シリカが多く含まれているものを摂取すると腎結石の可能性
・犬の場合、シリカ尿結石に
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*前向きコホート研究、RCT、メタアナリシスの研究結果を示しての反論を歓迎。

 

 メンタリストのDaiGoが路上生活者(ホームレス)や生活保護受給者を差別するような発言をしたことでネット上で大炎上しました。
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 DaiGo「僕は生活保護の人にお金を払うために税金を納めているわけではない。だったら猫を救ってほしい。生活保護の人が生きていても僕は得しない。…自分にとって必要がない命は僕にとっては軽い。ホームレスの命はどうでもいい。…ホームレスっていない方がよくない? 邪魔だしさ、臭いしさ。…犯罪者が社会の中にいるとみんなに害があるでしょ? だから殺すんですよ。同じですよ」
 この発言への批判に対して、DaiGoは「個人の感想に間違いもクソもない。謝ることでもない。…ホームレスとか生活保護の人たちに炊き出しとか定期的にやったりしてるんですか? はるかに税金を払っているので僕の方が助けている」と反論。しかし、後に謝罪。
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 私には、DaiGoの「(批判している人より)はるかに税金を払っているので僕の方が助けている」ことが、彼が「のむシリカで120歳まで生きる」という広告による多額の収入(多額かどうかは推測)を得ていることと重なった。
 ということで、「のむシリカ」などのシリカ水を検討してみようと思いました。

 

 シリカとは、二酸化ケイ素やケイ酸塩のことです。メインは二酸化ケイ素です。水に溶けにくいのですが、わずかは溶けます。
 地球の地殻をつくる岩石や土に二酸化ケイ素は多量に含まれています。植物は根から水に溶解した形態のシリカを当たり前に吸収しています。私たちは野菜を食べることで自然に摂取しています。


「老化予防や美容によい(肌のハリなど)」といわれていてもはっきりした根拠はありません。販売側が述べているだけです。

 

 シリカは人の体内の微量ミネラルとして、骨づくりに働きますが、現時点では必要量が明確でありません。どのくらい摂ればよいかがはっきりしていないのです。普通に食事していれば摂れる量でよいということと考えられます。

 

 骨づくりに働くので骨粗鬆症に対して有効性が示唆されるデータがあります。

 

 しかし現時点では、「のむシリカ」などシリカ水は機能性表示食品にも認定されていませんから、「水を飲む選択肢」の一つにすぎません。

 

 通常の食品から摂取するのはおそらく安全です。しかし、例えばシリカの含有量の多い食品を摂り続けて、腎結石が生じたという事例の報告があります(参考:(独)国立健康・栄養研究所素材情報データベース「ケイ素」)。
 次は犬のケースですが、人でも十分考慮すべきことでしょう。
 鹿児島県の犬にはシリカ尿結石というイヌでは珍しい病気が多発し、この原因が他地域と比べてシリカを著しく高く含んだ飲料水である可能性が示唆されています。

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(田崎 由実, 三浦 直樹, 桃井 康行「鹿児島県で多発するイヌのシリカ尿石についての緊急調査」ペット栄養学会誌 / 日本ペット栄養学会 [編] 2012 年 15 巻 1 号 p. 7-11)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/15/1/15_7/_article/-char/ja/
シリカ結石はイヌではまれな尿石とされている。今回、我々は鹿児島県を中心にシリカ尿結石について疫学調査を行った。その結果、鹿児島県内の獣医師やオーナーに対するアンケート調査において、鹿児島県を中心とする地域でシリカ尿結石が多くみられ、その発生の要因として飲料水との関係が示唆された。そこで鹿児島県内の水道水中のシリカ濃度を測定したところ、他地域と比較して著しく高値を示した。またミネラルウォーターについても同様に、鹿児島県が採水地の製品でシリカ濃度が高値のものがあった。実験的にシリカを高濃度に含む水道水の飲水により尿中シリカ濃度の上昇は見られなかったが、疫学調査から、シリカ濃度の低い水を飲水として使用することがシリカ結石発生の予防となると推測した。

(田崎 由実, 伊藤 源太, 三浦 直樹, 田中 美穂, 桃井 康行「イヌにおけるシリカ結石の誘発因子と予防」ペット栄養学会誌 / 日本ペット栄養学会 [編] 2013 年 16 巻 2 号 p. 61-66)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/16/2/16_61/_pdf/-char/ja
これまでの研究で、我々は鹿児島県においてシリカ尿結石のイヌが多くみられること、及び県内の水道水中のシリカ濃度は他の地域に比べて著しく高いことを報告した。シリカ結石の発生原因として、飲料水との関連性が示唆されたため、今回、国内のいくつかの地域の水道水中シリカ濃度を測定した。その結果、大分県竹田市茨城県筑西市付近でシリカ濃度が高いことが判明した。また、シリカ結石が好発している鹿児島県霧島地方の水について高速原子衝撃質量分析(FAB-MS)を用いて解析したところ、シリカ濃度が1mM以上であるにもかかわらず、イオン状に溶解しているシリカが少なく、シリカを析出した後にみられる水の特徴と一致していた。シリカ結石予防の方法としてRO膜型浄水器は水道水中のシリカを除去できるが、家庭に普及している家庭用浄水器では、シリカが除去されないことが明らかになった。また、シリカ好発地域以外のシリカ結石症の要因について調べると、特定のフードとの関連が示唆された。
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“水商売”にだまされない! ー 特別な高額水商品で失うのはお金と健康

『理科の探検 RikaTan 2013 夏号』
http://rikatan.com/wiki.cgi?page=backnumber13natsu%2Ehtml

“水商売”にだまされない!

 左巻 健男     天羽 優子
 SAMAKI Takeo  AMO Yuko

 

