左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

櫻井よしこさん「ぜひ読んでほしい理科の本がある。『新しい科学の教科書』全三巻(執筆代表左巻健男、文一総合出版)である」

 左巻健男です。ぼくは櫻井よしこさんの政治的主張には同感できない部分があるが、彼女に取材されたとき理科教育の話で盛り上がった。
 その彼女が、「世界で最も遅れている“理科教育”の惨状を救う検定外教科書の中身の濃さ」という文章を書いている。
 http://yoshiko-sakurai.jp/index.php/2003/09/01/post_222/

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 …そこで、子どもさんも含めて、ぜひ読んでほしい理科の本がある。『新しい科学の教科書』全三巻(検定外中学校理科教科書をつくる会、執筆代表左巻健男文一総合出版)である。「現代人のための中学理科」と副題にあるが、おとなにも十分、楽しめる。
 たとえば、私たちはなぜ物を見ることができるのか。それは物が光を乱反射しているからだというのは、ずっと幼い頃に習ったはずだ。この教科書は、物が乱反射で見えるのだということを、さまざまな例を示しながら読みやすく書いている。
 「ゆとり教育」の果てに内容が削られた指導要領では、子どもたちへの負担が大き過ぎるとして教えない乱反射が、ここではきちんと説明されている。
 さらに楽しいのは、章ごとに設けてある“科学コラム”だ。たとえば「物体が見えるとは」のコラムでは、古代ギリシャ時代の説が紹介されている。当時は、物が見えるのは目からなにかが放出され、それが物体に当たって戻ってくるからだという説や、物体の表面から皮のようなものが剥がれ落ちて目に入るからだというユニークな仮説が数多く立てられたという。
 現在、私たちが知っている、光によって物を見ることができるという説は、十一世紀にアラビアの学者によって唱えられたのだそうだ。物が見えることの研究は現在、目から脳の研究へと分野を移しているが、ここまでの研究の歴史を知るにつけ、人間の探求心と想像力の多様性に感動する。
 もう一つ、物質の性質である重さについて。イタリアのサントリオ・サントロという好奇心旺盛な科学者は、食事をしたら物質としての食物の重さはどうなっていくのかを調べるために、座席付きの天秤を作り、その上に一日中座って過ごしたそうだ。食事も排泄もその上で行ない、ついに、体に入った物質と出ていった物質は、自分の汗まで含めて計算すると、すべて帳尻が合うことを確認したという。
 思わず笑ってしまったが、こんなふうに好奇心を抱き、実験してきた愛すべき変わった人びとがいてこそ、今の科学があるのだ。
 この教科書をつくったのは、全国約200人の理科好き教師たちだ。現行教科書に絶望し、自分たちで教科書をつくろうという左巻氏の呼びかけに反応して、あっという間に出来上がったそうだ。それだけに、内容がおもしろい。私たちももう一度、この教科書で頭を柔らかくするのは、きっとよいことに違いない。
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 この『新しい科学の教科書』は、物理・化学・生物・地学の4冊版になっている。
 学年別版も来春には新版を出そうと思っている。
 本屋さんで入手できるし、多くの私立中学校で副教材に使用されている。