左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

増田明利『今日、ホームレスになった 平成大不況編』(彩図社)を読んだ!

 かつて東大附属に勤めていたとき、新宿西口の地下道にはホームレスの人たちのダンボールハウスが並んでいた。
 同僚のYさんが「いいな、ああいう暮らし…」とぽつりと言った。
 今は温暖な地で半農生活をしているYさんらしい言葉だった。
 究極の自由を手に入れた生活と見えたのかも知れない。
 

 著者は「ホームレスには自由があるが、それは飢える自由、生命を危険にさらす自由、人格や人権を放棄する自由だ」という。「過酷な生活の中、生命を削って生きている」という。
 本書の事例を読めば本当にそうだなと思う。


 若いホームレスの話があった。
 33歳。プロミュージシャン志望。
 音楽とかバンドをやって30歳を超えた。フリーターと言ってなんとかなったのは28歳頃まで。バイト先で「夢中になれるものがあって幸せ」「若いうちはやりたいことをやれ」などといわれたが、それは、経営者が利用するためのおだての言葉だったと気づいたときには遅かった。フリーター歴だけ重ねても自分にできることはほとんどなかった。
 「できれば15年前の今頃に戻りたいよ。」
 バンドなんかやっていないで予備校かよってマシな大学に行っていたろうに。
 「修正液で自分の履歴書をきれいにして全部書き換えたいなあと思うよ。もう無理だけど。」


 ぼくももし教員を辞めていたら、同じく教員をやっていたツレに食わして貰うか(それはきっとぼくのプライドが許さなかっただろうが)、本書の事例のような方向にいっていたかも知れない。ただぼくは運がよかっただけ。
 今ならサイエンスライターでもなんとか食べていけるかも知れないが(無理かな?)、教員経験くらいでは教員くらいしかできないね、きっと。


 この前、小学校の同窓会で鬼怒川温泉のホテルに泊まったが、本書の事例には鬼怒川温泉の観光ホテルが2年前に倒産して…というのがあった。
 ホテルで2リットルのウーロン茶を頼んだら1500円だったのを思い出した。宿泊料を高くするわけにもいかないので、そんな値段にしないと経営が成り立たないのだろう。