左巻健男『面白くて眠れなくなる化学』PHP文庫版の「文庫版あとがき」と「はじめに」
面白くて眠れなくなる化学 (PHP文庫) 文庫 2017/4/5
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ロウソクの火が消えると酸素はどうなる? コーラを飲むと歯や骨が溶ける? ケーキの銀色の粒の正体は? 紅茶にレモンを入れると色が変わる理由は?――人気シリーズ「面白くて眠れなくなる」の第三弾は「化学」がテーマ。
中学、高校の理科で勉強する「化学」を題材にさまざまな事象について解説。身の回りのものにこんな秘密があるなんて! と驚くネタが満載です。化学の世界は不思議とドラマに満ちている! 面白く読めて教養も身に付く一冊。
【本書の目次より】爆発とは何だろう?/水を飲み過ぎるとどうなる?/「温泉」「入浴」をめぐるウソ・ホント/「アルカリ性食品は身体によい」はウソ/折り紙の銀紙は金属?/缶詰のみかんのひみつ/洗濯機で手作りスライム/輪ゴムができるまで/水に沈む氷
文庫版あとがき
PHP文庫版になるにあたり、全体を読み直してみました。読了して、本書執筆のきっかけや執筆に集中していた時期を思い起こしました。
本書を書く前に、ぼくは『面白くて眠れなくなる物理』を出したばかりでした。その本を引き受けたときに、「書き終えたら、化学でも書かせてほしい」と頼んだこと、「化学でも企画が通りましたよ」と言われて、一心不乱に本書を書き上げたことを思い出したのです。
ぼくは、長く中学校・高等学校の理科教員を務めました。そのとき、化学の授業は、いつも平明なもの、生徒の興味をひくもの、本質的なもの、を目指すべきだと思って取り組んできました。
マイナス二〇〇℃近い低温の液体窒素でいろいろなものを冷やしたり、カルメ焼きに熱中するような、「物質にいつも触れる、物質が身近になる、物質の世界が見えてくる」ような化学の授業をしたかったのです。
そのような、物質に触れあう実験だけではなく、新しい世界を広げてくれる知識も大切と思い、いつも原子論というミクロなレベルの理論とともに、物質の性質や物質の変化といったマクロなレベルの世界を統一することも意識しました。さらに、その理論と実験が生活や社会と広くつながっていることを大事にしなければならないと思っていました。
本書の内容には、ぼくが長年にわたって理科教員として心がけてきた、そのような化学の授業がバックにあります。
ビジネスマンなどへの調査で、化学は学習して役立たない科目の上位にあげられてしまいます。高校で化学選択者はたくさんいるし、化学物質とのつきあい方について正しい判断力を必要とされる時代だというのに、化学の面白さや生活と化学との関係についてあまり伝えられていないという状況があるようです。
本書は、化学の啓発書として、ちょっと違ったアプローチになっていると自負しています。基礎的・基本的な知識についてはいくつかの別の著作で展開していますが、本書では、ぼくが長年、化学を教えてきた中でその神髄をやさしく伝えたいという心を込めたつもりです。本書が文庫になり、さらに多くの読者に化学の面白さの一端を伝えられるとしたら大変嬉しいことです。
二〇一七年三月 左巻健男
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はじめに
ぼくがこの本を書いたのにはわけがあります。
化学は面白い!
ズバリ、このことを読者のみなさんにわかってもらいたかったからです。
化学はとても面白くて魅力的で、物質の世界のあらゆることを記述しており、実は身の回りの様々なところでも、その考えや法則は関係しています。
化学で面白いのは、物質の性質や変化の実験だけではありません。化学の本質的な知識は、新しい世界を広げてくれます。
本書では化学の基礎・基本の、多くの人々が学校で学んできた中学校や高校初級の理科の中の化学を素材として取り上げるようにしました。
学校の化学に興味を持てない人が多いのは、その内容が抽象的で実感がわきにくい、わかったという気持ちにならない、生活や人生に無関係で学校から出れば不要な知識だ、などたくさんの理由があるでしょう。
ぼくは、小学校・中学校・高校初級の理科教育を専門にしています。もともと中学校・高等学校の理科教師でした。理科教師をしているときのモットーが、「家族の食事のときにその日の授業の話題で盛り上がるような授業をしよう」でした。
理科の授業を通して、知って得をした、知って感動をした、知って心がゆたかになった、考えてわくわくした…というような気持ちを持ってもらえるといいなと思っていました。本書は、そんなぼくの「とっておきのはなし」を文章化しています。
科学は、不思議なドラマに満ちた世界を少しずつ解明してきました。自然の世界の扉を少しずつ開いているのです。まだまだわからないこともたくさんありますが、わかってきたこともたくさんあります。
理科教育の専門家として、そのわかってきていることの、さらに基礎・基本の中からテーマを取り上げて、「ほら、もう一歩、こんなことまで考えれば面白いでしょ!?」といいたいのです。
本書を読んで、「この場合はどうなのだろう?」「あの場合はどうなのだろう?」などと新しい疑問がわいてきたとしたら、ぼくの試みは成功かもしれません。例えば、ぼくたちにとって身近な「食塩」の主成分の「塩化ナトリウム」は、ナトリウムと塩素からできています。
実は、そのナトリウムは水の中に投げ込めと、化学反応で爆発を起こす物質です。塩素は、毒ガス兵器に使われた毒性の強い物質です。それらが化学変化で一緒になることで、普段私たちが当たり前に使っている調味料=食塩になるのです。その食塩でも量によっては中毒を起こすことがあります。
このような発見、驚きを提供することで、感動する理科、心をゆたかにする理科を目指して、さらに研究していきたいと思っています。
ぼくは、化学を楽しむためには、「物質とつきあう、物質が身近になる、物質の世界が見えてくる」ことでなければならないと考えています。ぼくはカルメ焼きに熱中するような、物質にいつも触れるような化学教育をすすめたいと思っています。
学びのある授業と学びがない授業(左巻健男『おもしろ理科授業の極意』東京書籍の一節)
おもしろ理科授業の極意: 未知への探究で好奇心をかき立てる感動の理科授業 (左巻健男著 東京書籍)https://amzn.asia/d/4MEKeJW #Amazon の一節
学びのある授業と学びがない授業
東大附属中高で同僚だった草川剛人さん(帝京大学)から聞いた話。彼は日本史が専門で、若い頃は落語を聞いて話術の技を学んだという意欲的な教員だ。日本史でも黒板とチョーク、それに話の授業ではなく、実物的な教材なども用意して授業をしていた。
東大附属は、よく東大教育学部の先生方がゼミの学生を引き連れて授業見学に来た。彼の授業を見た教授から、当時東大教育学部長だった佐藤学さん(学習院大学)にその授業の様子を聞いた。それで、彼が佐藤さんと会ったときにいわれた。「草川さん、この前、いい授業をしたんだってね」。続けて「教員の責任は、すぐれた授業をすることではない。子どもが学ぶ授業をすることです。教師の責任は一人残らず学ぶ権利を保障することです」。その言葉が、彼が佐藤学さんが提唱する「学びの共同体」に参加したきっかけだという。
