左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

12年前に書いた左巻健男の文(インドを旅していたときスマトラ島沖地震・津波)

 PC文書箱にあった文章。雑誌に書いた一部。もう12年前になるんだ。メインバザールのVIVEKホテルのロビーで英字新聞に大きく TSUNAMI とあったのを思い出す。


スマトラ島沖地震津波犠牲者20万人に拡大も


 「大きな轟音が響き渡った。立ち上がって走ろうとしたが、そのときには10メートル近い水の壁にのみ込まれていた。海水を飲まないように息を止めた。私にははっきりわかった。死がそこまで迫っていると…。
 私は家族を捜して回ったが目に入るのは死体ばかりだった。そのほとんどが女性や子供で、無残にねじ曲がった冷たい遺体がいたるところに横たわっていた。…」


 家族を失ったインドの漁師は「私たちの海からあんなものがやってくるなんて誰一人として知らなかった。」と述べた(『Newsweek日本版』2005.1.12号)。


 発生時刻…2004年12月26日09時58分51秒 震央…北緯3.251° 東経95.799°深さ…10.0kmでおこったマグニチュードMw 9.0の超巨大地震。地球が一瞬身をすくめただけで、巨大津波による死者が15万人を超え、20万人に達する可能性が言われている(1.10国連)。


 私はこのときインドを旅していた。デリー、ジャイプール、バラナシなど津波に無関係の場所だったが、友人たちは心配していたらしい。


 インドで新聞やテレビでtsunamiという言葉を見たり聞いた。インド人から「tsunamiは日本語だろ?」と言われたりもした。死者数が記事を見るたびに大きくなっていった。


 12月22日〜1月7日の旅を終えて帰国して最初の1月11日の講義ではこの津波を取り上げた。


 今回被害が拡大したのは警報システムがなかったこともあるが、わが日本も無関係ではない。日本人が好きなエビを養殖するためにタイなどの沿岸部でマングローブ林を切り開いて養殖池がつくられてきた。大量に養殖するので、病気などが発生して養殖池は数年で放棄。新たにまた林を伐採して養殖池をつくっていく。放棄された養殖池は元にもどらず、次第にマングローブ林は消えていく。自然の防波堤が失われてきていたのだ。


 次には感染症の蔓延が恐ろしい。コレラチフス赤痢などの水系伝染病。マラリアデング熱といった蚊が媒介する伝染病。それとインフルエンザや肺炎など呼吸器系の病気。公害や環境破壊でもそうだが、自然災害であってもいつも最も被害を受けやすいのは子どもなどの弱者である。