●「水商売ウォッチング」サイトは裁判にも
左巻:天羽さんが、お茶の水女子大学富永研究室のサイトで運用されていた「水商売ウォッチング」が刺激的でした。当時、私は、『入門ビジュアルエコロジー おいしい水 安全な水』(日本実業出版社 2000)を書いているときだったので参考になりました。そのサイトの「水商売」は、文字通り、水に付加価値をつけて売る商売(別名 蛇口産業)ですね。水関連の会社などが「科学理論モドキ」「実験の名に値しない実験」(=ニセ科学)で製品を宣伝するのに科学の立場から突っ込みをいれたものですね。現在は、 http://www.cml-office.org/wwatch/aboutwwatch に移転して公開されていますね。
 その後、私は、天羽さんたち有志と「ニセ科学フォーラム」を開催したりして交流をしてきました。
 まず天羽さんが「水商売ウォッチング」サイトを始めた動機をお聞きしたいと思います。
天羽:「水商売ウォッチング」を始めたのは、1999年の2月です。
 始める少し前に大学院の研究室の同窓会に行きました。そうしたら、酒造会社に就職した後輩から「上司からクラスターの小さい水でお酒を造るとおいしいという話があるので、どういうことか調べるように言われたが、何か知らないか」と聞かれたたのです。「クラスターの小さい水」の話は、確かに一時期流行しましたが、専門家の間では、NMRという測定法が誤解されたために生じた単なる間違いとして決着していました。それがなぜ今頃メーカーから出てくるのか?と不思議に思い、帰ってから「水のクラスター」でネット検索してみました。そうしたら、「水のクラスターを小さくする」という触れ込みはもちろん、それ以外にもとてもまともな科学とは思えないような宣伝がたくさん出てきました。間違いが世間に広まってしまっているのはまずいのではないかと思い、ネットで何がどう間違っているかを指摘する解説を公開しようと思ったのが、「水商売ウォッチング」を始めたきっかけです。調べていくうちに「水のクラスター」以外にもおかしな説明がいっぱい登場して、そちらも取り上げることになりました。
 クラスターについては、「水のクラスター 伝搬する誤解」を書いて公開しました。現在は、http://www.cml-office.org/atom11archive/water/water_cluster.html にあります。
左巻:科学ではないのに科学的装いで、つまりニセ科学で宣伝していることに突っ込みを入れたので消費者には参考になったでしょうね。
天羽:水商売ウォッチングを公開してから、「こんな売り込みを受けています」「この説明のどこがおかしいか教えて下さい」といった問い合わせが来るようになりました。メールや掲示板への書き込みが主でしたので、その都度なにがどうおかしいか指摘してきました。
左巻:サイトで取り上げられた会社から商売妨害だと抗議してくる場合もあったでしょうね?
天羽:会社の反応は2通りでした。営業妨害だとクレームをつけられたことは何度かあります。また、消費者の方が「水商売ウォッチング」を見て買った商品をクーリングオフした、と言ってきたこともあります。逆に、会社が商売を始めるにあたってこんな水製品を扱って大丈夫か、といった、事前の相談もありました。
左巻:天羽さんは、磁気水(磁化水、磁気活性水ともいう)装置の販売者とは裁判になりましたね。磁気水は、磁石という理科の実験で使った不思議なもの、それに「水=自然=健康」というイメージ、さらに本当は根拠はないのにニセ科学でさも科学的な根拠があるように思わせることが合わさった水商売の典型ですね。
 かんたんに裁判のいきさつと結果を教えてください。
天羽:相手は吉岡氏という方です。2002年に彼の「マイナスイオン」を擁護する立場で論争をしていました。その後、磁気水を擁護するメールを送ってこられたので何回かやりとりをしました

の、2003/11/25~2003/12/31までを参照)。2005年になって、吉岡氏が「お茶の水女子大学に対する要望書」を作って学長宛に持参しました。要望の内容としては、「水商売ウォッチングをお茶の水大のサイトから排除してほしい」といったものでした。メールのやりとりのあと、ほとんど2年間何もなかったので驚きました。吉岡氏は同時に「水は変わる」という本を自費出版していました。後でわかったことですが、ちょうどこの頃、磁気活水器を販売している会社も含めた3社に対して公正取引委員会の調査が入っていまして、吉岡氏はそのうちの1社の商品を販売していました。要望書や「水は変わる」の出版は公取の調査に対抗するつもりで行ったことのようです。2007年に、吉岡氏は磁気活水器を販売する会社を始めました。このことについて「マルチ方式で4年後に上場を目指しいまは会員と出資者を募集してるそう。」と書き込まれたので、私が、「あっら--いよいよここじゃなくて、悪マニさんトコのネタになるのか……(遠い目)。京都大の学歴を自慢したってやることがマルチじゃなあ……。まあ、あの自費出版批判本をみた限り、ダウンの人々が法律を遵守したまともな宣伝をすることなんざ期待できないわけだが。」と揶揄したんです。悪マニさんというのは、「悪徳商法マニアックス」というサイトで、掲示板でいろんな悪徳商法の被害にあった人が相談を書き込み、常連の人がアドバイスをするといった方法で運営されていました。マルチ商法の被害も随分報告されていました。
 私の書き込みが気に障ったらしく、吉岡氏はお茶の水大に削除を求めてきました。私が断り、お茶の水大は削除要求の書類が不備だとやりとりをしている途中で、吉岡氏がお茶の水大だけを名誉毀損で訴えました。普通、名誉毀損というのは名誉を毀損する発言をした人を訴えるものですが、吉岡氏は、大学の管理責任を問いたいと主張して大学だけを訴えました。そこで、私と、当時研究室でサーバーを管理していた冨永教授が、訴訟参加という手続きで裁判の当事者となって弁論しました。結局、原告の吉岡氏敗訴で決着しました。また、私の方も「水は変わる」で随分侮辱されていたので、吉岡氏を名誉毀損で訴えたところ、私が勝訴しました。
 この訴訟のための証拠を集めていてわかったことは、表面張力の測定の難しさです。磁気活水器の謳う機能の1つに「水の表面張力を変える(だから水そのものを変化させたのだ)」というものがあります。これを測定で確認するため、ホースで磁気活水器を水道の蛇口につないで水を採り、活水器を通さないものと比較すると、わずかですが表面張力が変わりました。ただ、この変化は、数分から数十分の時間で元に戻るんですね。もしやと思って、ホースではなく蛇口に直接磁気活水器をとりつけて取水してみると、磁気水の表面張力は水道水と変わりませんでした。つまり、表面張力がわずかに変わる原因は、活水器と蛇口をつなぐホースからわずかな物質が溶け出して水に混じったことらしいのです。磁気水では水が変わっている、という先入観があれば、変わったという結果をそのまま信じたかもしれません。とにかくホースを引き回しているような配管からとった水の表面張力のわずかな変化というのは、何の効果を観測しているかわからないということなのです。
左巻:本当に磁気水が健康によかったり、鉄管の赤さびを黒さびに変えたりするのなら、浄水場からの水道水の出口で強力な磁石を設置したほうがいいですね。
 水処理メーカーの技術者たちと話をしたら「磁気水を調べてみても赤さびを黒さびに変化させる性質は確認できない。できたら水処理に苦労しない」と笑っていました。

 