私はそれを聞いてから、佐藤さんが述べている「学校の役割・教師の責任は、すぐれた授業をすることではない。一人残らず学ぶ権利を保障し、高いレベルに挑戦できる機会を保障することだ」ということを意識している。
私たちは、いわゆるすぐれた授業ができるようになることを求めがちだ。
子どもたちが活発に次々と発言する。それらの発言を引き取って、教員が発言をまとめ、次の発問をする。また活発な発言が続く。外から見て、そんな授業は、とても華やかだ。しかし、そこに学びがあるかどうかが大切なのだ。教員の話が下手でも、活発な発言がなくても、そこに学びがあるかどうか。
「学びがある」とはどういうことか。
すでにわかっていることを確認することは学びとしてはとても低い。今はわかっていないことがわかっていくことが学びなのだ。それを私は「未知への探究」と呼んでいる。今はわかっていないこと、つまり今より高いレベルに挑戦する。しかも一部の子どもだけではなく、一人残らず挑戦していることが、「学びがある」授業ということなのだと思う。
発問に対して子どもたちが「はい!はい!」と挙手し、活発に次々と発言するような授業をよく見ると、発問内容のレベルが低い。既知の、当たり前の内容だからどんどん発言できるし、発言する子どもが偏っていたり、思いつき的な内容も多かったりする。
発問内容のレベルが適切でも、活発な発言の陰に「わからない」子どもが隠れてしまっていることもある。
佐藤学さんが「授業をしっとりしたものに。教員はテンションを上げない」と述べているが、テンポを上げないでじっくりと考えるようにし、しっとりと落ち着いて語りかけることも意識したい。きっと学びのある授業は表面的な活発さはなく、一人一人がよく考えているので落ち着いた雰囲気になることだろう。
そこで先述のように、私は課題方式の授業で、課題への〈自分の考え〉を書かせている。そのぶん授業のテンポは遅くなるが、学びはじっくり進めたほうがいい。人の意見を聞くことも大切だ。自分の考えと人の考えをすり合わせて考えを深めるのだ。そこで「人の意見を聞いて」も書かせている。
子どもの発言や教員の説明が一段落したときに、よく「わかった人?」と聞いてしまう。挙手させれば、何がわかったのかわからない子どもも挙手することだろう。「わからない」とは言いづらい。だから、「わかった人?」とは聞かないで、わかっていれば答えられるような発問を投げかけたりする。それで自分の考えを書かせてみれば、「ここまでは大丈夫だな」「もう少しここのところはアプローチしよう」とか判断することができる。
質の高い学びのために、授業に未知への探究の要素があるかどうかをいつも意識したい。
ジャコウネコを虐待して世界一高価なうんちコーヒーがつくられる事実
○世界でもっとも高価なコーヒー豆 コピ・ルアク
2007年公開のヒューマンドラマ映画「最高の人生の見つけ方」。ジャック・ニコルソン(大富豪エドワード役)とモーガン・フリーマン(自動車工カーター役)がW主演を務めました。
病院で同室になって、エドワードは、カーターのもっていた、死ぬまでにやりたいことのリスト+自分のやりたいことを実現しようともちかけます。
カーターは、エドワードが愛飲している高価なコーヒーが、ジャコウネコのうんちコーヒーであるコピ・ルアクであることを知らせます。
大笑いする二人。それは、リストの中の一つをなしとげたことになりました。リストから「泣くほど大笑いする」を消します。
コピ・ルアクとはジャコウネコのうんちから採られる未消化のコーヒー豆のことです。「コピ」はコーヒーを指すインドネシア語、「ルアク」はジャワ・ジャコウネコ(以下ジャコウネコ)の現地での呼び名です。
主にスマトラ島、ジャワ島、バリ島で生産されています。希少品のため、東京では一杯数千円で提供している店もあります。世界で最も高価なコーヒーとして知られています。コーヒーに使うのはコーヒー豆の果実から果皮や果肉を取り除いた種子の部分です。
インドネシアのコーヒー農園ではロブスタ種のコーヒーノキが栽培されており、その熟した果実は、しばしば野生のジャコウネコにエサとして狙われます。果実には、ジャコウネコが好きな単糖類が含まれています。
しかし、果肉は栄養源となりますが、種子にあたる部分(コーヒー豆として使用)は消化されずにそのまま排泄されてしまいます。
現地の農民はそのうんちを探して、中から種子を取り出し、きれいに洗浄し、よく乾燥させた後、高温で焙煎したものがコピ・ルアクとされています。
一説によると、ジャコウネコ腸内の消化酵素の働きや腸内細菌による発酵によって、コーヒーに独特の香味が加わるといいます。
ところでジャコウネコは、ネコ、イヌ、クマなどを含む食肉目の仲間です。「食肉」とは肉を食べる者という意味であり、ジャコウネコは、発達した犬歯、裂肉歯、短い消化器官など、食肉目に共通する形質をもっています。
○コピ・ルアク、イグ・ノーベル栄養学賞を受賞
1995年には、イグ・ノーベル栄養学賞をジャコウネコのうんちから集めたコーヒー豆を使って、世界で最も高価なコーヒー(ルアク・コーヒー)の貿易を行っているジョン・マルチネス(アトランタ、J・マルチネス株式会社)が受賞しています。
珍しく、おそらくはデリケートな味のコーヒーを市場にもたらした功績を称えたのです。
マルチネスは、受賞スピーチの中で、ルアク・コーヒーを称える詩を披露しました。
その最後の四節目は次のようです。
ルアク、ルアク
あなたのコーヒーの実を腹に詰めこめば、
新しい味が生まれる
ここに集まった人びとは
あなたのうんちからつくったコーヒーを飲む
そして、彼が目で合図を送ると、白衣を着た5人のダンサーが会場にあらわれ、授賞式に出席した5人のノーベル賞受賞者(イグ…ではなく本当のノーベル賞)へとルアク・コーヒーの入ったマグを配ったのでした。
授賞式の司会者も試飲しました。味は「予想していたよりはるかにおいしかった」ということです。
○ジャコウネコを虐待してコピ・ルアク生産の事実
コピ・ルアクは、主にアメリカ合衆国と日本に出回っていました。
現在は供給量こそ限られてはいるものの、世界各地で入手できるようになっています。その背景には出荷量の大きな増大があります。
1995年のイグ・ノーベル栄養学賞受賞の際には、「毎年40~220キログラム(製品取引の性質上、正確な数値を把握するのは難しい)」という状態でした。
2010年には一トンを超え、今や数十トンともいわれます。
そうすると、自由に歩き回るジャコウネコのうんちをジャングルで集めて、そこからコーヒー豆を選り分けていたら到底そんな出荷量は無理でしょう。
イギリスの公共放送機関BBC(イギリス放送協会)は、2013年9月にコピ・ルアク生産の実態を取材したドキュメンタリーを放映しました。
例えば、BBCはバイヤーの振りをして、インドネシアのスマトラ島の農家を訪問しました。そこで見たのは、次のようなことです。
・野生のジャコウネコを乱獲
・狭い檻に入れ、無理やりコーヒー豆を食べさせる
・重傷を負ったジャコウネコも
ジャコウネコを虐待することでコピ・ルアクが生産されていることがわかったのです。
他にも、少量の本物があったとしても、それに多量のふつうのコーヒー豆を混ぜたものも販売されているようです。
○中林雅『新動物記4 夜のイチジクの木の上で』(京都大学学術出版会)を読む
