コメント:
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武田邦彦 2009/12/16 22:12
私(武田)が参加した鼎談の書籍についてのご論評を拝見しました。私の読者の方が、私の真意をくみ取っていないとご注意をされたので、ご一考をお願いします。書籍で示されている私のスタンスは十分にご理解いただけたと思いますが、学問は完璧ということはなく、またお互いに人格の批判をせず、胸襟を開いて話し合うことと思っています。学問には利権も個人的な名誉もなく、ただ真実を追う作業と思っています。ご指摘の箇所は「間違いを書いた」ということではなく、反撃が強くてもそれに流されない論理展開が必要だと反省しているという意味です。生徒さんを教える先生はよく勉強され、学問的に事実と思われることをご自分の責任でお話になることと存じます。その点、もしお考えいただければと希望します。また学問は信じる信じないの問題ではなく、あくまで事実と論理で知的に前進するもので、それにはいろいろな考えがあります。大切なのは反論について真摯に受け止めて、根拠をはっきりと述べることであり、そのチャンスを与えることと存じます。
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左巻健男です。
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ニセ科学批判をやっていると一般レベルより少しは知的ベルが高いと思わ
れる教員層の一部もニセ科学に引っかかっているのに驚きます。
この前の「ニセ科学フォーラム2009」のぼくのレジメは、ブログ
http://d.hatena.ne.jp/samakita/20091212/1260598185
に載せておきました。
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温暖化をめぐってもデータの検討をせずに杜撰なものを元に自説を主張
する人たちに出会い、いくら温暖化関係が専門ではないからと言って科学
の研究者として恥辱ではないのかと思っていました。そしてそういうもの
を「おもしろい」といって納得してしまう教員にも驚きました。
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つい先日、もうすぐ発行される『温暖化論のホンネ 「脅威論」と「懐疑
論」を超えて』(枝廣淳子・江守正多・武田邦彦著 技術評論社
本体\1380)を読みました。
そこで武田さんは、「20世紀に…気温が上がっていることについては、
IPCC以外でも多くの研究者がそのように言っていますから、議論の余地は
ないと思います。」「CO2のほとんどが人間の出したものである点について
も、そうだと思います。」「気温上昇が人為起源であるという認識について
は…IPCCの認識は7割がたその通りだと思いますが、残りの3割にはそれ以外
の見解も加味する必要があるのではないかというのが私の意見です。」と
述べています。そして、「学生に教えるとしたら。「その割合はわからない
けれどもIPCCの報告を一番重く受けとめている」と説明…。」としています。
さらに江守さんから「『環境問題はなぜウソがまかり通るのか3』…は
相当不信感を持ったというか、納得がいかない部分が多かった。…根本的
な誤解…この辺りの記述については、何があったのでしょう?」と言われ
て、武田さんは「いわゆるIPCC派の人たちの攻撃が非常にキツくて、本来
は論文をきちんと読んで書くというスタンスだったのですが、…その姿勢
が取りにくいような状況でした。だからといって、間違っていていいという
ことにはなりませんので、深く反省し、今年の著作では元の姿勢に戻した
つもりです。…3について、不十分な記述があったとしたら「この頃の武田
はえらく心理的に乱れていたな」と思って下さい。」などと述べています。
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攻撃されたから怪しいデータで反論の攻撃的な本を書いたようです。そ
してそういう本が50万部も売れて、教員の一部にも影響を与えたわけです。
教員のなかには怪しいデータかどうか検証する手段もなければセンスも弱
い人がいますから教育界にも影響を及ぼします。
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武田さんの立場は、「CO2を気にせずエネルギーを使って、新たな技術を
開発すれば温暖化も解決できる…。」「世界共通の危機になれば、…日本
もそのタイミングでやればいい…。「日本人だけが(対策を)やるのは
おかしい…。」「私も本当のところはCO2を減らすようなライフスタイルが
いいとは思っています。…でも無理なんです。解決策がないんです。…温
暖化やCO2とは全く別の問題…」リンクさせないようにしたい、ということ
のようです。
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心理的に乱れていて記述が不十分なときの武田論説に影響を受けた人は
是非一読することをお薦めします。
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なお、ぼくは、江守さんの論説に共感しています。
→
2009-11-01 地球温暖化懐疑論者・丸山茂徳さんのニセ科学
http://d.hatena.ne.jp/samakita/20091101