クラスター説は今も根強い
左巻:怪しげな水商売が扱う水の説明によく出てくる言葉がクラスターですね。「水は何らかのエネルギーを受けると、水の構造(クラスター)が小さくなって、細胞に浸透しやすくなって、植物の成長を促進したり、味がよくなったりする。クラスターの小さい水は健康にいい」ということです。水の液体構造のモデルの一つが、1ピコ秒のオーダーで水分子の集まり(クラスター)が生まれたり壊れたりするというもの(動的構造)ですが、天羽さんが書かれたように固定的なクラスターは存在しません。
 松下和弘さんという人が、「NMR(核磁気共鳴)という装置でクラスターがはかれる、クラスターの小さい水は健康にいい」と言い出しました。「水の分子(の集まり)が小さくなる」という言い方がされる場合もあります。
 この松下説は科学的には否定されるのですが、松下説は一見わかりやすいのでマスコミを通して広まりました。科学的に否定されているということは一般の人には流れないので松下説は今も水商売での水の説明に大活躍です。揃いも揃ってほとんどの水商売がこの説明にすがっています。説明に、この説が出てきたら、その水についての説明は科学的に怪しいと思って差し支えないですよね。
天羽:はい、その通りです。この説は業界誌に出たので、出た当時であれば、つい信じてしまう人が居たとしても仕方ありません。実際、この話を信じて数億円するNMR分光器まで買ってしまった大手企業もありました。しかし、これだけ時間が経てば、主張のもとになった研究があるのかどうか、水処理装置を開発する技術者なら確認ができるはずです。今、水クラスターが小さいことを謳って水商売の商品宣伝をしているのは、ただの不勉強か消費者を騙そうとしているかですね。

 

●一番影響を受けやすいが、一番信頼性がないのが体験談
左巻:テレビでも口コミで健康情報が流布するときに、体験談が威力を発揮しているように思います。
 実際に自分が体験したことも、錯誤や自分にとって有利なある体験だけ記憶しがちであることにも注意しなければなりませんね。人は、健康についての素朴理論をもっていて、まわりの健康情報を排除したり受け入れたりしています。自分が気に入ったものは受け入れるが、気にいらない情報は欠点を見つけ出したりして、それを排除します。結果として、「自分が正しい」となりやすいのです。こうした「体験」の危うさについて、いつも注意しなければなりませんね。
天羽:宣伝中の体験談は、宣伝する側が創作していたケースもありますので、全く信用できません。また、実際に体験した人が語るものであっても信頼性には欠けます。その人にとっては体験したのは本当のことでも、他の人にも同じように起きるかどうかがわからないからです。高価な活水器を使うようになってから体調が良い、というのが本当だったとしても、活水器をきっかけにして普段の生活習慣にも注意するようになった結果体調が良くなったのかもしれません。
 水の効果を示すのに、試験管の実験、つまり培養した細胞を使った実験が行われることもあります。これは、体験談よりは信頼できますが、そのまま人に当てはめることはできません。例えば、「水道水を培養細胞に与えたら死んだから水道水は危険」という宣伝は可能ですが、味噌汁を培養細胞に与えたって細胞は死にます。水道水も味噌汁も普段の生活で飲んでいますが、危険はありませんよね。このように、細胞が死ぬことと、人が食べた時に安全かどうかは一致していないのです。
 動物実験は、試験管の実験よりは信頼できます。しかし、動物と人間で同じ結果になるとは限りません。毒性があるという結果については、人で確認することは倫理的にできませんので、動物実験の結果に注意を払うべきです。が、効果があるという結果は、人で確認されるまで、判断を保留するべきです。効果がある方の代表例は医薬品ですが、動物実験のみで人に使うことはしていません。
 信頼できるのは、人を集めて行う臨床試験です。最も信頼されるのは、きちんとした複数のダブルブラインド法の臨床試験を系統的に分析した結果です。
左巻:実際に○○を飲んだり食べたりして健康になったという人がいたとしても、それは、○○が健康にいいという証明にならないんですね。健康になったという人は、○○を飲食しなくても健康になったかもしれません。健康になった原因は別にあるかも知れません。
 医学的に根拠のあるようにするには、プラセボ効果プラシーボ効果ともいう。ニセ薬効果)をキャンセルして統計的な判定ができるほどの十分な人数で、対照(コントロール)を設け、期間を十分とった臨床試験が必要ですね。そういう臨床試験で根拠を得た水商品なんてないですね。

 

●公的機関も水商売を検討している
天羽:実際の製品とかけ離れた宣伝を放置しておくと、知らずに買った消費者が被害を受けます。このため、公的機関による取り締まりも行われています。
 たとえば、東京都は『「活水器」の表示に関する科学的視点からの検証について』という文書を2005年に発表しました(http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/etc/documents/050215mizu.pd)。検証の対象となったのは、水の構造に対する効果:「水のクラスターが小さくなる」水の性質等に対する効果:「水がおいしくなる。まろやかになる」「水道水に含まれる有害物質を除去する」「カルキ臭を抑える」水を利用する際の効果:「炊飯に使うと、ご飯がおいしく炊ける」「コーヒー、お茶、水割りなどがおいしくなる」「野菜を洗うと、野菜についている農薬をよく落とす」「植物の生成が早まる。切り花が長持ちする」「お風呂に使うと浴槽に垢がつかない。体がよく温まる」「洗濯に使うと少ない洗剤で汚れを落とす」といったものです。クラスターについては、文献資料の出典がはっきりしないとか、NMRの実験結果の解釈を間違っているとされました。水の性質に対する効果と水を利用する際の効果については、一部の利用者のアンケートしか根拠がなかったり、体験談しかなかったり、試した人が関係者しかいなかったり、実験方法が不備であったりしたことが指摘されました。東京都は、十分な根拠なしにこのような宣伝をすると、不当表示となりうるとしています。
 公正取引委員会も、2005年12月に、磁気活水器電解水製造装置を販売している会社に対し、排除命令を出しました(http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/286894/www.jftc.go.jp/pressrelease/05.december/05122604.html)。このときは、磁気水が風呂場のカビの発生や台所シンクのぬめりを押さえる、電解水が体内の活性酸素を消去する効果を持つ、といった宣伝が排除命令の対象となりました。いずれの場合も、業者は宣伝の合理的な根拠を出すことができませんでした。
 国民生活センターは「磁気活水器」のトリハロメタン等の除去効果について商品テストを行いました。いずれの磁気活水器トリハロメタン・残留塩素の両方について何の効果も無いことが確認されました。
左巻:ニセ科学は、とくに健康をめぐる分野でまん延していますね。とくに水商売では波動水をはじめとして、磁気水、トルマリン水、マイナスイオン水、ナノクラスター・ゲルマニウム水、EMの清涼飲料水など万能性をアピールし、ニセ科学で消費者を釣って高価なものを買わせようとするものがあります。それらは、「万能性(どんな病気にも効く)」「がんやアトピーなどが治ったという体験談」「医師、医学博士や大学教授などのお墨付き」をアピールするものが多いですね。一般的には高価で、有効性の根拠があるものはないですね。
 水の商品の場合は、世界的に安全性の高い水道水や飲料可能な地下水を元にしている場合が多いので、副作用の問題が起きにくいのが救いです。

プロフィール
さまきたけお
法政大学生命科学部環境応用化学科(対談当時)
あもうゆうこ
山形大学理学部

【ダイヤモンド・オンライン「だから、この本。」の著者インタビュー】全4回:左巻健男『世界史は化学でできている』

【ダイヤモンド・オンライン「だから、この本。」の著者インタビュー】全4回が公開されました!