彼女が、小学生の頃から「動物博士」になりたいと思い続け、努力し、ついにボルネオ島の熱帯雨林で10年にわたって「シベット」(ジャコウネコ)を研究したことを読みやすい筆致で書かれています。
彼女は、「はじめに」で次のように書いています。
“近年ではシベットの糞に含まれるコーヒーの種子がシベットコーヒー(コピ・ルワック)として高額で取引されている。シベットの腸内で種子が発酵されて独特の香りと風味をもたらすと謳われているが、シベットの腸内では食物はほとんど発酵しない。
勝手な思い込みで生まれた高額のコーヒーを大量に生産するために、これまた劣悪な環境で多数のシベットが飼育されて問題になっている。”
そして、次のように続けます。
“シベットは、自らの容姿ではなく、においや糞という自らが排出するいわば副産物に人間を惹きつける要素があるようだ。私はシベットの分泌物の香気を嫌というほど喚ぎ、シベットの糞を飽きるほど見たので、何の魅力も感じない。そもそも私はにおいに敏感なので香水を使用しないし、コーヒーよりも水を好むので、こうした晴好品には興味がない。副産物を目当てにシベットの自由を奪った人々は、シベットを金や名声を獲得するためのツールとして見ていたのだろうか。シベットたちの生態が明らかになれば、そうした人々のシベットを見る目が変わるのだろうか。生態がほとんど知られていないということは、未だ明らかになっていない隠された魅力を発見できるということだ。本書がきっかけとなり、副産物よりもシベット自体の魅力を感じてもらえるようになると、うれしく思う。”
個人的な彼女との私的なやり取りでも、“シベットコーヒーが特別視される理由のひとつは、ジャコウネコが、単糖類が多く含まれる甘いコーヒーの果実を選ぶことだと私は考えています。
また、ジャコウネコの腸内を通過することで様々な化学的・物理的な作用が働くと思いますが、「腸内発酵による」とは私は思っていません。”
こうして、シベットの糞を飽きるほど見たシベット(ジャコウネコ)の研究者の見方からすると、「コピ・ルアクは、ジャコウネコの腸内の発酵によって、コーヒーに独特の香味が加わる」という宣伝文句は、大いに疑問がわいてきます。
それでも、そのコーヒーの味が大好きなら、コピ・ルアクのつくられ方やジャコウネコの生態にも関心を寄せて貰いたいものです。
アンチエイジングの分野で人気のあるサプリーコエンザイムQ10を考えてみる
エンザイムとは酵素、コエンザイムは酵素のはたらきを助ける補酵素のことです。
コエンザイムQ10は私たちの体の全ての細胞に存在し、ミトコンドリアでのエネルギー産生に関わる物質であるとともに、ビタミンCやビタミンEと同様、抗酸化物質としてはたらきます。
コエンザイムQ10は、1973年、日本でうっ血性心不全治療の医療用医薬品として、世界で初めて認可されました。別名ユビデカレノンという医薬品として、軽症から中等症のうっ血性心不全に投与されてきました。それが1990年代には、米国を始め世界各国でサプリとして流通し始めました。
そして2001年、日本において食薬区分の変更により食品成分としての利用が認可されたのですが、医薬品のときとは期待される効能が異なっています。
サプリとしての効能は、加齢によって体内に合成されるコエンザイムQ10が減っていくので、これを補給することでエネルギー代謝を活発にして、疲労回復や美肌効果、肥満解消が期待できる、とうたわれています。
もう一つが、抗酸化作用です。コエンザイムQ10の補給は、細胞内のエネルギー代謝を改善するとともに、抗酸化作用を通じて活性酸素を除去し、細胞の老化を防ぐのではないかと考えられているのです。だから、「元気のもとコエンザイムQ10」というわけです。
その効能のイメージが人気を呼び、急速なコエンザイムQ10ブームが起こりました。しかし、これらの効能について、ヒトを対象とした信頼度の高い臨床試験は行われていません。抗がん効果もあるとされていますが、その研究は乏しいです。
そもそも、体内のコエンザイムQ10が減ってしまってから、外から補給したところで、本当にエネルギー産生が活発化するのかはよくわかっていないのです。
コエンザイムQ10は、それが不足していると考えられる臓器、つまり心臓などにきちんと取り込まれ、機能しなければ意味がありません。
ところがコエンザイムQ10をラットに経口摂取させたところ、血液中と肝臓中には取り込まれたものの、他の臓器には取り込まれなかったとの研究もあります。ヒトでの研究は見つけられませんでしたが、経口摂取したものが望み通りに必要な臓器に取り込まれ、私たちが期待している効果を示すかどうか、十分な検証作業が必要なのです。
それに、もしかしたら加齢とともに各臓器でのコエンザイムQ10に必要量が減少しているから、各臓器で生産量を調節している結果として、減っているのかもしれません。そうすると外から補充することは余計なお世話をしていることになります。
さらに心配なのは、医薬品としてのコエンザイムQ10の1日の摂取上限量は30ミリグラムですが、サプリではそのような上限量がないことです。海外のメーカーのサプリは、この上限量をはるかに超えたものもあり、わが国でも流通し始めています。
もともと食事と一緒にとらないと吸収されにくい脂溶性ビタミン様物質であり、製品によっても吸収率が違います。高用量でも副作用が出にくく、安全性は高いと考えられていますが、しかし長期にわたる摂取でどのような影響があるかはわかっていません。
厚労省が認めていない免疫治療(自由診療)に要注意!
★叶井俊太郎さん「死んでから書いてくれ」 生前語ったモテっぷりと500万円の延命治療
「がんの標準治療を選択せず、厚労省が認めていない免疫治療を受け続けた。この治療で分割払いは不可だったと言い「500万円」かかったと明かした。」
※以下は今書いているニセ科学本の原稿をもとにしたもの。
●がん治療はまず標準治療を
「多くの場合は『標準治療』を受けることが、最もよい選択です」(国立がん研究センターがん対策情報センター)。おもに手術、薬物治療、放射線治療です。
免疫を利用してがんを攻撃する免疫療法があります。免疫療法で勧められるのは、標準治療になったものです。免疫チェックポイント阻害剤、遺伝子導入T細胞療法、サイトカイン療法薬、膀胱がんに対するBCGがあります。これらは有効性のエビデンスにより保険が使えます。
世には、免疫細胞療法をうたう活性化リンパ球療法(患者血液から採取したリンパ球を増殖、活性化させて、患者体内に戻して、その免疫細胞でがんを叩こうというもの)のようなものがあるので注意が必要です。
他にも注意が必要な治療法には温熱療法、健康食品やサプリメントによる治療などがあります。これらは、科学的に効果不明です。保険が使えない自由診療になります。
●がん細胞は免疫にブレーキをかける
がん細胞は免疫にブレーキをかけて、免疫でがんを攻撃することを妨害します。
免疫チェックポイント阻害剤は免疫ががん細胞を攻撃する力を保つことで、遺伝子導入T細胞療法は、免疫が攻撃する力を強めることによってがん細胞を叩きます。しかし、標準医療になっていない、あるいは研究段階でもない活性化リンパ球療法のような免疫療法では、それらができないので有効性がないのです。
●いんちきがん治療特徴―こんなアピールをしていたら要注意!
