結果的にだが、数3を自学自習で予習していくという選択は正しかった。
中学校数学からやり直す道もあった。それは、目標の山頂があったとしたら麓から一歩一歩登る「階段型」の道だ。ぼくが選択したのは、麓のところもろくにクリアしていないのに、無理に8合目に登ってしまって、そこから麓を見下ろしながら山頂を目指す道だった。もともとの自分のレベルが麓レベルだったのに、学習していくうちに基礎・土台レベルが5合目くらいになり、次第に引き上げられながら、8合目から9合目へと向かっていた。「高いレベルの学習による基礎引き上げ効果」か。
4月から開始した数学の自習も8か月近くが経った12月に担任との2者面談があった。
担任の気持ちとしては、ぼくが3年に進級できるか、就職希望としてもどうも人間関係が駄目で心配、というものだったろう。
「左巻君は将来どうするの?」
その答は、「国立大学に行きたいと思っています。」
担任は驚いた顔でぼくを見つめて言った。「勉強しているのか?今に学校の成績も上がってくるのか?」
数学の自習を続けていても、学校の中間・期末テストの成績は悲惨だった。数学だって高2の数学はまだよくわからなかった。工業高校の学力落ちこぼれの生徒が、何十年か国立大学進学者がいない学校にいながらそんな答をしたことに驚いたことだろう。
「はい、今、少しずつ勉強していますから高3になると成績が上がると思います。」
高2から高3になった。追試はだいぶ減った。成績はよい方向へと向かっているようだった。
高3の数学は授業内容がよくわかった。ほぼゼロの状態から自学自習していたことが効果を表していた。
1学期の中間試験が近づいたある日、ぼくは担任にやすり板、ロウ原紙、鉄筆などを借りた。今ならリソファックス等で簡単に印刷できるが、当時はガリ版印刷だった。
ぼくは何を思ったか、クラスの生徒たちに「数学の試験対策」のポイント・解き方をまとめたプリントをつくって配ったのだ。(その3へ続く)
*前回:2010-06-19 左巻健男の原点は工業高校2年生になったばかりの春の決意(その1) http://d.hatena.ne.jp/samakita/20100619/1276919040