左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

浮力の原因の話

 

 

 

 

 浮力の話ですが、以下はどこかに問題はありませんか。

 今執筆中の『面白くて眠れなくなる物理パズル』PHPで扱うかどうか悩んでいるんです。

 流体(液体、気体)中の物体にはたらく浮力の原因は流体の圧力差です。
 直方体の物体を考えると、下面と上面では流体の深さによる圧力差があります。左右方向は同じ深さの圧力はキャンセルされますが、上下はキャンセルされません。
 その圧力差による上向きの力(=圧力×面積)が浮力です。
 しかし、下面にその流体がなかったらどうでしょうか。
 上面から押されるだけになり、浮力が生じません。
 実際は、下面にも部分的に流体が入り込んで理屈通りにはならないこともあります。とくに流体が水の場合、水はわずかのすき間でも浸透して、下面からの圧力を排除するのは難しいです。
 鉄の直方体のおもりを水が入った容器に入れて容器の底についても底の水を排除できませんから浮力ははたらきます。
 その点、水銀は底から排除しやすいです。
 ふつうなら水銀柱にぷかぷか浮く鉄も、直方体を容器の底に置いて、水銀を注ぐと浮いてきません。
 容器をゆらすと浮いてきますが、それをまた指で押して底の水銀を排除すれば、また浮いてきません。
 パラフィンと水でも、パラフィンを底に押しつけておいてから水を注ぐとしばらく浮いてきませんが、浮いたものを押しても水銀と鉄のようにはいきません。


【参考】
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石井信也「浮力で自然をながめる」(高橋金三郎編『中学理科学び方教え方1年第1分野』所収)

“物体にはたらく浮力の大きさは,その物体が押しのけた水の重さに等しい.これをアルキメデスの原理という.”この部分は,中学の理科の教科書から引用しました.この法則は原理というほどのものではありません.習慣として,そう呼ばれているだけのことです.アルキメデスの法則とか浮力の法則とか言うのがよいように思います.
 もうひとつ,この法則についてコメントしておきます.この法則は浮力の大きさを論じたのであって,浮力の原因を論じたのではないということです.液を押しのければ必ずその分だけの浮力をうけるのではないということです.
 右の写真(略)を見てください.シャーレに水銀をいれこれに鉄を浮かせました.水銀の比重は13.6,鉄の比重は7.9ですから,当然,鉄は水銀の上に浮いています(ここで使用した鉄は,磁石用のアルニコチップで,比重を測ったら約7.8でした).
 この浮いている鉄をゆびで軽くシャーレの底に押しつけます.鉄とガラスの間に水銀が入らないので鉄は水銀から上向きに圧力を受けません.鉄はシャーレの底に置かれているのと同じです.
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