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている   左巻 健男 
アマゾン → https://www.amazon.co.jp/dp/447811272X/ref=cm_sw_r_tw_dp_FSDK0V06WCE91DBVXR4F 

【第1回目】
マリー・アントワネットも悩まされた…汚物まみれだったベルサイユ宮殿の真実 | だから、この本。 | ダイヤモンド・オンライン 
https://diamond.jp/articles/-/282233

【第2回目】
【アルコールの世界史】古代エジプト、ピラミッド建設の労働者の超意外な給料とは? | だから、この本。 | ダイヤモンド・オンライン 
https://diamond.jp/articles/-/282337 

【第3回目】
穀物の世界史】世界の人口の半分が主食…「世界3大穀物」の第1位は? | だから、この本。 | ダイヤモンド・オンライン 
https://diamond.jp/articles/-/282340 

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【第4回目】
世界中に猛威…歴史上、人類をもっとも殺戮した「感染症」とは? | だから、この本。 | ダイヤモンド・オンライン 
https://diamond.jp/articles/-/282362 

プレジデントオンライン:命にもかかわる"ニセ科学"の怖さ ー「失うのはお金だけではない」千葉真一さんもハマっていた"怪しい水商品"の3つの特徴

是非ご一読ください。
プレジデントオンラインの左巻健男記事が公開されています。(2021年9月10日~)
怪しい“水素”サプリや“飲むシリカ水”についても最初の原稿で書いたのですが分量オーバーで無しに。

「失うのはお金だけではない」千葉真一さんもハマっていた"怪しい水商品"の3つの特徴 命にもかかわる"ニセ科学"の怖さ 
#プレジデントオンライン 
https://president.jp/articles/-/49763 

左巻健男『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(ダイヤモンド社)6刷:累計8万部

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている 左巻 健男 https://www.amazon.co.jp/dp/447811272X/ref=cm_sw_r_tw_dp_AKGQT5WHTB93XZNVZKT9 @amazonJPより
*拙著のこれまでの最高部数5万部台を超えて8万部へ。
 
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「創生水」について書かれた本の内容2ページの紹介

左巻健男『入門ビジュアルエコロジー おいしい水 安全な水』(日本実業出版社 2000)

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「創生水」についての記述

 

「RikaTan(理科の探検)誌」読者の皆さまへ(SAMA企画へ申し込めば直送します)

☆★☆「理科の探検RikaTan誌」読者の皆さまへ☆★☆

大変お世話になっております「理科の探検RikaTan誌」編集長の左巻健男です。
このたび「RikaTan誌」2021年8月号(通巻39号)を発行の運びとなりました。

誌代は税および送料込みで1,500円です。

本号では「ステイホーム! おもしろ実験・ものづくり」を特集しました。

家庭でできる! おもしろい! 子どもも大人も楽しめる! 自由研究テーマの参考になる! ことを目指しました。

思い切ってオールカラーにしました。見やすくて分かりやすい特集になったのではないかと自負しています。

ご購入を希望される際は、送り先など samakikaku@rika.org へのメールと下記のいずれかの金融機関へのお振込をお願い致します。申し込みメールにはどの金融機関かをお知らせください。
口座名義は、いずれも「株式会社 SAMA企画  カ)サマキカク」です。
① みずほ銀行 <方南町支店> ・  普通預金 ・ 口座番号 1132757 
② ゆうちょ銀行
   A: 他行からゆうちょ銀行へお振込の場合
   {店名} 〇〇八(読み ゼロゼロハチ) 普通預金・口座番号 7304768
   B:ゆうちょ銀行同士によるお振込の場合
   {店名}でお振込の場合は 〇〇八(読み ゼロゼロハチ) 普通預金 
     口座番号 7304768
   {記号}でお振込の場合は 10000    普通預金   口座番号 73047681

☆領収書・納品書等を必要とされる場合には宛名・但し書き・日付をお知らせ頂けますと幸いです。
☆誌代お振込確認後、発売日の7月7日(水)頃までに、ご指定のご住所にお届けします。

それでは「理科の探検RikaTan39号購入希望」のメールを、心からお待ちしております。

株式会社 SAMA企画
〒168-0062東京都杉並区方南2-4-24 モナーク第二方南B-205
電話:03-6317-5056   FAX:03-6317-5056
メール:samakikaku@rika.org

【内容】

1 ぷよぷよ卵をつくろう! ー 卵のカラを溶かして、膜に包まれた卵に ー 左巻 健男
4 ネオジム磁石で磁性スライム遊び ー 磁石を飲みこむ ! 磁石を近づけるとツノを出す! ー 左巻 健男
6 プーっとふくらむカルメ焼き ー 百発百中成功のコツは温度管理 ー 左巻 健男
10 簡易導通テスターで金属探検 ー アラザン、金紙・銀紙の金属光沢部は金属か? ー 左巻 健男
12 手でさわれる竜巻をつくろう 藤本 将宏
15 不可視インクを作って秘密レターを書こう 髙野 裕恵
18 タマネギの皮でハンカチを染めよう 髙野 裕恵
20 色変わりを食べよう! 浅田 一恵
23 ネオジム磁石電車を走らせよう 浅田 一恵
26 シリカゲルと透明樹脂でつくる、植物の立体標本 横内 正
29 かんたん! 葉っぱ標本 ー100円ショップ素材で作る ー  桝本 輝樹
32 100円ショップ素材でつくるプランクトンネット ー 身近な小さい生き物をみてみよう ー 桝本 輝樹
36 電子レンジで押し花を作ろう 田崎 真理子
38 よごれ落としにチャレンジ! 田崎 真理子
41 キッチンで作る簡単・きれいな骨格標本 ー 身近な豚足と手羽先を使って ー 井上 茉優
44 ハッピーDNAストラップを作ろう! 関野 展寿
46 作ってわかる万華鏡のしくみ、万華鏡の不思議 関野 展寿
49 立方体万華鏡とコーナーキューブ 関野 展寿
52 目に見えない物を紫外線ライトで調べよう 横須賀 篤
54 でこピンminiブーメラン 橋本 賴仁
56 牛乳パックで作る紙とんぼ 橋本 賴仁
59 プラスチックコップを飛ばそう - マグヌスコップ -  月僧 秀弥
62 えーっ! これ飛ぶの?! ー 紙で作るグライダーで遊ぼう ー 福武 剛
65 ゆれ続ける電子ふり子をつくろう 福武 剛
68 たくさんのLEDを光らせよう 福武 剛
71 LEDを使った光通信 -メロディを光で送る - 井上 貫之
74 はんだ付け超入門 -圧電素子を使って、たたくと光る鬼を作ろう- 井上 貫之
78 地球の石で地球を描こう -フェルメールもびっくり! 天然石と接着剤でつくる岩絵具- さかさパンダ
80 プラスチックバックラゲ -おうちでプチ水族館気分 環境問題を考えるきっかけにも- さかさパンダ
83 台所にある味噌や醤油の性質を探ってみよう 青野 裕幸
86 毛細管現象を使って水を移動させる 青野 裕幸
88 「オアシス」を使って流水のはたらきを確かめる 青野 裕幸
90 ステープラの芯でつくる3極モーター -100円ショップの材料で本格的なモーターをつくろう! - 長戸 基
93 多目的に使う導通ロボット 高山 康
96 身近なもので太鼓をつくろう! 高山 康
98 水蒸気でマッチに火をつけよう  井野 雄介
100 お弁当用しょうゆ入れ・ペットボトルでつくる浮沈子 田中 岳彦
102 過冷却水をつくろう 田中 岳彦
104 園芸用尿素でふしぎな結晶を作ろう 大島 修
106 静電気をためたコップでビリッ! 大島 修
108 水がもれる、止まる、ふしぎなコップ 大島 修
110 スーパーボールロケット - かんたん! よくとぶ! 楽しい! - 十河 秀敏
112 踊るハート !! - 電池と磁石だけで針金(ハート形)が回る - 嶺山 幾英
114 納豆を作ろう シ
117 ホイップクリームのツノを立てよう - 楽しくおいしいキッチン実験 - 夏目 雄平
120 「浮力」とは何だろうか? - はっ水シートでふか~く探る - 夏目 雄平