・○○免疫クリニック、最新○○免疫療法…免疫という言葉で迫る
・○○%患者に効果…藁をもつかもうとする患者に高い確率で治るとする、あるいは「治る」「消える」「副作用がない」と断言
・体験談やよく効いたという事例満載
・奇跡○○治療、末期がんからの生還
●保険が効かない…自由診療、高額は要注意!
特別な治療法だとうたう場合もありますが、科学的に有効性がある治療法なら標準治療になっているはずです。
また、研究段階(臨床試験や治験)なら研究が遂行できるちゃんとした機関で行われて、お金はあまりかからないはずです。
村田らむさんに左巻健男が取材された東洋経済オンライン記事公開!(前編と後編有り)
村田らむさんに取材された東洋経済オンラインの記事が公開されました。
前編
74歳「伝説の理科教育者」の意外と劣等生だった頃 #東洋経済オンライン @Toyokeizai
https://toyokeizai.net/articles/-/720545
後編
「ニセ科学本」を憂う74歳・伝説の理科教育者の戦い #東洋経済オンライン@Toyokeizai
https://toyokeizai.net/articles/-/720547
うま味調味料(商品名味の素)の風評は根拠なし+昔「化学調味料」と呼ばれた理由
○5番目の基本味ーうま味
2000年(平成12年)、マイアミ大学の研究チームが、舌の味蕾と呼ばれる部位にグルタミン酸の受容体があることを発見したのです。これによって、人間が「うま味」を感知していることが、科学的に立証されました。
味覚の研究が進んで、4つの基本味だけでは味覚を説明することができないことに気づき、「うま味」が独立した基本味であることが立証されたからです。
池田菊苗はうま味という味を提案していました。そこで、うま味は「Umami」として国際共通語になったのです。
現在市販されているうまみ調味料には、グルタミン酸ナトリウムと、イノシン酸ナトリウム(カツオ節のうま味成分)またはグアニル酸ナトリウム(シイタケのうま味成分)がふくまれています。グルタミン酸ナトリウムは「アミノ酸系うまみ物質」、イノシン酸ナトリウム・グアニル酸ナトリウムは「核酸系うまみ物質」です。「アミノ酸系」と「核酸系」を混ぜて使う理由は、合わせると、それぞれ単独で味わったときよりも一層おいしく感じる「相乗効果」が確認されているからです。
○発酵法でつくっている
かつては、化学調味料といわれました。これはNHKでグルタミン酸塩を扱ったとき商品名が出せないので使われた言葉です。しかし、化学調味料という言葉は、人工的なイメージを与えるので、現在ではうま味調味料が使われています。
うま味調味料は、化学合成ではなく、発酵法でつくられています。味噌やしょう油などの発酵食品のように天然素材で微生物の力を借りてつくっています。
具体的には、サトウキビからの糖蜜を原料に微生物でアミノ酸に変えたり、酵母の核酸を用いて量産しています。
○うま味調味料への風評には根拠無し
うまみ調味料に関して世間の風評としては、1950年代には「とると頭がよくなる」といわれ、その後60年代末から一転して「体によくない」といわれるようになりました。「頭がよくなる」といわれた根拠は、グルタミン酸が脳内神経伝達物質であり、脳内にたくさん存在することが確認されたためといわれます。また、同じ理由から幼児の脳に影響を与えると考えられたのです。食べたり飲んだりではまったく異常が見られないことが、確認されています。
もう一つ、グルタミン酸ナトリウムがふくまれた食事をとった後、一過性の頭痛や胸焼け、手足のしびれ、だるさなどが生じるとして騒がれたことがあります。米国ボストン近郊の中華料理店で、グルタミン酸ナトリウムを大量に添加したワンタンスープを摂取した後にこの症状が起こったことから、「中華料理店症候群」と名づけられました。これについて追試が行なわれた結果、グルタミン酸ナトリウムが原因ということは科学的に明確に否定されています。
うま味調味料は、少量で味わいが増し、食塩の摂取量を抑えることができるという利点があります。その毒性を気にすることはしないでいいのですが、何にでも使うと、その味に慣れてしまい、食ベ物本来の深い味わいから遠ざかるのは問題かも知れません。コンブやカツオ節などにふくまれているうま味成分とまったく同じものですから、うまくつきあうことをおすすめします。
*なお、「味の素」の手先ではありません。
インチキ、トンデモ技術 水が油になる!水と二酸化炭素が油になる!
【インチキ、トンデモ技術 水が油になる!水と二酸化炭素が油になる!】
画期的な技術なら一流科学誌に論文が載る。画期的ならサイエンス誌かネーチャー誌に。あるいはその分野の一流科学誌に載る。
そして画期的なほど追試が行われる。
発見者がそう信じて載せたはいいが、その後追試などでインチキだったことが判明したこともある(常温核融合が超有名)。
しかし、インチキ技術は、そのことを飛ばして公開実験なるものをする。
古くは、19世紀末に、ジョン・ウォレル・キリーが発明した「キリー・モーター」。原子と原子の間にあるエーテルの力から巨大な力を取り出しているとして、公開で電源をつないでいないモーターを回して見せた。
出資者から多額のお金をまきあげて死ぬまでペテンを通した。彼の死後、床下から圧縮空気を使った仕掛けが発見された。
その後も幾たびも同様の事がくり返されてきた。
中でもわが国では「水を油(燃料)に変える技術」、「廃棄物(プラスチック)を油に変える技術」が。
ぼくが追っていた「水を燃料に 倉田式油化還元装置 関西アーバン銀行 20億円を融資、投資」。 これは2004年のことだが、90年代の終わり頃、当時のパソコン通信ニフティサーブで日本化学会運営の「化学の広場」(ぼくはスタッフの1人)で倉田大嗣氏の公開実験が大きな話題になった。
倉田氏の公開実験や書籍が「水を油(燃料)に変える技術」、「廃棄物(プラスチック)を油に変える技術」だった。
常温核融合との違いは初めから論文にしないで公開実験と書籍で発表したことだ。
しかるべき機関も調査したがブラックボックス部分があり解明できないで終わった。
倉田氏は自分の技術のもとは「波動」と「酵素」と。
この波動はもちろんまともな物理学的なものではなくスピ系のバイブレーション。
オカルト・ニセ科学はこの種の「波動」が大好き!
