左巻健男&理科の探検’s blog

左巻健男(さまきたけお)&理科の探検(RikaTan)誌

博士号をとろうと思ったこともあるけれど…

ある大学にいる知人がニセ学位で有名な米国の「学位販売大学」の博士号を大学の教員紹介に出していたことがあった。もしかしたら彼はその学位のせいで採用が決まったかも知れない(つまりそうだとしたらその大学の採用関係者は無知な人の集まりだったことになる。教授会や評議会などのメンバーも)。
その学位販売大学は「社会経験や論文・著作などを単位に換算して…」としているので、本人は自分が提出した論文が認められて博士号を貰えたと錯覚していたかもしれない。
 ぼくは、彼に「この大学はニセ学位を出す「大学」で有名だから、大学のWEBに出しておくと問題になるよ。大学に言って削除して貰ったほうがいい」とアドバイスした。
 彼は早速大学にかけあってWEBからその部分を削除して貰った。これがもう少し遅かったら文部科学省の調査に引っかかるところだった。
彼はぼくにご馳走してもいいな。(^_^)
ある高校の理科教員が同じような学位販売大学で博士号を貰った(買った)。論文を提出して貰う前だったので、ぼくは彼にやめるようにアドバイスをした。しかし、彼は買ってしまった。今から数年前のこと。
 彼は非常勤で大学の理科教育法の講義をもっていたのでニセ学位といえどもほしかったのかもしれない。その彼の非常勤先が学科再編で教職課程の認定を出し直したときに彼は認定されなかった。ぼくの想像では、履歴に、そのニセ学位を書いたのではないかと思う。それを書かなければそれまでずっと担当していたのだから認定が駄目になることはないと思う。
 ぼくのことを。(これは2006/12/23に書いたものの手直し。)
 以前、地方の某私大に応募しろと言われて応募したことがある。
 科学教育関係。東大附属中高校教諭時代。
 悩んだのは、その大学の学力レベル。あまり高くなかったので。
 でも、「はじめは博士号所持を条件にしたけれど君のためにそれを外した」と学科長から言われて、それでも、そんなに乗り気にならなかったのだが一応応募して面接に。
 駄目だった。そのとき、なんかほっとしたのを覚えている。
 決まったのは国立大学定年退職した博士号所持の人。
 わざわざ条件から外してくれたのに理由が「博士号がないから」と言われた。
 それなら博士号とろうかな、と思って北大の大学院研究生になった。 その後、某私大が駄目になってから1年後に京都工芸繊維大学教授に決まった。
 その3年後には同志社女子大学教授に。そして、今は法政大学生命科学部環境応用化学科教授に。
 もう博士号がなくても関係のない立場になり、日々の忙しさに追われてとろうという気持ちが失せている。
 法政の今の学科で博士号をもっていないのはぼくだけかもしれない。でももう不要。
 博士号をとらないとクビにされるならとろうという気になるが、ぼくのような理科教育の分野では教育学修士号でも(ぼくの年代だと)十分と思える。だからもう博士号はとらない。
 これから大学に就職しようとする人は博士号くらい持っていたほうがいいだろう。
 でも、間違えてニセ学位を買わないように!

 日本で有名なニセ学位を販売するニセ大学には、イオンド大学ルイジアナ州が本部で日本校を持つクレイトン大学、ハワイに拠点を持つパシフィック・ウエスタン大学ホノルル大学などがある。クレイトン大学パシフィック・ウエスタン大学ホノルル大学のパンフレットなどに書かれた住所には、小さな事務所や私書箱しかなく、ルイジアナ州ハワイ州では、これらは大学として認可されておらず、学位は偽物だ。取得してみると社会で「通用しない」。
 パシフィック・ウエスタン大学 (Pacific Western University)のニセ学位を名刺で見たことがある。πウォ−ター製造器をふくんだ浄水器という、ぼくから見ればインチキ商品を批判したら大学に乗り込んできた。
 どうも、そのインチキ学位をもった人の会社がOEM生産をしている浄水器に付加されているπウォーターを新聞記事で批判したので、その販売会社の会長が連れてきたのだ。会長の会社はあるイタリアのブランド名を冠したπウォーター浄水器を販売している。
 その会長もゴーストライターに書かせたπウオーターの本を出している。
 かつて『週刊朝日』がこうした学位販売の記事を載せていたが、そこに
 「さらに最近、目立ってきたのは、こうした海外大学の学位が、セラピストや民間療法をしている人の肩書、健康食品の販売などに使われていることだ。前述のハワイ州の大学も、大学の研究所の名で健康栄養補助食品を売り出した。
 「知識のない高齢者らが、大学名につられてお金を出すことも考えられる。こちらも将来的には大きな問題になるのではないか」とある教育関係者。カタカナ大学にはご用心あれ、ということか。」

 とある。
 健康食品、水の商品などの権威付けのためにそのような「お金で買える」インチキ学位が使われているのだ。

 パシフィック・ウエスタン大学 (Pacific Western University)は、かのエジプト学者の吉村作治氏(今はどこかの学長さん)がニセ学位を購入したことで知った。
 「へえ、学位を売る大学もあるんだなあ」と。
 吉村氏はシャレで…と言い訳していたが、シャレでウン百万(百万、二百万くらいらしい)も出すのか、さすがにエジプトで儲けているだけのことがある…と思った。
 今では、ほとんど実体のない米国の大学の学士号や博士号などを“販売”する「学位商法」について、文部科学省が対策に乗り出しているということだ。
 怪しい商売に利用する人もいれば、大学への就職や昇任に使う人もいる。とくに大学への就職や大学での昇任にニセ学位を使われては、きちんと正規に学位をとった人が可哀想だ。