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左巻健男の【本を書く生活】の1年間~9冊の単著・編著を出した~

ちょうど1年前 2020年6月11日に述べていたことがどうなったか。
『世界を変えた「物」語り』(仮題)は、『世界史は化学でできている』のこと。
 
1年前は考えていなかった編著3冊追加(怖くて地学・始まりから物理・科学のふしぎ)。
それとここには書いていないが監修書2冊追加。
明日香の感染症本は来月出る。
 
知らんうちにこの1年間地道に仕事をやっていたんだなあ。w
 
その合間にオンライン記事もいくつか書いたなあ。
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※この1年間に出た左巻健男単著と編著
 
・編著 科学のふしぎ366 - 1日1ページで小学生から頭がよくなる! きずな出版(2021/05)
・編著/元素学たん著 図解身近にあふれる「元素」が3時間でわかる本 明日香出版社(2021/05)
・単著 世界史は化学でできている - 絶対に面白い化学入門 ダイヤモンド社(2021/02)
・編著 始まりから知ると面白い物理学の授業 - 世界は物理法則で成り立っている 山と渓谷社(2020/12)
・編著 身近な科学が人に教えられるほどよくわかる本 - 「朝起きてから、寝るまで」のサイエンス SBクリエイティブ(2020/11)
・単著 怖くて眠れなくなる化学 PHP(2020/10)
・編著 世界を変えた微生物と感染症 祥伝社(2020/08)
・編著 図解 身近にあふれる「物理」が3時間でわかる本 明日香出版社(2020/07)
・編著 怖くて眠れなくなる地学 PHP (2020/06)
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※ちょうど1年前 2020年6月11日に述べていたこと
 
左巻健男の今後の仕事】
今月中に
・編著『世界を変えた微生物と感染症』を終わらせ、
・編著『身近な科学が人に教えられるほどよくわかる本』の分担一次原稿を書き終える。
・編著『身近にあふれる「物理」が3時間でわかる本』のゲラ校正も。
7月から何をやろうかと思ったのだが、次を並行してやることになりそう。
・単著『世界を変えた「物」語り』(仮題)の手直し
・単著『怖くて眠れなくなる化学』の一次原稿執筆
・編著『身近にあふれる「感染症」が3時間でわかる本』の一次原稿執筆
・共著『身近にあふれる「元素」が3時間でわかる本』の一次原稿執筆
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【日本共産党は科学から離れすぎていないか?】2020年12月3日 · FB左巻 健男に公開した記事の再録

日本共産党は科学から離れすぎていないか?】
 2020年12月3日 · FB左巻 健男に公開した記事の再録
https://www.facebook.com/samakitakeo/posts/3832818223415705

 

 今日(2020/12/3)日本共産党の「しんぶん赤旗」5面の「種苗法改定強行に抗議」という記事に、静岡県から駆けつけた農業生産法人・日本豊受自然農の由井寅子代表…の言葉が大きく載っていた。
 この人、かのオカルト・ニセ科学ホメオパシーの超有名人。
 ホメオパシーは学術会議がその非科学性を問題にして会長声明を出したもの。

 由井寅子氏の日本豊受自然農もホメオパシージャパン系。
 よりにもよってこんな人を大きく取り上げるところに共産党がオカルト・ニセ科学汚染に塗れていることが見て取れる。非常に残念。

 とくに食・健康・農業系でトンデモに傾いている。民主党政権の農水大臣としてEM菌比嘉照夫氏に感謝状をあげた山田正彦氏界隈に共産党国会議員がいる。

 野党共闘のためならカルト・オカルト・ニセ科学でもOKというのも問題だが、その前に科学リテラシーがなさ過ぎることが大問題。「非科学的社会主義」を目指しているのかな。

 次はぼくが『RikaTan(理科の探検)』誌に書いた記事の一部。

 ホメオパシー側の考え方はその団体によって違う。通常治療との共存を目指し、「病気になったら病院に行きなさい」と正しく指導している団体もある。
その一方、由井寅子名誉会長の日本ホメオパシー医学協会のように通常医療を敵視して「薬を飲むな」「病院に行くな」「予防接種を受けるな」という団体もある。

 日本ホメオパシー医学協会由井寅子氏のレメディの考え方の一部を紹介しておこう(会長のときの談話から。現在は名誉会長)。山本弘ホメオパシーを笑え!」『トンデモ本の大世界』(と学会著 アスペクト 2011)の紹介からである。
───────────────────────────
・ゴキブリのレメディは喘息と時差ボケに効くという。ゴキブリは垢っぽいところが好きで、夜に活動するからだという。
(ゴキブリが時差ボケや喘息の症状を惹き起こすわけではあるまい。)
・「蜘蛛のレメディ」というのもある。これはくも膜下出血とインターネット中毒に効果があるという。前者は「くも膜」が蜘妹の巣に似ているから、後者はウェブ(=蜘蛛の巣)に捕まっているから、という理由である。(単なるギャグ・ダジャレのレベルではないか。)
・「ベルリンウォール」というレメディは、ベルリンの壁を砕いて希釈したものだそうである。抑圧や虐待やいじめに効果があるとされている。
(いじめの加害者の性格を変えるならともかく、被害者の方が舐めて、なぜ効果があるのかは謎である。)
───────────────────────────

