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左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

左巻健男『学校に入り込むニセ科学』平凡社新書:『週刊東洋経済』紹介 by佐藤健太郎さん

『週間東洋経済』1/24(金)18:00配信

左巻健男『学校に入り込むニセ科学平凡社新書

水からの伝言」「EM菌」…、組織的に広まるニセ情報

評者・サイエンスライター 佐藤健太郎

 

 先日、体外に取り出した血液にオゾンガスを吹き込んだ上で体内に戻す、「血液クレンジング」なる療法が物議を醸した。科学的な装いを施しただけで、実際には効果のない「ニセ科学」ではないかと指摘されたのだ。


 残念ながら、これ以外にも科学的根拠の疑わしいサービスや商品は世にあふれている。経済的損害だけならまだしも、健康被害が発生した事例も数多いから問題は根深い。投資詐欺などの問題同様、小中学校で早い段階からニセ科学に関する教育を行っておくべきではないかと思うところだ。

 

 ところが、その教育現場にニセ科学が入り込んでいるお寒い実態を描くのが本書。「ありがとう」と声をかけると水が美しく結晶すると謳(うた)う「水からの伝言」、河川の浄化から難病治療、学校のいじめ解消まで万能の効果を標榜する「EM菌」のほか、脳科学、食育、添加物の問題など、授業で子供に伝えられるニセ科学は驚くほど多岐にわたる。

 

 しかも、こうしたニセ科学を授業で扱う教師は、ごく少数というわけではない。授業の内容を平準化し、共有しようとする教育団体の活動を通じ、ニセ科学授業が教師たちに広まってしまっているという。「感動」をキーワードに、エビデンスの乏しい教育手法がはびこる点は、けが人続出で問題になった体育祭での組体操と同根のものだろう。

 

 ニセ科学には、専門家でも弁別の難しいものがあり、すべてを見分けるリテラシーを教師全員に期待するのは難しい。だが、現状を見ると何らかの対策は必要と思える。
ひとまず、子供たちにうそを教えたくないと思う教員諸氏、ニセ情報を見抜く力を持った子供を育てたい親たちに、本書の一読を勧めたい。