「酵素」「触媒」「磁石」も科学無知な素人を騙すのによく使われる。
自治体の中には倉田氏の装置で廃棄物処理をしたところもあった。その自治体の廃棄物が山中に捨てられていたという情報もあった。
倉田氏の装置の公開実験を見て信じて著書に紹介した有名化学教育者も出た。
パソ通のニフティサーブFCHEMの化学者・化学技術者・化学教育者は活発に議論。もちろん否定的に。
だからこそ倉田氏の「水を燃やす技術に関西アーバン銀行が20億円を融資、投資」というニュースは驚きだった。自治体だけではなく銀行も軽く騙されるのかと。
その後どうなったかはわからない。関西アーバン銀行もなくなった(吸収合併)。ただし、投資の20億は回収できなかっただろう。
倉田氏はその後行方不明になったからだ。
もちろん、インチキ技術を肯定する側はこれを「奇跡の発明をした者は全員行方不明」とし、既存利権から消されたかのような主張をする。
その後も同様な公開実験は続いた。水は燃える(船瀬俊介氏支持)→ぼくから見ると水を電解して水素を燃焼。
水が自動車のエンジン燃料→ぼくから見ると、水を分解する物質使用(Mgあたりか)。
そして今回の大阪市の公開実験。
理屈上、水とCO2からエネルギーと触媒をうまく使えば油ができる。
そのような人工光合成の研究はいくつか既に科学的な裏付けをもって進められている(NEDO)。
大阪市は先ずちゃんとした第三者の複数機関に追試をさせるべきだった。今のやり方は当のマジシャンにマジックをさせているようなもの。
倉田氏の事例などから、まず本当に水とCO2から油ができているかどうか、装置にブラックボックス的で闇の部分はないかを追究して欲しい。
*2/1に書いた。その後、大阪市の公開実験の「水と二酸化炭素から油」は、油の暈(かさ)が増えて見えただけのしろもののようだ。新規に油はできていないようだ。
2020~現在までの左巻健男著作
「EM・X GOLD」は効果があると言えるか?という裁判の話(長文):清涼飲料水「EM・X GOLD」を巡るEM研究機構vs中日新聞社の裁判
左巻健男が津市で行った講演を「『怪しい科学』は身近にたくさん」という見出しで中日新聞が記事にした。
その記事について(株)EM研究機構及び代表取締役社長比嘉新氏は、2018年12月に、中日新聞社を名誉毀損で提訴。
記事中には「水質を浄化する効果などを持つとされる「EM菌(有用微生物群)」も科学的に説明できない「ニセ科学」だとし「信者を増やして、その菌が入った飲料水を高額で買わされるだけ」と注意を促した。」があった。
「記事によって名誉を毀損されたので165万円と遅延損害金の支払」「新聞への謝罪広告の掲載」を求めました〔平成30年(ワ)第371号 損害賠償等請求事件〕。
2020年6月、那覇地裁沖縄支部は以下のような判決を下した。
「本件記事は、科学的な効果が検証されていない商品が流通している実情に関して警鐘を鳴らし、一般消費者に財産上の損害が生じないよう注意を促す趣旨の記事」
「①本件飲料水等の効果に科学的裏付けはなく、②原告又は原告の関連業者は、科学的裏付けのない効果を積極的に宣伝等して販売しているものと認められる」などとして、原告の訴えを却下。つまり、EM研究機構らは敗訴した。
EM研究機構らは、「本件飲料水には科学的裏付けがある」「査読論文として公開されている」などとして控訴しました。こうして裁判の場は福岡高裁那覇支部に移りました〔令和2年(ネ)第57号 損害賠償等請求控訴事件〕。
2021年4月22日、判決が言い渡され、EM研究機構敗訴。EM研究機構は上告しなかったので、ここに判決が確定された。中日新聞社完全勝利、つまりEM研究機構完全敗訴!
「少なくとも現時点では科学的に実証されていないものであることが認められ、『(EM研究機構らが)宣伝している本件飲料水の効用は科学的に実証されていないものであること』については真実であると認めることができる」
「『本件飲料水が一般的な清涼飲料水よりも高い値段で販売されていること』は真実であると認めることができる」
より詳しく以下に書いたので、その論説を紹介しておこう。( RikaTan【理科の探検】2022年 1月号 p132-137)
清涼飲料水「EM・X GOLD」を巡るEM研究機構vs中日新聞社の裁判
左巻 健男 SAMAKI Takeo
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~ 裁判の概要 ~
私の市民向けの講演「ニセ科学の見破り方」が「『怪しい科学』は身近にたくさん」という見出しで中日新聞の記事になった。その記事について(株)EM研究機構及び代表取締役社長比嘉新氏は、2018年12月に、中日新聞社を名誉毀損で提訴。
那覇地裁沖縄支部は、2020年6月に判決。「本件記事は、科学的な効果が検証されていない商品が流通している実情に関して警鐘を鳴らし、一般消費者に財産上の損害が生じないよう注意を促す趣旨の記事」として名誉毀損に当たらないとした。
EM研究機構らは高裁に控訴。控訴理由は、「本件飲料水(おもに清涼飲料水「EM・X GOLD」)には科学的裏付けがある」「査読論文として公開されている」など。裁判の場は福岡高裁那覇支部に移った。〔令和2年(ネ)第57号 損害賠償等請求控訴事件〕
このなかで、清涼飲料水「EM・X GOLD」に免役力アップなどの効果があることを示した査読論文の検討もされた。
2021年4月22日に判決。またもやEM研究機構敗訴だった。
EM研究機構は最高裁へ上告しなかったので判決が確定した。
判決は、「少なくとも現時点では科学的に実証されていないものであることが認められ、『(EM研究機構らが)宣伝している本件飲料水の効用は科学的に実証されていないものであること』については真実であると認めることができる」とした。
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●裁判の発端になった私の講演についての記事
2018年6月16日、私は、三重県津市の会場で三重県保険医協会(三重県の「医科・歯科の保険医の生活と権利を守るとともに、国民医療の充実と向上を図ること」を目的とした団体)から依頼されて講演しました。
その講演についての記事が、次の日(17日)の中日新聞に掲載されました(次ページ)。
短いが、講演の内容や様子がよく伝わってくる記事だと思います。
なお、この記事には記者の思い違いがあります。「その菌が入った飲料水」は、正しくは「菌の発酵生成物から抽出した成分が入った飲料水」です。生きた菌は含まれていません。
ただし、生きた菌が入ったもの(農業用の微生物土壌改良材EM1号などの活性液など)を飲んでいるEM信者もいます。私は、どんな菌が入り込んでいるかわからないので、衛生上、飲むことに反対です。
p133
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「怪しい科学」は身近にたくさん
津で左巻教授講演
左巻健男・法政大教授(69)の講演会「身近にあふれる怪しい科学、ニセ科学の見破り方」が17日、津市の津都ホテルであり、約百人が日常に溶け込んだ“ニセ科学”を学んだ。
県保険医協会が45回目の定期総会を記念し閧催した。左巻教授は、事業者の責任で食品の体への効果を表示できる機能性表示食品制度を挙げ「科学的に効果がちゃんと検証されていない商品が出回っている」と指摘。サプリメントの多くも効果は実証されていないとし、「実は体にとって毒かもしれない。普通の食事で栄養を取ったほうが良い」と話した。
水質を浄化する効果などを持つとされる「EM菌(有用微生物群)」も科学的に説明できない「ニセ科学」だとし「信者を増やして、その菌が入った飲料水を高額で買わされるだけ」と注意を促した。
津市の山口かつ子さん(72)は「サプリメントを飲んでいるからセンセイの話にはドキッとした。バランスの取れた食事で栄養を取るように変えていきたい」と話した。(渡辺雄紀)
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●EM・X GOLDは機能性表示食品でもない
