左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

フィンランドの理科教育

●日本の小中学校教員11時間勤務
 小中学校教員の1日の平均勤務時間(休憩を除く)は11時間6分で、国際学力調査で高い学力を示すフィンランドの6時間16分より5時間近く長いことが2009年3月22日、国民教育文化総合研究所の調査で分かった。研究所は「フィンランドは学習指導が主だが、日本は文書整理や部活、学校行事の準備に追われている」とみている。


 フィンランドの総合制学校9年間で行われる理科の科目は、小学校1年生〜4年生「環境と自然の学習」。5年生、6年生「生物学と地理学」、「物理学と化学」。小学校5年生で細胞やイオンは扱っています。
 中学校では、物理、化学、生物、地学、健康(保健)を学び、高等学校では物理、化学、生物、地理の4科目を選択履修します。


 「フィンランドの理科教育」(明石書店)を出している鈴木誠さん@北大に、RikaTan誌2009年3月号に「フィンランドの理科教育から何を学ぶか」を書いて貰っています。


 一例をあげると、次が小中学校の化学分野です。


 「また、粒子概念は小学校5年生から学習します。「Luonnkirija 5・6:Fisiikk ja Kemia(物理と化学)」の「私たちは空気と水を調べます」という単元で, 子どもたちは水の分子や原子について学ぶのです。「水分子のモデルを示しながら原子と分子の違いは何か、また水の生成についての化学反応式がモデルと共に教科書に記述されています。表面張力の概念も、水分子のモデルを使って学びます。さらに、石油から得られるエネルギーの学習内容では, 高分子化学物のモデルと構造式を学びます。日常生活でのプラスチック製品の重要性と、それらが自然の中では分解されにくいということも化学領域から学ぶのです。
 中学校では、ヘリウムの原子構造や原子核が2対の陽子と中性子から成ること, 2つの電子を持つことを学びます。その後、燃焼や化学反応, 金属元素, 酸化還元反応, 電気分解などを経て, 電子配置や化学反応式とモデルを学習していきます。一方, グルコースなどの構造や光合成の過程などの生化学も、この中で学びます。中学校の化学の内容は高度で、日本の高等学校化学Iと近いレベルとなっています。」


 鈴木さんは最後に「理念をもつ」ことを学ぶべきだと言っています。


 かつて日本経済がめざましい成長をとげていたとき、「日本の教育から学べ」と日本に諸外国の教育関係者がたくさん視察に来ましたが、いまはフィンランド詣でが盛んになっています。