 

wiki由井寅子
由井 寅子(ゆい とらこ、1953年 - )は、ホメオパシー研究家、翻訳家、民間セラピスト。イギリスのホメオパシー医学協会(The Homeopathic Medical Association)名誉会員、日本ホメオパシー財団理事長、日本ホメオパシー医学協会会長、日本ホメオパシーセンター総センター長、ホメオパシー総合医療専門校カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシーの学長。農業生産法人日本豊受自然農株式会社社長で、一連の団体はホメオパシージャパン系と呼ばれている。ホメオパシー、ハーブ療法、ハーブチンキ(マザーチンクチャー)、ラーデマッハーの臓器療法、花の露を利用する花療法(バッチフラワー)、塩を使うシュスラーの生命組織塩療法(Schüßler-Salze、ティッシュソルト)、植物の灰を利用するスパジリックを中心に、錬金術、医療占星術(英語版)、東洋医学を取り入れた治療の普及・指導、心の癒し、霊性の向上・大いなる神々に信仰心を持つための霊性の教育なるものを行う[1]。魂・心・体を治療するという「ZENホメオパシー」というものを提唱している[2]。

EM菌のオカルト・ニセ科学性入門 by 左巻 健男 SAMAKI Takeo : RikaTan【理科の探検】別冊 (No.38)

RikaTan【理科の探検】別冊 (No.38)に書いたものをアップしておきます。

※EM菌関係者には是非言論での反論をお願い致します。

EM菌のオカルト・ニセ科学性入門

左巻 健男 SAMAKI Takeo

 

EM(EM菌)とは?
 EMは有用微生物群Effective Microorganismsの英語名の頭文字だ。通称EM菌ともよばれる。
(株)EM研究機構、(株)EM生活などの商標登録された商品群である。ここで注意すべきは、名前の「有用微生物群」はあくまでも自称なので、本当に有用かどうかには大いに疑問が持たれていることである。

 また、EM菌という単独の菌があるわけではない。細菌の仲間の乳酸菌や光合成細菌、カビの仲間の酵母などの集合体で、販売元はとくに光合成細菌が“超スーパー菌”として働くとしている。

 EMには、「EMを用いた微生物資材(農業資材)」「EMを使用して作られた各種製品(健康飲料、農産物、化粧品、食品類)」「その他、EMを利用した資材(EMぼかし、EMストチュウ、EMセラミックなど)」などさまざまな商品群がある。また、EMを活用して、土木建築、食品加工、環境浄化、塩類集積対策、化学物質汚染対策などへのEM技術があるという。

 開発者は開発当時琉球大学農学部の比嘉照夫教授。比嘉氏が書いたEM本、『地球を救う大変革』(サンマーク出版 1993)はベストセラーになった。表紙には「食糧・環境・医療の問題がこれで解決する」とある。国立大学の教授が大々的にあらゆることへの効果をうたったことで、世にEM信者がたくさん生まれた。さらに、経営コンサルタントの故船井幸雄氏が応援したことでも話題になった。

 

開発者比嘉照夫氏が“神様”だというEMと宗教の関係
 EMが無農薬・無化学肥料をうたう自然農法の世界で、世界救世教という新興宗教の一派と組んだことでEM普及に弾みがついた。世界救世教は、国内に百万を超える信者を持ち、浄霊という手かざしの儀式的行為を各信者が行うこと、自然農法を推進することなどを特徴としている。世界救世教は内部分裂しているが、その一派では、EMは“神からのプレゼント”と形容されている。

 さらに最近は、ミロクコミュニティ救世神教(略称:MC救世神教)と組んでいる。MC救世神教は、世界救世教に所属していた後藤英男氏が、1970年に岡田茂吉氏の霊的復活を体験して独立、立教した救世神教が衣替えした新興宗教。後藤英男氏の死去後、後藤孝彦氏に継承されている。世界救世教と同様の「浄霊(手かざし)」の他に「奇跡」をうたっている。三重県津市の本部のバラ園はEM農法だ。要するにMC救世神教は世界救世教の流れで、ほぼ似たようなものだ。

 宗教学者島田裕巳氏は、手かざしは誰でも習得が比較的容易で複雑な教義も必要としないので、教団から独立しやすく分派が生まれやすく、統合も多いと指摘している(『日本の103ニセ科学を斬る! 2020大新宗教』〔幻冬舎新書 2007〕 )。

 比嘉氏は、「EMは神様」だから「なんでも、いいことはEMのおかげにし、悪いことが起こった場合は、EMの極め方が足りなかったという視点を持つようにして、各自のEM力を常に強化すること」を勧めている。EMはあらゆる病気を治し、放射能を除去するなど、神様のように万能だというのだ。

 EM製品をどんどん使ってEM力を常に強化する生活をすると、次のような効果があるという1)。

1 .EM製品を身に着けていたので交通事故に遭っても大事に至らなかった。
2 .EM生活をしていると大きな地震が来てもコップ一つも倒れなかった。
3 .EM生活をしていると電磁波障害が減り、電気料金も安くなり、電機製品の機能が高まり寿命も長くなった。
4 .EMを使い続けている農場やゴルフ場の落雷が極端に少なくなった。
5 .EM栽培に徹していると自然災害が極端に少なくなった。
6 .EM生活を続けていると、いつの間にか健康になり人間関係もよくなった。
7 .EMを使い続けている場所は事故が少なく安全である。
8 .学校のイジメがなくなり、みんな仲良くなった。
9 .動物がすべて仲良くなった。
10 .すべてのものに生命の息吹が感じられるようになった。
11 .EMで建築した家に住むようになり、EM生活を実行したら病人がいなくなった。12 .年々体の調子がよくなり、頭もよくなった。
13 .EMの本や情報を繰り返しチェックし確認する。
14 .いろいろな事が起こっても、最終的には望んだ方向や最善の結果となる。

 もちろん効果は疑問だが、「効くまで使いなさい」という指導がなされている。さらに、比嘉氏は体調を崩している同志にEMを使ったが、機械的にでは駄目と反省し、次の【EM讃さんし詞】を心から想いを込めて唱えることを薦めている2),3)。
 この【EM讃詞】はEM菌教の祝詞のようだ。