2015年4月から新たに規定された機能性表示食品制度があります。これまで、何らかの効果をうたえたのは、国の審査が必要な「特定保健用食品(トクホ)」と国の規格基準に適合した「栄養機能食品」だけでした。
機能性表示食品は、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出ることで、機能性を表示することができます。国が安全性や効果を保証したものではないため、消費者の誤認や健康被害の発生を心配する声があります。
今のところ、清涼飲料水EM・X GOLDは、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品のどれでもありません。そのため、医薬品と食品を厳しく区分し、食品で医薬品のような効能をうたうことを厳しく規制している薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示を行うことを厳しく規制している景表法(不当景品類及び不当表示防止法 )などによって、効能をうたうことができません。
●EM・X(=萬寿のしずく)とEM・X GOLD
もともとEM菌の清涼飲料水は(有)熱帯資源植物研究所(現在は株式会社)が1994年から製造を開始したものでした。沖縄で伝統的に食べられている活力果実・青パパイヤと、玄米、コンブ、モズクと米ぬかをEMで発酵処理してから、EMは加熱殺菌し、EMが産生する物質を抽出・精製した液体です。
比嘉照夫氏は、EM・Xについて、万能性を主張していました。
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・抗酸化力が極めて強い
・ガンはもとよりエイズなど多くの難病・ガンはもとよりエイズなど多くの難病の劇的な治癒例が多数出てきている
・チェルノブイリ原発事故のとき、白血病、・チェルノブイリ原発事故のとき、白血病、甲状腺異常に著効が認められた
・工業用でも、自動車に使うと走行距離・工業用でも、自動車に使うと走行距離が大幅に延び、車がさびつかなくなり、が大幅に延び、車がさびつかなくなり、静電気が著しく少なくなり、汚れずピカピカピカになり、オイルの交換も不要で、排気ガスも極端にクリーンになる、電化製気ガスも極端にクリーンになる、電化製品に使うと、大幅な節電効果が期待でき、電磁波対策にも顕著な効果確認
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p134
など、あらゆる分野での応用が期待されているとしていました。
ところが2008年3月、熱帯資源植物研究所とのEM・Xの商標契約切れに伴い、このEM・Xは、EM・Xという名前では販売できなくなりました。現在は、同じ原料と製法で「萬寿のしずく」として販売されています。
EM研究機構は、EM・Xの商標を使って、EM・X GOLDの製造を開始。原料は、EM・Xと大きく異なり、糖蜜、酵母エキス、サンゴカルシウム、粗製海水塩化マグネシウムになりました。
比嘉氏は、EM・X GOLDは、オーリングテスト(Oリングテスト)や波動測定の結果からこれまでのEM・Xの5倍以上、加熱(80℃以上)すると10倍くらいの効果になると述べています(新・夢に生きる 第8回)。オーリングテスト(38ページ参照)や波動測定(40ページ参照)というニセ科学でしかEM・Xよりよいことをうたえていません。
●地裁でEM研究機構敗訴の判決
2018年12月にEM研究機構は中日新聞社を提訴。原告の(株)EM研究機構及び代表取締役比嘉新氏は「記事によって名誉を毀損されたので165万円と遅延損害金の支払」「新聞への謝罪広告の掲載」を求めたのです。〔平成30年(ワ)第371号 損害賠償等請求事件〕
なお、その訴状では、「左巻教授は、長年にわたりEMやEM関係者に対し誹謗中傷を続けている人物」と私への言及もされています。
那覇地裁沖縄支部は、2020年6月に判決。
「本件記事は、科学的な効果が検証されていない商品が流通している実情に関して警鐘を鳴らし、一般消費者に財産上の損害が生じないよう注意を促す趣旨の記事」「①本件飲料水等の効果に科学的裏付けはなく、②原告又は原告の関連業者は、科学的裏付けのない効果を積極的に宣伝等して販売しているものと認められる」
などとしてEM研究機構らは敗訴したのです
●EM研究機構らは控訴し、証拠に査読論文などを出したがEM研究機構敗訴の判決
EM研究機構らは、「本件飲料水には科学的裏付けがある」「査読論文として公開されている」などとして控訴しました。裁判の場は福岡高裁那覇支部に移りました。〔令和2年(ネ)第57号 損害賠償等請求控訴事件〕
2021年4月22日判決言渡。EM研究機構敗訴の判決でした。EM研究機構は上告はしなかったので判決が確定しました。
判決は、「少なくとも現時点では科学的に実証されていないものであることが認められ、『(EM研究機構らが)宣伝している本件飲料水の効用は科学的に実証されていないものであること』については真実であると認めることができる」「『本件飲料水が一般的な清涼飲料水よりも高い値段で販売されていること』は真実であると認めることができる」としました。
●EM側が控訴審に証拠として出してきた論文『診療と新薬』2015;52(10):1032-1038
タイトルの日本語訳:「有効微生物群培養抽出物(ECEM)を含む健康飲料『EM・X GOLD』による免疫機能の改善」です。
注1)次のURLから論文PDFをダウンロードできる。→
https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0052_10_1032.pdf
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目的:有効微生物群培養エキス(ECEM)を含む健康飲料、EM・X GOLDの摂取がヒト免疫機能に与える効果を調べること。
方法:試験参加者38名を2群(試験物質摂取群とプラセボ〔偽薬〕摂取群)に分け、12週間摂取後に免疫力や抗酸化力などを評価した。
①SIV(免役力スコア):7つの免疫パラメータを点数化して格付け。合わせてTリンパ球算出。
②SEIV(免役力アンケート)
③抗酸化力
結果:①で有効性確認:Tリンパ球年齢とCD8+ CD28+ T細胞数で有意な改善。プラセボ摂取群では有意に悪化、試験物プラセボ摂取群では有意に悪化、試験物質摂取群では維持。②③は差なし質摂取群では維持。②③は差なし
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●論文で抗酸化力や免役力の自己評価で差なし
私は、まず比嘉照夫氏が「EM・X GOLDはそれまでのEM・Xと比べて効能が5倍以上」と述べているのに、「抗酸化力に差が出ない(前述の論文③)」「免役力の自己評価であるSEIVでも差が出ない(同じく②)」という結果に注目します。
●論文の結果を都合よく解釈
SIV(免疫力スコア)はMedlineで検索した限りでは、海外の論文で使ったものは見当たりません。科学的根拠が不明なために、多くの研究者が使用していないからでしょう。
またこの試験結果を見ると、わずかな変化があるのは、NK細胞を除いて、すべてプラセボ群で、試験物質群に変化はありません(論文の表4)。それを試験物質が抑えたという都合のよい解釈をしているが、2群の振り分けの問題、プラセボが本当に無効無害だったのか、単なる偶然の結果ではないかなどの可能性があってもまったく議論していません。
SIEV(自己評価)と抗酸化力には2群の差がないことを「より長期間の摂取が必要、より詳細な試験が必要」と述べています。これは試験全体の信頼性が弱いことを認めていることを表していると考えられます。
●論文は利益相反関係で、信頼度が低い
論文はEM関係者が執筆者にいる利益相反(当事者の一方の利益が、他方の不利益になる行為のこと)関係にあります。客観的なものではないと捉えられます。
