左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

電子レンジによって水が温まる理由に「水分子同士の摩擦熱」はおかしいのでは?

【追記】2015年7月19日

 電子レンジで食べ物の中の水分が温まることにも関係しています。電子レンジのスイッチを入れると、周波数が2450メガヘルツ、つまり1秒間に24億5千万回も電界の向きが交代するマイクロ波が発生します。
電子レンジで水が温まる理由として、よく、「水分子が電磁波で揺すぶられ(振動させられ)、水分子同士がその摩擦熱で温まる」という説明を見かけます。これは、30字程度で精一杯の説明としては意義がありますが、物体同士の摩擦による熱の発生を水分子に当てはめるのは違和感があります。
 水分子は、分子内で極性がキャンセルされない極性分子なので、分子内で電気が偏った電気双極子と考えられます。
 まず水分子1個に電子レンジのマイクロ波を当てたとします。はじめ、このマイクロ波の電界(電場)の向きと水分子の電気双極子の向きが平行であるとします。すると、マイクロ波の電界が電気双極子と同じ向き、つまり電気双極子のプラス電気端からマイナス電気端への向き、のときは水分子は動かないままです。次の瞬間、マイクロ波の電界がまったく反対向きになると、水分子は電界によってひっくり返り(回転し)ます。これがくり返されるので水分子は回転をくり返します。
 液体の水になると、莫大な数の水分子がお互いに結びついてネットワークをつくっています。水分子はつながり合っていますが、液体ですから、固体(氷)のようにそれぞれの水分子が決まった場所にいるのではなく、ある程度場所を変えることができます。液体の水に電子レンジのマイクロ波を当てると、つながり合ったまま電界の影響を受けることになります。そこで、電界が反対向きになるのについていける水分子とついていけないでもたもたしてしまう水分子が出てきます。電界の変化についていければ熱の発生はないのですが、ついていけずにもたもたする不規則な運動をするということは、マイクロ波のエネルギーをまわりに与えてしまう、つまり発熱することになります。
 実はマイクロ波は水の分子だけにはたらくのではありませんが、水が極性分子で電気双極子になるために影響を受けるのです。たとえば食器などには影響度合が桁違いに小さいのです。

※まだわかりにくいなあ。

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 電子レンジで水が温まる説明に水分子同士の摩擦熱を使うものをよく見かけます。
 例えば神戸新聞に連載されていたものでも、「…電波の振動に合わせて、水分子は激しく揺れ動くのです。このとき、水分子は互いにぶつかり合い、こすれ合って、摩擦熱を発生します。この摩擦熱が広がって、食品全体が温められるというわけです。」とありました。

 ぼくは、水分子が揺さぶられるということで温度上昇と思います。神戸新聞のものでは、「電波の振動に合わせて、水分子は激しく揺れ動く」ことで温度上昇(熱エネルギーの発生)で、「こすれ合って、摩擦熱」が発生するのではないと思います。
 水分子どうしの間の摩擦熱を説明に入れることにとても違和感があるのですが第一次近似的には正しいのでしょうか?
 どうも摩擦熱を使う説明はわかりやすそうですが、第一次近似的にも間違いではないでしょうか?
 なお、ぼくは、次の考えに賛成です。

 中村 聡@佐賀大学 物理教育 54(2), 103-107, 2006-06-16

http://ci.nii.ac.jp/naid/110007490405
電子レンジの加執原理を説明する際に,振動する水の分子同士の摩擦熱を考える場合があるが,真実に反している上,熱の分子運動論や摩擦現象のミクロなイメージの涵養を妨げる。いくらかの調査の結果,摩擦熱の説明はかなり流布していて,生徒もテレビなどを通じて聞き,更に学校教育までも荷担していることが判明した。摩擦熱を考える代わりに,「分子が振動していれば,そのエネルギー自体が熱である」と述べた方か良い。もし分子運動論を避けるのであれば,逆に電子レンシの加熱原理についても触れない方が良いと思われる。