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 比嘉氏は、EMに囲まれた場所は「結界」(宗教用語=聖なるものを守るためのバリア)になり、たとえば沖縄本島福島県はEM結界になっているので、台風がそれたり、被害は少なくなるなどと述べている。その言説を信じたEM信者らは、畑にEM製品を入れたペットボトルを埋めたり、ぶら下げたり、リチウム電池(「波動源」になるそうだ)を支柱に貼り付けたりして結界づくりに励んでいる。

 

EMと創価学会との関係
 斎藤貴男カルト資本主義 増補版』(ちくま文庫 2019)の“第四章「万能」微生物EMと世界救世教”に「創価学会人脈」がある。

 この中で、EMの普及活動は、自民党だけではなく、創価学会公明党ないし新進党の熱心な応援を得ていたとした。このとき、マルチ商法的に健康食品を販売していた「ナチュラルグループ本社」(2011年倒産)の創業会長で熱心な創価学会信者の橋本幸雄氏が深い関わりを持ったと思われる、としている。

 現在、創価学会が一枚岩でEMを擁護しているようには見えない。創価学会系の『第三文明』誌はEMを批判する記事を掲載しているし、私も『第三文明』誌からニセ科学の問題について複数回インタビューを受けた。

 

EM批判者への強い攻撃性
 EM研究機構の顧問と社員が、EMの非科学性について批判している人らの自宅や所属機関に押しかけたりして、「名誉毀損」「営業妨害」だとして批判封じの働きかけをしている。こうした役目を果たす先頭にいたのが、EM推進のDND社長・ヒノキヤグループ社外取締役出口俊一氏だ。

 出口氏は、私との裁判で、EM研究機構の顧問だったことが明らかになった。

 出口氏は、ときにはEM研究機構の顧問であることを隠して、大学客員教授やジャーナリストの肩書きを使っていた。

 本来なら、EM批判をしている研究者とは公明正大に議論をすればよい。本当に商品の性能に自信があるなら第三者に自由に検証してもらい、もし問題が見つかれば商品の改良を重ね、批判をもとにより良い商品開発を目指していくのが企業としてのあり方ではないかと思う。

 出口氏と私の裁判のことも少し述べておこう。
 2015年2月、EM研究機構の顧問だった出口氏が名誉毀損で私に対して訴訟を起こした。その過程で出口氏がEM研究機構顧問であることがはっきりした。

 同年6月には、比嘉照夫氏が、EM菌の効果を疑問視する記事を出した朝日新聞社名誉毀損で訴訟を起こした。このとき出口氏は比嘉氏側の陳述人だった。

 私への訴訟、朝日新聞への訴訟とも東京地裁、東京高裁の控訴審でEM側が完全敗訴、最高裁棄却で、EM側の完全敗訴の判決が確定した。

 なお、私と出口氏との裁判記録は、暗黒通信団のサイトに公開している4)。

 また、この裁判について私は小冊子にまとめた。
 左巻健男『ドキュメント スラップ名誉毀損裁判 EM菌擁護者と批判者の闘い』(暗黒通信団 2017)。

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 なお現在、出口氏とは二度目の裁判中である。

 比嘉氏と朝日新聞との裁判、出口氏と私の裁判などEM側の弁護士事務所は有名な創価学会系だ。比嘉氏や出口氏がなぜ創価学会系弁護士事務所を頼りにしているのかは謎であるが、わざわざ創価学会系で有名な弁護士事務所を自分たちの代理人にするのは、かなり深い結びつきがあるのだろうと推測される。

 

北朝鮮はEMを国家レベルで導入
 比嘉氏がEMモデル国家として一生懸命に入り込んだ国家がある。食料難に苦しむ朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)だ。

 1990年代の終わりごろ、北朝鮮は全国くまなく農業用資材としてEMを導入することにしたのだ。比嘉氏もしばしば訪れて指導をし、「北朝鮮はEMモデル国家。21世紀には食料輸出国になる」と宣言していた。

 しかし、今は比嘉氏は北朝鮮のことについて述べないし、WEBサイトからその関係の話は削除されている。数年で、この国家的事業は失敗したからだ。詳しくは拙ブログの記事を参照のこと5)。

 私は、北朝鮮に同情もする。日本の戦時中のことを想起するからだ。

 批判精神に欠け、権威に盲従しやすい、あるいはそうさせられた国民にあっては、竹やりをもって近代兵器に立ち向かおうとしたり、神風による最後の勝利を信じたりする。
 きっと当時の北朝鮮ではEMは「神風による最後の勝利」の希望だったに違いなかったと想うのだ。しかし、壮大な国家レベルでの社会的実験をしての失敗に終わった。

 

政治の世界にEMは入り込んでいる
 現在、比嘉氏がEMモデル国家にしようとしているのは、実は日本である。
 比嘉氏は、「私は日本にはEMの思想が根づく土台があると思っています」と述べる。その象徴が伊勢神宮で、「伊勢神宮の御神木が象徴する自然と人間の協調は、日本文化の原点であり、すべての尊厳を認めるという万世一系の思想の源流です。そのDNAは、現代の私たちにもたしかに受け継がれています」とする(『新地球を救う大変革 EMが未来を復興する』〔サンマーク出版 2012〕)。ここで、「万世一系」とは、「永久に一つの系統が続くこと。多くは皇室・皇統についていう」というものだ。

 そのためにEMは日本の政界に入り込んでいる。

 安倍内閣の文科大臣だった下村博文衆院議員は、比嘉氏の講演を聴いて「EM技術による放射能被曝対策もできるそうだ。…同様の提案が私のところにも他からも来ている。私も勉強してみたい。」とブログで述べていた。

 安倍内閣は、市議・県議時代からEMの広告塔的立場だった高橋比奈子衆院議員を環境政務官につけたこともあった。これについては、『週刊文春』誌2014年10月30日秋の特大号に「元女子アナ環境政務官は“トンデモ科学”の広告塔 まだある女性抜擢失敗!」という記事が掲載された。

 政界では、まず2006年にEM推進は掲げていないが有機農業推進議員連盟を、熱心なEM信者のツルネン・マルテイ参議院議員(民主党)らが設立している。

 2013年12月3日に国会議員の超党派による「有用微生物利活用議員連盟」が発足している。いわゆるEM菌議連といわれる。会長は野田毅衆院議員(自民)、幹事長は平井たくや衆院議員(自民)、事務局長は高橋比奈子衆院議員(自民)である。比嘉氏によると、「スタートは50人内外でしたが、その後も新規に加入いただいていますので、近々100人を超える規模になりそうです」6)。

 比嘉氏は、EM菌議連と有機農業推進議員連盟について「この2つの議員連盟は、国会を軸にEMを社会化する両輪のようなものであり、これからも密接に連携し、EMが大きな国民資産になるように、より活発な活動を展開することになっています」と述べている7)。