筆頭著者の所属JACTA(日本臨床試験協会)は、商品を売るために効果的なパッケージや広告を提案し、そのエビデンスを揃えることを目的に臨床試験の計画を立て、結果を出す臨床試験機関。食品業界などから仕事を引き受け、臨床試験を行い、論文にまとめたりすることを仕事にしている機関です。査読論文として雑誌掲載もします。多くの論文を『診療と新薬』に掲載。つまり、この論文は、EM研究機構からの仕事依頼の結果のようです。
●確定判決の内容のポイント
論文について、判決の内容を見てみましょう。
次は、判決が、この論文でEM・X GOLDの効用が科学的に実証されていない、とする理由です。
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・試験の結果、有意に改善は7つのうちの1つCD8+ CD28+ T細胞数とこれを規準に算出されるTリンパ球年齢であり、SIVの総合評価自体の点数やSEIVによる評価の比較では有意差は確認されていない。
・そもそもSIVが免疫機能の評価方法として適切なものといえるかは議論があり得る。SIVを前提にしてもCD8+ CD28+ T細胞数は、他の6つと同じ重みづけで考慮すべきなので免疫機能が高まっていることを根拠づけることはできない。
・試験の治験者が38名に留まることに加え、CD8+ CD28+ T細胞数の平均値が試験開始時に2群に相当な差が生じていることなどからすれば、試験結果の適正さを左右する治験者のランダム化が十分であったのかについても疑問が残る。
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p135
●論文が掲載された学術雑誌のインパクトファクターや論文の被引用件数
判決は、次のように述べて、結論として、「少なくとも現時点では科学的に実証されていないものであることが認められ」としました。
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・論文掲載雑誌はインパクトファクターないしオルタナティブインパクトファクターが算出されていないか、高いとはいえない雑誌である。
・共同執筆者以外の第三者による実質的な引用はされていない。
・第三者の査読を受けている点を考慮しても、他の研究者による検討や批判によって十分に検証されているとは言い難く、その実験結果の正確性や論文の内容の信頼性が十分に担保されているものと評価することもできない。
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●裁判によってEM研究機構のレベルが低いこととEM・X GOLDの効果に根拠がないことが判明
裁判所は科学の内容を判断する場ではありません。
今回は、EM側が「ちゃんと効果を示した査読論文がある」と出してきたことで、論文内容まで検討されました。それだけEM側は、この論文に自信があったのでしょう。
JACTAに依頼してつくった論文のレベルが、自分たちでは判断できなかったことで、EM研究機構のレベルも鮮明になってしまいました。
そして、「抗酸化力が高い」とうたっていたことが、この試験で否定されてしまっていました。
しかし、この結果があっても比嘉照夫氏はそれを言い続けています。
●「失うのはお金だけではない」"怪しい水商品"の3つの特徴
私は、千葉真一氏がワクチンを拒否したまま新型コロナウイルスに感染し亡くなったことを導入にした記事を執筆→プレジデントオンライン「 『失うのはお金だけではない』千葉真一さんもハマっていた"怪しい水商品"の3つの特徴 命にもかかわる"ニセ科学"の怖さ」
注2)https://president.jp/articles/-/49763
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水ビジネス商品には、アルカリイオン 水ビジネス商品には、アルカリイオン水、π(パイ)ウォーター、磁化水、電気石による水(創生水)、波動水、酸素水、水素水、シリカ水、宝石水、電子水、微生物の発酵生成物から成分を抽出した水などがあります。
次のような特徴があると考えています。
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・「水を飲む選択肢」以外に、十分な根拠のある効果効能をもったものがない
・中身のほとんど大部分は水道水や地下水なので、ほかの健康食品・サプリと比べるとずっと副作用が少ない (だから問題になりにくい)
・原価は非常に低いが販売価格を高額にしやすいしやすい
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清涼飲料水EM・X GOLDも、この3つの特徴がよくあてはまるのではないでしょうか。
私は、この記事を、次のようにまとめました。
「一番怖いのは、千葉真一さんのようにあるニセ科学にハマる人は、ほかのニセ科学にもハマりやすいということがいえることです。本当にきちんと多方面から考えなくてはいけない大きな病気になったときに、選択を間違えやすくなります。」
プロフィール さまき たけお
東京大学非常勤講師・元法政大学教授・『RikaTan(理科の探検)』誌 編集長・科学啓蒙文筆家。専門の理科教育&科学コミュニケーションの立場から科学啓蒙の一環としてニセ科学に警鐘を鳴らしている。
p136
『古事記』にでてくる「倭建命」(やまとたけるのみこと)はすごい!
『古事記』にでてくる「倭建命」(やまとたけるのみこと 『日本書紀』では主に「日本武尊」)はすごい!
大塚ひかり『愛とまぐはひの古事記』から次の2つを。
1.実兄(大碓命 おほうすのみこ)を虐殺
2.美少女に扮してクマソタケル(熊襲建)兄弟を殺害
その後、出雲の国でそこの権力者の出雲建と一緒に川で水浴びをし、相手に友と錯覚させる演技をし、打ち殺しているのもすごいが…。
【実兄(大碓命 おほうすのみこ)を虐殺】
倭建命は、少年時代の名は小碓命。
兄は父天皇(景行天皇)の妃になるはずの美人姉妹を犯し、父に別の女をあてがった。父はそれを知ってその女たちを相手にしなかった。兄は気がとがめたのか父の前に姿を見せなくなった。
天皇は弟に「朝夕の食事に参るようにお前がねぎらって教えさとすように」と言った。しかし5日たっても姿を見せない。
天皇が「まだ話をしていないのか?」と弟に聞くと、「もうねぎらってやりました」と答えた。
「朝、トイレに入るのを待ち伏せして、つかみ潰して、手足を引き抜いて、薦(こも)に包んで捨てました」
【美少女に扮してクマソタケル(熊襲建)兄弟を殺害】
そのため小碓命は父に恐れられ、九州のクマソタケル(熊襲建)兄弟の討伐を命じられる。
このとき彼は、少女のように髪を結い、叔母の着物を着て、完璧な美少女の姿で、新築祝いの宴に女たちの中に紛れ込んだ。
少女姿の小碓命を見て、クマソタケル兄弟は「これはすごい美少女だ」と絶賛。兄弟は小碓命をもてあそんだ。
兄弟がべろんべろんになったころ、隠し持っていた剣で、まず兄の胸を貫いた。弟がおののいて逃げると、背中をつかみ、剣を尻から刺し通した。
そのとき熊襲建に倭建御子(やまとたけるみこ)の名前を与えられる。
言い終わるや熟した瓜でも切るように、すぱっと切り殺した。
大塚ひかりは言う。「自分の性的魅力で、相手をたらしこんでおいて殺すという『女の力を兼ね備えた英雄』。甘く危険なホモの香りが漂っている」
↓
前に、大塚ひかり『本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人』がおもしろかったので、昨日は彼女の『愛とまぐはひの古事記』を読んだ。昨日は高木仁三郎の反原発本、藤井青銅『日本伝統の正体』なども読んだ。どちらも再読。再読を含めて1日に何冊か読んでいる。
『本当はひどかった昔の日本: は「育児放棄から人身売買、マタハラに介護地獄…現代の悲惨な話は、全部過去の日本に存在した!」という内容。
さて、『古事記』はおもしろい!
