左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

天動説と金星の満ち欠け・視直径

 ぼくが、『理科の探検(RikaTan)』誌2013秋号通巻8号 73p 左 17-20行 に書いた次の文章は見直してみると誤認識がありました。


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 金星の観測では、金星が満ち欠けする上に、大きさを変えることも発見しました。天動説のモデルならば、金星はある程度満ち欠けをすることはあっても、大きさは変わることはないはずでした。
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 ガリレオが望遠鏡を発明して、それで夜空を観察したら、「金星の観測では、金星が満ち欠けする上に、大きさを変えることも発見し」たということです。
 誤認識は、それに続く部分です。「天動説のモデルならば、金星はある程度満ち欠けをすることはあっても、」はいいのですが、「大きさは変わることはないはず」という箇所は、誤りです。


 これを書いたとき、ぼくは「あまり大きさは変わらない」と思っていました。というのは、天動説のモデルで、従円に対して周転円を小さく捉えすぎていました。
 なお、従円と周転円については、次の山賀進さんの説明を見てください。


 この山賀さんの説明に入っている図も、周転円が小さすぎます。金星のもっとずっと大きく周転円を描く必要があります。そうすると、天動説でも金星の視直径はかなり変化するということになります。もちろん、そうだとしても、天動説では実際の満ち欠けや視直径(見える大きさ)の変化を正しく説明することはできません。


 同じ文字数で手直しするとしたらということで、満ち欠けのほうだけにします。
 すでに http://rikatan.com/ のサイトの管理者にその手直しを伝えてあります。


【天動説:プトレマイオスの従円と周転円】

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※以下は山賀進さんの「われわれはどこから来て、どこへ行こうとしているのか そして、われわれは何者か −宇宙・地球・人類−」からの引用である。


http://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/tariyokeiriron-03.htm


 彼のモデルは非常に精密なものであった。宇宙の中心に地球があり、そのまわりを月、水星、金星、太陽、火星、木星土星の順に回っている。そして水星、金星、火星、木星土星の各惑星(当時はこの5つしか知られていなかった)は、単純に地球のまわりを回っているのではない。まず地球のまわりの大きな円(従円)に中心を持つ小さな円(周転円)を考え、各惑星は周転円上を回っている、そして周転円の中心は従円上で地球のまわりを回っているというものである。さらに水星と金星の周転円の中心は、つねに地球と太陽を結ぶ線上にあるという制約を設ける。


 恒星は一番外側にあって、一つの球殻(天球)に貼付いて、お互いの位置関係を変えずに(星座をつくったまま)、その天球が地球のまわりを回っている。


 地球(+月)と太陽を入れ替えれば、今日の太陽系のモデルとそう変わりはない。


 惑星の複雑な見かけ上の運動を説明するために、プトレマイオスはこのような複雑なモデルを考えた。でも、こうした複雑なモデルを使えば、惑星の運動を含め、天体の運動を説明できるである。決して荒唐無稽な説、観測事実を無視した説ではない。


 惑星の運動で難しいのは、天球上での順行・逆行という見かけの動き(視運動)である。これが周転円を使うことによって説明できてしまう。また、水星と金星が最大離角を持つ(太陽からはあまり離れた位置に見えない、真夜中には見えない)ということも、水星・金星の周転円の中心がつねに地球と太陽を結んだ線分上にあるとすれば説明がつく。当時の社会的な要求からして、これで十分な精度で天体の運行を予想できるので、それ以上のものは必要なかったともいえる。
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