左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

明日は法政二高で1年生に進路講演

 明日の法政二高の講演準備のために研究室に来た。話すことがまとまっていないので、まとめながらパワーポイントをつくることにしたのだ。ふつう、ぼくは“未知への探究”のモットーをかかげて、パワポなどつくらず、その場の雰囲気で語っていくタイプである。しかし、今回の話は1年生全員が対象で、もしかしてぼくの話で理系へ行こうと思う生徒もいるかも知れないし、元もと何を話したらいいのか漠然としていたのでパワポをつくりながら考えることにしたのである。


 そこで、ぼくの話の導入を次の記事から始めようと思った。
 この記事が出たときも話題になったが、その後『理系白書』でも取り上げられてからも話題になったものだ。


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<阪大調査>生涯所得 文系が理系を5000万円上回る


 文系出身者と理系出身者の生涯所得の差は、最大で一戸建て1軒分に相当する5000万円になりうることが、松繁寿和・大阪大大学院国際公共政策研究科助教授(労働経済学)らの約1万5000人の大学卒業生を対象にした調査で分かった。
上場企業の役員の年収については、理系は文系より約40万円低いという調査はあったが、就職から定年までの所得格差を大規模に調べたのは初めてという。


 調査対象には、ある国立大の理系学部と文系学部を一つずつ選んだ。二つの学部は入学時の偏差値がほぼ同じ。過去約50年間に、両学部を卒業したすべての人(理系約8500人、文系約6500人)に98年8月、調査用紙を郵送し、その時点での年収などをたずねた。約3400人(理系約2200人、文系約1200人)が回答した。


 分析の結果、22〜30歳の平均年収は理系529万円、文系451万円と理系が上回っていた。しかし、31〜40歳になると、文系の平均年収が逆転し、理系を230万円上回る969万円になった。この格差は定年まで続き、41〜50歳では理系が1112万円、文系が1325万円、51〜60歳では理系が1462万円、文系が1615万円と、各年代で文系が200万円前後上回った。


 大学卒業後の22歳から60歳まで働くと仮定して各年代の平均年収を合計してみると、理系の総収入が3億8400万円、文系の総収入は4億3600万円で、5200万円の差が出た。


 文理間の所得格差の理由として、理系の主な就職先がメーカーなのに対し、文系は金融機関などで、就職した企業の賃金体系の違いが挙げられる。また、企業の中で、理系より文系の方が昇進しやすい点も指摘される。
 松繁助教授は「科学技術立国をめざす日本にとって、新産業の育成が不可欠だが、そのためには技術者の意欲を高めなければならない。理系出身者の待遇を見直すべきだ」と話している。 【田中泰義】(毎日新聞
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 この記事を読んで生徒にどう思うかを問いたい。彼らはどう考えるだろうか。
 ネットには、“「理系の平均所得+五千万円=文系の平均所得」の原因探しリンク集”もある。
 http://nishioka-blog.com/2007/01/post_21.html
 そこにリンクされているもので「理系の企業(自動車、家電など)は世界的な競争を行っています。技術的には世界で通用する企業ですが、競争にさらされているため年収は低いです。
 文系の企業(銀行、生保など)は手厚く保護されています。世界的に全く通用しない企業ですが、競争がないためお手盛りで高年収になっています。」はなかなか説得力がある。メーカーの年収より金融機関の年収が高いことの原因として。


 この記事が出た当時、「調査大学は阪大だろう」と思った。阪大のOBに阪大教員から調査のお願いが来た。理系はまじめに答えた。文系は年収が低い人はパスした…とも考えられる。回答者の割合が理系のほうが高い。
 また、阪大だとしたら(確かそうだったと思う)、阪大だからこそ大手の企業で順調に昇進した人は高い年収を貰える管理職になっている割合が高いだろう。旧帝大だからこんな差が出たのではないかと思うのである。
 40歳台で、「理系が1112万円、文系が1325万円」という年収は、世の中一般と比べて突出して高いのではないだろうか。


 法政二高の生徒は大部分が法政大学に進学する。中堅の私学出身は旧帝大よりずっと大手企業に就職する割合は低いのではないか。大卒で大手企業と小企業では生涯年収が非常に違う。その場合、理系のほうが大手に就職割合が高いから、生涯年収
は理系のほうが上かも知れない。


 そんは話から入っても、結局は、この変動する時代には、理系であろうと文系であろうと人にアピールできるだけの「自分は何ができるか」「自分は何を身につけているか」といえる技能、知識を持つことだという話で終えたい。


 さて明日はどんな講演になるだろうか。