「昔の日本はよかった!」という話がよくあるので、伝統で立ち返る波は、日本がつくられた神話の書である『古事記』だよなあと時々見ている。
大塚ひかりは言う。「『古事記』は日本初の歴史記録文学だが、国が生まれる様子とか、百三十歳を超える天皇の没年とか、明らかに大ウソと分かる記述が満載だ。そうやって事実のふりをしてウソを語る歴史物語のほうが、ウソのふりして事実を語る『源氏物語』よりも、そのときの私の心身(注:不調が続いた)にはラクだった」
『愛とまぐはひの古事記』の「BOOK」データベース→「『愛とまぐはひの古事記』最古の記録文学『古事記』曰く。この国は「まぐはひ」によって生まれた。神人は感情を微塵もつつまず、激しく怒り、泣き叫び、哄笑する。生命の源である「性」がすべての中心にある。現代に疲れた人々が癒しを求めるならば、この「高貴な野獣」のような神と人の、エロスと糞尿譚に満ちた破天荒な物語に触れるとよい。不思議な清浄感、解放感とともに、生きる力が湧いてくる。」
2022年、左巻健男が出した本、これから出る本
左巻健男の国内おすすめ旅
子犬にEM菌(正確には住居用のEMW)を吹き付けた結果…の話>このノートからEM菌が関わっているかを考えたい。
*Yahoo!知恵袋提供の「知恵ノート」は2017年8月31日をもって終了しています。そこに公開されていたものをここに再録しておきます。
なお、原文は元のママですが強調を赤字や太字にしたのは左巻健男です。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n134475 (今はありません)
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人間の介護施設でも使用しているEM菌ですが、私は、獣医さんの奥様に薦められ、当犬舎の運動場や建物の消臭や、コリー(ラフ)達の毛の手入れの為に2006年から2007年頃に頻繁に使っていました。
ところが、2007年の2月に生まれた子犬6頭の母犬のリズの乳首にEM菌のサイトで薦めているような方法でEM菌(正確には住居用のEMW)を手入れの為に 吹き付けていたのですが、それを舐めた新生児は 消化器官がやられて6頭が次々に死亡、病院での治療は全く効かず、白い便を出し、全く栄養が吸収できず、最後の子犬は生後15日過ぎまで苦しみながら生き伸びましたが、栄養失調で眼球の水分まで失われていました。
その4か月後の6月に健康優良児で生まれたジュリアの子犬2頭が目が開いてすぐの生後14日に呼吸に奇妙な音が混じり始めました。
その2日前だったか子犬の傍で霧吹きでEM菌をマットに吹きつけて、便の処理をしていました。その時までは、この胎にはEM菌は使用していませんでした。
病院で診てもらい、酸素吸入なども行いましたが、 奇妙な呼吸に気付いた翌日には母乳を飲めなくなり、 呼吸困難でもがき苦しみ、母乳を飲めなくなってから7時間ほどで2頭とも死亡しました。
この2胎8頭全滅の原因を獣医さんはなんらかの未知のウィルスのせいではないかと言いましたが、私は友人ブリーダーのアドバイスでEM菌を疑い、 犬舎中にビルコンを撒き、バーナーで土を焼いて消毒し、EM菌を全て排除しました。
そして、 2頭のメスの次回の発情の際に、あえて全滅した2胎の時と同じ父母犬の組合せの交配を反復しました。原因不明のまま、子犬を死なせ続けることはできないので、あえて死亡覚悟の繁殖を行ったのです。
父母犬を同じにしただけでなく、2007年2月生と6月生の2胎の胎児達が全滅したのと同じ部屋で、2007年11月生のリズの胎の新生児6頭と2007年12月生のジュリアの胎の新生児たち7頭の飼育を行いました。
子犬たちの部屋の消毒はエタノールだけにしたのですが、リズの胎の子犬もジュリアの胎の子犬も1頭も死なず、元気に育ちました。その時に生まれた子犬で犬舎に残したのがラプターです。今、5歳ですが、1度も患ったことがありません。
この死亡覚悟の実験的繁殖の事を、獣医さんに報告しましたが、医療の素人である私の言い分を本気にしていないのでしょう、 まだ奥様はEM菌を御自宅の方で使用しています。
健康な成犬には大丈夫なのかもしれませんが、EM菌のサイトで、推奨していたように、ペットや家畜に使用した場合、実際には、抵抗力のない子犬で死亡例は多かったのではないかと想像しています。誰もその因果関係に気づいていないだけなのではないかと思います。
怖いのは当犬舎のある愛媛県では抵抗力の無い寝たきり老人の施設でも使われていることです。EM菌による2胎8頭の新生児死亡のこともあって、私は 「健康に良い」とか「安全」という謳い文句は、鵜呑みにしないようにしています。
2007年当時はEM菌の危険性について具体例が書かれているサイトはほとんど見つからかったのですが、 今は、ベーチェット病の人が飲用して危篤のような状態になったとか、膠原病の人が医師に大丈夫と言われて飲用して大変なことになったと書かれた掲示板やブログも存在します。
福島原発の除染の為にEM菌を自分だけでなく抵抗力の弱い子供に飲用させるなどという空恐ろしいことを行っている人たちもいるそうなので、長らく放置し忘れていたYahooのパスワードを再発行してもらって、Yahoo知恵袋に、この記事を書きました。この記事が、1人でも多くの人の目に触れて、 恐ろしいEM菌を使用する人が減ってくれるよう願っています。(引用以上)
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*通称EM菌は、(株)EM研究機構の登録商標「EM」の微生物群のこと。
株式会社(発行した株式で資金調達を行い、その資金で得られた利益を株主に還元する会社)のEM研究機構は株主比嘉照夫氏。社長はその子息の比嘉新氏。
EMは乳酸菌、酵母、光合成細菌など5科10属80余種の微生物をタンク培養した液状のもの。
ただしEM研究機構はその組成のゲノム分析結果を公表していない。私費で分析依頼しての結果だと光合成細菌が含まれていない、雑菌が含まれているなどが複数ある。本ブログでもその分析結果の一例を掲載。またEM製品の中には黒いカビのようなものが見いだされて販売中止になったものがある。