左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

金川貴博『ありがとう、微生物たち 生命を育み水を浄化する』東洋書店2013を読んだ!

 金川貴博『ありがとう、微生物たち 生命を育み水を浄化する』東洋書店2013を読んだ。
 現在友人たちと執筆中の微生物本の参考に読んだが、非常に役だった。微生物本というと、腸内細菌の役割をかなりオーバーにえがいたり、怪しげな善玉菌・悪玉菌・日和見菌の話になっていたりするが、本書はクールに自然界の微生物の役割とその利用について、研究手法も含めて書いてくれている。
 以下は抜粋的だが、心しておきたいことである。

 

 「微生物を使った排水処理にしても、環境中で微生物が普通に行っていることを、ちょっとした工夫で私たちが利用しているだけである」と。
 そのへんにいる微生物が当たり前にやっていることなのだ。

 本書によると「優秀な微生物を売る商売は成り立たない」。
 本当に優秀なら1階導入すれば繁殖して永久に使えるから商売の機会は一回だけ。特別な場合を除いて微生物を売るのは商売として成り立たない。
 定期的に微生物を入れなければならないというのはどこかが変だ。しか微生物の商売人がずいぶんいる。環境分野で売られている微生物の効果が科学的に実証されているものはほとんどない。

 以前ある微生物集団がブームになった。環境中に存在する普通の微生物集団がもつすばらしい能力は一般にあまり知られていないので、その微生物集団の信者になってしまう。
 科学的に検証するとそれがとくに優秀ということではない。
 「水を浄化するすばらしい微生物集団なのでそれを培養してそのまま川に投入したい」などと話が出たりするが、川に有機物と栄養塩類を投入して水質を悪化させる行為である。川が汚れているとき外から余計な微生物集団を加えて解決することなどおよそ考えられない。

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金川貴博(かながわ たかひろ)

【現職】京都学園大学 バイオ環境学部 バイオ環境デザイン学科 バイオマス高度化利用研究室 教授
【略歴】京都大学大学院農学研究科修士課程を修了。
 通産省 工業技術院 微生物工業技術研究所 主任研究官、通産省 生命工学工業技術研究所 複合微生物研究室長、東京工業大学大学院教授(生命理工学研究科)、(独)産業技術総合研究所 複合微生物研究グループ長などを経て、現職 農学博士(京都大学

【現在の研究内容】
 1.微生物を利用したバイオマスの有効利用
 2.DNA解析技術の開発と応用
 3.複合微生物系の解析

【過去の研究】
 1.廃水処理、排ガス処理、生ごみ処理技術の開発。汚染地下水/土壌の処理(バイオレメディエーション)。
 2.複合微生物系の解析、特に廃水処理施設の菌相解析や、特定菌の定量
 3.複合微生物系を解析するための分子生物学的な新規手法の開発。
 4.開発した新規手法(特定のDNAやRNAの検出・定量手法)の応用(遺伝子組換え作物の混入率の測定、SNP解析など)。
 5.組換え微生物の開放系利用における安全性評価手法の開発