 2018年10月3日の毎日新聞は、「安倍内閣初入閣・平井科技担当相は「EM菌議連」幹事長」を報じた。平井議員は「『EM菌を使っている方がたくさんいるので幹事長を引き受けた。中身はよく知らない』と釈明した。」という。

 比嘉氏は、さまざまなEM商品を全部使うEM生活をすることを国民の義務にすることを狙っている。国民全体がEM・X GOLDという超高額な清涼飲料水を飲み、さまざまなEM商品を使う「EM生活」をするようになれば、生活習慣病などはなくなるので、もし病気になったら自己責任なので現在の社会保険制度は不要という主張である。そのためには政治家らもEM信者にしようとしているのだ。

 

比嘉氏「EMはEM入り容器外のウイルスを失活させる」
 比嘉氏は、もちろんEMは「病気に対しても万能的な抑制機能を持っており、特にウイルスに対する効果は顕著である」と述べていた。たとえばエボラウイルスでもインフルエンザウイルスでも効果があるとした。

 しかも、「EM培養液やEM活性液は弱酸性だからウイルスが失活するのだろう」という批判を意識してか、pH(酸性・アルカリ性のものさし)のみではない事例が無数にあると、「EMの入った容器の上でウイルスを培養すると、EMが添加されたのと同様にウイルスが失活する」とまでDND(出口氏社長)サイトの連載で述べた。

 私は、EMとまったく接触していないウイルスを失活(殺菌)させるという記事をサイトに載せるサイト主は「真正のおばかで、嘲笑するしかない超低レベル」などとツイッターで呟いた。これが出口氏との裁判の名誉毀損理由の二つのうちの一つである。出口氏は当時金沢工業大学客員教授という肩書きを持っていたので、あまりにも荒唐無稽な内容をふくむ記事を載せることを問題にしたのだ。裁判は、「“真正のおばか”は人格攻撃ではなく批判的意見」という形で結審した。

 比嘉氏は「EMはいわば神様で、重力波を出して接していないものへも波動効果」と信じているのだろうが、そのような普通ではない考えはいろいろと批判されてもしょうがないということだ。

 その後、岐阜県のEMを飼料に使っていた岐阜ヘルシーポークの豚が豚熱(豚コレラ)ウイルスにやられたり、EM推進のMC救世神教の信者集会で麻疹ウイルスの感染拡大を起こしたりして、ウイルスに対してEMが有効かどうかについては疑問が持たれた。

 そして新型コロナの感染拡大のなかで、ウイルスにも万能的効果をもたらすというEMがどう対応するかが注目された。

 EMホテルで有名なホテル「EMウェルネスリゾート コスタビスタ沖縄 ホテル&スパ」では、2020年1月28日に新型コロナウイルスの感染予防対策として、「ロビーにEM発酵液と消毒液の設置を増設しており、手の消毒を推奨しております」としていた。

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 その後、ツイッターなどで「EMが新型コロナに効くのか?」という疑問が出たためか、「EM発酵液」と表示していたところからEMを削除し、「発酵液」にしている。いわばEM隠しをしている。

 比嘉氏の主張が本当なら、EMづくしでリフォームしたホテルは床、壁、天井などあらゆるところからのEMの「波動」に満たされているはずである。ホテル内が比嘉氏がいう結界になっていて、悪さをするウイルスが活動できる隙はないはずだ。ホテルにもしも新型コロナ感染者が入ってきても、その結界のなかでたちどころにウイルスは失活するはずだ。しかし、比嘉氏やホテルのスタッフたちはそんなことを信じていないので、消毒液を増設し、マスクをするのだろう。

 比嘉氏は、2020年3月30日になって「結論的にいえば、EMを活用し、EM生活に徹することである」ということを述べた8)。EMホテルはもちろん、EM結界になっている沖縄本島福島県は新型コロナ感染者は出ないといえないのだろう。

 実はEMを構成している菌を私費で調べた片瀬久美子氏によると、肝心の光合成細菌が見られず、「EM菌を加えた培養液中にアシネトバクター属のAcinetobacter ursingiiが増えていました。この細菌は『日和見感染菌』として血液感染症から比較的高頻度で検出されています」との結果だった9)。いわば雑菌の集まりのEMの発酵液(EM活性液)で手の消毒をするのはいかがなものか。

 またEMの発酵液を自己責任で飲んだり噴霧したりしている人らがいる。私は、片瀬氏が述べる「特に易感染者(持病等により免疫系が弱っている方々、高齢者、乳幼児など)は止めておいた方が良いと考えます」に同感だ。

 EMの主力商品、つまりEM生活に徹するときの中心は「EM・X GOLD」というEMの発酵生成物を抽出したという高額な清涼飲料水である(500 mL 4,650円)。この公開成分はナトリウムだけ。それからいえることは薄い食塩水だ。清涼飲料水は飲んでも安全というだけで、何らかの健康効果をうたうことができないもの。原材料は糖蜜(サトウキビから砂糖をとった残り物)や酵母エキスなどだ。糖蜜は菌のエサ。酵母エキスは塩酸などで酵母を分解抽出して得た成分だ。比嘉氏は抗酸化力があり、オーリングテストや波動測定の結果から高い効果があるとするが、オーリングテストや波動測定はともにニセ科学と見なされているものだ。

 以上、EMは比嘉氏の主張や商品群にオカルト・ニセ科学の臭いがぷんぷんすることの一端を見てきた。

 

参考文献
1)EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる 第74回 EMによる災害に対する危機管理https://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru74.html
2)EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる 第147回 量子力学を応用した新しい農業(2)https://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru147.html
3)EM生活 EMと共に生きる人々 比嘉照夫先生に突撃インタビュー!https://www.EM-seikatsu.co.jp/enjoy/category/detail.php?id=190
4)「EM菌 擁護者と批判者の闘い」参考資料集 
http://ankokudan.org/d/d.htm?samaki-j.html
5)EM(EM菌)と北朝鮮?比嘉照夫氏「北朝鮮はEMのモデル国家」 - 左巻健男&理科の探検’s blog https://samakita.hatenablog.com/entry/20161130
6)EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる 第79回 有用微生物利活用議員連盟の発足https://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru79.html
7)EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 
新・夢に生きる 第82回 第18回全国EM技術交流会・東北大会in七ヶ浜
8)比嘉照夫氏の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境 第153回 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに関する第三の道 http://dndi.jp/19-higa/higa_153.php
9)EM菌の正体(構成微生物を調べました) 片瀬久美子
https://note.com/katasekumiko/n/nd2eb3d7da6f8」)

 

プロフィール
さまき たけお 東京大学講師・元法政大学教授/『RikaTan(理科の探検)』誌編集長
 拙著『暮らしのなかのニセ科学』『学校に入り込むニセ科学』(ともに平凡社新書)でも、EMについて解説している。